第10回 入賞事例

    これらの教育実践事例資料は、教育関係者が著作権教育を目的として、非営利で利用する場合に限り、自由にご利用いただけます。

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    著作物を活用したビジネス教育
    ― 地域ブランド価値向上を目指した著作権の管理と活用で、地域と連携した商業教育の実践 ―

    教諭 会津 拓也

    まずはこのような賞をいただき、ありがとうございます。全国のさまざまな著作権教育の実践の中で、商業高校の取り組みが選ばれたことは、本校教職員、そして商業を学ぶ生徒たちにとって自信と励みになります。 商業教育で学ぶべき著作権教育とは、著作者の権利を保護するだけでなく、使用許諾を得てそれを二次著作物として、実際にビジネスで活用するしくみを理解することであると、私は考えます。そのため自ら著作物を創造し、活用するほかに、商品開発で著作物を利用するために、地域社会に直接出向き、交渉する経験をさせたいと考え、今回の取り組みを行いました。また、アイディア一つで費用をかけずに体験的な活動を効果的に行えるといったメリットが著作権教育にはあると思います。 このような私たちの活動が実践事例として、多くの先生方の目に触れることは大変喜ばしいことです。ぜひ、これを機会に多くの先生方と交流するきっかけになることを願います。
    教育活動の概要 題名 著作物を活用したビジネス教育
    ― 地域ブランド価値向上を目指した著作権の管理と活用で、地域と連携した商業教育の実践 ―
    対象学年 高校2・3年生
    授業科目 マーケティング・課題研究
    授業時間数 40時間
    実施期間 平成26年4月~9月
    レポート・教材
    ねらい
    1. 創作者の視点と、使用者の視点から考えることで、ものごとを別の角度から捉えられる力を養う。
    2. 著作物の許諾に至るまでの流れを実体験し、ビジネスコミュニケーション能力を育成する。
    3. 商業教育で学ぶべき知的財産について、実践的な活動から理解を深める
    4. 知的財産を活用した商品開発を行うことで、ビジネスを行う上で留意すべき視点を理解する。
    内容・流れ
    1. 著作権の基礎的な知識の習得
      1. 5分でできる著作権教育
      2. 著作権に関する教育の実践事例の過去の事例
    2. 現状分析
    3. 調査活動
    4. 商品開発 著作物を活用して地域ブランド価値向上を目指す
    5. 著作物使用許諾申請 著作権契約書作成支援システムの活用
    6. 地域社会へ提案活動
    成果と課題
    1. 成果
      1. 著作物の使用許諾を得る体験から、著作物を保有する方々の思いを理解することができた。
      2. 著作物を二次著作物として、ビジネスで使用できるのか考えられるようになった。
    2. 課題
      著作物を利用する場面を経験して、あらたに作品のパロディというものの扱いが、わが国にとっても課題であることがわかった。引用についても今後の研究する必要がある。
    生徒の感想
    • 最初は人と接するのが苦手ではじめて出会う人に話しかけるのができなくて、なかなか思うように活動ができませんでした。著作権の許可をいただくためにお話をしたり、販売実習でチラシを配るときに声を出しながら配るのが緊張していて声が小さかったりしました。でも何度もやっているうちに、人前でも自分たちの思いを伝えたり、大きな声で宣伝したりすることができるようになりました。
      今回の活動で、その映画作品のストーリーの舞台になった場所が有名になることで、その地元の地域活性につながり、若者の地元離れを防ぐことができるのではないかと思いました。著作物を活用することで会話が生まれ、周りの人同士のつながりも強くなり、私たちの目指すしあわせなまちに繋がると思いました。
    • 僕は、3年生になってから、しあわせなまちプロジェクトに参加させていただきました。僕か今まで、こういった町の活動にはほとんど参加した経験がなく、やることがはじめてなことばかりで、失敗してしまうこともありました。僕は、葛飾区役所に直接リーちゃんの使用をお願いしたり、町の人たちに寅さんについてインタビューする活動を行いました。
      町が長い間大切にしてきたものを、僕たちが使っていいのかと思っていましたが、きちんと手続きを踏むことで、使用の許諾がえられたり、新しい活用方法で、まちの人に愛されるものになる経験ができて良かったです。寅さんのシルエットが使えなかったのが残念でしたが、そういうできなかったことを経験して、またどうしたらよいか考えてみると、その作品を勝手に使用したり変えたりしてはいけないことがよくわかるようになりました。そして、いろいろな方たちから許可をもらい、僕たちでも使うことができるということがわかり、著作権が身近に感じられるようになりました。
    • 自分は2年生から3年生にかけて、会話力がついたと思います。パっとその場で説明をする力がついたと思います。特に人前で著作権について説明するには、自分たちもその権利について理解していないとだめだということも実感しました。
      葛飾区の広報の方と話したときも、先生の助けはありましたが、わりとハキハキとしゃべれたと思います。そのような力は社会に出てからとても大切なものだと思うので、高校生のうちにそのような力をつけられてよかったと思い、大学に行ってもその力をより伸ばしていきたいと思います。
    • 僕は人前で自分の意見を発表するのが苦手だったのですが、この一年間で販売実習やインタビューを経験し、その苦手意識はなくなりました。
      特に商工会議所の方々に、私たちが作成した地元産業についてのイメージビデオの上映をお願いした時は、伝えたいことがうまくまとまらないまま行ったため。「なにがしたいのかわからない」などの厳しい意見をいただき、僕たちがいかに著作権のことを理解していないかわかりました。そして、自分たちの町の活性化のためにも活動しているのになかなか受け入れてもらえないという現状を学びました。しかし、それは同時に町の著作物が作者の思いだけではなく、それに携わった多くの人々の利益に大きくかかわってくることも理解できました。
      著作者を特定して使用許諾を得ることは、実はとても複雑だということもわかり、根気のいることだと思いました。そうやって日々著作権を管理している人がいて、私たちがきちんとした形で作品を楽しんでいることを理解しました。
      これからは、私たちが作ったキャラクターも多くの人に愛されるように成長してくれるとうれしいです。
    選考委員コメント

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