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    第 XI 章 著作権の侵害


    第51条 著作権が侵害される場合

     著作物に対する著作権は、以下の場合に侵害されたものとみなす。

    (a) 本法に基づき著作権者もしくは著作権局長が付与する利用許諾なく、または付与された利用許諾の条件もしくは本法に基づく所轄当局が課す条件に反して、

    (i) これを行う独占的権利が本法により著作権者に認められる行為を行う場合、もしくは

    (ii) 伝達が当該著作物に対する著作権の侵害を構成する場合において、当該著作物の公衆への伝達のために場所を使用することを有償にて許可する場合。ただし、当該公衆への伝達が著作権の侵害にあたることを当該者が知らずまたそう信じる合理的な理由がなかった場合にはこの限りでない。または

    (b) 著作物の侵害コピーを

    (i) 販売または貸与のために作成し、または販売しもしくは貸与し、または取引により販売もしくは貸与のために展示しもしくは供する場合、または

    (ii) 取引のためにもしくは著作権者に悪影響を及ぼす程度に頒布する場合、または

    (iii) 取引において公に展示する場合、または

    (iv) インド国内に輸入する場合。

    ただし、(iv)のいかなる文言も、輸入者の私的かつ家庭内の使用のために著作物のコピー1部を輸入することには適用しない。

    解説…本条において、言語、演劇、音楽または美術著作物の映画フィルム形式での複製は、「侵害コピー」であるものとみなす。

    第52条 一定の行為は著作権の侵害とならない

    (1)  以下の行為は、著作権の侵害を構成しないものとする。

    (a) 以下の目的のための、コンピュータ・プログラムでない言語、演劇、音楽または美術著作物の公正取引(fair dealing)。

    (i) 研究を含む私的使用、

    (ii) 批評または論評。当該著作物のものであると他の著作物のものであるとを問わない。

    (aa) コンピュータ・プログラムのコピーを合法的に占有する者が、以下の目的のために、当該コピーからの当該コンピュータ・プログラムのコピーまたは翻案物を作成すること。

    (i) 当該コンピュータ・プログラムが供給された目的のためにこれを利用するため、または

    (ii) 当該コンピュータ・プログラムが供給された目的のためにこれを利用するためにのみ、損失、破壊もしくは損害に対する純粋に一時的保護のためにバックアップ・コピーを作成するため。

    (ab) 独立して創作されたコンピュータ・プログラムと他のプログラムとの互換性を保つ上で重要な情報を得るために必要な行為を、当該コンピュータ・プログラムの合法的な占有者が行うこと。ただし、当該情報はその他容易に入手可能でない場合に限る。

    (ac) コンピュータ・プログラムが供給された本来の機能に必要な行為を実行する間に、当該コンピュータ・プログラムの要素の根底にある概念および規則を判断するために当該コンピュータ・プログラムの機能の観測、研究または試験すること。

    (ad) 非営利の個人的利用のために、個人的に合法的に入手したコピーからコンピュータ・プログラムのコピーまたは翻案物を作成すること。

    (b) 以下における時事の報道のための、言語、演劇、音楽または美術著作物の公正取引。

    (i) 新聞、雑誌もしくは類似の定期刊行物、または

    (ii) 放送もしくは映画フィルムもしくは写真。

    解説…公に口述された演説または講演の編集物の発行は、本号の意味における当該著作物の公正取引とならない。

    (c) 司法手続のために、または司法手続において報告するために、言語、演劇、音楽または美術著作物を複製すること。

    (d) 議会事務局長、または立法府が2議院からなる場合には立法府のいずれかの議院の事務局長が、当該議院の構成員の使用のためにのみ作成する著作物における言語、演劇、音楽または美術著作物を複製しまたは発行すること。

    (e) その時点で効力を有する法に従って作成されまたは供給される認証謄本において言語、演劇または音楽著作物を複製すること。

    (f) 発行された言語または演劇著作物からの合理的な抄録を公に朗読しまたは暗誦すること。

    (g) 主として著作権のない素材からなり、教育機関における使用を善意で意図し、その旨が表題および発行者によりまたは発行者に代わって発行される広告に記載される集合物において、著作権の存続する発行された言語または演劇著作物(それ自体は教育機関の使用のために発行されていないもの)の短い部分を発行すること。
    ただし、5年間に同一の発行者が発行した同一の著作者の著作物から2つを超える部分であってはならない。

    解説…共同著作物の場合には、本号にいう著作物からの部分には、当該部分の著作者のいずれかによる著作物からの部分、または他の者との協力したいずれかの著作者による著作物からの部分を含むものとする。

    (h) 言語、演劇、音楽または美術著作物を以下のとおり複製すること。

    (i) 指導の過程で教師もしくは生徒により、または

    (ii) 試験において回答すべき設問の一部として、または

    (iii) 当該設問に対する回答において。

    (i) 教育機関の活動の過程において当該機関のスタッフおよび生徒が言語、演劇もしくは音楽著作物を実演すること、または観衆が当該スタッフおよび生徒、その父兄および保護者ならびに当該機関の活動に直接関連する者に限定して映画フィルムもしくは録音物を実演すること、または映画フィルムもしくは録音物を当該観衆に伝達すること。

    (j) 言語、演劇または音楽著作物に関する録音物の作成であって、

    (i) 当該著作物の録音物が、当該著作物の権利者の利用許諾または同意によりまたはこれをもって作成されており、

    (ii) 当該録音物を作成する者が、これを作成する意図の通知を行っており、これを販売する全てのカバーまたはラベルのコピーを提供しており、かつ、当該著作物の権利者に対して所定の方法でその作成しようとする当該録音物の全てについて著作権審判委員会が定める料率にて使用料を支払っている場合。

    ただし、

    (i) 権利者によりもしくはその同意を得る以前に作成された改変、または録音物の作成のために著作物を翻案するために合理的に必要ではない改変は、行うことができない。

    (ii) 録音物は、その識別に関して公衆を誤解させまたは混同させるおそれのあるいかなる形式の包装またはラベルをもっても作成してはならない。

    (iii) 当該録音物は、当該著作物の最初の収録が行われた年の終了後2暦年の満了までは作成してはならない。

    (iv) 当該録音物を作成する者は、権利者またはその適法に授権された代理人もしくは代表者に対して、当該録音物に関連する全ての会計記録および帳簿を閲覧することを認めなければならない。

     また、本号に従って作成されるとされる録音物に対する全部の支払が権利者に対して行われていないとの申立てが著作権審判委員会に対して行われる場合には、著作権審判委員会は、申立てが真正であると一応満足したときは、録音物を作成する者に対して、さらなるコピーの作成を停止するとの一方審尋による命令を可決することができ、また、その必要と考える調査を行った後に、使用料の支払の命令を含むその適切とみなすさらなる命令を発することができる。

    (k) 以下のとおり、収録物を用いて公衆に聴取させること。

    (i) 居住施設の居住者の共通の利用を意図された屋内の部屋もしくはホールにおいて、その居住者のためにのみもしくは主としてその居住者のために提供される利益の一環として、または

    (ii) 営利のために設立されまたは運営されていないクラブまたは類似の団体の活動の一環として。

    (l) アマチュアのクラブまたは団体による言語、演劇または音楽著作物の実演であって、当該実演が支払を行わない観衆に対してまたは宗教的機関のために行われる場合。

    (m) 新聞、雑誌または他の定期刊行物における時事の経済、政治、社会または宗教上の主題に関する記事の複製。当該記事の著作者が当該複製の権利を明示的に自己に留保した場合はこの限りでない。

    (n) 新聞、雑誌または他の定期刊行物における公に口述された講演の報告の発行。

    (o) 公立図書館の責任者によるまたはその指示による、当該図書館での利用のための書籍(パンフレット、楽譜、地図、海図または設計図を含む)のコピー3部以内の作成。ただし、当該書籍がインド国内で販売されないことを条件とする。

    (p) 調査もしくは私的研究のための、または発行を目的として、公衆が利用できる図書館、美術館または他の機関が保有する未発行の言語、演劇または音楽著作物を複製すること。
    ただし、当該著作物の著作者(共同著作物の場合には著作者のいずれか)の身元が当該図書館、美術館または他の機関に知られている場合には、本号の規定は、当該複製が当該著作者(共同著作物の場合には身元が判明している著作者)の死亡した日(複数の著作者の身元が知られている場合には、最後に死亡した著作者の死亡した日)から60年を経過した後に作成された場合にのみ適用される。

    (q) 以下の複製または発行。

    (i) 官報に公表されたもの。立法府の法律を除く。

    (ii) 立法府の法律。当該法が解説または他の創作的素材と共に複製されまたは発行されることを条件とする。

    (iii) 立法府が任命する委員会、審議会、評議会、会議または同様の機関の報告書。当該報告書の複製または発行が政府により禁止される場合はこの限りでない。

    (iv) 裁判所、審判所または他の司法当局の判決または命令。当該判決または命令の複製または発行が、当該裁判所、審判所または他の司法当局により禁止される場合はこの限りでない。

    (r) 以下の場合において、立法府の法律またはこれに基づき制定される規則もしくは命令についてインドの言語への翻訳物を作成し発行すること。

    (i) 当該法または規則もしくは命令のその言語への翻訳物が政府により以前に作成されまたは発行されていない場合、または

    (ii) 当該法または規則もしくは命令の当該言語への翻訳物が、政府により作成されまたは発行されているときは、当該翻訳物が公に販売されていない場合。

    ただし、当該翻訳物には、翻訳が政府により真正なものと許可されまたは承認されていない旨の記載を顕著な場所に含まなければならない。

    (s) 建築著作物の絵画、図画、版画もしくは写真の作成もしくは発行、または建築著作物の展示。

    (t) 彫刻または第2条第(c)項(iii)に該当する他の美術著作物の絵画、図画、版画または写真の作成または発行。ただし、当該著作物が公の場所または公衆が立ち入ることのできる施設に恒久的に設置されている場合に限る。

    (u) 映画フィルムを以下に含めること。

    (i) 公の場所もしくは公衆が立ち入ることのできる施設に恒久的に設置された美術著作物、または

    (ii) 他の美術著作物であって、背景としてのみまたはその他当該フィルムに表現された主たる事項に付随するもの。

    (v) 美術著作物の著作者が著作権者でない場合において、著作者が当該著作物のために自己が作成した鋳型、鋳造物、素描、設計図、模型または試作を使用すること。

    (w) [削除]

    (x) 建築物または建造物を、当該建築物または建造物が当初建築された建築図面または設計図に従って再建すること。
    ただし、当初の建築は当該図面および設計図の著作権者の同意または利用許諾を得て行われていなければならない。

    (y) 映画フィルムに収録されまたは複製された言語、演劇または音楽著作物に関連して、当該フィルムを当該著作物の著作権の期間の満了後に上映すること。
    ただし、第(a)号(ii)、第(b)号(i)ならびに第(d)号、第(f)号、第(g)号、第(m)号および第(p)号の規定は、行為が以下の確認を伴わない限りは適用されない。

    (i) 当該著作物をその表題または他の記述により特定し、かつ

    (ii) 当該著作物が無名でありまたはその著作者がその氏名の確認を行わないよう以前に同意しまたは要求した場合を除き、著作者も特定すること。

    (z) 放送機関が自己の設備を用いて、放送権を有する放送機関による著作物の自己の放送の一過的収録物を作成すること、およびその例外的な記録的性質を理由として当該収録物を資料目的で保有すること。

    (za) 善意の宗教的儀式または中央政府もしくは州政府もしくは地域当局が行う公式行事の過程で、言語、演劇または音楽著作物を実演し、または当該著作物もしくは録音物を公衆に伝達すること。

    解説…本号において、宗教的儀式には、結婚式および結婚に伴う他の社会的祭礼を含む。

    (2)  第(1)項の規定は、言語、演劇もしくは音楽著作物の翻訳物または言語、演劇、音楽もしくは美術著作物の翻案物に関連する行為を行うことについても、当該著作物自体に関連して適用すると同様に適用される。

    第52A条 録音物およびビデオフィルムに含むべき事項

    (1)  何人も、以下の事項を当該録音物およびその容器に表示しない限りは、いかなる著作物に関しても、録音物を発行してはならない。

    (a) 当該録音物を作成した者の名称および住所、

    (b) 当該録音物の著作権者の名称および住所、ならびに

    (c) その最初の発行の年。

    (2)  何人も、以下の事項をビデオフィルムが上映される時に表示しかつビデオカセットまたは他の容器上に表示しない限りは、いかなる著作物に関しても、ビデオフィルムを発行してはならない。

    (a) 当該著作物が1952年映画法(1952年第37号)の規定に基づき上映の認可を受けなければならない場合には、当該著作物に関して同法第5A条に基づく映画認可委員会が認める証明書のコピー、

    (b) 当該ビデオフィルムを作成した者の名称および住所ならびに当該者が当該著作物の著作権者から当該ビデオフィルムを作成するために必要な利用許諾または同意を得ている旨の宣言、ならびに

    (c) 当該著作物の著作権者の名称および住所。

    第52B条 会計および監査

    (1)  第34A条に基づき任命された各著作権団体は、中央政府がインド会計監査局長と協議のうえ定める書式および方法にて適切な会計および他の関連する記録を保管し、また、年次会計報告書を作成するものとする。

    (2)  中央政府から受領する支払に関連する各著作権団体の会計記録は、会計検査局長がその特定する間隔で監査するものとし、かかる監査に関連して生じる出費は、著作権団体が会計検査局長に支払うものとする。

    (3)  インド会計検査局長または第(2)項にいう著作権団体の会計記録の監査に関連してその任命する者は、政府の監査に関連して会計検査局長が有すると同一の権利および特権および権限を当該監査に関連しても有するものとし、特に、帳簿、記録および他の文書および用紙の提出を要求し、当該監査の目的のためにのみ著作権団体のいずれかの事務所を視察する権利を有するものとする。

    (4)  インド会計検査局長またはその代理人として任命された者が認証した各著作権団体の会計記録およびこれに関する監査報告書は、毎年中央政府に送付されるものとし、同政府はこれを議会の各議院に提出させるものとする。

    第53条 侵害コピーの輸入

    (1)  著作権局長は、著作物の著作権者またはその適法に授権された代理人の申請および所定の費用の支払があれば、その適切とみなす審問を行った後に、当該著作物のインド国外で作成されたコピーであって、インド国内で作成されたとすれば著作権を侵害することとなるものを輸入してはならないと命じることができる。

    (2)  本法に基づき制定される規則を条件として、著作権局長またはその代理人として授権された者は、第(1)項にいうコピーが発見されうる船舶、埠頭または施設に立入ることができ、また、かかるコピーを審査することができる。

    (3)  第(1)項に基づき行われる命令が適用される全てのコピーは、1962年関税法(1962年第51号)第11条に基づき輸入が禁止または制限される物品とみなし、同法の全ての規定はこれに効力を有するものとする。
     ただし、同法の規定に基づき差押さえられた全ての当該コピーは、政府に帰属せず、当該著作物の著作権者に引渡されるものとする。

    第53A条 原本に対する再販分配権

    (1)  絵画、彫刻もしくは図画の原本または言語もしくは演劇著作物もしくは音楽著作物の原稿を1万ルピーを超える価格で再販する場合、当該著作物の著作者(第17条に基づき最初の権利者である場合)またはその法定相続人は、当該著作物に対する著作権の譲渡にかかわらず、本条の規定に従って当該原本または原稿の再販価格に対する分配を受ける権利を有するものとする。
     ただし、かかる権利は、当該著作物に対する著作権の期間の満了をもって失効するものとする。

    (2)  第(1)項にいう分配率は、著作権審判委員会が決定するとおりとし、著作権審判委員会がこれに代わり行う決定は最終のものとする。
     ただし、著作権審判委員会は、異なる種類の著作物について異なる分配率を設定することができる。
     さらに、いかなる場合にも、分配率は再販価格の10パーセントを超えないものとする。

    (3)  本条が認める権利に関して紛争が生じる場合には、著作権審判委員会に付託するものとし、その決定は最終のものとする。



    第 XII 章 民事上の救済


    第54条 定義

     本章において、その文脈において別途必要とされない限りは、「著作権者」には以下を含むものとする。

    (a) 独占的被許諾者、

    (b) 無名または変名の言語、演劇、音楽または美術著作物の場合には、著作者の身元(無名の共同著作物の場合または全ての著作者が変名にて発行された共同著作物の場合には、著作者のいずれかの身元)が著作者または発行者により公に開示され、または著作権審判委員会の満足するように当該著作者またはその法定代理人により開示されるまでは、その発行者。

    第55条 著作権の侵害に対する民事上の救済

    (1)  著作物に対する著作権が侵害された場合には、著作権者は、本法に別段の定めある場合を除き、差止命令、損害賠償、利益分配その他権利の侵害につき法が認めるまたは認めうる全ての救済を受けることができるものとする。
     ただし、当該著作物に対して著作権が存続することを侵害の日に被告が知らずまた信じる合理的な理由もなかったことを被告が証明する場合には、原告は、裁判所がその状況において合理的とみなす当該侵害に関する差止命令および侵害コピーの販売により被告が得た利益の全部または一部の命令を除く救済を受けることはできないものとする。

    (2)  言語、演劇、音楽または美術著作物の場合において、著作者または発行者のものとされる名称が発行された著作物のコピー上に表示されており、または美術著作物の場合には作成された時にその上に表示されていたときは、その名称が表示されるまたは表示された者は、当該著作物に対する著作権の侵害に関する手続においては、別段の証明なき限り、当該著作物の著作者または発行者と推定されるものとする。

    (3)  著作権の侵害に関する手続における全当事者の費用は、裁判所の裁量によるものとする。

    第56条 個別の権利の保護

     本法の規定を条件として、著作物に対する著作権を構成する数個の権利が異なる者により保有されている場合には、当該権利の保有者は、その権利の限りにおいて本法が規定する救済を受けることができるものとし、その権利を訴訟または他の手続により他の権利者をその当事者とすることなく個別に執行することができる。

    第57条 著作者の特別な権利

    (1)  著作物の著作者は、その著作権とは独立して、また当該著作権の全部または一部の譲渡の後も、以下を行う権利を有するものとする。

    (a) 著作物の著作者であると主張すること、および

    (b) 当該著作物に関連する歪曲、切除、改変または他の行為であって、著作権の期間の満了前に行われ、かかる歪曲、切除、改変または他の行為がその名誉または声望に悪影響を及ぼす場合に、これらを制限しまたは損害賠償を請求すること。

     ただし、著作者は、第52条第(1)項第(aa)号の適用あるコンピュータ・プログラムの翻案に関しては、これを制限しまたは損害賠償を請求する権利を有しないものとする。

    解説…著作物を展示しないことまたは著作者の満足するように展示しないことは、本条が認める権利の侵害とみなさない。

    (2)  第(1)項が著作物の著作者に認める権利は、著作物の著作者であることを主張する権利を除いては、その法定代理人により行使することができる。

    第58条 侵害コピーを占有しまたは取引する者に対する権利者の権利

     著作権の存続する著作物の全ての侵害コピーおよびかかる侵害コピーの作成に使用されまたは使用を意図された原版は、著作権者の財産とみなし、著作権者は、その占有回復またはその転用に関する手続を行うことができる。
     ただし、著作権者は、相手方が以下を証明した場合には、侵害コピーの転用に関して救済を受けることはできないものとする。

    (a) コピーが侵害コピーであるとされた著作物に対して著作権が存続していたことを相手方が知らずまたそう信じる合理的な理由がなかったこと、または

    (b) 当該コピーもしくは原版が著作物に対する著作権の侵害に関わらないと相手方が信じる合理的な理由があったこと。

    第59条 建築著作物の場合の救済の制限

    (1)  1963年特定救済法(1963年第47号)に含まれるいかなる文言にもかかわらず、他の著作物に対する著作権を侵害しまたは完成すれば侵害することとなる建築物または他の建造物の建築が開始された場合には、著作権者は、当該建築物または建造物の建築を制限しまたはその解体を命じる差止命令を受けることはできないものとする。

    (2)  第58条のいかなる文言も、他の著作物に対する著作権を侵害しまたは完成すれば侵害することとなる建築物または他の建造物の建築には適用されない。

    第60条 根拠なき法的手続の脅迫の場合の救済

     著作物に対する著作権者と主張する者が、回覧、広告その他により、他者に対して著作権の侵害の主張に関して法的手続または債務をもって脅迫する場合には、これにより被害を受けた者は、1963年特定救済法(1963年第47号)第34条に含まれるいかなる文言にもかかわらず、脅迫に関連して主張される侵害は実際には当該脅迫を行った者のいかなる法的権利の侵害でもないとの確認の訴訟を提起することができ、かかる訴訟において、

    (a) かかる脅迫の継続に対する差止命令を得ることができ、また

    (b) かかる脅迫のために被った損害があればこれを回復することができる。

     ただし、かかる脅迫を行った者が、適切な努力をもって、その主張する著作権の侵害の訴訟を開始し追行する場合には、本条は適用しない。

    第61条 著作権者は手続の当事者となるべきこと

    (1)  独占的被許諾者が提起した著作権侵害に関する民事訴訟または他の手続の各々においては、著作権者は、裁判所が別段の命令を行わない限りは、被告となるものとし、当該著作権者が被告とされる場合には、独占的被許諾者の主張を争う権利を有するものとする。

    (2)  独占的被許諾者がその提起した著作権侵害に関する民事訴訟または他の手続において勝訴する場合には、著作権者は同一の訴因につき新たな訴訟または他の手続を提起することはできない。

    第62条 本章に基づき生じる事由に対する裁判所の管轄権

    (1)  著作物に対する著作権の侵害または本法が認める他の権利の侵害に関して本章に基づき生じる訴訟または他の民事手続の各々は、管轄を有する地方裁判所に提起するものとする。

    (2)  第(1)項において、「管轄を有する地方裁判所」とは、1908年民事訴訟法(1908年第5号)または当面効力を有する他の法に含まれるいかなる文言にかかわらず、訴訟または他の手続の提起時において、当該訴訟または他の手続を提起した者(複数の者がいる場合には、そのいずれか)が現実かつ任意に居住しまたは事業を行いまたは営利のために個人的に就労するその管轄の地域内の地方裁判所を含むものとする。



    第 XIII 章 罪


    第63条 著作権または本法が認める他の権利の侵害の罪

     以下を故意に侵害しまたは侵害を幇助する者は、6ヶ月以上3年以下の禁固および5万ルピー以上20万ルピー以下の罰金に処する。

    (a) 著作物に対する著作権、または

    (b) 第53A条が認める権利を除く、本法が認める他の権利。

     ただし、侵害が取引または事業の過程において営利のために行われたものでない場合には、裁判所は、判決において言及する適切かつ特別な理由により、6ヶ月未満の禁固または5万ルピー未満の罰金を科することができる。

    解説…他の何らかの著作物に対する著作権を侵害しまたは完成すれば侵害することとなる建築物または他の建造物の建築は、本条に基づく罪とならないものとする。

    第63A条 2回目以降の再犯に対する加重処罰

     第63条に基づく罪により既に有罪とされた者が再びかかる罪により有罪とされる場合には、2回目以降の罪については、1年以上3年以下の禁固および10万ルピー以上20万ルピー以下の罰金に処する。
     ただし、侵害が取引または事業の過程において営利のために行われたものでない場合には、裁判所は、判決において言及する適切かつ特別な理由により、1年未満の禁固または10万ルピー未満の罰金を科することができる。
     さらに、本条において、1984年著作権(修正)法(1984年第65号)の施行前の起訴は考慮しないものとする。

    第63B条 コンピュータ・プログラムの侵害コピーを故意に使用することは罪となる

     コンピュータ・プログラムの侵害コピーをコンピュータ上で故意に使用する者は、7日以上3年以下の禁固および5万ルピー以上20万ルピー以下の罰金に処する。
     ただし、コンピュータ・プログラムが取引または事業の過程において営利のために使用されたものでない場合には、裁判所は、判決において言及する適切かつ特別な理由により、禁固刑を科さずまた5万ルピー未満の罰金を科することができる。

    第64条 侵害コピーを没収する警察の権限

    (1)  副警部補以上の警察官は、著作物に対する著作権の侵害に関して第63条に基づく罪が行われた、行われているまたは行われるおそれがあると考える場合には、令状なく、著作物の全てのコピー、および著作物の侵害コピーを作成するために使用される全ての原版を、発見されたどの場所でも差押さえることができ、差押えられた全てのコピーおよび原版は、可及的速やかに下級判事に提出するものとする。

    (2)  第(1)項に基づき差押えられた著作物のコピーまたは原版に対して利害を有する者は、かかる差押えから15日以内に、当該コピーまたは原版を自己に回復するよう下級判事に申立てることができ、下級判事は、申立人および申立人を聴聞し必要なさらなる審問を行った後に、申立てに対してその適切とみなす命令を行うものとする。


    第65条 侵害コピーの作成のための原版の占有

     著作権の存続する著作物の侵害コピーを作成する目的で原版を故意に作成しまたは占有する者は、2年以下の禁固に処し、また罰金を科する。

    第66条 侵害コピーまたは侵害コピーの作成のための原版の処分

     本法に基づく罪を審理する裁判所は、罪を犯したとされる者が有罪とされるか否かを問わず、当該者の占有にある著作物の全てのコピーまたは全ての原版であって、侵害コピーまたは侵害コピーを作成するための原版とみられるものを著作権者に引渡すよう命じることができる。

    第67条 登録簿等への虚偽の記載、虚偽の記載の提出または提示に対する罰

     何人も、

    (a) 本法に基づき保管される著作権登録簿に虚偽の記載を行いもしくは行わせ、または

    (b) 虚偽に当該登録簿の記載の写しであるとする書面を作成しもしくは作成させ、または

    (c) かかる記載もしくは書面を、それが虚偽と知って証拠として提出しもしくは提示し、または提出させもしくは提示した場合には、

    1年以下の禁固もしくは罰金または両方に処する。

    第68条 当局または担当官を欺きまたは影響するために虚偽の発言を行うことに対する罰

     何人も、

    (a) 当局もしくは担当官を本法の規定の執行にあたり欺くことを目的として、または

    (b) 本法またはこれに基づく事項に関する作為もしくは不作為を得もしくは影響することを目的として、

    虚偽と知って虚偽の声明または表明を行う場合には、1年以下の禁固もしくは罰金または両方に処する。

    第68A条 第52A条の違反に対する罰

     第52A条の規定に違反して録音物またはビデオフィルムを発行する者は、3年以下の禁固に処し、また罰金を科する。

    第69条 会社による罪

    (1)  本法に基づく罪が会社により犯された場合には、当該罪が犯された時に当該会社の事業の遂行を担当しまたこれにつき当該会社に責任を負う各人および当該会社は、それぞれ当該罪につき有罪とみなされ、刑事手続に服し、また処罰されるものとする。
     ただし、本項に含まれるいかなる文言も、当該罪が犯されることについて情を知らなかったことまたはかかる罪が犯されることを防止するよう全ての適切な努力を尽くしたことを証明する者は、罰されないものとする。

    (2)  第(1)項に含まれるいかなる文言にかかわらず、本法に基づく罪が会社により犯され、当該会社の取締役、社長、秘書役または他の役員の同意もしくは黙認を得てまたはその過失に起因して犯されたと証明された場合には、当該取締役、社長、秘書役または他の役員も当該罪につきそれぞれ有罪とみなされ、刑事手続に服し、また処罰されるものとする。

    解説…本条において、
    (a) 「会社」とは、法人をいい、企業または他の者の集合体を含む。
    (b) 企業に関連して「取締役」とは、当該企業のパートナーをいう。

    第70条 犯罪に対する管轄権

     首都下位判事または第一級司法判事より下位の裁判所は、本法に基づく罪を審理してはならない。



    第 XIV 章 上訴


    第71条 下位判事の一定の命令に対する上訴

     第64条第(2)項または第66条に基づき発せられた命令に不服のある者は、当該命令の日から30日以内に、当該命令を行った裁判所からの上訴が通常提起される裁判所に対して、上訴することができ、かかる上訴裁判所は、当該上訴の処分の係属中当該命令の執行を停止するよう命じることができる。

    第72条 著作権局長および著作権審判委員会の命令に対する上訴

    (1)  著作権局長の最終決定または命令に不服のある者は、当該命令または決定の日から3ヶ月以内に、著作権審判委員会に上訴することができる。

    (2)  著作権審判委員会の最終決定または命令のうち、第(1)項に基づく上訴に対して行われた決定または命令でないものに不服のある者は、当該決定または命令の日から3ヶ月以内に、上訴人が現実かつ任意に居住しまたは事業を行いまたは営利のために個人的に就労する場所を管轄する高等裁判所に上訴することができる。
     ただし、かかる上訴は、第6条に基づく著作権審判委員会の決定に対して行うことはできない。

    (3)  本条に基づく上訴につき定められた3ヶ月間を計算するにあたっては、上訴される命令または決定の記録の認証謄本を発行するために費やされた時間は除かれるものとする。

    第73条 上訴の手続

     高等裁判所は、第72条に基づき行われた上訴に関してとるべき手続に関して、本法に合致する規則を制定することができる。



    第 XV 章 その他


    第74条 著作権局長および著作権審判委員会が民事裁判所の一定の権限を有すること

     著作権局長および著作権審判委員会は、以下の事項に関しては、1908年民事訴訟法(1908年第5号)に基づく訴訟を審理するにあたっての民事裁判所の権限を有するものとする。

    (a) いずれかの者を召喚し出廷を強制し、宣誓の下に尋問すること、

    (b) 文書の開示および提出を要求すること、

    (c) 宣誓供述による証拠を受領すること、

    (d) 証人または文書の検討を嘱託すること、

    (e) 裁判所または事務所からの公の記録またはその写しを再審査すること、

    (f) 所定の他の事項。

    解説…証人の出廷を強制することに関しては、著作権局長または著作権審判委員会の管轄地域の境界は、インドの国境とする。

    第75条 著作権局長および著作権審判委員会が可決した金銭支払命令は命令として執行できること

     著作権局長もしくは著作権審判委員会が金銭の支払について本法に基づき発する命令または著作権審判委員会のかかる命令に対する上訴において高等裁判所が発する命令は、著作権局長、著作権審判委員会または高等裁判所書記長が発行する証明書によるものとし、民事裁判所の命令とみなし、また、当該裁判所の命令と同様に執行可能とする。

    第76条 善意に行われた行為の保護

     いかなる訴訟または他の法的手続も、本法に従って善意に行われまたは行うことを意図された事由に関しては何人に対しても行うことはできない。

    第77条 公務員となる一定の者

     本法に基づき任命される各担当官および著作権審判委員会の各構成員は、インド刑法(1860年第45号)第21条の意味における公務員とみなす。

    第78条 規則を制定する権限

    (1)  中央政府は、官報における通知により、本法の目的を実施するための規則を制定することができる。

    (2)  特に、上記権限の一般性を損なうことなく、中央政府は以下の全部またはいずれかにつき規定する規則を制定することができる。

    (a) 著作権審判委員会の議長および他の構成員の任期および就任条件、

    (b) 本法に基づき行われる申立ておよび申請の書式ならびに付与される利用許諾、

    (c) 著作権局長の面前で行われる手続に関連してとられる手続、

    (ca) 第33条第(2)項に基づく申請書の提出の条件、

    (cb) 第33条第(3)項に基づき著作権団体が登録できる条件、

    (cc) 第33条第(4)項に基づく登録取消しの調査、

    (cd) 第34条第(1)項第(a)号に基づき著作権団体が許可を受諾できる条件および権利者が同項第(d)号に基づき許可を取消す権利を有する条件、

    (ce) 第34条第(3)項に基づき著作権団体が利用許諾を発行し、料金を徴収しまたかかる料金を権利者間で分配する条件、

    (cf) 第35条第(1)項に基づき料金の徴収および分配、料金として徴収された額の利用の許可、権利の管理に関連する活動につき情報を権利者に提供することに関する権利者の許可の条件、

    (cg) 第36条第(1)項に基づき著作権団体が著作権局長に提出すべき申告書、

    (d) 本法に基づき支払うべき使用料を決定する方法およびかかる使用料の支払につきとるべき担保、

    (da) 第52条第(1)項第(j)号に基づく使用料の支払の方法、

    (db) 第52B条第(1)項に基づく、著作権団体が会計および他の関連する記録を保管しまた年次会計報告書を作成する書式および方法、ならびに個々の権利者に支払うべき報償分配金を支払うべき方法、

    (e) 本法に基づき保管すべき著作権登録簿の書式およびこれに記載すべき明細、

    (f) 著作権局長および著作権審判委員会が民事裁判所の権限を有すべき事項、

    (g) 本法に基づき支払うべき料金、

    (h) 著作権局の事務および本法が著作権局長の指示または管理下におく全ての事項に関する規則。

    (3)  本条に基づき制定される各規定は、可及的速やかにその制定後、議会の議院にその会期中に合計30日間(1会期または2以上の継続する会期からなる)提出されるものとし、上記の会期の直後の会期の満了前に、両議院が規定を修正することに合意しまたは両議院が規則を制定しないことに合意する場合には、当該規定は以後かかる修正された形式にて効力を有しまたは効力を有しないものとする。しかし、かかる修正または無効は、当該規定に基づき以前に行われた事項の効力を損なわないものとする。

    第79条 廃止、時限および経過規定

    (1)  1914年インド著作権法(1914年第3号)および連合王国議会が可決し1914年インド著作権法(1914年第3号)によりインドへの適用につき修正された1911年著作権法は、ここに廃止する。

    (2)  本法の施行前に行為を行い、これにより、当該時点において合法であった態様にてまたは当該時点において本法の施行がなければ合法であった著作物の複製もしくは実演の目的のためにもしくはこれを目的として行った著作物の複製または実演に関連して、出費または債務を負担した場合には、本条のいかなる文言も、当該日において存続し価値を有していた行為から生じまたはこれに関連する権利または利益を減少させまたは損なわないものとするが、本法により当該複製または実演を制限できることとなった者が合意に達しない場合には著作権審判委員会が決定する補償を支払うことに同意したときはこの限りではない。

    (3)  著作権は、第(1)項により廃止された法に基づき本法の施行直前に著作権が付与されていなかった著作物に対しては、本法により付与されないものとする。

    (4)  本法の施行直前に著作物に対する著作権が付与されていた場合には、かかる著作権を構成する権利は、当該施行の日以降は、当該著作物が属する種類の著作物に関して第14条に定める権利とし、同条により新たな権利が認められる場合には、当該権利の保有者は、

    (a) 当該著作物に対する著作権の全部が本法の施行前に譲渡された場合には、譲受人またはその承継人とし、

    (b) その他の場合には、第(1)項により廃止された法に基づき当該著作物の最初の著作権者であった者またはその法定代理人とする。

    (5)  本法に別段の定めある場合を除き、本法の施行の直前に著作物に対する著作権またはかかる著作権に対する権利または当該権利に対する利益を受けることのできた場合には、本法が発効しなかったとすればこれらを享受していた期間中、かかる権利または利益を受けることができる。

    (6)  本法に含まれるいかなる文言も、その施行前に行われた行為がかかる侵害を構成していなかった場合には、これを著作権の侵害とするものとみなさない。

    (7)  本条に別段の定めある場合を除き、本条のいかなる文言も、廃止の効力に関して1897年一般規定法(1897年第10号)の適用に影響するものとみなされない。




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