○著作権審議会第1小委員会審議のまとめ
    平成11年12月
    著作権審議会第1小委員会



    目 次
    I 権利の執行・罰則について
    (1)文書提出命令の拡充
    (2)計算鑑定人制度の導入
    (3)具体的事情を考慮した使用料相当額の認定
    (4)弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額の認定
    (5)法人重課の専入
    II 障害者の著作物利用に係る権利制限規定の見直しについて
    1.視覚障害者関係
    (1)点字データのコンピュータヘの蓄積及びコンピュータ・ネットワークを通じた送信
    (2)録音図書作成に係る権利制限の拡大
    (3)音声解説の付加
    2.聴覚障害者関係
    (1)放送番組等の字幕又は手話によるリアルタイム送信(リアルタイム字幕等)
    (2)字幕ビデオの作成
    (3)字幕放送、手話放送
    3.学習障害者等関係
    III 保護期間の延長等
    (1)保護期間の延長について
    (2)写真の著作物の保護の復活について
    参考資料

    ・著作権法関係条文
    ・民事訴訟法関係条文
    ・特許法等関係条文
    ・法人重課規定
    ・コンピュータを活用した障害者への点字図書の提供
    ・コンピュータを活用した障害者への字幕の提供
    ・権利処理ルールの現状について
    著作権審議会第1小委員会委員名簿

    著作権審議会第1小委員会専門部会(執行・罰則等関係)委員名簿



    著作権審議会第1小委員会審議のまとめ
    著作権審議会第1小委員会では、本年7月以来、近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物利用形態の変化や著作権制度に係る国際的動向を踏まえ、当面の著作権法改正事項として、1) 権利の執行・罰則、2) 障害者の著作物利用に係る権利制限規定の見直し、3) 保護期間の延長等という3項目について審議を行い、検討を進めてきた。
    その結果、それぞれの課題について、当小委員会として次のように審議結果をとりまとめた。



    I 権利の執行・罰則について
    本小委員会においては、今後の検討の進め方として、権利保護の実効性の確保や他の知的所有権法制との整合性の観点から、権利の執行・罰則に関する課題を取り上げることが必要であるとして、本年7月に専門部会を設置し、これまで本小委員会等の審議のまとめ等で検討課題として位置づけられてきた事項や特許法等他の知的所有権法制において導入された事項等について検討を進めてきた結果、本年10月に専門部会としての報告書がまとめられたところである。

    同報告書においては、著作権等侵害に係る損害賠償請求事件において、かねてからその賠償額の低さが指摘されてきたことや、インターネットの普及等の近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、著作物等の利用形態の多様化が進み、著作物等の無断利用の危険性が増大していることを踏まえ、権利保護の実効性の確保のために十分な配慮が必要であるとされ、具体的には損害賠償手続規定等の充実として(1)文書提出命令の拡充、(2)計算鑑定人制度の導入、(3)具体的事情を考慮した使用料相当額の認定、(4)弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額の認定について、また、罰則の強化として(5)法人重課の導入について措置することが適当であるとの方向性が示されている。

    これらの点については、関係団体においても早期の実現を求める意見が多数となっており、著作権保護の実効性を図る観点から、早急に制度改正を行うことが必要であると考えられる。

    (1) 文書提出命令の拡充
    著作権等侵害事件においては、演奏、上映、公衆送信等の無形的利用等があった場合に、過去に遡って侵害行為を立証することが困難である等、侵害行為の立証が困難である場合が多い。このため、著作権法においても特許法等と同様に現行の文書提出命令(第114条の2)を拡充し、侵害行為による損害の計算をするためだけでなく、侵害行為の立証のために必要な場合においても、裁判所が提出を拒む「正当な理由」がないと判断すれば、営業秘密等が記載されている文書であっても提出を義務づけることができることとすることが適当である。この際、民事訴訟法の規定にならい、文書の提出を拒む正当な理由の有無を判断するために、裁判所が文書の所持者に文書の提示をさせることができることとするいわゆるイン・カメラ手続もあわせて導入することが適当である。

    (2) 計算鑑定人制度の導入
    著作権等侵害訴訟において、文書提出命令により文書の提出を受けたとしても、文書中に略号が使用されていたり、文書がコンピュータ処理のされた帳票類である等、当事者の協力義務なしでは書類の分析が困難である場合がある。このことから、裁判の公正と迅速化のため、又、権利者の立証を容易化するため、特許法と同様に民事訴訟法上の鑑定人制度の特則として新たに著作権法に計算鑑定人制度を導入し、高度の専門知識をもった計算鑑定人を指定して訴訟当事者の協力義務の下にその内容を解析させることとすることが適当である。

    (3) 具体的事情を考慮した使用料相当額の認定
    現行著作権法においては、損害賠償額の最低限の保障として「通常受けるべき金銭の額に相当する額」を損害の額として賠償請求できることとされている(第114条第2項)が、この額を算定するにあたって既存の使用料規程等が参酌されることが多く、侵害者が誠実に許諾を受けた者と同じ額を賠償すればよい結果となる、いわゆる「侵害し得」の状況が生じている。このため、「通常」という文言を削除し、当事者間の業務上の関係等、当該事件の具体的事情を考慮した「相当」な使用料の認定ができることとすることが適当である。

    (4) 弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額の認定
    現行の民事訴訟法においては、損害額の認定をする際に「損害の性質上その額の」立証が極めて困難である場合には、裁判所が弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額を認定できることとされている。

    著作権等侵害訴訟においては、カラオケ演奏等により継続的に演奏権等が侵害され、過去の演奏回数まで遡って立証する場合等、「損害の性質上」その額を立証することがきわめて困難である(民事訴訟法第248条)というよりも、損害額を立証するために必要な事実の立証が「当該事実の性質上」極めて困難である場合があるため、特許法等と同様に新たに民事訴訟法の特則を設け、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難である場合には、裁判所が弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額を認定できることとすることが適当である。

    (5) 法人重課の導入
    現行第124条第1項は、法人等の業務に関し、その従業者等が罰則所定の違反行為をした場合に、その法人等業務主もあわせて処罰することを規定しているが、この場合、法人等業務主に対する罰金の上限額については行為者である自然人に対する罰金と同額(300万円)となっている。

    著作権等侵害は、ビデオ等の海賊版作成・頒布事件や上映権侵害のように法人の業務として侵害行為が行われているケースや、企業内違法コピーや違法送信等企業ぐるみで行われるケースが多く、法人業務主に対して十分な抑止力のある罰金を科す必要があることや、他の知的所有権法制との均衡を図る必要があること等から、著作権等の侵害罪(著作者人格権の侵害罪を除く。)について法人に対する罰金額の上限を自然人に比して高くする法人重課を導入することが適当である。

    なお、これら以外に、専門部会においては、積極否認の特則の導入、新たな損害額算定ルールの創設、三倍賠償制度の導入、弁護士費用の敗訴者負担、間接侵害規定の導入、侵害罪の非親告罪化及び懲役刑の引き上げについて検討されたが、結論を得るまでには至っていない。このうち、特に積極否認の特則の導入及び損害額算定ルールの創設については、今後の侵害行為の態様の変化や司法実務の動向を踏まえながら、引き続き積極的に検討を行うことが適当である。

    また、著作者人格権の侵害や侵害罪以外の行為に係る法人重課については、現時点においては法人重課が必要とされるような実態があるかどうかが明らかでないこと等から、今後の違反実態を踏まえ、更なる検討が必要である。

    さらに、近年、インターネットの普及と情報圧縮技術の登場を背景としてネットワーク上での著作権等侵害事件が頻発していることから、権利者がネットワーク上における違法行為を疎明した場合に、侵害者特定のために、サービスプロバイダーに対して違法サイトの開設者に関する情報の開示を義務づける制度の創設が今後の検討課題として位置づけられる。

    これらの検討課題については、今後、民事及び刑事法制全体の動向、他の知的所有権法制との均衡、及び国際的動向等に留意しつつ、更なる検討が必要であると考えられる。



    II 障害者の著作物利用に係る権利制限規定の見直しについて
    現行著作権法上、盲人用の点字による著作物の複製及び、点字図書館等で政令で定める施設における盲人の貸出しの用に供するための著作物等の録音については、無許諾・無償で行えることとなっている(第37条、第86条、第102条)が、近年、デジタル化・ネットワーク化の進展により、障害者の著作物等の利用形態も多様化が進んでいることから、著作権制度の見直しに当たっては、著作権等の保護のみならず、著作物等の公正な利用の観点にも配慮し、障害者による著作物利用がより円滑に進められるよう配慮すべきとの要望が高まっている。

    著作権審議会マルチメディア小委員会複製検討班においては、平成9年12月の設置以来、技術の進展に伴う著作物等の利用機会と流通手段の変化に即して、複製に関する権利制限規定の見直しに関し関係団体からのヒアリングを実施するとともに検討すべき論点整理を進めてきており、課題の一つとして、障害者に係る権利制限規定についても検討を行った。その結果、障害者への著作物等の提供に係る権利制限については、技術の進展への対応という観点からの検討に加え、障害者福祉と著作権保護のバランスについて、より広い観点から検討を行う必要があるとして、第1小委員会でさらなる検討を加えることが適切であるとされた。

    また、平成11年8月の総理府障害者施策推進本部決定「障害者に係る欠格条項の見直しについて」においては、身体又は精神の障害を理由としてこれらの障害を有するものに一般と異なる不利益な取扱いを行うことを定めた法令の規定等の見直しを平成14年までに行うこととされている。

    著作権問題が欠格条項の問題と直ちに関係するものではないが、政府全体として、障害者向けの情報提供の充実等の措置を含めた障害者の社会活動への参加を促進する取り組みがなされているところである。

    このような状況を踏まえ、本小委員会においても、障害者のより適切公正な著作物等の利用のための権利制限規定の見直しについて検討を行った。

    具体的には、マルチメディア小委員会複製検討班における審議、及び障害者からの要望を踏まえ、視覚障害者に関しては、(1)点訳の過程で行われる点字データのコンピュータへの蓄積及びコンピュータ・ネットワークを通じた送信、(2)録音図書作成に係る権利制限の拡大、並びに(3)音声解説の付加について、また、聴覚障害者に関しては、(1)放送番組等の字幕又は手話によるリアルタイム送信(リアルタイム字幕等)、(2)字幕ビデオの作成及び(3)字幕放送、手話放送について検討を行ったほか、学習障害者等に係る権利制限規定についても要望があることを踏まえ、検討を行った。

    各々の事項についての具体的な検討内容及び検討結果は、以下のとおりである。


    1.視覚障害者関係
    (1) 点字データのコンピュータへの蓄積及びコンピュータ・ネットワークを通じた送信
    第37条第1項は、「著作物は盲人用の点字により複製することができる」としており、点字による複製は自由とされている。しかしながら、近年の技術の発達に伴い、パソコンを用いた点訳が増加していることから、
    (a)点訳の過程における点字データのコンピュータへの蓄積について明文の規定を置くこと
    (b)視覚障害者情報提供施設間及び視覚障害者情報提供施設から視覚障害者へのネットワークを通じた点字データの提供を自由に認めること
    についての要望が高まっている。

    この問題については、パソコンによる点訳が点字図書の大半を占める状況となっている現在、限られた人的、物的条件の中で点字情報資源の有効利用を図るためには、点訳ソフトにより変換された点字データの保存とネットワークを利用した活用が重要なものとなっており、このような利用ができるよう速やかに対応することが必要となっていること、また、パソコンによる点訳や点字データの保存、ネットワーク送信は、従来自由利用が認められてきた点字複製に対し、技術の進展に対応した延長的な利用形態と考えられること、点訳の過程で生じる点字データは健常者が流用することが想定しにくいものであり、権利者の通常の利用を妨げず、その正当な利益を不当に害するものでもないと考えられることから、権利制限により自由に行えることとすることが適当と考えられる。

    また、従来、点字による複製が特定の施設に限定することなく行われてきたことに鑑みれば、点字データの複製、送信についてもその利用主体を限定することは適当でないと考えられる。

    このほか、点字データを受信した後の利用者(視覚障害者情報提供施設又は視覚障害者)の利用形態として、(ア)点字データを点字として印刷して利用すること、(イ)点字データをいったん保存した後音声化すること、及び(ウ)点字データをいったん保存した後ピンディスプレイを用いて読むことが考えられる。

    これらの利用については、現行第37条第1項や第38条第1項の権利制限規定により自由に行えることとなっているか、又は著作権の保護の対象となる利用行為でないと考えられるが、今後、技術の進展に伴う利用形態の変化に応じ、点字データの受信後の円滑な利用に配慮する必要がある。

    (2) 録音図書作成に係る権利制限の拡大
    第37条第2項は、録音図書は「点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいて、もっぱら盲人向けの貸出の用に供するため」に作成することができるとしており、具体的には、視聴覚障害者情報提供施設で点字刊行物や盲人用の録音物を盲人の利用に供し、又は点字刊行物を出版するもの、盲学校に設置されている学校図書館等が政令で指定されているが、これら以外の施設において録音図書を作成する場合には権利処理が必要となるため、第37条第2項の対象施設の拡大についての要望がある。

    また、他の施設にコンピュータ・ネットワークを通じて音訳データを送信する行為についても新たに権利制限を行うべきとの意見や、録音図書の利用対象者を学習障害者や高齢者等に拡大することについても要望がある。

    この問題については、一部の著作権管理団体において、権利者の了解を得て無償で許諾を行うこととしているように、既に一定の権利処理のルールが形成されている。また、健常者も利用することができる複製物が作成されることから、今後、流用を防ぐどのような措置を講じることが可能かという点についても検討を行う必要がある。このようなことから、より適正な権利処理ルールの確立・運用についての状況を踏まえながら、引き続き検討を行い、権利者をはじめとする関係者の十分な理解を得る必要があると考えられる。

    (3) 音声解説の付加
    音声なしに映像のみが放送されている場面について、視覚障害者のために音声解説を付加することについては、音声解説を新たに付加することは放送されている映像の複製とは考えられず、映像の著作権侵害には当たらないと考えられる。


    2.聴覚障害者関係
    (1) 放送番組等の字幕又は手話によるリアルタイム送信(リアルタイム字幕等)
    聴覚障害者からは、放送・有線放送される著作物の音声内容を字幕化し、放送とは別にリアルタイムでコンピュータ・ネットワークを通じ提供すること(リアルタイム字幕)を無許諾で行えるようにすることについて要望がある。

    この利用形態は近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴い可能となったものであるが、特に緊急事態におけるニュース等の生番組など、事前に字幕を付加することが困難である放送番組に関する障害者の情報保障の観点から緊急性が高く、速やかに対応する必要があると考えられること、また、健常者であればリアルタイム字幕を利用することなく、通常の放送番組を視聴すると考えられることや、複製権を制限せず、ネットワークによる字幕の提供(自動公衆送信)についてのみ制限を行うのであれば、その後の流用も想定しにくいことから、権利者の利益を不当に害するものでもないと考えられることから、権利制限により自由に行えることとすることが適当である。

    この際、音声内容を一部要約等することから、翻案権についても制限する必要があると考えられるが、同一性保持権については、著作者の人格的利益の尊重という観点から、制限することは適当でないと考えられる。

    さらに、著作者の権利保護の観点から、字幕作成は一定の組織、設備、人材を確保できる施設等に限定して行うこととすることが適当と考えられる。

    また、字幕と同様リアルタイムで手話の映像をコンピュータ・ネットワークを通じて提供することについては、現時点で通信回線の整備状況等から見て実現可能性が低く、今後の通信環境の整備や手話放送等の普及状況等を踏まえながら検討する必要があると考えられる。

    このほか、字幕の受信後の利用形態については、現在、個々の家庭内等における利用が主に想定されるが、今後の利用形態の変化に応じ、点字データの受信後の利用と同様、障害者の円滑な利用に配慮する必要がある。

    (2) 字幕ビデオの作成
    現在、映画の著作物等の字幕ビデオの作成については許諾を得ることが必要となっているが、聴覚障害者のより円滑な著作物の利用のために、これを自由に行えるようにすることについての要望がある。

    この問題については、現在、一定の施設において権利処理の窓口を集中化し、一括してビデオの作成を行う等、既に一定の権利処理ルールが形成されている。また、健常者も利用することができる複製物が作成されることから、今後、流用を防ぐためのどのような措置を講じることが可能かという点について慎重に検討を行う必要がある。このようなことから、より適正な権利処理ルールの確立・運用についての状況を踏まえながら、引き続き検討を行い、権利者をはじめとする関係者の十分な理解を得る必要があると考えられる。

    (3) 字幕放送、手話放送
    聴覚障害者のための字幕放送や手話放送の拡大について要望があるが、字幕放送等については、放送事業者が放送許諾を得る際に、字幕放送等に係る権利処理を同時に行うことより対応することが可能と考えられ、当面字幕放送等の普及状況を見守ることが適当と考えられる。


    3.学習障害者等関係
    視聴覚障害者以外にも、学習障害者等に対し、権利制限による様々な形態での視聴覚障害者に準じる「情報保障」の要望がある。

    この問題については、学習障害者等の判断基準や範囲が現時点においてまだ確定しているとは言い難いこと等の問題があることから、政府全体としての取組み等、関係各方面の検討状況を見ながら引き続き検討を行うことが適当と考えられる。



    III 保護期間の延長等
    (1) 保護期間の延長について
    我が国は、昭和45年の現行法制定以来、著作権に関する基本的な条約であるベルヌ条約の規定に則り、著作権の原則的保護期間を著作者の死後50年までとしている。しかしながら、近年における国際的動向を見ると、米国においては昨年成立した改正法において、EU諸国においては1993年10月のECディレクティブの採択を受けて、それぞれ保護期間が死後70年に延長されてきているところであり、このような国際的動向との調和を図る観点から、本小委員会において検討が行われた。

    保護期間の延長の問題については、保護期間の相互主義により、我が国より保護期間の長い国において日本の著作物が利用された場合、当該著作物は我が国の保護期間だけしか保護を受けることができず、当該国において我が国の権利者が著作物使用料を得る機会を失うのは均衡を欠くことや、保護期間を延長すれば著作者本人の創作意欲の増進につながる等の理由から、延長に積極的な意見がある。

    その一方で、多様な著作物を融合したマルチメディアの利用が進展している状況の下で、さらに保護期間を延長することは文化的所産の公正な利用の妨げになりかねないこと、プログラムやデータベースの著作物等は社会全体の技術発展の観点から長期間の保護になじまない場合があること、特許権等他の知的所有権法制における保護期間との均衡を考慮する必要があること、保護期間の延長に先立って権利者団体による著作物の権利情報の整備や権利処理制度の整備が必要不可欠であること、及び現行戦時加算規定の下での更なる保護期間の延長は避けるべき等、延長に消極的な意見も多数ある。

    また、保護期間の延長については、著作権とともに著作隣接権の保護期間も延長すべきであるとする意見や、映画の著作物の保護期間を「公表後50年まで」から「著作者の死後50年まで」に改めるべきとする意見等多様な意見があった。

    この問題については、欧米諸国の動向を踏まえると、国際的調和の観点から積極的に検討すべき重要な課題であるものの、現時点においては直ちに延長すべきとする結論には至らなかった。今後国際的動向に留意するとともに、保護期間の延長の意義や経済活動に与える影響等を具体的に分析しつつ、引き続き検討を進めていくことが適当と考えられる。

    (2) 写真の著作物の保護の復活について
    写真の保護期間については、旧著作権法において「発行後10年(未公表の場合は創作後10年)とされていたが、その後の昭和42年の暫定延長措置により発行後13年又は創作後13年となっていた。

    また、昭和45年の新著作権法においては、制定当初は、写真の著作物の保護期間は「著作物の公表後50年(その著作物がその創作後50年以内に公表されなかったときは、その創作後50年)」とされていたが、平成8年の著作権法改正により「公表後50年」から「著作者の死後50年」とされた。

    これらの改正の際には、一度権利が消滅したものについて再度保護を復活させることは既存の利用関係に重大な影響を与えることを考慮し、一度保護期間が経過した写真の著作物については遡及保護しないこととされたが、その結果、一般的に昭和31年までに発行された写真については現在著作権は消滅している。しかしながら、これに関し、現在活動中の写真家であっても昭和31年以前の作品については著作権が保護されないのは問題であるとして、遡及保護を求める要望があることから、本小委員会において再度検討が行われた。

    この問題については、他の著作物との保護上の均衡を欠くとして、遡及保護に積極的な意見もあるが、他方、一度保護期間が経過した著作物について著作権を復活させることは法的安定性を害し、著作物の利用関係に混乱を招くことや、写真についてのみ遡及保護を行うことは、旧法から新法への改正時に他の著作物の保護を不遡及としたこととのバランスを欠き、著作権法全体の均衡を失すること、一度保護期間が経過した著作物の保護を復活させることが著作者の創作意欲を増進させ、文化の発展に寄与するとは考えられないこと等の理由から消極的な意見が大勢を占めており、現時点において著作権法の原則を覆して保護を復活させるべき理由が見出しがたい。従って、写真の著作物の遡及保護の問題については、一度保護期間が経過した著作物の遡及保護をしないことにより著作者が被る不利益を放置することが著しく正義に反するような事情があるか否かを見きわめた上で、さらに検討を行うことが適当であると考えられる。


    参考資料

    著作権法(昭和45年法律第48号)
    (損害の額の推定等)
    第114条 著作権者、出版権者又は著作隣接権者が故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、当該著作権者、出版権者又は著作隣接権者が受けた損害の額と推定する。
    2 著作権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権又は著作隣接権の行使につき通常受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。
    3 前項の規定は、同項に規定する金額をこえる損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、著作権又は著作隣接権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

    (書類の提出)
    第114条の2 裁判所は、著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
    (平8法117・追加)
    第119条 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は3百万円以下の罰金に処する。
    一 著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第30条第1項(第102条第1項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者又は第113条第3項の規定により著作者人格権、著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第120条の2第3号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
    二 営利を目的として、第30条第1項第1号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
    (昭59法46・全改、平4法106・平8法117・平11法77・一部改正)
    第120条 第60条の規定に違反した者は、3百万円以下の罰金に処する。
    (昭59法46・平8法117・一部改正)
    第120条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
    一 技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化した者
    二 業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行つた者
    三 営利を目的として、第113条第3項の規定により著作者人格権、著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
    (平11法77・追加)
    第121条 著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む。)を頒布した者は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
    (平3法63・全改、平8法117・一部改正)
    第121条の2 次の各号に掲げる商業用レコード(当該商業用レコードの複製物(二以上の段階にわたる複製に係る複製物を含む。)を含む。)を商業用レコードとして複製し、その複製物を頒布し、又はその複製物を頒布の目的をもつて所持した者(当該各号の原盤に音を最初に固定した日の属する年の翌年から起算して50年を経過した後において当該複製、頒布又は所持を行つた者を除く。)は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
    一 国内において商業用レコードの製作を業とする者が、レコード製作者からそのレコード(第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)の原盤の提供を受けて製作した商業用レコード
    二 この法律の施行地外において商業用レコードの製作を業とする者が、実演家等保護条約の締約国の国民、世界貿易機関の加盟国の国民又はレコード保護条約の締約国の国民(当該締約国の法令に基づいて設立された法人及び当該締約国に主たる事務所を有する法人を含む。)であるレコード製作者からそのレコード(第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)の原盤の提供を受けて製作した商業用レコード
    (平3法63・追加、平6法112・平8法117・一部改正)
    第122条 第48条又は第102条第2項の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。
    (昭59法46・平8法117・一部改正)
    第124条 法人の代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第119条から第122条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。)
    2 法人格を有しない社団又は財団について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
    3 第1項の場合において、当該行為者に対してした告訴又は告訴の取消しは、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴又は告訴の取消しは、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。



    民事訴訟法
    第197条 次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。
    一 第191条第1項の場合
    二 医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産婦、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
    三 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
    2 前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。

    (鑑定義務)
    第212条 鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。
    2 第196条又は第201条第4項の規定により証言又は宣誓を拒むことができる者と同一の地位にある者及び同条第二項に規定する者は、鑑定人となることができない。

    (鑑定人の指定)
    第213条 鑑定人は、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が指定する。

    (忌避)
    第214条 鑑定人について誠実に鑑定をすることを妨げるべき事情があるときは、当事者は、その鑑定人が鑑定事項について陳述をする前に、これを忌避することができる。鑑定人が陳述をした場合であっても、その後に、忌避の原因が生じ、又は当事者がその原因があることを知ったときは、同様とする。
    2 忌避の申立ては、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官にしなければならない。
    3 忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。
    4 忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。

    (鑑定人の陳述の方式)
    第215条 裁判長は、鑑定人に、書面又は口頭で、意見を述べさせることができる。

    (証人尋問の規定の準用)
    第216条 第2節の規定は、特別の定めがある場合を除き、鑑定について準用する。ただし、第194条及び第205条の規定は、この限りでない。

    (鑑定証人)
    第217条 特別の学識経験により知り得た事実に関する尋問については、証人尋問に関する規定による。

    (鑑定の嘱託)
    第218条 裁判所は、必要があると認めるときは、官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は相当の設備を有する法人に鑑定を嘱託することができる。この場合においては、宣誓に関する規定を除き、この節の規定を準用する。
    2 前項の場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、官庁、公署又は法人の指定した者に鑑定書の説明をさせることができる。

    (文書提出義務)
    第220条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
    一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
    二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
    三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
    四 前三号に掲げる場合のほか、文書(公務員又は公務員であった者がその職務に関し保管し、又は所持する文書を除く。)が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
    文書の所持者又は文書の所持者と第196条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
    第197条第1項第2号に規定する事実又は同項第3号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
    専ら文書の所持者の利用に供するための文書

    (文書提出命令等)
    第223条 裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。
    2 裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。
    3 裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第220条第4号イからハまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。
    4 文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。

    (損害額の認定)
    第248条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。



    民事訴訟規則
    (準備書面・法第161条)
    第79条 答弁書その他の準備書面は、これに記載した事項について相手方が準備をするのに必要な期間をおいて、裁判所に提出しなければならない。
    2 準備書面に事実についての主張を記載する場合には、できる限り、請求を理由づける事実、抗弁事実又は再抗弁事実についての主張とこれらに関連する事実についての主張とを区別して記載しなければならない。
    3 準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合には、その理由を記載しなければならない。
    4 第2項に規定する場合には、立証を要する事由ごとに、証拠を記載しなければならない。



    特許法(昭和34年法律第121号)
    (損害の額の推定等)
    第102条 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
    2 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
    3 特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
    4 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
    (平10法51・一部改正)

    (具体的態様の明示義務)
    第104条の2 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物件又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。
    (平11法41・追加)

    (書類の提出等)
    第105条 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
    2 裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。
    3 前二項の規定は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。
    (平11法41・一部改正)

    (損害計算のための鑑定)
    第105条の2 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。
    (平11法41・追加)

    (相当な損害額の認定)
    第105条の3 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
    (平11法41・追加)

    (侵害の罪)
    第196条 特許権又は専用実施権を侵害した者は、5年以下の懲役又は5百万円以下の罰金に処する。
    (昭45法91・平5法26・平6法116・平7法91・平10法51・一部改正)

    (両罰規定)
    第201条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
    一 第196条 1億5千万円以下の罰金刑
    二 第197条又は第198条 1億円以下の罰金刑
    (平6法116・平10法51・平11法41・一部改正)



    実用新案法(昭和34年法律第123号)
    (特許法の準用)
    第30条 特許法第104条の2から第106条まで(具体的態様の明示義務、書類の提出等、損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定及び信用回復の措置)の規定は、実用新案権又は専用実施権の侵害に準用する。
    (平5法26・平11法41・一部改正)

    (両罰規定)
    第61条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
    一 第56条 1億円以下の罰金刑
    二 第57条又は第58条 3千万円以下の罰金刑
    (平5法26・平10法51・平11法41・一部改正)



    意匠法(昭和34年法律第125号)
    (特許法の準用)
    第41条 特許法第104条の2から第106条まで(具体的態様の明示義務、書類の提出等、損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定及び信用回復の措置)の規定は、意匠権又は専用実施権の侵害に準用する。
    (平11法41・一部改正)

    (両罰規定)
    第74条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
    一 第69条 1億円以下の罰金刑
    二 第70条又は第71条 3千万円以下の罰金刑
    (平10法51・平11法41・一部改正)



    商標法(昭和34年法律第127号)
    (特許法の準用)
    第39条 特許法第103条(過失の推定)及び第104条の2から第106条まで(具体的態様の明示義務、書類の提出等、損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定及び信用回復の措置)の規定は、商標権又は専用使用権の侵害に準用する。
    (平11法41・一部改正)

    (両罰規定)
    第82条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
    一 第78条 1億5千万円以下の罰金刑
    二 第79条又は第80条 1億円以下の罰金刑
    (平8法68・平11法41・一部改正)



    法人重課規定
    知的所有権法制における法人重課
    法令名行為者法人等業務主
    特許法5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
    (侵害罪、第196条)

    3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
    (詐欺・虚偽表示、第197条・第198条)
    1億5千万円以下の罰金
    (第201条第1号)

    1億円以下の罰金
    (第201条第2号)
    実用新案法3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
    (侵害罪、第56条)

    1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
    (詐欺・虚偽表示、第57条・第58条)
    1億円以下の罰金
    (第61条第1号)

    3千万円以下の罰金
    (第61条第2号)
    意匠法3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
    (侵害罪、第69条)

    1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
    (詐欺・虚偽表示、第70条・第71条)
    1億円以下の罰金
    (第74条第1号)

    3千万円以下の罰金
    (第74条第2号)
    商標法5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
    (侵害罪、第78条)

    3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
    (詐欺・虚偽表示、第79条・第80条)
    1億5千万円以下の罰金
    (第82条第1号)

    1億円以下の罰金
    (第82条第2号)


    知的所有権法制以外における主な法人重課

    法令名

    行為者

    法人等業務主
    不正競争防止法3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
    (不正競争・虚偽表示・外国の国旗等の商業上の使用・国際機関の標章の商業上の使用、第13条)
    3億円以下の罰金
    (第14条)
    独占禁止法3年以下の懲役又は500万円以下の罰金
    (私的独占・不当な取引制限・競争の実質的な制限、第89条)
    1億円以下の罰金
    (第95条第1号)
    廃棄物処理法3年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金又はその併科
    (産業廃棄物の投棄、第25条第6号)
    1億円以下の罰金
    (第30条第1号)



    障害者の著作物利用に係る権利制限規定の見直し


    (1) 点字データのコンピュータへの蓄積及び
     コンピュータ・ネットワークを通じた送信


    (2)放送番組等の字幕によるリアルタイム送信(リアルタイム字幕)


    *セリフ等のコンピュータへの保存や改変を自由に行うことについては認めない。



    権利処理ルールの現状について


    1. 録音物作成に係る権利処理ルール(視覚障害者関係)

    (社)日本文芸著作権保護同盟
    権利の了解を得て
    無償で許諾
    許諾申請
    録音図書作成者(政令指定施設以外)
    * 点字図書館等政令で指定する一定の施設において視覚障害者向け貸出用に著作物を録音することは自由とされている。


    2. 字幕ビデオ作成に係る権利処理ルール(聴覚障害者関係)

    (社)日本脚本家連盟(協)日本シナリオ作家協会
    (社)日本文芸著作権保護同盟(社)日本音楽著作権協会
    (社)日本レコード協会(社)日本芸能実演家団体連協議会
    包括許諾契約
    (劇場用映画を除く)
    許諾申請
    字幕ビデオ作成者
    (社福)聴力障害者情報文化センター
    字幕ビデオライブラリー共同事業参加団体
    (平成11年4月現在62県市図書館)
    地方ライブラリー機関
    地方ライブラリー機関
    * 放送事業者及び映画製作者の権利及び劇場用映画に係る他の関係者の権利については個別処理



    (参考)
    著作権審議会第1小委員会委員名簿
    平成11年10月4日現在(敬称略、五十音順)

    春 日 偉知郎 筑波大学教授
    木 村   孝日本弁護士連合会コンピュータ研究委員会
    委員長・弁護士
    座 長 斉 藤   博専修大学教授
    始 関 正 光法務省民事局参事官
    中 山 信 弘東京大学教授
    野々上   尚法務省刑事局参事官
    半 田 正 夫青山学院大学教授
    牧 野 利 秋弁護士・元東京高等裁判所判事
    増 田   稔最高裁判所事務総局行政局参事官
    松 田 政 行日本弁護士連合会知的所有権委員会委員・弁護士


    著作権審議会第1小委員会専門部会(権利の執行・罰則等関係)委員名簿
    平成11年10月4日現在(敬称略、五十音順)

    春 日 偉知郎筑波大学教授
    木 村   孝日本弁護士連合会コンピュータ研究委員会
    委員長・弁護士
    座 長斉 藤   博専修大学教授
    始 関 正 光法務省民事局参事官
    中 山 信 弘東京大学教授
    野々上   尚法務省刑事局参事官
    半 田 正 夫青山学院大学教授
    牧 野 利 秋弁護士・元東京高等裁判所判事
    増 田   稔最高裁判所事務総局行政局参事官
    松 田 政 行日本弁護士連合会知的所有権委員会委員・弁護士


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