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1.試験問題としての複製
学力その他の能力を試験したり、検定するために作成される試験問題は、その目的上、事前に知られてはならないという特殊性があります。著作物を利用する場合には原則的に著作権者の許諾が必要ですが、試験問題を作成する場合には、このような特殊性から著作権者に連絡を取ることも困難です。そこで、著作権法では、公表された著作物を試験問題として複製する場合には、著作権者の許諾を得なくてもよいことを定めています(36条1項)。
この36条1項の要件を詳しく見てみましょう。[1]まず、利用する著作物は公表されたものでなければなりません。[2]次に、入学試験その他、人の学識技能に関する試験または検定に利用するという目的に立つものでなければなりません。例示されている入学試験だけではなく、学校であれば学期末の試験や日々の到達度を調べるドリルや小テストなども含まれますし、また、学校関係に限らず、各種の資格試験や技能検定、企業の入社試験なども対象となります。また、受験生用の模擬試験も試験の一種ですから、この規定の適用があります。ただし、模擬テストの場合など、その試験が営利目的である場合には、著作権者に通常の使用料に相当する額の補償金を支払わなければならないとされています(36条2項)。[3]さらに、利用できる方法は複製ですが、必要に応じて翻訳して利用することもできます。
以上のような要件を満たしていれば、著作権者の許諾を得なくても著作物を試験問題として複製して利用することができるわけです。設問の場合、ヒットしたアメリカ映画の台詞は言語の著作物として保護される著作物です。既に公開された映画であれば、その台詞も公表されたと解されますから、入試問題として台詞の一部を複製することは36条1項の適用があることになります。この場合、大学の入試問題であれば、営利目的には当たりませんから、補償金の支払いも必要ありません。
2.ヒアリング用の録音再生
上記の場合は、試験問題としてペーパーに複製する場合でしたが、関連して、語学の試験の場合によく使われるヒアリング・テストの場合を考えてみましょう。
ヒアリング用に映画の音声部分の一部を録音することに関しては、言語の著作物の著作権のほか、俳優の録音権(91条)やレコード製作者としての映画製作者の権利(96条)も視野に入れる必要がありますが、102条1項で36条の規定は実演やレコードにも準用されますから、ヒアリング用に録音物を作成することは36条の規定によって著作権者や実演家、レコード製作者の許諾を得なくても行うことができます。
なお、ヒアリング実施に際して、録音物を再生して受験生に聴かせることは、公の上演に当たる可能性がありますが、試験として行う場合には営利を目的としない上演(38条1項)に該当すると考えられますから、著作権者の許諾を得る必要はありません。また、実演家やレコード製作者には上演に関する権利がもともとありませんから、問題はありません。
3.試験問題集の出版
試験問題に著作物を利用することとは別に、試験問題自体が著作物になることもあります。入試問題集のような出版物に試験問題が掲載される際には、試験問題の著作権と試験問題に利用された著作物の著作権を分けて考える必要があります。36条はあくまでも試験などのために著作物を複製する場合に限って適用されるものですから、試験などを離れて出版物として利用する場合には36条の適用はありません。したがって、出版物を作成する者は、試験問題の著作権と試験問題に利用された著作物の著作権のそれぞれについて著作権者の許諾が必要になります。
また、試験問題作成者も試験問題として利用する限りにおいて他人の著作物を利用することができるだけで、利用した著作物について著作権を得たわけではありませんから、試験問題作成者が試験問題として利用された著作物についてその著作権者に代わって許諾を与えることはできません。このような必要な著作権処理は出版を行おうとしている者の責任で行わなくてはなりません。なお、試験問題中に他人の著作物を利用することが「引用」(32条1項)に該当する場合には、試験問題作成者の許諾だけを得ればよいことになりますが、これは試験問題に限らず、「引用」一般の話になってきます。
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