許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の
    保護に関する条約


    一九七一年(昭和四十六年)十月二十九日 ジュネーヴで作成
    一九七二年(昭和四十七年)四月二十一日 日本国署名
    一九七三年(昭和四十八年)四月十八日効力発生
    一九七八年(昭和五十三年)六月十九日受諾書寄託
    一九七八年(昭和五十三年)十月十一日公布(条約第十七号)
    一九七八年(昭和五十三年)十月十四日我が国について発効

    締約国は、

    許諾を得ないレコードの複製が広く行われ及び増加していること並びにこのことが著作者、実演家及びレコード製作者の利益を害していることを憂慮し、

    レコード製作者をそのような行為から保護することが、レコードにその実演が録音されている実演家及びレコードにその著作物が録音されている著作者の利益ともなることを確信し、

    国際連合教育科学文化機関及び世界知的所有権機関がこの分野において行つた活動の価値を認め、

    既に効力を有している国際協定を何ら害しないこと、特に、実演家、放送機関及びレコード製作者に保護を与えている千九百六十一年十月二十六日のローマ条約の一層広範な受諾を何ら害しないことを希望して、

    次のとおり協定した。

    第一条 〔定 義〕
    この条約の適用上、
    (a) 「レコード」とは、実演の音その他の音の専ら聴覚的な固定物をいう。
    (b) 「レコード製作者」とは、実演の音その他の音を最初に固定した自然人又は法人をいう。
    (c) 「複製物」とは、レコードから直接又は間接にとつた音を収録している物品であつて、当該レコードに固定された音の全部又は実質的な部分を収録しているものをいう。
    (d) 「公衆への頒布」とは、レコードの複製物を直接又は間接に一般公衆に提供する行為をいう。

    <
    第二条 〔保護の原則〕
    各締約国は、他の締約国の国民であるレコード製作者を、その者の承諾を得ないで行われる複製物の作成及びその者の承諾を得ないで作成された複製物の輸入(公衆への頒布を目的とする作成又は輸入に限る。)から保護し並びにそれらの複製物の公衆への頒布から保護する。

    第三条 〔保護の手段〕
    この条約を実施するための手段は、各締約国の国内法令の定めるところによるものとし、著作権その他特定の権利の付与による保護、不正競争に関連する法令による保護及び刑罰による保護のうちいずれかのものを含む。

    第四条 〔保護期間〕
    与えられる保護期間は、各締約国の国内法令の定めるところによる。もつとも、国内法令が特定の保護期間を定める場合には、当該保護期間は、レコードに収録されている音が最初に固定された年の終わりから又はレコードが最初に発行された年の終わりから、二十年よりも短くてはならない。

    第五条 〔保護の方式〕
    締約国は、国内法令に基づきレコード製作者の保護の条件として方式の履行を要求する場合において、許諾を得て作成されたレコードの複製物であつて公衆に頒布されたもののすべて又はその容器に最初の発行の年とともに(P)の記号が、保護の求められていることが明らかになるような適当な方法で、表示されているときは、その要求が満たされたものと認める。もつとも、その表示には、当該複製物又はその容器にレコード製作者、その承継人又は排他的な許諾を得た者がその名、商標その他の適当な表示によつて明らかにされていないときは、レコード製作者、その承継人又は排他的な許諾を得た者の名を含める。
    A NAME="06">
    第六条 〔保護の制限、強制許諾〕
    著作権その他特定の権利による保護又は刑罰による保護を与える締約国は、レコード製作者の保護に関し、文学的及び美術的著作物の著作者の保護に関して認められる制限と同一の種類の制限を国内法令により定めることができる。もつとも、強制許諾は、次のすべての条件が満たされない限り、認めることができない。
    (a) 複製が、教育又は学術的研究のための使用のみを目的として行われること。
    (b) 強制許諾に係る許可が、その許可を与えた権限のある機関が属する締約国の領域内で行われる当該複製についてのみ有効であり、かつ、当該複製物の輸出については適用されないこと。
    (c) 強制許諾に係る許可に基づいて行われる複製について、作成される当該複製物の数を特に考慮して(b)の権限のある機関が定める公正な補償金が支払われること。

    第七条 〔実演家の保護、不遡及等〕
    (1) この条約のいかなる規定も、国内法令又は国際協定に基づいて著作者、実演家、レコード製作者又は放送機関に確保される保護を制限し又は害するものと解してはならない。
    (2) レコードにその実演が固定されている実演家が保護を受ける権利を有する場合には、その保護の範囲及びその保護を受けるための条件は、各締約国の国内法令の定めるところによる。
    (3) いずれの締約国も、自国についてこの条約が効力を生ずる前に固定されたレコードについては、この条約を適用することを要しない。
    (4) 千九百七十一年十月二十九日においてレコード製作者に対し最初の固定の場所のみを基礎として保護を与えている締約国は、世界知的所有権機関事務局長に寄託する通告により、レコード製作者の国籍を基準とする代わりに最初の固定の場所を基準とする旨を宣言することができる。

    第八条 〔国際事務局〕
    (1) 世界知的所有権機関国際事務局は、レコードの保護に関する情報を収集し及び公表する。各締約国は、レコードの保護に関するすべての新たな法令及び公文書をできる限り速やかに当該国際事務局に送付する。
    (2) (1)の国際事務局は、いずれの締約国に対しても、その要請に応じ、この条約に関する問題について情報を提供するものとし、この条約に定める保護を促進するため、研究を行い及び役務を提供する。
    (3) (1)の国際事務局は、国際連合教育科学文化機関及び国際労働機関のそれぞれの権限に属する問題については、それらの機関と協力して(1)及び(2)に定める任務を遂行する。

    第九条 〔寄託、批准等〕
    (1) この条約は、国際連合事務総長に寄託する。この条約は、千九百七十二年四月三十日まで、国際連合、国際連合と連携関係を有する専門機関若しくは国際原子力機関の加盟国又は国際司法裁判所規程の当事国による署名のために開放しておく。
    (2) この条約は、署名国によつて批准され又は受諾されなければならない。この条約は、(1)の加盟国又は当事国による加入のために開放しておく。
    (3) 批准書、受諾書又は加入書は、国際連合事務総長に寄託する。
    (4) いずれの国も、この条約に拘束されることとなる時に、国内法令に従いこの条約を実施することができる状態になつていなければならないと了解される。

    第十条 〔留 保〕
    この条約に対するいかなる留保も、認められない。

    第十一条 〔効力の発生〕
    (1) この条約は、五番目の批准書、受諾書又は加入書の寄託の後三箇月で効力を生ずる。
    (2) この条約は、五番目の批准書、受諾書又は加入書の寄託の後に批准し、受諾し又は加入する各国については、世界知的所有権機関事務局長が第十三条(4)の規定に従つて当該国の文書の寄託を各国に通報した日の後三箇月で効力を生ずる。
    (3) いずれの国も、批准、受諾若しくは加入の時に、又はその後いつでも、国際連合事務総長にあてた通告により、自国がその国際関係について責任を有する領域の全部又は一部についてこの条約を適用する旨を宣言することができる。その通告は、それが受領された日の後三箇月で効力を生ずる。
    (4) もつとも、(3)の規定は、いずれかの締約国が(3)の規定に基づいてこの条約を適用する領域の事実上の状態を、他の締約国が承認し又は黙示的に容認することを意味するものと解してはならない。

    第十二条 〔廃 棄〕
    (1) いずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた書面による通告により、自国について又は前条(3)の領域の全部若しくは一部について、この条約を廃棄することができる。
    (2) 廃棄は、国際連合事務総長が(1)の通告を受領した日の後十二箇月で効力を生ずる。

    第十三条 〔署名、通告等〕
    (1) この条約は、ひとしく正文である英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語による本書一通について署名する。
    (2) 世界知的所有権機関事務局長は、関係政府との協議の上、アラビア語、オランダ語、ドイツ語、イタリア語及びポルトガル語による公定訳文を作成する。
    (3) 国際連合事務総長は、世界知的所有権機関事務局長、国際連合教育科学文化機関事務局長及び国際労働機関事務局長に対して次の事項を通告する。
    (a) この条約の署名
    (b) 批准書、受諾書又は加入書の寄託
    (c) この条約の効力発生の日
    (d) 第十一条(3)の規定に従つて通告される宣言
    (e) 廃棄通告の受領
    (4) 世界知的所有権機関事務局長は、第九条(1)の加盟国又は当事国に対し、(3)の規定に基づいて受領した通告及び第七条(4)の規定に基づいて行われた宣言を通報する。同事務局長は、また、当該宣言を国際連合教育科学文化機関事務局長及び国際労働機関事務局長に通告する。
    (5) 国際連合事務総長は、第九条(1)の加盟国又は当事国に対し、この条約の認証謄本二通を送付する。

    以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

    千九百七十一年十月二十九日にジュネーヴで作成した。

    ページの上部へ戻る