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    外国著作権法 ブラジル編

    はしがき

    ブラジル(ブラジル連邦共和国)は、26の州と1つの連邦首都区からなる連邦国家であり、国語はポルトガル語である。

    本書は、ブラジルの「著作権及び著作隣接権に関する1998年2月19日法律第9610号」(著作権法)のポルトガル語の原文をWIPO事務局が英訳したものを日本語訳したものである。同法は、1998年2月19日に制定され、同年6月20日に施行されている。ポルトガル語のタイトルは”Lei N° 9.610, de 19 de FeⅤereiro de 1998—Altera, atualiza e consolida a legislação sobre direitos autorais e dá outras proⅥdências”である。

    著作権法は、著作権制度の規律において中心となる法であるが、その他、ブラジルでは古くから憲法にも著作権保護に関する規定が置かれている。1988年に発効した現行のブラジル共和国憲法においても、例えば、第Ⅱ編基本的権利及び保障・第1章個人と集団の権利と義務・第5条27号で、著作物を利用、発行、複製する排他的権利を著作者が有する旨定めており、同28号⒜は集合著作物に関与した個人の保障について規定する。また、刑法(1940年12月7日連邦令第2848号)には、著作権侵害罪に関する規定が置かれており、刑事訴訟法(1941年10月3日連邦令第3689号)には、無体財産に関する犯罪の裁判についての特別な規定が設けられている。

    ブラジルにおいて著作権法が単独の法律として制定されたのは、1898年(1898年8月1日法律第496号)である。一方、民法にも著作権保護に関する規定がみられ、その後、関連する法律が複数制定されるに至った。こうした状況を受けて、1973年に著作権法の改正がなされた(1973年12月14日法律第5988号)。本書で翻訳した著作権法は、この1973年著作権法に代わるものとして制定されたものである。また、1987年にはコンピュータプログラムの保護や販売に関して規定するソフトウェア法(1987年12月18日法律第7646号)が制定されているが、同法も著作権法の改正と時を同じくして、ソフトウェア法(1998年2月19日法律第9609号)によって全面改正されている。なお、著作物の登録等については引き続き1973年著作権法の規定が適用されることが著作権法第19条及び第21条に定められており、コンピュータプログラムについてはソフトウェア法の適用も受けることが第7条⑴項に規定されている。

    平成27年2月 横山眞司

    目次

    1. 第Ⅰ章 導入規定(第1条~第6条)
    2. 第Ⅱ章 知的著作物
      1. 第Ⅰ節 保護される著作物(第7条~第10条)
      2. 第Ⅱ節 知的著作物の著作者の地位(第11条~第17条)
      3. 第Ⅲ節 知的著作物の登録(第18条~第21条)
    3. 第Ⅲ章 著作者の権利
      1. 第Ⅰ節 導入規定(第22条~第23条)
      2. 第Ⅱ節 著作者の人格権(第24条~第27条)
      3. 第Ⅲ節 著作者の財産権及びその期間(第28条~第45条)
      4. 第Ⅳ節 著作権の制限(第46条~第48条)
      5. 第Ⅴ節 著作者の権利の移転(第49条~第52条)
    4. 第Ⅳ章 知的著作物及びレコードの利用
      1. 第Ⅰ節 出版(第53条~第67条)
      2. 第Ⅱ節 公衆への伝達(第68条~第76条)
      3. 第Ⅲ節 立体的芸術の著作物の利用(第77条~第78条)
      4. 第Ⅳ節 写真の著作物の利用(第79条)
      5. 第Ⅴ節 レコードの利用(第80条)
      6. 第Ⅵ節 視聴覚的著作物の利用(第81条~第86条)
      7. 第Ⅶ節 データベースの利用(第87条)
      8. 第Ⅷ節 集合著作物の利用(第88条)
    5. 第Ⅴ章 著作隣接権
      1. 第Ⅰ節 導入規定(第89条)
      2. 第Ⅱ節 実演家の権利(第90条~第92条)
      3. 第Ⅲ節 レコード製作者の権利(第93条~第94条)
      4. 第Ⅳ節 放送機関の権利(第95条)
      5. 第Ⅴ節 著作隣接権の期間(第96条)
    6. 第Ⅵ章 著作者の権利及び著作隣接権の権利者の協会(第97条~第100条)
    7. 第Ⅶ章 著作権侵害に対する制裁
      1. 第Ⅰ節 導入規定(第101条)
      2. 第Ⅱ節 民事上の制裁(第102条~第110条)
      3. 第Ⅲ節 出訴期限(第111条)
    8. 第Ⅷ章 最終規定及び経過規定(第112条~第115条)

    第Ⅰ章 導入規定

    第1条

    この法律は著作権を規律し、著作権の用語には著作者の権利及び著作隣接権を含む。

    第2条

    国外に居住する外国人は、ブラジルで効力を有する協定、条約及び協約に規定される保護を享受する。

    単独項 この法律の規定は、著作権又は同等の権利の保護においてブラジル人又はブラジルの居住者に相互主義を保障する国の国民及び居住者に適用される。

    第3条

    著作権はこの法律の目的のために動産とみなされる。

    第4条

    著作権に関連する法律行為は限定的に解釈される。

    第5条

    この法律の目的において、

    1. 「発行」とは、形式や方式を問わず、著作者又は他の著作権者の同意を得て、文学的、美術的又は科学的著作物を公衆に告知することをいう;
    2. 「送信」又は「送出」とは、無線波又は衛星信号の方法、有線、ケーブル又は他の伝導体、光学的方法又は他の電磁的手段による、音又は音と影像の伝播をいう;
    3. 「再送信」とは、ある機関の送信の他の機関による同時送出をいう;
    4. 「頒布」とは、文学的、美術的又は科学的著作物の原作品又はコピー、固定された実演及びレコードを、販売、貸与又は所有権若しくは占有のその他の移転により、公衆に利用可能にすることをいう;
    5. 「公衆への伝達」とは、コピーの頒布によらない方法や手段により公衆が著作物にアクセスできるようにする行為をいう;
    6. 「複製」とは、電気的方法又は将来考案されるであろうその他の固定の方法による一時的又は永続的な保管を含め、文学的、美術的若しくは科学的著作物又はレコードの有形的な形式での一つ以上のコピーを作成することをいう;
    7. 「侵害」とは、無許諾の複製をいう;
    8. 「著作物」:
      1. 「共同著作物」とは、二人以上の著作者により共同で創作された著作物をいう;
      2. 「無名著作物」とは、著作者の意思又は著作者不明により、著作者名が示されていない著作物をいう;
      3. 「変名著作物」とは、著作者が変名の陰にその身元を秘匿する著作物をいう;
      4. 「未発行著作物」とは、発行されていない著作物をいう;
      5. 「死後著作物」とは、著作者の死後に発行された著作物をいう;
      6. 「原作品」とは、最初の創作物をいう;
      7. 「派生著作物」とは、新しい知的創作物を構成すると同時に、原作品の変形の結果をいう;
      8. 「集合著作物」とは、自然人か法人かを問わず、その名義又は標章において発行する者の発意、指示及び責任の下で創作され、二人以上の著作者による寄与で構成され一つに統合された著作物をいう;
      9. 「視聴覚的著作物」とは、収録に用いる方法又は当初若しくはその後の固定に用いる媒体又は著作物の伝播に用いる手段にかかわらず、その複製物を通じて、動的印象を与えることを目的とした、音を伴い又は伴わない影像の固定の結果による著作物をいう;
    9. 「レコード」とは、実演の音その他の音又は音を表すものの固定物(視聴覚的著作物に組み込まれて固定されたものを除く)をいう;
    10. 「出版者」とは、自然人か法人かを問わず、著作物を複製する排他的権利を許可され、出版契約で設定された制限内でその公表の義務を負う者をいう;
    11. 「製作者」とは、自然人か法人かを問わず、使用される媒体の性質に関わりなく、レコード又は視聴覚的著作物の最初の固定に対し発意と財政上の責任を負う者をいう;
    12. 「放送」とは、公衆による受信を目的とする音若しくは音と影像又はそれらの表現物の衛星送信を含む無線送信をいい、暗号化された信号の送信は、暗号解除の手段が放送機関により又はその同意を得て公衆に供給される場合には、「放送」である;
    13. 「実演家」とは、全ての俳優、歌手、演奏家、舞踊家及びその他文学的若しくは美術的著作物又は民間伝承の表現を上演し、歌唱し、朗読し、朗詠し、演出し、又は別の方法により実演する者をいう。
    第6条

    連邦、州、連邦区又は地方自治体が単に助成するに過ぎない著作物は、それらに帰属することにはならない。

    第Ⅱ章 知的著作物

    第Ⅰ節 保護される著作物
    第7条

    保護される知的著作物は、固定されているその表現の様式又は媒体が、有形か無形か、既知か将来発明されるものかを問わず、精神的創作であり、例えば:

    1. 文学的、美術的又は科学的著作物の文章;
    2. 講演、演説、説教及びその他同種の著作物;
    3. 演劇用及び楽劇用の著作物;
    4. 上演が書面その他の方法で記述された舞踊及び身振りの著作物;
    5. 歌詞を伴い又は伴わない楽曲;
    6. 音を伴い又は伴わない、映画の著作物を含む視聴覚的著作物;
    7. 写真の著作物及びその他写真と類似した方法で作成された著作物;
    8. 素描、絵画、彫刻、彫像、石版及びキネティックアートの著作物;
    9. 図版、地図及びその他同種の著作物;
    10. 地理学、工学、地形学、建築学、公園及び庭園の設計、舞台背景及び科学に関連する、設計図面、実物模型及び立体的著作物;
    11. 新たな知的創作物として示される、原著作物の翻案物、翻訳物及びその他の変形物;
    12. コンピュータプログラム;
    13. 収集物又は編集物、選集、百科事典、辞書、データベース、及び対象物の選択、調整又は配列の効果により知的創作物を構成するその他の著作物。
      1. コンピュータプログラムは、それらに適用されるこの法律の規定の正当な配慮のもと、特別規定の対象となる。
      2. 号により与えられる保護は、情報や資料それ自体に及ぶものではなく、著作物に収録されたデータや要素の著作権を害するものではないと解釈される。
      3. 科学の分野では、保護は、その著作物の文学的又は美術的形態に関して与えられ、その科学的又は技術的な内容物に及ぶものではなく、他の規定の効力により無体財産に与えられるいかなる権利も害するものではない。
    第8条

    次の事項はこの法律の範囲での著作権の保護から除外される:

    1. 思想、規範的手順、体系、方法又は数学的課題や発想それ自体;
    2. 精神的活動行為、競技、ビジネス活動のためのダイアグラム、計画や規則;
    3. あらゆる種類の科学的又は他の情報の完成を目的とする書式及びそこに現れている指示;
    4. 条約や協定、法律、政令、規則、司法判断及びその他公的な規定の文;
    5. 暦、日誌、登記簿又は伝説などに含まれる共通で利用する情報;
    6. 名前や題名それ自体;
    7. 著作物に具現されたアイデアの産業的又は商業的利用。
    第9条

    立体的著作物の創作者により作成された当該著作物のコピーは、原作品と同一の保護を享受する。

    第10条

    知的著作物の保護は、それがオリジナルであり他の著作者によって先に発表された同じ性質の著作物と混同されそうにないことを条件に、その題号に及ぶ。

    単独項 新聞を含む定期刊行物の題号は、その最後の発行から1年間保護される。但し、年刊発行物の場合その期間は2年になる。

    第Ⅱ節 知的著作物の著作者の地位
    第11条

    文学的、美術的又は科学的著作物の著作者は、それを創作した自然人である。

    単独項 著作者に与えられる保護は、この法律により規定される場合は法人に与えられる。

    第12条

    文学的、美術的又は科学的著作物の創作者は、完全若しくは頭文字だけであってもその短縮形での市民の身元又は変名若しくはその他の慣習的な記号を用いることにより著作者として特定される。

    第13条

    反対の証拠がない限り、知的著作物の利用に際し、前条に規定する身元確認の手段の一つによって慣習的な方法で著作者であることが示され又は表わされた者は、その著作物の著作者とみなされる。

    第14条

    公有に帰した著作物を翻案し翻訳しアレンジ又は編曲した者は、著作権を付与される。但し、その者は、自らの著作物のコピーを含んでいない限り、その他のどのような翻案、アレンジ、編曲又は翻訳にも反対できない。

    第15条

    著作物の共同著作者の地位は、その氏名、変名又は慣習的な記号が当該著作物に用いられている者に帰属する。

    1. 文学的、美術的又は科学的著作物の制作において、その校閲若しくは更新により又は形式を問わずその出版や公開の管理若しくは指示により、著作者を単に補助するに過ぎない者は、共同著作者にはならない。
    2. その寄与分が分離して利用できる共同著作者は、全体の著作物の利用を害するようないかなる利用も行われない限り、その創作について個人の著作物として固有の権能を享受する。
    第16条

    視聴覚的著作物の共同著作者は、シナリオ又は文学、音楽又は楽劇用の対象物の著作者及びその演出家である。

    単独項 漫画映画で用いられる線画を創作する者もまた視聴覚的著作物の共同著作者となる。

    第17条

    集合著作物への各々の寄与は、保護を受ける。

    1. 全ての寄与者は、契約により明示された報酬を受ける権利を害することなく、集合著作物に関して氏名の記載や表示を禁止する人格権を行使することができる。
    2. 集合著作物の財産権は全体として統括者に帰属する。
    3. 統括者と締結される契約には、各参加者の寄与度、当該寄与の供給や作成に要する時間、報酬及びその実施に関するその他の条件を明示しなければならない。
    第Ⅲ節 知的著作物の登録
    第18条

    この法律に規定する権利の保護は登録に依らない。

    第19条

    著作者は、1973年12月14日法律第5988号序文及び第17条⑴項に定めらる公共団体に著作物を登録することができる。

    第20条

    この法律に規定する登録の事業は、知的著作物の登録を委託された連邦政府の機関の長官が指定する額及び請求手続きによる手数料の支払いの対象となる。

    第21条

    この法律に規定する登録の事業は、1973年12月14日法律第5988号第17条⑵項の規定に従って統制される。

    第Ⅲ章 著作者の権利

    第Ⅰ節 導入規定
    第22条

    著作物の人格権及び財産権はその創作者に帰属する。

    第23条

    反対の合意がない限り、知的著作物の共同著作者は、その権利を合意により行使するものとする。

    第Ⅱ節 著作者の人格権
    第24条

    著作者の人格権とは、以下の権利をいう:

    1. 何時でもその著作物の著作者たることを主張すること;
    2. 著作物の利用に際しその著作者として、氏名、変名又は慣習的な記号を表出又は告知させること;
    3. 著作物の未発行を保持すること;
    4. 方法を問わず、著作物に悪影響を及ぼしそうな又は著作者としての声望若しくは名誉を害しそうなあらゆる改変や行為に反対することによって、著作物の同一性を確保すること;
    5. 利用の前後を問わず、著作物を修正すること;
    6. 著作物の流通又は利用が著作者の声望又は印象に悪影響をもたらしそうな場合、著作物を流通から回収すること又は既に許諾されたあらゆる種類の利用を停止すること;
    7. 写真や類似又は視聴覚的手段の方法によってそれらの記録を保存する観点から、第三者が適法に所有する著作物の単一又は希少なコピーを利用すること。但し、その所有者に生じる不便が可能な限り最少となる仕方でなされなければならず、所有者が被るいかなる損害や不利益も賠償されるものとする。
      1. 著作者の死亡に際し、I号からⅣ号に言及する権利は承継者に移転される。
      2. 国は、公有に帰した著作物の同一性及び著作者たることを守る義務を負う。
      3. Ⅴ号及びⅥ号に規定する場合について、第三者は必要に応じて事前の免責の承諾を得ることができる。
    第25条

    演出家は視聴覚的著作物の人格権を行使できる。

    第26条

    著作者は、建築の過程で又は建築工事が完了した後に、同意なく変更された建築の著作物の著作者たることを拒否することができる。

    単独項 建築物の所有者は、前述の拒否の後において、当該所有者が当の事業をその著作者によるものとすることができる場合、著作者に発生した損害に責任を負わなくてはならない。

    第27条

    人格権は譲渡及び変更不能である。

    第Ⅲ節 著作者の財産権及びその期間
    第28条

    著作者は、文学的、美術的又は科学的著作物を利用すること、そこから利益を得ること、それを処分することの排他的権利を有する。

    第29条

    文学的、美術的又は科学的著作物の著作者の明確な事前の許諾は、全ての種類の利用に要求される、例えば

    1. 全部又は部分的な複製;
    2. 出版;
    3. 翻案、節付け又はその他の変形;
    4. あらゆる言語への翻訳;
    5. レコード又は視聴覚作品への結合;
    6. 著作物の利用又は活用に関し著作者により署名された第三者との契約に定められていない頒布;
    7. 利用者の側に支払いが要求されるシステムを通じて著作物や作品へのアクセスが実現され、利用者が著作物や作品を選び、選択した時間と場所でそれを受信することができるようにする有線、光ファイバー、衛星、電磁波又はその他の方式による著作物又は作品の提供を目的とした頒布;
    8. 以下の形式による、文学的、美術的又は科学的著作物の直接または間接の利用:
      1. 実演、朗読、朗詠;
      2. 演奏;
      3. 拡声器や類似の方式の利用;
      4. ラジオ又はテレビ放送;
      5. 公衆が集まる場所でのラジオ放送の受信;
      6. 背景音楽としての供給;
      7. 視聴覚作品、映画又は同等物の上映;
      8. 人工衛星の利用;
      9. 光学システム、電話やその他の回線、全ての種類のケーブル及び将来考案される類似の通信手段の利用;
      10. 立体的著作物及び造形美術の著作物の展示;
    9. データベースへの取り込み、コンピュータへの保存、マイクロフィルム化及びその種のその他の手段による保管;
    10. 既存又は将来考案されるその他の利用の形式。
    第30条

    複製の権利の行使に際し、著作権者は、形式や場所、適切と考える時期を問わず、有償又は無料で、著作物を公衆に利用可能にすることができる。

    1. その複製が、一時的で電子的媒体の手段により知覚できる著作物、レコード若しくは実演の作成が唯一の目的である場合又は著作権者により正当に許諾されている著作物の利用の過程で行われる一時的若しくは付随的なものである場合、複製の排他的権利は適用されない。
    2. 複製の方法にかかわらず、作成されたコピーの数は届出し検査を受けなければならず、著作物を複製する者は、著作者が、利用から生じた経済的利益を確認することができる記録を保存する責任を負う。
    第31条

    文学的、美術的又は科学的著作物やレコードの個々の利用の形式は、相互に独立し、著作者や製作者からであっても、それ以外の場合であっても、許諾された個々の利用に対する許諾は、他の利用の許諾を意味しない。

    第32条

    共同著作物が不可分な場合には、共同著作者の誰しも、他者の同意なくして、その発行又はその発行を許諾することができない。但し、損失や損害に対する責任の下で、著作者の著作物の作品集の場合を除く。

    1. 共同著作者の意見が不一致のときは、多数決により決意する。
    2. 異議のある共同著作者は、収益の分配を放棄するという了解のもと、発行の費用を分担しない権利及び著作物に名を付されることを拒絶する権利を保持する。
    3. それぞれの共同著作者は、単独でかつ他者の同意なく、著作物を登録し、第三者に対して自己の権利を主張することができる。
    第33条

    公有に帰していない著作物は、著作者の同意なく、その注釈、そのコメント又はその改良を理由に複製することはできない。

    単独項 コメント又は注釈は別個に発行できる。

    第34条

    発行が著作者の同意に基づくという書状は、行政又は法的手続きに際し証拠書面として提出することができる。

    第35条

    著作者がその著作物の改訂の過程で最終版を出している場合、承継者は以前の版を複製することはできない。

    第36条

    別段の合意がない限り、日刊又は定期刊行物で発行された原稿を利用する権利は出版者に帰属する。但し、署名記事及び権利留保の告知があるものを除く。

    単独項 日刊及び定期刊行物での発行を目的とした署名記事の利用の許諾は、発行日から計算して20日を加増した発行間隔に相当する期間の満了により失効し、その後は著作者が権利を取得する。

    第37条

    当事者間の別段の合意及びこの法律で規定する場合を除いて、著作物の原作品又はコピーの入手により、当該入手者はいかなる著作者の財産権も取得するものではない。

    第38条

    著作者は、処分した芸術作品のオリジナルについて、再販売ごとに得られるであろう価値の増加の最低5パーセントを徴収する、変更できず譲渡できない権利を有する。

    単独項 著作者が再販売に際し再販売印税を徴収する場合、売り主は著作者への支払総額の保管者とみなされる。但し、競売者により業務が運営され、その者が保管者とみなされる場合を除く。

    第39条

    婚姻契約書に別段の定めがない限り、著作者の財産権は、その利用による収入を除いて、著作者の財産に留保される。

    第40条

    無名又は変名の著作物においては、著作者の財産権は、それを発行する者が行使する。

    単独項 著作者が身元を明らかにした場合、第三者によって取得された権利に従うことを条件として、著作者は当然に財産権を行使できる。

    第41条

    著作者の財産権は、民法の承継順に従い、死亡の翌年の1月1日から70年間保護される。

    単独項 この条の前文に言及した保護の期間は著作者の死後に発行された著作物に適用する。

    第42条

    文学的、美術的又は科学的著作物の共同著作物が分割できない場合、前条に規定する保護の期間は、最後の生存共同著作者の死亡から起算する。

    単独項 相続人なくして死亡した共同著作者の権利は、生存者の権利に付加される。

    第43条

    無名又は変名の著作物の財産権の保護期間は、最初の発行の翌年の1月1日から起算して70年である。

    単独項 第41条及びその単独項の規定は、この条の前文に言及する期間の満了の前に著作者が身元を明らかにした場合に適用する。

    第44条

    視聴覚的著作物及び写真の著作物の財産権は、それらが公表された翌年の1月1日から70年間保護される。

    第45条

    財産権の保護が満了した著作物に加えて、以下は公有に帰する:

    1. 相続人なくして著作者が死亡した著作物;
    2. 民族および伝統の伝承の法的保護を条件に、著作者不明の著作物;
    第Ⅳ節 著作権の制限
    第46条

    以下については著作権の侵害とはならない:

    1. 複製
      1. 著作者名(署名されている場合)及び取得元の発行物の名称の記載とともに、新聞又は雑誌からのニュースや情報記事の日刊又は定期刊行物への;
      2. いかなる種類の公の集会でなされた演説の新聞又は雑誌への;
      3. 嘱託された対象物の持ち主によって複製がなされ、描写された者又はその相続人がそれに異議を唱えない場合、嘱託により作成された肖像画又は他の形式の同様の表現の;
      4. 複製が営利を目的とせずに行われることを条件に、点字又は視覚障害のために設計された媒体を用いる他の方法により、視覚障害者に限定した利用における文学的、美術的又は科学的著作物の;
    2. コピーをする者の私的な使用での、著作物からの短い抽出のコピーによる複製。但し、営利を目的とせず使用者自身により行われるものとする;
    3. 研究、批評又は討議を目的とした、目的上正当な限度での、本、新聞、雑誌又は他の伝達媒体における著作物の一節の引用。但し、著作者名が表示され引用の出所が示されるものとする;
    4. 教育施設の中で提供される授業の過程において授業を受ける者が取る記録。但し、授業を行う者の明確な事前の許諾なく、その全部又は一部の発行が禁止されることを条件とする;
    5. 顧客へのデモンストレーションを唯一の目的とした、商業施設での文学的、美術的又は科学的著作物、レコード及びラジオ及びテレビ放送の利用。但し、当該施設がそれらのそうした利用を可能とする材料や装置を販売することを条件とする;
    6. 収益の目的なく、家庭内又は教育機関での教授の目的でのみ行われる上演や演奏;
    7. 裁判上の証拠又は行政上の手続きとしての文学的、美術的又は科学的著作物の利用;
    8. その性質にかかわらず既存の著作物からの短い抜粋での、又は立体的芸術の著作物の場合は著作物の全体についての著作物の複製。但し、複製物それ自体が新しい著作物の主要な主題ではなく、複製される著作物の通常の利用を脅かさず又は著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする。
    第47条

    元の著作物の事実上の複製ではなく、いかなる面においてもそれを傷つけない場合、言い換えやパロディは自由である。

    第48条

    公共の場所に恒久的に設置された著作物は、絵画、素描、写真及び視聴覚的方法により自由に描写できる。

    第Ⅴ節 著作者の権利の移転
    第49条

    著作者の権利は、許可、容認、譲渡や法律により認められる他の手段によって、個人又は特別な権能を有する代表者を通じて一般的又は個別的になされる移転において、著作者又はその承継者により全部又は一部を第三者に移転できるが、以下に掲げる制限に従う:

    1. 人格権及び法により明確に除外される権利を除いて、全部の移転は著作者の全ての権利を含む;
    2. 権利の全部かつ最終的な譲渡は、契約条項によってのみ成立する;
    3. 書面化された契約の条項に記載がない場合、移転の最長期間は5年とする;
    4. 反対の明示がない限り、譲渡は契約が署名された国においてのみ有効とする;
    5. 譲渡は、契約の日に存在した利用方法についてのみ有効とする;
    6. 利用の方法に関する規定がない場合、契約は制限的に解釈され、契約の目的の履行に必要な利用方法に限定されるものと解される。
    第50条

    著作者の権利の全部又は部分的な譲渡は、常に書面によることを要し、有償と推定される。

    1. 譲渡は、この法律の第19条に言及する登録に付随する記録として載録できる。また、著作物が登録されていない場合は、譲渡の証書は、「証書登記所」に載録できる。
    2. 権利の目的物及び、期間、場所及び金額に関する行使の方法は、譲渡の書面の必須要素である。
    第51条

    将来の著作物の著作者の権利の譲渡期間は5年を超えることはできない。

    単独項 上述の期間が明示されないか5年を超過する場合、その期間に減ずるものとし、また、与えられる報酬は、必要な場合にはそれに応じて減額できる。

    第52条

    著作物の発表に際しての著作者又は共同著作者の氏名の省略は、無名であることや関係者への権利の譲渡の推定を意味しない。

    第Ⅳ章 知的著作物及びレコードの利用

    第Ⅰ節 出版
    第53条

    出版者は出版契約の下で、文学的、美術的又は科学的著作物を複製すること及び頒布することの引き受けにより、著作者との合意条件及び期間において、発行及びそれを利用することの排他的権利を取得する。

    単独項 出版者は著作物のそれぞれのコピーに以下を記載しなければならない

    1. 著作物の題号及びその著作者名;
    2. 翻訳の場合、著作物の元の題号及び翻訳者の氏名;
    3. 発行年;
    4. 出版者の名称又は識別標章;
    第54条

    同じ契約の下において、著作者は、その発行と頒布が出版者の義務となる文学的、美術的又は科学的著作物の創作を引き受けることができる。

    第55条

    著作者が著作物の完成前に死亡するか、それを完成することができなくなった場合、出版者は:

    1. 著作物の実質的な部分の受領後においても、その契約は終了したものとみなすことができる;
    2. 必要物が自己充足している場合、報酬の相当部分の支払いと引き換えに、著作物を出版することができる;
    3. 著作者の承継者の同意及び出版物へのその事実の記載を条件として、他の者により著作物を完成させることができる。

    単独項 著作者が、完全な形でのみ著作物を発行する要望を明言していたか、承継者がそのように決断した場合、部分的な発行は禁止される。

    第56条

    契約は一つの版に関するものと推定される。但し、明示的に別段の定めをした場合を除く。

    単独項 契約で言及されていない場合、版は全て3000部とみなされる。

    第57条

    著作者が契約により明示的に定めていない場合、報酬の額は、慣行に従うものとする。

    第58条

    引き渡された原稿が合意された条件と一致せず、出版者がそれを受領した日から30日以内に拒絶しない場合、著作者による変更は受け入れられたものと推定される。

    第59条

    契約の条件を問わず、出版者は、帳簿類の関連する部分を検査することを著作者に認め、また版の発行状況を通知する義務を負う。

    第60条

    出版者は売価を設定する責任があるが、その著作物の頒布を妨げるような引き上げはできない。

    第61条

    著作者の報酬が著作物の売上高によって決まる場合、出版者は著作者に毎月計算書を提出しなければならない。但し、異なる頻度で合意されている場合を除く。

    第62条

    著作物は、契約の締結から2年間出版しなければならない。但し、異なる期間が明示されている場合を除く。

    単独項 法定又は合意した期間内に著作物が出版されない場合、契約は無効にすることができ、出版者は生じた損害の責めを負うものとする。

    第63条

    出版者が委任された版が絶版でない間は、著作者はその著作物を処分できない。その場合の立証の責任は出版者にある。

    1. 出版契約の期間を通じて、出版者は他者によって生産された同一著作物のいかなる版についても流通からの回収を要求する権限を有する。
    2. 出版者の在庫のコピーの数がその版のコピー数の総数の10パーセント以下になった場合、版は絶版とみなされる。
    第64条

    版が市場に置かれて1年が経過した後に限り、値下げ価格で当該コピーを取得する優先権を30日間持つことを著作者に通知した後、出版者は残りのコピーを特価で処分できる。

    第65条

    版が絶版で、出版する権利を有する出版者がそれを実行しないとき、著作者は出版者に一定期間内にそれを行うこと、損害賠償に影響を与えずに出版者の権利を剥奪することの公式の通知を送達することができる。

    第66条

    著作者は、後続の版において、著作者が適当と考える著作物の訂正や修正を行う権利を有する。

    単独項 出版者は、その利益を害し、評判を損ない又は責任が増す修正に反対できる。

    第67条

    著作物の性質により、新しい版に更新することが不可欠な場合、著作者がそれを拒否したとき、出版者は他の者にそれを委託できる。但し、その事実が版の中で言及されることを条件とする。

    第Ⅱ節 公衆への伝達
    第68条

    演劇の著作物、歌詞を伴い又は伴わない楽曲及びレコードは、著作者又は権利者の明白な事前の許諾なく、公の上演又は演奏により利用することはできない。

    1. 「公の上演」とは、音楽伴奏を伴っても伴わなくても、実演家に報酬が支払われても支払われなくても、公衆が出入りする場所又は放送又は他の送信方法又は映画の上映での、ドラマ、悲劇、喜劇、歌劇、喜歌劇、舞踊劇、芝居あるいは他の類似する形式の範疇における演劇の著作物の利用をいう。
    2. 「公の実演」とは、実演家に報酬が支払われても支払われなくても、音楽若しくは楽劇用の作品の利用、又は公衆が出入りする場所での、放送若しくは他の種類の送信若しくは映画の上映を含む何らかの手段の過程によるレコードの利用及び視聴覚的著作物の利用をいう。
    3. 「公衆の出入りする場所」の語句は、劇場、映画館、ダンスホールやコンサートホール、ディスコ、バー、クラブやあらゆる種類の社交場、店、商業的及び産業的施設、運動場、曲芸場、見本市、レストラン、ホテル、モーテル、療養施設、病院、直接若しくは間接の管理及び財団及び国の制御下にある公共団体、陸、海、川若しくは空の旅客運送の手段、又は、文学的、美術的又は科学的著作物が提示、実演若しくは送信されるあらゆる場所をいう。
    4. 公の実演の前に、興行の主催者は、著作権使用料の支払証明を第99条に定める中央本部に提出するものとする。
    5. 報酬が一般の観客数により確定される場合、興行の主催者は、公の実演が行われた後に支払うことを中央本部と合意できる。
    6. 興行の主催者は、それぞれの公の実演又は送信の後ただちに、中央本部に、著作者、実演家及び製作者の氏名を含め、使用した著作物及びレコードの全ての一覧を提出するものとする。
    7. 映画製作会社及び放送機関は、その番組や視聴覚的著作物に収録された音楽の著作物及びレコードの公の実演についての報酬の許諾及び管理に関する契約、協定や合意の真正なコピーを、個別契約か団体契約かを問わず、利害関係者が自由に使えるように保管するものとする。
    第69条

    著作者は、事前の協定に明記されていない限り、慣行に従って、興行の主催者に対し上演や演奏の期間を定めるものとする。

    第70条

    著作者は、十分に稽古されていない実演に反対する権利及び興行に随伴する権利を有し、その目的のために、その実演の間、それらが行われている構内に自由に立ち入ることができる。

    第71条

    著作物の著作者は、その著作物が実演されるようにする興行主催者の同意なく、その実質を変更することはできない。

    第72条

    興行の主催者は、著作者の許諾なく、実演と関係を持たない者に著作物を伝達することはできない。

    第73条

    著作者と製作者との合意により選ばれた、主要な実演家及びオーケストラの指揮者又は合唱隊長は、著作者の同意なく製作者が交代させることはできない。

    第74条

    演劇の著作物の翻訳及び翻案を許諾した著作者は、それを公の実演で利用する期間制限を設けることができる。

    単独項 この条で言及する期間制限の満了後、翻訳者又は翻案者は、別に許諾された翻訳物又は翻案物の利用に反対するこはできない。但し、それが自身の著作物のコピーである場合を除く。

    第75条

    共同事業としてプロデュースされた演劇の著作物の実演が許諾された場合、どの共同著作者も、契約で合意した劇場公演の中止の原因となるような許諾の撤回をすることはできない。

    第76条

    著作者及び実演家に留保される分の興行収益は差押えできない。

    第Ⅲ節 立体的芸術の著作物の利用
    第77条

    別段の合意がない限り、立体的芸術の著作物の著作者は、その表現物を譲渡する際、その取得者にそれを展示するための権利を移転するが、それを複製する権利は移転しない。

    第78条

    どのような形であろうと立体的芸術の複製の許諾は、書面でなされなければならず、有償で許諾されたものと推定される。

    第Ⅳ節 写真の著作物の利用
    第79条

    写真の著作物の著作者は、肖像写真の展示、複製、販売の適切な制限とともに、保護される立体的芸術の著作物の場合は撮影される著作物の著作者の権利を害することなく、それを複製し、その販売の申し出をする権利を有する。

    1. 写真が第三者によって利用される場合、その著作者の氏名が明瞭に記載されなければならない。
    2. 原作品に完全に忠実でない写真の著作物の複製は、事前に著作者によって許諾されない限り禁止される。
    第Ⅴ節 レコードの利用
    第80条

    レコードの発行に際し、製作者は各コピーに以下を記載しなければならない

    1. レコードに収録された著作物の題号及びその著作者の氏名;
    2. 実演家の氏名又は変名;
    3. 発行年;
    4. 製作者の名称又は識別標章。
    第Ⅵ節 視聴覚的著作物の利用
    第81条

    文学的、美術的又は科学的著作物の著作者及び実演家から与えられた視聴覚的著作物の制作についての許諾は、別段の定めがない限り、その商業利用の許諾を構成する。

    1. 許諾の排他的性質は、明確な条項で記載されなければならず、その契約締結後10年で満了する。
    2. 製作者は視聴覚的著作物のそれぞれのコピーに以下を記載しなければならない
      1. 視聴覚的著作物の題号;
      2. 演出家や他の共同著作者の氏名又は変名;
      3. 必要に応じて、翻案された著作物の題号及びその著作者の氏名;
      4. 実演家の氏名;
      5. 発行年;
      6. 製作者の名称又は識別標章。
    第82条

    視聴覚的作品の製作契約には以下を明示しなければならない

    1. 製作者から共同著作者及び実演家に支払われるべき報酬及び支払の日、場所及び方法;
    2. 著作物の完成に充てられる期間;
    3. 共同制作の場合に、共同著作者及び実演家に対する製作者の責任。
    第83条

    視聴覚的著作物の制作に参加しその寄与を一時的に中断したり最終的に取り止める者は、その寄与が著作物の中で利用されること又は第三者に交代することに反対できない。但し、既に完成した部分に関してその者に帰属する権利を害してはならない。

    第84条

    視聴覚的著作物の共同著作者の報酬がその商業利用の収益により決定されるときは、製作者は6か月ごとに共同著作者に計算書を提出しなければならない。但し、別の間隔で合意されている場合を除く。

    第85条

    別段の定めがない限り、視聴覚的著作物の共同著作者は、個人の寄与で構成する著作物の該当部分を異なる形式で利用することができる。

    単独項 製作者が合意期間内に視聴覚的著作物を完成できないとき又はその完成から2年以内にその利用を開始できないときは、この条に言及する利用は自由に行える。

    第86条

    視聴覚的著作物に収録された音楽及び楽劇用の著作物及びレコードの使用料は、この法律の第68条⑶項に規定する構内又は施設におけるそれらの公開に責任のある者又はそれらを放送するテレビ機関によって、対応する権利の保有者に支払われなければならない。

    第Ⅶ節 データベースの利用
    第87条

    データベースの財産権者は、そのデータベースの構造の表現形式に関連する、以下のことを許諾又は禁止する排他的権利を享有する:

    1. 方法や手段を問わず、全部又は部分的な複製;
    2. 翻訳、翻案、再配列及びその他の修正;
    3. データベースのオリジナル又はコピーの頒布、又はデータベースの公衆への伝達;
    4. この条のII号に言及する作業の結果物の複製、頒布又は公衆への伝達;
    第Ⅷ節 集合著作物の利用
    第88条

    集合著作物の発行に際し、統括者はそれぞれのコピーに以下を記載しなければならない

    1. 著作物の題号;
    2. すべての参加者のアルファベット順の一覧。但し、他の順序で合意されている場合を除く;
    3. 発行年;
    4. 統括者の氏名又は識別標章。

    単独項 第17条⑴項の規定の行使を望む参加者は、寄与を提供する日までに書面により適宜統括者に勧告しなければならない。

    第Ⅴ章 著作隣接権

    第Ⅰ節 導入規定
    第89条

    著作者の権利の規定は、実演家、レコード製作者及び放送機関の権利に準用する。

    単独項 この条に規定する権利のこの法律による保護は、文学的、美術的又は科学的著作物の著作者に与えられている保障に変更を加えるものではなく、いかなる影響も及ぼすものではない。

    第Ⅱ節 実演家の権利
    第90条

    実演家は、有償又は無料で許諾し又は禁止する以下の排他的権利を享有する

    1. 実演の固定;
    2. 固定された実演の複製、公の実演及び貸与;
    3. 固定又は固定されていない実演の放送;
    4. 何人であれ、公衆のそれぞれが選択した時期及び場所において利用が可能となるような状態に実演を置くこと;
    5. 実演のその他の形態による利用。
      1. 二人以上の実演家が実演に参加した場合、その権利はグループのリーダーによって行使される。
      2. 実演家の保護は、その実演に伴う音声及び肖像の複製に及ぶ。
    第91条

    放送機関は、一定数の放送で利用するための固定を許諾した実演家の実演を固定することができる;そうした方法で作成した固定物は公的保管所に保存される。

    単独項 ブラジル又は国外での固定物のその後の再利用は、番組の中で具現された知的財産権者の書面の許諾によってのみ適法とされ、新たな利用ごとに権利者に追加報酬が支払われなければならない。

    第92条

    実演家は、財産権の譲渡後においても、実演の同一性保持及び実演家たることに係る人格権を享受する。但し、製作者の責任で、実演家が参加した著作物の要約、短縮、編集、ダビングを行うことができるが、実演家の実演の性質を変更してはならない。

    単独項 視聴覚的著作物の参加者の死亡は、完成後か否かを問わず、当該著作物の上映や商業利用を妨げるものではなく、追加の許諾を必要とするものではない;契約及び法律により死亡者に生じる報酬は、死亡者の財産に入れられるか、承継者に支払われる。

    第Ⅲ節 レコード製作者の権利
    第93条

    レコード製作者は有償又は無料で以下のことを許諾し又は禁止する排他的権利を有する、

    1. 直接又は間接の、レコードの全体又は部分的な複製;
    2. そのように複製されたレコードのコピーの販売又は貸与による頒布;
    3. 放送を含め公の実演による公衆へのレコードの伝達;
    4. [拒否]
    5. 既に存在するか将来考案される他の形態でのレコードの利用。
    第94条

    レコード製作者は、この法律の第68条に言及する利用者から、レコードの公の実演による収益の徴収及び実演家又はその協会と合意した方法でのそれらの実演家への分配に責任を負う。

    第Ⅳ節 放送機関の権利
    第95条

    放送機関は、番組に具体的に使用されている知的財産権者の権利を害することなく、その放送の再送信、固定、複製、及び公衆が出入りする場所でのそれらの放送のテレビによる公衆への伝達を許諾又は禁止する排他的権利を有する。

    第Ⅴ節 著作隣接権の期間
    第96条

    著作隣接権の保護の期間は、レコードの固定、放送事業者による放送の送信及び他のケースでの公の実演の翌年の最初の1月から70年である。

    第Ⅵ章 著作者の権利及び著作隣接権の権利者の協会

    第97条

    著作者及び著作隣接権者は、権利の行使及び防衛のために非営利の協会を組織することができる。

    1. 同一種類の権利の集中管理のための一つ以上の協会の会員になることは禁止される。
    2. 著作権又は著作隣接権の権利者は、元の協会にその事実を書面で通知することにより、いつでも協会を変更することができる。
    3. 海外に本部のある協会は、この法律の規定により設立された国内の協会が、ブラジルにおいて代理する。
    第98条

    協会に加入することにより、会員は、司法上又は司法外の著作権の防衛、使用料の徴収に必要となるすべての行為を行うことを協会に委託する。

    単独項 著作権者は所属する協会への事前の通知により、この条に規定する行為を自ら行うことができる。

    第99条

    協会は、放送やあらゆる方法での送信及び視聴覚的著作物の上映による実演を含め、歌詞を伴い又は伴わない音楽の著作物及びレコードの公の実演から生じる使用料の徴収と分配のために、一つの中央本部を共同して維持しなければならない。

    1. この条の規定の下で組織される中央本部はいかなる収益の目的も持ってはならず、構成する協会によって監督及び管理される。
    2. この章に言及する中央本部及び協会は、裁判やその他の場所で自己の名義で行動し、その会員を自ら代理しなければならない。
    3. 中央本部は、銀行支払の方法でのみ資金を集めることができる。
    4. 中央本部は監査人を雇うことができる。但し、監査人は、理由を問わず興行の主催者から現金による支払いを受けてはならない。
    5. 前項の但し書きの要件を欠くと認められるときは、適用されるべき民事上及び刑事上の制裁に影響を与えることなく、違反者として監査人の地位の資格を剥奪される。
    第100条

    著作者の協会の会員の少なくとも三分の一を代表する労働組合又は専門職協会は、年に一度、8日前に通知することにより、その会員に分配された収支報告書の適確性を監査役によって確認することができる。

    第Ⅶ章 著作権侵害に対する制裁

    第Ⅰ節 導入規定
    第101条

    次節に規定する民事上の制裁は、刑事上の制裁を妨げることなく適用されるものとする。

    第Ⅱ節 民事上の制裁
    第102条

    適用される賠償を妨げることなく、著作物を不正に複製、公表又はその他の方法で利用された権利者は、コピー又は原作品の差押え又は公表の停止を申し立てることができる。

    第103条

    著作権者の許諾なく、文学的、美術的又は科学的著作物を発行する者は、差押えられたコピーを著作権者に没収され、販売された分の対価を支払わなければならない。

    単独項 不正な版を構成するコピーの数が不明な場合、違反者は、差押えられたコピーに3000コピーを加算した価格を支払わなければならない。

    第104条

    販売目的又は自己若しくは他人のための直接的若しくは間接的な利得、便宜、利益の確保目的で、不正に複製された著作物若しくはレコードを売却、販売のための展示、受領及び隠匿、取得、頒布、倉庫での保管又は利用をした者は、前条に関して違反者と共同して責任を負う;複製が海外で行われたとき、輸入業者及び販売業者は侵害に対し責任を負わなければならない。

    第105条

    権利者の権利を侵害してなされる文学的、美術的又は科学的著作物、実演及びレコードのあらゆる方法又は手段による送信や再送信及び、公衆への伝達は、違反に対して適用される通常の強制的な罰金及び他の損害賠償を妨げることなく、且つ、適用される刑事上の制裁に関係なく、権限のある司法官憲によって、直ちに停止又は中断されなければならない。侵害者が著作者の権利又は著作隣接権の権利者の権利の侵害で累犯である場合、罰金は倍額にできる。

    第106条

    判決は、全ての非合法なコピーやオリジナル及び版木、型、ネガ及び侵害を行うために使う他の材料を破壊する義務を含むことができ、それらが非合法な目的の役目のみ果たす場合にはその破壊も含め、その目的のために使用する機械、器材及び道具の差押えを認めることができる。

    第107条

    以下の者は、使用される器材の差押えに関係なく、少なくとも、第103条及びその単独項の規定の適用の結果による額の損害の責任を負う

    1. 改造、除去、変更又は、いずれの方法であれ複製の防止又は制限するために保護された著作物のコピー及び作品に組み込まれた技術的手段を無効にする者;
    2. 改造、除去又は、どのような方法であれ保護された著作物、作品若しくは放送の公衆への伝達を制限し又はそれらのコピーを防止することを意図した暗号化信号を役に立たなくする者;
    3. 許諾なく、権利管理情報を除去又は改造する者;
    4. 著作権管理情報、暗号化信号及び技術的手段が許諾なく除去、改造されていることを知りながら、許諾なく、著作物、実演、レコードに固定され又は放送された実演のコピーの頒布、頒布のための輸入、放送、公衆への伝達又は利用可能化を行う者。
    第108条

    いずれの方法での知的著作物の利用においても、著作者及び実演家の氏名、変名又は慣習上の標章の記載又は告知を欠いた者は、人格権侵害への責任とは別に、それらの身元を公表しなければならない、

    1. 放送機関による場合には、違反が行われたのと同じ時間に3日間連続で;
    2. 文字やレコードの発行物の場合には、まだ頒布されていないコピーに正誤表を入れることで;但し、著作者、実演家及び出版者又は製作者の居住する場所の主要な定期刊行物での3回の連続する機会におけるしかるべき告知の広報を妨げない;
    3. その他の利用の形態の場合には、前述の但し書きに言及する処置に応じた新聞で。
    第109条

    この法律の第68条、第97条、第98条及び第99条の規定の侵害によりなされる公の実演は、通常支払うべき額の20倍に相当する罰金の責任が侵害者に科される。

    第110条

    所有者、演出家、管理者、興行主及び賃貸者は、第68条に言及する構内や施設で行われる興行及び演奏会の過程で生じる著作権の侵害について、興行の主催者と共同して責任を負う。

    第Ⅲ節 出訴期限
    第111条

    [拒否]

    第Ⅷ章 最終規定及び経過規定

    第112条

    1973年12月14日法律第5988号第42条⑵項の規定による保護の期間の満了により公有となった著作物は、この法律の第41条の下の財産権の保護期間の延長は認められない。

    第113条

    レコード、本及び視聴覚的著作物には、製作者、販売業者又は輸入者が押印に責任を持つ印や他の識別標章を、消費者への追加の費用負担なく、施行される法律の規定の遵守証明のために、規則に従って記載しなければならない。

    第114条

    この法律は公布後120日で効力を生じる。

    第115条

    民法第649条から673条及び1346条から1362条及び1996年4月6日法律第4944号、1973年12月14日第5988号(第17条及びその⑴項及び⑵項を除く)、1980年6月25日第6800号、1983年9月12日第7123号、1995年5月18日第9045号、及びこの法律に反するいかなる規定も無効とされる。1978年5月24日法律第6533号及び1978年12月16日第6615号は引き続き効力を有する。

    *
    ポルトガル語名:Lei N° 9.610, de 19 de FeⅤereiro de 1998—Altera, atualiza e consolida a legislação sobre direitos autorais e dá outras
    施行日:1998年6月20日
    出所:公報、1998年2月20日第36号
    注:WIPO事務局による翻訳。
    **
    目次は、WIPO事務局により付加されている。
    この翻訳は、WIPOのwebサイト「WIPO Lex」に掲載された、WIPO事務局による英語訳を日本語訳したものである。

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