市立の図書館で子どもたちに対してお話し会(朗読サービス)を、視覚障害者など障害を持っている市民に録音物の提供などのサービスをしようと考えています。著作権で注意すべきことはありますか。
「朗読サービス」と言えば小さな子どもたちを対象にしたお話し会や視覚障害者など障害を持っている方々に対して朗読する対面朗読などがあります。

お話し会や対面朗読などのように一定の人数の利用者の前で、他人が発行している図書等を朗読することは、本来的には著作権の1つである「口述権」が働きます。口述とは「朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達することをいう。」と定義づけられておりますのでこの権利が働きます。

しかし、著作権法第38条の制限規定に該当すれば、権利者の許諾を得ず、自由にサービスができます。すなわち、(1)営利を目的としない、(2)聴衆から料金を徴収しない、(3)朗読する人に報酬が支払われない、という3つの条件が揃った場合がそれです。

図書館で、図書館員やボランティアの方たちが読み聞かせたりすることが、このような3条件に従って行われている限り、自由にできます。

2006年5月に社団法人日本書籍出版協会児童書部会など児童書四者懇談会が公表している「お話会・読み聞かせ団体等による著作物の利用について」という手引きによりますと、次のように記載されております。

 「営利を目的とせず、かつ観客から料金を受けず、かつ実演・口述する人(児童書を朗読する人)に報酬が支払われない場合に限り無許諾で利用できる。なお、本手引きにおいては、実演・口述する人への交通費等の支払い、ボランティアの交通費・昼食代および資料費、会場費等のお話し会の開催にかかわる経費に充当するために観客から料金を受ける場合は、無許諾で利用できることとします。」(社団法人日本書籍出版協会HP「ガイドライン」参照)

次に、「録音物の提供などのサービス」に移ります。

従来、点字図書館等が行う録音については、同じように著作権の制限規定により権利者に無断で行ってよいとされていました(著作権法第37条)が、種々問題点もありました。それが、2009年の著作権法の改正により立法的解決が図られております。

一つは、録音サービスなどを受けられる対象が、従来は、「視覚障害者」に限定されていましたが、今回の改正で、「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」に拡大されたことにより、発達障害や色覚障害など障害の種類によらず対象を広くしています。具体的には、「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」(社団法人日本図書館協会HP)をご覧ください。

二つ目には、従来、点字図書館等に限られていた「録音などのできる施設等」が、今回の改正で、大学図書館や公共図書館、更には、NPO法人などもできるようになり、図書館員やボランティアの方々が従来行っていた権利者を探して許諾を求めるという煩わしさから解放されました。

更に、利用方法についても、従来の録音に限定されていたものを、複製一般やパソコンによる送信なども認めましたので、録音のほか、布の絵本にしたり、立体絵本にしたり、色を変更した書籍にするなど提供を受ける個々の障害者の障害の種類や程度に応じて、必要な方式での提供が可能となりました。

ただし、有名な俳優や声優の方々が、名作を朗読し、それをCDなどで販売している例がありますが、そのような著作物等については、著作権者、出版権者等の利益を損なうことになりかねませんので、この規定は適用されません。この点はご注意ください。

なお、聴覚障害者等のために、音声を字幕等により複製、送信したり、貸出目的で映像に字幕等を付して複製することなども、新たに図書館等ができるように改正されました(著作権法第37条の2)。