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題名は、著作権によって保護されないと聞きました。なぜでしょうか。これまでに裁判になったケースはあるのでしょうか。 |
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本や雑誌、映画やテレビ番組、あるいはCDなどの題名、タイトルなどは、著作権法上は「題号」と呼ばれています。
題号は、著作物の内容を象徴し、また、他の著作物と区別するために重要な役割を果たすもので、著作者は題号を決定するまでに相当の創意工夫をするのが通例でしょう。しかし、このように工夫してつけられた題号であっても、通常は著作物には該当せず、著作権による保護は与えられないと言われています。
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題号と著作物性 |
「著作物」は「思想又は感情の創作的表現」(法2条1項1号)ですが、題号はこの条件を満たさないと考えられているからです。題号の中にも、奇抜で特徴のあるものも見られますが、人を引きつけるための「アイデア」などの要素が強く、表現形式に重点がある著作物の考え方とは異なる次元のものと考えられています。むしろ、問題となる題号は、表現そのものよりは、ベストセラーになったり、話題性のある作品の場合などのようにその著作物が広く一般に知られ、そのことによって題号自体が一定の価値を持つに至った場合ではないでしょうか。著作権の本質は創作の保護にありますから、このような創作以外の事情によって生じた価値を保護するにはふさわしくないということも考えられます。
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題号と著作者人格権 |
このように、題号は著作物には当たりませんが、先ほど言いましたように、著作物を象徴する重要な役割を果たしており、著作物と密接な関係にあるために、著作権法でも限られた範囲で保護を与えています。
著作者の人格的利益を守るために定められている「著作者人格権」の中に「同一性保持権」という権利(法20条)があります。著作者は、この同一性保持権によって自分の著作物の題号が勝手に改変されることを防止することができるのです。ですから、たとえば、著作者がつけた題号を出版社が無断で変更したり、副題を追加したりした場合には著作者は同一性保持権侵害を理由にその出版の差止めや損害賠償を請求することもできるのです。
最近はあまり見かけませんが、翻訳物や外国映画の場合に原題と相当異なる日本題をつけて出版や劇場公開などをする場合もあります。契約や慣行で処理されているのでしょうが、無断で行えば、同一性保持権の問題となる可能性もあるのです。古い判例ですが、「Juli' 17」という原題を持つスイス人の書籍を「誰が世界大戦を製造したか」と題名を変えて発行した場合に著作者の人格的利益の侵害を認めた判決(東京地裁昭和10年12月7日)もあります。
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題号と不正競争防止法その他の法 |
著作権法上の同一性保持権が関係してくるのは、あくまでもその題号がつけられた著作物を利用することに伴って題号を変更する場合ですから、異なる著作物に同一または類似の題号をつけることは同一性保持権では対抗できません。しかし、全く対抗手段がないかと言えば、そうでもなく、いくつかの方法が考えられます。
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(1) 不正競争防止法による保護 |
不正競争防止法では、他人の商品等の表示として周知なものと同一又は類似の商品等の表示を使用することなどにより、他人の商品等と混同を生じさせる行為を不正競争に当たる(同法2条1項1号)として、周知の商品等の表示を元々使用している事業者は差止請求や損害賠償などの対抗手段を採ることができることを認めています。また、著名な表示の場合には、混同が生じるかどうかに関わりなく同様の対抗手段を採ることができることとされています(同2号)。これは他人が築き上げた名声や信用などの成果に「ただ乗り」しようとする行為を防止しようとするものです。先に述べたように問題となるには、表現自体よりも、特定の著作物と結びついて広く一般に知られた題号の場合ですから、題号の保護をこの観点からとらえることは十分考えられることです。最終的には採用されませんでしたが、現行著作権法の制定準備過程でも不正競争防止の観点から著作権法に防止措置を盛り込めるかどうか検討された経緯もあります。
不正競争防止法に基づく事件としては、小説「チャタレー夫人の恋人」について、元々の出版社の商号を用いて同一内容の書籍を類似の装幀で出版した業者の行為を不正競争に当たるとした事例(最高裁昭和33年3月27日判決)、著名なファッション雑誌「VOGUE」の名称を使用したベルト等の製造販売行為を不正競争に当たるとした事例(大阪地裁平成元年9月11日判決)があります。一方、不正競争に該当しないとした事例としては、雑誌の登録商標である「特選街」と雑誌の題号である「おとなの特選街」について、類似性が否定されたもの(東京地裁昭和62年10月23日判決)や、ラジオ番組の人気コーナーにつけられた「究極の選択」という題号と類似した題号の書籍の発行について、「究極の選択」は営業表示や商品表示には当たらないとしたもの(東京地裁平成2年2月28日決定)があります。
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| (2)商標法による保護 |
著作物も書籍等の商品として流通するわけですから、商品等の表示に関する商標法による保護はどうでしょうか。
特許庁の実務では、単行本の題名には原則として商標登録を否定するという方針を採っています。昭和22年に夏目漱石の著作権が保護期間満了により消滅する際に夏目家では
「漱石全集」その他の漱石作品の題号などを商標登録すべく特許庁に出願しました。この事件は著作権の代わりに商標権で権利を確保しようとした例で、出版界では大問題となり、結局、特許庁は出願を認めませんでした(漱石商標登録事件……この事件については鈴木敏夫「実学・著作権(上)」96頁以下に詳しい。)。しかし、定期刊行物の場合には商標登録が認められていますから、雑誌の名称の場合には商標権を利用することも考えられます。
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| (3)その他の手段 |
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以上の他にも、著作者の人格的利益の保護を理由として一般的な不法行為に基づく損害賠償を求めた事例があります。「父よ母よ!」というルポの題号と同一の題号を用いた書籍に関する裁判で、判決には至りませんでしたが、裁判長が「同一題号の書籍の出版が場合によっては人格的利益の侵害となる場合がある」という見解を出し、これに基づいて和解したというケースです(朝日新聞平成9年1月31日夕刊)。なお、「がんと丸山ワクチン」という書籍の題号について、放送番組「NHK特集がんと丸山ワクチン」は内容が同一であるとの印象を与え、著作者人格権、名誉権を侵害するという主張に対し、これを否定したケースもあります(東京地裁昭和57年11月22日判決)。
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