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    施行細則(NGHI DINH)

    2006年9月21日に発効する政府の100/2006/NDCP
    ベトナム社会主義共和国の著作者の権利および関連権に関する民法典、
    知的財産法典の若干の条文について詳細を定め、施行を指導する細則



    政府

    2001年12月25日において発効された政府組織法典に基づき、
    2005年6月14日において発効された民法典に基づき、
    2005年11月29日において発効された知的財産法典に基づき、
    文化通信大臣の提議を配慮した上で、


    細則


    第1章 総則(一般諸規定)

    1条 適用範囲
     本細則は、民法または知的財産法の若干の条文を詳細に規定し、施行に必要な内容を説明する。
     
    2条 適用対象
     本細則は、著作者の権利および関連権に関する活動を行うベトナムの組織、個人、または外国の組織若しくは個人に対して適用される。
     
    3条 著作者の権利、関連権の保護
     著作者の権利の保護は、民法第738条、知的財産法第18条、19条、20条に定められた文学・芸術・学術の著作物に対する著作者の諸権利を保護することをいう。
     関連権の保護は、民法第745条、746条、747条、748条および知的財産法第29条、30条、31条に定められた実演会に対する実演家の諸権利、録音物・収録物に対する録音物・収録物の製作者 *1 の諸権利、放送番組またはコード化されたコンテンツの衛星信号に対する放送組織の諸権利を保護することをいう。
     
    4条 用語説明
     本細則では、以下の用語は、以下の通りに理解される。
     遺稿著作物は、著作者の死後初めて公表される著作物をいう。
     無名著作物は、著作物が公表される時に、その著作者の名称(実名または筆名)が付されてない著作物をいう*2
     著作物の原本は、著作物の創作成果が、初めて固定され、有体物上に存在するもの*3をいう。
     著作物の複製物は、著作物の一部分または全部を、直接または間接に複製されたものをいう。著作物の複写(sao chup)も、著作物の複製物である*4
     固定は、文字、その他の記字、ライン、形状、配列、色彩、音、映像により表現すること、または、認識し、複写若しくは伝達することができるように、一定の有体物の下で音と映像の再現をすることをいう。
     録音物、収録物は、実演会の音若しくは映像、またはその他の音若しくは映像を固定したもの、または固定形式の下ではない音若しくは映像、またはその他の視聴覚の著作物につける音または映像の再現を固定することである*5
     録音物、収録物の複写物は、録音物、収録物の一部または全部を直接にまたは間接に複写されたものをいう。
     固定された実演会または録音物、収録物の公表は、関連権の保有者の許諾を受け、固定された実演会または録音物、収録物の複写物を公衆に提供することをいう。
     再放送は、ある放送組織が他の放送組織の放送番組を同時に放送することをいう。転送することも、再放送である*6
    10  コード化されたコンテンツの衛星信号は、放送番組の違法な受信を抑止するため、音若しくは映像の特性またはそれら両者の特性が変更されたものであって、衛星によって伝達される番組コンテンツの信号である。

    *1 製作者は、基本的には出資者であるが、細則19条1項第2文は、題号を付与する権利を「製作者」に対して認めている。本来は、制作サイドのプロデューサー(統括者)と分離されるべき「製作者」と混同した規定ぶりと思われる。おそらく、映画に対する国家の規制のため、両者を区別する実益がなかった時期が長く続いたためであろう。
    *2 戦争のときに有名な詩に、TTKHと署名されていた例があり、著作者が誰か知らないが無名著作物と意識されていない。なお、欠名という訳語はとらないこととした。
    *3 「定型化」という訳語でもよい内容である。
    *4 chupは写真を撮る意味であり、Ban sao chupが、再製コピー。chepが書き写す。Saoが同じものをつくることをさす。Giong y duc は外見だけ同じ(そっくり似ている、ないし同じ型から生産された)ことをいう。なお、5項は本来、音と映像を再現できるような有体物をつくる行為を「固定」と定義すべきものであると思われるが、規定の文言が、音と映像の再現行為を「固定」と読める言語になっているので、そのまま訳した。
    *5 もの(ban)と「こと」(viec)が並存している原語になっているため、そのまま翻訳した。
    *6 「同時」と狭い定義がされているが、Tiep Songは、他社の放送番組を受信して、それを自らの番組として放送(転送)を行うことを指している。直訳すると、Tiep Song は続波とでも言うことができる用語<辞書用語ではない>。
     
    5条 著作者の権利および関連権に関する国家の政策
     知的財産法第8条2項・3項・4項に定められた著作者の権利および関連権に関する国家の政策には、以下の内容を含む。
     経済社会の発展に貢献するため、公共の利益に応じる思想、学術または芸術の価値を有する著作物、実演会、録音物、収録物、放送番組を普及させる任務を担当する国家機関、組織に対して、著作権の購入のために資金を補助する。
     文化通信省が管轄し、財務省、計画投資省、またはこれに関連する機関と協同して、著作権購入をめぐる財政企画提案(資金計画と財源)とその実施体制を指導する。
     文化通信省は、中央機関または組織に対して、著作権購入の補助対象に属する著作物のリストをチェックして、承認する。プロビンス人民委員会は、地方の機関または組織に対して、著作権購入の補助対象に属する著作物リストをチェックして、承認する。
     中央から地方まで、著作者の権利および関連権の管理と保護実施を担当する幹部、職員、公務員に対する投資、訓練、育成を優先的に行う。
     著作者の権利および関連権の集中管理組織活動において、自己の権利保護を担当する幹部に訓練、育成を行うことに集中する。
     著作者の権利および関連権の保護についての法律、体制、政策、科学技術テクノロジーや方法の応用に関する科学研究をテーマとする事業を優先的に行う。
     各級学校の系統において、著作者の権利および関連権に関する知識の教育を強化する。
     教育訓練省が管轄し、文化通信省と協同して、大学、短期大学、専門学校の教育プログラムに著作者の権利および関連権に関する講義内容を導入する。

    6条 著作者の権利および関連権に関する国家管理の内容および責任
     政府は、著作者の権利および関連権について、一括して国家管理を行う。
     政府に対して、著作者の権利および関連権の国家管理の責任を担当する文化通信省は、以下の任務または権限を有する。
      a)  著作者の権利および関連権の戦略、法律、体制、政策を提案し、実施を命令する。
    b)  法律の規定に基づき、著作者の権利および関連権に関する法律文書を発行し、組織し、実施の指導(説明)を行う。
    c)  著作者の権利、関連権の保護分野において、国家、組織および個人の合法的な権利を保護する方法を実施する。
    d)  法律の規定に基づき、国家に属する著作物(コンピュータプログラムおよびデータ収集物を含む)に対する著作者の権利、実演会の録音物、収録物、および放送番組に対する関連権を管理する。
    dd)  著作物に対する著作者の権利、実演会、録音物、収録物、放送番組に対する関連権に関して、提供、協力、注文、または権利保護の確保について規定する。
    e)  著作者の権利および関連権に関する体制を作り、管理する。著作者の権利および関連権に関する幹部の訓練と育成を行う
    g)  著作者の権利および関連権の集中管理組織の活動を管理する。
    h)  著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書を発行し、再発行し、変更し、廃止し、または著作者の権利登録証明、関連権登録証明に関するその他の手続を行う。
    i)  著作者の権利および関連権についての国家登録簿を作成し、管理する。
    k)  著作者の権利および関連権に関する公報を出版し、発行する。
    l)  著作者の権利および関連権に関する知識、法律、体制、政策の教育、宣伝、普及活動または情報統計活動を行い、命令する。
    m)  著作者の権利および関連権に関する鑑定活動を行い、管理する。
    n)  著作者の権利および関連権に関する違法性を検査し、調査し、処分する。著作者の権利および関連権に関する苦情申し立て、告発を解決する。
    o)  著作者の権利および関連権に関する国際協力を行う。
     文化通信省が管轄する著作者の権利および関連権に関する国家管理において、各省、これと同等の機関、政府に属する機関、およびプロビンス人民委員会と中央市人民委員会(以下はプロビンスレベルの人民委員会とよぶ)と協同することについて、政府に対して責任を有する。
     文化通信省の機関である文学芸術著作権局は、文化通信省大臣に著作者の権利および関連権に関する国家管理の任務実施を支援する。文化通信省大臣は、著作者の権利および関連権の国家管理の実施について、文学芸術著作権局の任務と権限を具体的に定める。
     文化通信省は、科学技術省と協同し、知的財産権保護に関する一般的な主張、政策、法律を提案し、知的財産に関する一般的な情報を統括し、知的財産に関する一般的な国際協力プロジェクトを実施し、または政府の命令に従って、他の一般的事項を遂行する。
     各省、これと同等の機関、政府に属する機関、プロビンスレベルの人民委員会は、自らの任務、権限の範囲以内で、著作者の権利および関連権の国家管理において、文化通信省と協同する責任を有する。
     
    7条 プロビンスレベルの人民委員会の国家管理の権限
     プロビンスレベルの人民委員会は、以下の任務および権限を有する。
      a)  該地方において、著作者の権利および関連権についての法律の規定の実施を指導すること。
    b)  当該地方の特徴、状況に応じて、著作者の権利および関連権についての法律の規定、政策制度の実施を案内し指導するため、自らの権限に基づき、文書を発行すること。
    c)  当該地方において、著作者の権利および関連権の保護活動を行うこと。すなわち、著作者の権利若しくは関連権およびこれらに関する国家、組織または個人の合法的な権利・利益を保護するための手段を実現する。
    d)  当該地方において、著作者の権利および関連権に関する苦情申し立て、告発ならびに法律の規定に違反する行為につき、権限を有する範囲において調査、検査若しくは処分を行うこと。
    dd)  自己の権限の範囲に基づき、かつ法律の規定に従って、著作者の権利または関連権の登録申請を指導し、受理すること。
    e)  文化通信省、著作者の権利および関連権の保護活動において関連する他の省庁、プロビンスレベルの人民委員会と協同すること。
     当該地方の文化通信局は、著作者の権利および関連権に関する国家管理機能の実施について、プロビンスレベルの人民委員会を支援すること。   プロビンスレベルの人民委員会委員長は、著作者の権利および関連権についての国家管理実施において当該地方の文化通信局、県およびコミューンの人民委員会の機能、任務または権限の内容を具体的に規定する。

     
    第2章 著作者の権利

    8条 著作者
     著作者は、文学、芸術および学術の著作物の一部または全部を直接に創作した者であり、以下の場合を含む。
      a)  著作者の権利が保護される著作物を有するベトナムの個人。
    b)  ベトナムにおいて、一定の有体物に創作され表現される著作物を有する外国の個人*6-1
    c)  ベトナムにおいて最初に公表される著作物を有する外国の個人。
    d)  ベトナムが加盟している著作者の権利のかかる国際条約に基づき、条約によってベトナムにおいて保護される著作物を有する外国の個人。
     他人が著作物を創作するため、支援、意見提供、または資料提供を担当する組織または個人は、著作者と認められない。
     
    9条 その他の記字によって表現される著作物
     知的財産法第14条1項a)に定められたその他の記字によって表現される著作物は、視覚障害者に対する点字、速記の記号、またはその他これに類する記字等であって、当該表現にアクセスする者が異なる形式によって複写することができるような文字に代わる記号によって表現される著作物をいう。
     
    10条 講義、スピーチ、その他の講演
     知的財産法第14条1項b)に定められた講義、スピーチ、その他の講演は、口述によって表現され、一定の物質形式の下で固定されなければならない著作物類型をいう。
     
    11条 新聞雑誌の著作物
     知的財産法第14条1項c)に定められた新聞雑誌の著作物は、印刷ニュース、口述ニュース*7 、映像ニュース、電子ニュースまたはその他のメディアに載せるための報道、ニュース速報、ニュースストーリー*8 、インタビュー、反映*9 、調査、評論、社説、専門的内容の説明、新聞・雑誌の記事、またはその他のニュース雑誌類をいう。

    *6-1 8条1項b)は、外国の個人に対してのみ、有体物への固定が要求されているものと解釈でき、そうだとすればベルヌ条約違反の可能性が高い規定である。
    *7 例えば、ラジオニュース等を指す。ちなみに、新聞はメディアに載せるためという内容を指す一般的用語で、印刷メディアによるニュースを印刷新聞と呼ぶ。中国語でも同様の発想がとられている。
    *8 CNNなどでは、新しい速報性のあるニュースと、報道から時間が経った内容を呼び分けており、後者をストーリーと呼んでいる。これは、この後者に相当する用語が用いられている。
    *9 政府担当部局や関連して権限を有する者に対して、事実関係を確認した情報を提供する行為。表現の自由が制限されているために報道できないという事情が生じたときに、改善策として残したものではないかと思われる。
     
    12条 音楽の著作物
     知的財産法14条1項d)に定められた音楽の著作物は、演奏されるか演奏されないかを問わず、楽譜に記載された音符、またはその他の音楽記号によって表現される著作物であって、歌詞が付されたものと、歌詞が付されていない著作物をいう。

    13条 舞台の著作物
     知的財産法第14条1項dd)に定められた舞台の著作物は、演劇(芝居、舞踊劇、オペラ、無言劇)、サーカス、舞踊、人形劇、またはその他の舞台類型の著作物を含む演劇的な著作物類型をいう。

    14条 映像の著作物
     知的財産法第14条1項e)に定められた映画の著作物またはこれに類似する方法によって創作される著作物は、連続する複数映像合成によって視覚的効果を生み出し、音を含むか否かを問わず、一定の素材によって表現され、技術的設備によって、公衆に頒布し、公衆に伝達することができる著作物をいう。ドラマ、ドキュメンタリー、科学フィルム、アニメまたはその他類似する表現類型を含むものとする。
     
    15条 美術および応用美術の著作物
     知的財産法第14条1項g)に定められた美術の著作物は、原作品*10により存在する絵画、グラフィック、彫刻、空間芸術、またはこれらに類似する表現形式のような、ライン、色彩、形状、配列によって表現される著作物をいう。ただし、グラフィックは、第50番目のバージョンまで表現される可能性があり、版毎の番号、著作者の署名が存するものをいう。
     知的財産法第14条1項g)に定められた美術・応用美術の著作物は、図案、手工芸による美術工芸品、商品または商品の包装上の表現のように、実用的機能を有する実用品に付したライン、色彩、形状、配列によって表現された手作りまたは機械で量産される著作物である。

    *10 読本、独本などとも呼ばれる唯一のものという意味。4条3項の「原本」とは異なる語。
     
    16条 写真の著作物
     知的財産法第14条1項h)に定められた写真の著作物は、感光素材の上、または映像が作り出される手段若しくはその他の技術的方法(化学的、電子的またはその他の方法)により作り出される可能性がある手段によって、客観世界の映像を表現する著作物をいう。
     映画の著作物または映画に類似する著作物から引用される静止映像は、写真の著作物ではなく、当該映像の著作物の一部とみなす。
     
    17条 建築の著作物
     知的財産法第14条1項i)に定められた建築の著作物は、形式を問わず、建築済みまたは未建築の建築物、工作物、空間デザイン(建築デザイン)をめぐる創作的アイディアを表現する設計図をいう*11。建築の著作物は、位置図、立面図、平面図、装飾についての設計図面を含み、建築物、工作物、複合建築(コンプレックス)、空間配置、ある地域・都市・都市システム・都市機能区*12・農村住民区の景色建築をめぐる創作的アイディアを表現する。
     建築物、工作物、空間デザインをめぐる模型、ジオラマは、独自の建築の著作物と認められる。

    *11 建築著作物=設計図という規定。
    *12 ニュータウン。建築著作物の定義として、都市計画そのものを含むきわめて広い用語を採用している。なお、都市システムは、おそらく、都市と都市の結び付け方等を指すものと思われる。政府担当者が企画(都市計画)を担当することに批判がつよいため、民間コンペを導入する傾向があり、それを著作物と考えているらしい。
     
    18条 地図、図面、マップ、描画された物の著作物
     知的財産法第14条1項k)に定められた地図、図面、マップ、描画された物の著作物は、地形、学術または技術作品に関する地図、図面、マップ、描画された物を含む。
     
    19条 映像の著作物、舞台の著作物に対する著作者の権利
     映像、舞台の著作物は、著作者の集団により創作される。知的財産法第21条1項に定められた映像の著作物、舞台の著作物の創作に参加する者は、知的財産法第19条1項、2項、4項に定められた規定に基づき、自らが創作した部分に対して人格権を有する。
     監督、脚本家は、映像の著作物について、知的財産法第19条1項に定められた題号を付与する権利を行使し、または知的財産法第19条4項に定められた映像の著作物の脚本の編集について合意することができる。
     知的財産法第21条2項に定められた映像の著作物の製作、舞台の著作物の企画製作に金銭的、物質的、または技術的施設に投資した組織または個人は、知的財産法第19条3項、20条に定められた権利の保有者である。
     映像の著作物の製作、舞台の著作物の企画製作に金銭的、物質的または技術的施設に投資した組織または個人は、知的財産法第19条3項、20条に定められた権利の行使および知的財産法第21条3項に定められた義務の履行について合意することができる。

    20条 フォークロアの文学と芸術の著作物の利用
     知的財産法第23条1項a)、b)、c)に定められたフォークロアの文学と芸術の著作物は、固定によらず保護される。
     知的財産法第23条2項に定められたフォークロアの文学と芸術の著作物の利用は、当該フォークロアの文学と芸術の著作物の本来の価値を研究・収集・紹介することをいう。
     本条2項に定められたフォークロアの文学と芸術の著作物の利用者は、フォークロアの文学と芸術の著作物を保存する者に対して報酬の支払いに合意しなければならず、自らが研究・収集・紹介した部分に対する著作者の権利を有する。
     知的財産法第23条2項に定められたフォークロアの文学と芸術の著作物の類型にかかる由来の明示は、フォークロアの文学と芸術の著作物が形成されたコミュニティの地名を明示することである。
     
    21条 著作者の権利の保護範囲に属しない対象
     知的財産法第15条1項に定められた情報提供のみを目的とする時事の報道は創作性がなく、情報提供のみを目的とする毎日の短い通信情報*13である。
     知的財産法第15条2項に定められた行政文書は、国家機関、政治組織、政治社会組織、政治社会職業組織、社会組織、社会職業組織、経済組織、人民武装単位*14または法律の規定に基づくその他の組織の文書を含む。

    *13 中国著作権法実施条例5条1項では、新聞、日刊、ラジオ、テレビ局等の媒体を通じて報道された「単純事実情報」とされている。
    *14 警察を含む。
     
    22条 人格権
     知的財産法第19条1項に定められた著作物に対して題号を付与する権利は、ある言語から他の言語に翻訳される著作物に適用されない。
     知的財産法第19条3項に定められた著作物を公表し、または他人に公表させる権利は、著作者、著作者の権利の保有者が実施し、または著作者または著作者の権利の保有者の許諾を受ける個人、組織の実施により著作物の本質に従って公衆の合理的な需要に応じる十分な複写物の数で公衆に著作物を発行することである。
     著作物を公表することは、舞台の著作物・映像の著作物・音楽著作物を上演すること、公衆の前に文学の著作物を口述すること、文学芸術の著作物を放送すること、美術・応用美術の著作物を展示すること、建築著作物を建築することを含まない。
     知的財産法第19条4項に定められた著作物の同一性を保護し、著作物の変更または切除を他人に行わせない権利は、著作者の合意がある場合を除き、他人に著作物の変更、切除を行わせないことをいう。
     コンピュータプログラムの著作者とコンピュータプログラムの製作の投資者は、コンピュータプログラムに題号を付すること、または改変することについて合意することができる
     
    23条 財産権
     知的財産法第20条1項b)に定められた公衆の面前で著作物を上演する権利は、直接に、または録音・収録番組若しくは公衆が接近できるあらゆる技術的手段を通じて、著作物を上演することについて、著作者の権利の保有者が独占的に行い、または他人に対して行わせることである。
     本項に規定する、公衆の面前で上演することには、家庭を除き、それ以外の場所で著作物を上演することを含む。
     知的財産法第20条1項c)に定められた複製権は、技術的手段または形式を問わず、著作者の権利の保有者が、著作物の複製物を作成することを独占的に行い、または他人に行わせる権利である。すなわち、頻繁にまたは臨時に電子的形式による著作物を保存することを含む。
     知的財産法第20条1項d)に定められた著作物の原本または複製物を頒布する権利は、著作物の原本または複製物の販売、貸与または他の譲渡について、公衆が接近できるあらゆる形式、技術的手段によって、著作者の権利の保有者が独占的に行い、又は他人に行わせる権利である。
     美術の著作物、写真の著作物に対して、頒布権は、公衆の面前で展示し、展覧することを含む*15
     知的財産法第20条1項dd)に定められた有線、無線の手段、電子ネット、またはその他の技術的手段により、公衆に対して当該著作物を伝達する権利は、公衆が自ら選択する場所、時間において、接近できる公衆に著作物またはその複写物を与えるため、著作者の権利の保有者が独占的に行い、または他人に行わせる権利である。
     知的財産法第20条1項e)に定められた映像の著作物、コンピュータプログラムの原本または複製物を貸与する権利は、時間的に制限された範囲で利用するための貸与を行うことについて、著作者の権利の保有者が独占的に行い、又は他人に行わせる権利である。
     交通手段およびその他の機械、技術的整備の通常運用に不可欠のコンピュータプログラムのように、貸与のための主要な対象ではないコンピュータプログラムについては、貸与権の規定を適用しない。

    *15 頒布は、原本も対象とされる。また、展示は見せること、展覧は、フェアー等で展示したものを販売することを主として意味しており、言語では異なる語が並列的に用いられている。
     
    24条 著作物の合理的な引用および複製物の輸入
     知的財産法第25条1項b)に定められた自分の著作物において評論または説明するため、著作者の意見をあやまることなく、著作物を合理的に引用することは、以下の条件に適合していなければならない。
      a)  引用する部分は、自分の著作物において紹介、評論またはとりあげた問題の明確化のみを目的とすること。
    b)  引用された著作物から引用された部分の数量または実質からみて、引用に用いられた著作物の著作者の権利を侵害しておらず、引用された著作物の類型の性質、特徴に適合していること。
     知的財産法第25条1項k)に定められた個人的に使用する目的で他人の著作物の複製物の輸入する行為は、1つを超えない場合にのみ適用する。
     知的財産法第25条1項に定められた場合における著作物の利用は、建築の著作物、美術の著作物、コンピュータプログラムを複製することに適用しない。
     
    25条 著作物の複製
     知的財産法第25条1項a)に定められた自ら複製・複写することは、営利を目的とせず個人の学術研究、講義の場合に適用する。
     知的財産法第25条1項dd)に定められた研究目的の行為のため、図書館に保管する目的で当該著作物を複製することは、1つを超えない複製を作成することである。デジタル著作物を含むが、図書館は、当該著作物を複製し、または公衆に頒布してはならない。
     
    26条 著作者の権利の保護期間
     遺稿の著作物について、知的財産法第19条3項に定められた財産権および人格権の保護期間は、当該著作物が最初に公表されたときから50年間である。
     知的財産法第27条2項a)に定められた写真の著作物、応用美術の著作物に対する知的財産法第19条3項に定められた財産権および人格権の保護期間は、当該著作物が最初に公表されたときから50年間である。著作物がまだ公表されない場合には、保護期間は、当該著作物が固定されたときから50年間である。
     知的財産法典が施行される2006年7月1日から、写真の著作物、応用美術の著作物に対する保護期間は、本条2項に定められた規定に従って計算される。
     
    27条 著作者の権利の保有者
     知的財産法第36条に規定された著作者の権利の保有者は、以下の場合を含む。
     ベトナムの組織、または個人。
     ベトナムにおいて有体物に創作、表現された著作物を有する外国の組織または個人。
     ベトナムにおいて初めて公開された著作物を有する外国の組織または個人。
     ベトナムが加盟している著作権についての国際条約に従ってベトナムにおいて保護される著作物を有する外国の組織または個人。
     
    28条 無名の著作物に対する著作者の権利の保有者
     知的財産法第42条1項a)定められた無名の著作物は、国家に帰属する。
     無名の著作物が、組織または個人に管理されている場合には、当該組織または個人は、保有者の権利*16を有する。
     著作物の真実の保有者の姓名が確定された場合は、保有者の姓名が確定される日から保有者の権利がその保有者に帰属する。
     
    29条 国家に帰属する著作物の利用
     知的財産法第42条1項a)、b)に定められた国家に帰属する著作物を利用するとき、本細則28条2項、3項に定められた場合を除き、組織または個人は以下の義務を履行しなければならない。
     
    a)  利用許諾を求める。
    b)  ロイヤルティ、報酬、またはその他の物質的権利について清算する。
    c)  普遍、流行する日*17から30日以内に著作物の複製物を1セット提出すること。
     組織または個人は、文学芸術著作権局において、本条1項に定められた義務を履行しなければならない。
     文学芸術著作権局は、知的財産法第42条1項c)に定められた組織・個人が有する著作者の権利国家が譲り受ける場合には、あらゆる形式につき、法律の規定に従って、責任を有する*18
     文化通信省と財務省は、本条1項b)に定められた財政管理制度について規定する。

    *16 意味としては、「著作者の権利」である。
    *17 公表とは異なる用語が用いられている。おそらく、国家管理実現のための手段を規定したものであろうが、複製物を伴わない場合には、c)の義務を履行することはできないので、不適切な規定である。
    *18 国が権利を承継した際に責任を文学芸術著作権局が負うという規定である。
     
    30条 公衆に属する著作物の利用
     知的財産法第43条に定められた公衆に属する著作物を利用する組織または個人は、知的財産法第19条1項、2項、4項に定められた人格権を尊重しなければならない。
     公衆に属する著作物に対する著作者の権利の保有者は、知的財産法第19条3項に定められた公表権または第20条に定められた財産権を享有することができない。
     国家機関、関連する権利義務を有する組織または個人は、保護期間が終了した著作物についての、知的財産法第19条1項・2項・4項に定められた人格権に侵害行為があったことを発見したとき、侵害行為を行う者に対して、侵害行為停止、謝罪広告、公開による訂正の強制、損害賠償を請求する権利を有し、管轄国家機関に苦情申し立て、告発または処分を請求する権利を有する。侵害の性質または程度によって、侵害行為を行う組織または個人は、行政的法律、民事法律、または刑事法によって処分される可能性がある。
     政治社会職業組織*19、社会職業組織、著作者の権利または関連権の集中管理組織は、保護期間が終了したメンバーの著作物について、人格権の保護を管轄機関に対して求める権利を有する。

    *19 社会職業組織は、芸術品創作者の協会、政治社会職業組織は、新聞社・出版社協会等である。弁護士協会は、最近変更があり、従前、公務員との兼職が認められていたが、兼職が禁止されることとなった。





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