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    第3部 意匠権


    第2章 意匠権者の権利及び救済

    意匠権の侵害

    (意匠権の一次侵害)
    第226条
    (1) 意匠の意匠権者は、商業目的のために次に掲げることを行うことによりその意匠を複製する排他的権利を有する。
    (a) その意匠に従って物品を作成すること。
    (b) そのような物品を作成を可能とすることを目的として意匠を記録する意匠文書を作成すること。
    (2) 意匠に従って物品を作成することによる意匠の複製とは、正確に又は実質的にその意匠に従って物品を生産するように意匠を複製することをいう。また、この部における意匠に従って物品を作成することへの言及は、それに従って解釈される。
    (3) 意匠権は、意匠権者の許諾を得ずに、この条に基づいて意匠権者の排他的権利であるいずれかのことを行い、又は行うことを他の者に許諾する者により侵害される。
    (4) この条の目的上、複製は、直接であることも又は間接であることもできる。また、いずれかの介在する行為自体が意匠権を侵害するかどうかは、重要ではない。
    (5) この条の規定は、第3章(意匠権者の権利の例外)の規定に従うことを条件として、効力を有する。

    (二次侵害――侵害物品の輸入又は利用)
    第227条
    (1) 意匠権は、侵害物品である物品であって、侵害物品であることをその者が知り、又はそう信じる理由を有するものについて、意匠権者の許諾を得ずに次に掲げるいずれかの行為を行う者により侵害される。
    (a) 商業目的のために連合王国に輸入すること。
    (b) 商業目的のために所持すること。
    (c) 業務の過程において販売し、賃貸し、又は販売若しくは賃貸のために提供し、若しくは陳列すること。
    (2) この条の規定は、第3章(意匠権者の権利の例外)の規定に従うことを条件として、効力を有する。

    (「侵害物品」の意味)
    第228条
    (1) この部において、意匠に関して「侵害物品」は、この条に従って解釈される。
    (2) その意匠に従ってある物品を作成することがその意匠の意匠権の侵害であるときは、その物品は、侵害物品である。
    (3) 次に掲げる2つの要件を満たす場合にも、当該物品は、侵害物品である。
    (a) ある物品が連合王国に輸入されており、又は輸入されることが企てられていること。
    (b) 連合王国においてその意匠に従って物品を作成することが、意匠の意匠権の侵害となり、又は意匠に関する排他的許諾協定違反となっていること。
    (4) 意匠権が存続しており、又はいずれかの時に存続していた意匠に従ってある物品が作成されていることが示される場合には、反対のことが証明されるまでは、意匠権が存続していた時にその物品が作成されたものと推定される。
    (5) 第3項のいずれの規定も、1972年の欧州共同体法第2条第1項の意味におけるいずれかの執行可能なEUの権利に基づいて連合王国に適法に輸入することができる物品について適用されるものとは解釈されない。
    (6) 「侵害物品」という表現は、意匠文書の作成が意匠権の侵害であったか、又は侵害となるかどうかにかかわらず、意匠文書を含まない。

    侵害救済

    (意匠権者の権利及び救済)
    第229条
    (1) 意匠権の侵害は、意匠権者が提訴することができる。
    (2) 意匠権の侵害訴訟においては、原告は、損害賠償、差止命令、計算その他による救済であって、他のいずれの財産権侵害についても利用することができるすべてのものを、利用することができる。
    (3) 裁判所は、意匠権の侵害訴訟において、すべての状況、特に次に掲げることを考慮して、事案の判事が要求することができる追加の損害賠償を裁定することができる。
    (a) 侵害の悪質性
    (b) 侵害を理由として被告に生じるいずれかの利益
    (4) この条の規定は、第233条(善意の侵害)に従うことを条件として、効力を有する。

    (引渡し命令)
    第230条
    (1) ある者が、次に掲げるいずれかに該当する場合には、当該意匠の意匠権者は、侵害物品その他のものがその者又は裁判所が指示することができる他の者に引き渡される旨の命令を裁判所に申請することができる。
    (a) 侵害物品を商業目的のために自己の所有、保管又は管理の下に有する者
    (b) 特定の意匠が侵害物品を作成するために使用され、若しくは使用される筈であることを知り、又はそう信じる理由を有しながら、その意匠に従って物品を作成することを特に意図され、又はそのように適応されているいずれかのものを、自己の所有、保管又は管理の下に有する者
    (2) 申請は、この条の以下の規定に明示する期間の終了後は、行われない。また、いずれの命令も、第231条(侵害物品等の処分についての命令)に基づく命令を裁判所も定め、又はそのような命令を定める根拠があると裁判所が認めない限り、定められない。
    (3) この条に基づく命令の申請は、第4項に従うことを条件として、当該物品又は当該ものが作成された日から6年の期間の終了後は、行うことができない。
    (4) その期間の全体又はいずれかの部分の間に、意匠権者が、次に掲げるいずれかに該当する場合には、申請は、その者が行為無能力の状態にあることをやめた日から、又は場合により、合理的な努力によりそれらの事実を発見することができた日から6年の期間の終了前いつでも、行うことができる。
    (a) 行為無能力の状態にある場合
    (b) 命令を申請する資格をその者に与える事実を発見することを詐欺又は隠蔽により阻止される場合
    (5) 第4項において、「行為無能力」は、
    (a) イングランド及びウェールズにおいては、1980年の出訴期限法におけると同一の意味を有する。
    (b) スコットランドにおいては、1973年の時効及び出訴期限(スコットランド)法の意味における法的行為無能力をいう。
    (c) 北部アイルランドにおいては、1958年の出訴期限(北部アイルランド)法令におけると同一の意味を有する。
    (6) この条に基づく命令に従って侵害物品その他のものの引渡しを受ける者は、第231条に基づく命令が定められないときは、その条に基づいて命令が定められるまでの間、又は命令を定めない旨の決定が行われるまでの間、その侵害物品その他のものを保持する。
    (7) この条のいずれの規定も、裁判所の他のいずれの権限にも影響しない。

    (侵害物品等の処分についての命令)
    第231条
    (1) 第230条に基づく命令に従って引き渡された侵害物品その他のものが次に掲げるいずれかの処分を受ける旨の命令のため、又はそのようないずれの命令も行われない旨の決定のために、裁判所に申請を行うことができる。
    (a) 意匠権者に没収されること。
    (b) 裁判所が適当と認めるところに従って破棄され、その他処分されること。
    (2) いかなる命令(もしあれば)を定めるべきかを検討する際に、裁判所は、意匠権の侵害訴訟において利用することができる他の救済が、意匠権者に補償し、かつ、その利益を保護するために適当であるかどうかを検討する。
    (3) その物品その他のものに利害関係を有する者への通知の送達について、裁判所規則により規定が定められ、また、そのようないずれの者も、次に掲げることを行う資格を有する。
    (a) その者が通知の送達を受けたか否かにかかわらず、この条に基づく命令のための訴訟手続において出頭すること。
    (b) その者が出頭したか否かにかかわらず、行われたいずれの命令に対しても上訴すること。
    また、命令は上訴の通知を与えることができる期間の終了までは、又はその期間の終了前に上訴の通知が正式に与えられるときは、上訴についての訴訟手続の最終決定若しくは破棄の時までは、効力を生じない。
    (4) 物品その他のものに利害関係を有する者が2人以上いる場合には、裁判所は、適当と認める命令を定め、かつ、(特に)そのものを売却し、その他処分すること、及び、収益を配分することを指示することができる。
    (5) この条に基づくいずれの命令も行わない旨を裁判所が決定するときは、物品その他のものが引き渡される前にそれを所有し、保管し、又は管理していた者は、その返還について資格を有する。
    (6) この条における物品その他のものに利害関係を有する者への言及は、その物品その他のものについて、次に掲げるいずれかの規定に基づいて、その者のために命令を定めることができたいずれの者をも含む。
    (a) この条又はこの法律第114条若しくは第204条の規定
    (b) 1949年の登録意匠法第24条のDの規定
    (c) 1994年の商標法第19条(2006年の共同体商標規則(SI2006/1027)規則第4により適用される同条を含む。)の規定
    (d) 2005年の共同体意匠規則(SI2005/2339)規則第1のCの規定

    (州裁判所及び執行官裁判所の管轄権)
    第232条
    (1) イングランドおよびウェールズにおける州裁判所、及び北部アイルランドにおける州裁判所は、次に掲げる諸条に基づく訴訟手続を受理することができる。
    第230条(侵害物品等の引渡し命令)
    第231条(侵害物品等の処分についての命令)
    第235条第5項(併存する権利を有する排他的許諾を得た者による申請)
    ただし、北部アイルランドにおいては、州裁判所は、当該侵害物品その他のものの価値が州裁判所の不法行為限度を超えない場合に限り、そのような訴訟手続を受理することができる。
    (2) スコットランドにおいては、それらの規定のいずれかに基づく命令のための訴訟手続は、執行官裁判所に提起することができる。
    (3) この条のいずれの規定も、高等裁判所の管轄権、又はスコットランドにおいては民事控訴院の管轄権に影響するものとは解釈されない。

    (善意の侵害)
    第233条
    (1) 第226条(一次侵害)に基づいて提起される意匠権侵害訴訟において、侵害の時に、被告が、訴訟が関係する意匠に意匠権が存続していたことを知らず、かつ、そう信じる理由を有しなかったことが証明される場合には、原告は、その者に対する損害賠償(請求)について資格を有しない。ただし、他のいずれの救済をも害しない。
    (2) 第227条(二次侵害)に基づいて提起される意匠権侵害訴訟において、被告が、侵害物品がその者又はその者の前権利者により善意で取得されたことを証明する場合には、その侵害についてその者に対して提供することができる唯一の救済は、訴えられた行為についての合理的な使用料を超えない損害賠償である。
    (3) 第2項において「善意で取得された」とは、物品を取得する者が、それが侵害物品であることを知らず、かつ、そう信じる理由を有しなかったことをいう。

    (排他的許諾を得た者の権利及び救済)
    第234条
    (1) 排他的許諾を得た者は、意匠権者に対する場合を除き、許諾が譲渡であったものとして許諾の付与の後に生じる事項について同一の権利及び救済を有する。
    (2) その者の権利及び救済は、意匠権者のそれらと併存する。また、この部の関係規定における意匠権者への言及は、それに従って解釈される。
    (3) 排他的許諾を得た者がこの条に基づいて提起する訴訟において、被告は、訴訟が意匠権者により提起されたならばその者が利用することができることとなるいずれの抗弁をも利用することができる。

    (併存する権利の行使)
    第235条
    (1) 意匠権者又は排他的許諾を得た者により提起される意匠権侵害訴訟が、それらの者が併存する訴権を有する侵害に関係する(全体的又は部分的に)場合には、意匠権者又は場合により排他的許諾を得た者は、他の者が原告として参加し、又は被告として追加されない限り、裁判所の許可を得ずに訴訟を続行することはできない。
    (2) 第1項に従って被告として追加される意匠権者又は排他的許諾を得た者は、訴訟手続に参加しない限り、訴訟におけるいずれの費用についても責任を有しない。
    (3) 前記の規定は、意匠権者又は排他的許諾を得た者の申請に基づく中間的救済の付与に影響しない。
    (4) 意匠権者及び排他的許諾を得た者が併存する訴権を有する侵害に関係する(全体的又は部分的に)意匠権侵害訴訟が提起される場合には、
    (a) 裁判所は、損害賠償を査定する際に、次に掲げる2つのことを考慮する。
    (i) 許諾の条件
    (ii) 侵害についてそれらの者のうちの一方の者にすでに裁定され、又は提供されたいずれかの金銭的救済
    (b) 侵害についてそれらの者のうちの他方の者のために損害賠償の裁定が行われ、又は利得の計算が指示されているときは、利得のいずれの計算も指示されない。
    (c) 裁判所は、利得の計算が指示されるときは、それらの者の間のいずれの協定にも従うことを条件として、裁判所が正当と認めるところに従ってそれらの者の間で利得を配分する。
    また、これらの規定は、意匠権者及び排他的許諾を得た者が両者とも訴訟の当事者であると否とにかかわらず、適用される。
    (5) 意匠権者は、第230条(侵害物品の引渡し命令)に基づく命令を申請する前に、併存する権利を有するいずれの排他的許諾を得た者にも通知する。また、裁判所は、排他的許諾を得た者の申請を受けて、許諾の条件を考慮して適当と認める同条に基づく命令を定めることができる。



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