○著作権審議会国際小委員会中間報告の概要

    ~情報技術(IT)、電子商取引の進展に対応した国際著作権政策の在り方~
    平成12年7月 文化庁
    1 はじめに
    情報技術(IT)革命に伴うインターネットの発達などにより、著作物が国境を越えて自由に流通する時代を迎えている。また、音楽のネット配信のような電子商取引も急速に発展している。こうした中、著作権分野の国際的なルールを適切に策定し、実効性を持って運用することが、これまで以上に重要な課題となっている。

    こうした状況を踏まえ、著作権審議会では、1998年(平成10年)9月に第1小委員会国際専門部会(座長 齊藤博専修大学教授)を設置し、さらに1999年(平成11年)12月には同専門部会を国際小委員会(主査 同教授)に再編強化して、合計11回にわたり、国際的な著作権政策の在り方について審議を行ってきた。

    本中間報告は、情報技術(IT)、電子商取引の進展といった近年急速に変化する状況から生ずる様々な課題を総合的に整理した上で、今後国際的な著作権政策を展開していくに当たっての基本方針及び重点課題に関する施策の在り方を明らかにしようとしたものである。なお、本中間報告は、我が国の国際的な著作権政策に関する報告書として初めて取りまとめられたものである。

    2 著作権政策を巡る環境の変化
    (1) 「知恵の時代」の進展と創作活動の活性化
    21世紀は、「知恵の時代」とも言われ、知的な創作活動の成果が、豊かな文化を生み、経済活動を活発化することにより、社会を発展させてゆくこととなる。著作権制度は、創作活動にインセンティブを与えることを目的としており、今後重要性を増すと考えられる。

    (2) 情報技術(IT)革命と電子商取引の急速な発達
    [1] 情報技術(IT)革命のもたらす影響
    創作活動の成果である音楽、映画、コンピュータ・プログラムなどの著作物は無体物であり、デジタル・コンテンツ(情報の内容)として、情報技術(IT)に支えられたネットワークを通じても広範に伝達されることとなる。このため「知恵の時代」の進展に当たっては、情報技術(IT)革命が重要な役割を果たすこととなる。

    情報技術(IT)革命の特徴としては、インターネットなどの一般家庭への浸透、ネットワークの高速化、記録媒体の低コスト化、電子透かし技術などの著作権保護技術の発達などが挙げられる。こうした情報技術(IT)革命は、国境を越えたコンテンツの自由な流通を促すことになる。

    [2] 電子商取引(コンテンツ配信ビジネスなど)の発展
    情報技術(IT)革命に伴うネットワークの高速化、データ圧縮技術の発展などにより、商業ベースの音楽ネット配信が本格的に開始しているほか、ゲームソフトなどのコンピュータ・ソフトウェアもインターネットから購入されるようになってきている。また、今後、電子商取引の規模は、急速に拡大することが予想されている。

    [3] コンテンツ産業の急速な発達
    本年3月に(社)著作権情報センター(CRIC)附属著作権研究所が発表した調査結果によれば、我が国のソフトウェア業、レコード製作業、映画製作配給業などの著作権産業の付加価値額は10兆円を超え、電力、鉄鋼、自動車などの基幹産業と同等若しくは凌駕する規模を有しており、低成長時代にある我が国経済にあって、ますます重要性が高まっている。

    こうした状況を踏まえると、21世紀に向けて、「モノ」、「サービス」に加え、「コンテンツ」が、経済活動においてより重要な意味を持つことになると考えられる。

    (3) 高度情報化社会の制度的基盤としての著作権制度の重要性
    [1] 著作権の客体(権利の対象)の多様化
    著作権制度は、創作性という観点から、文化的、経済的な付加価値の高いコンテンツを幅広く保護しており、その対象は、コンピュータ・プログラムなど経済的財の性格が強い多様なものへと急速に拡大している。

    [2] 著作権の主体(権利者)の広がり
    情報技術(IT)革命の進展、電子商取引の普及により、一般の者が作成した著作物がネットワークを通じて流通するなど、これまで以上に著作権の主体(権利者)は、急速に拡大している。

    [3] 制度的基盤としての著作権制度
    著作権制度は、権利者あるいは利用者として関わる人の範囲が急速に広がるとともに、多くの産業分野に関連するようになるなどその対象が拡大しており、今後高度情報化社会における重要な制度的基盤の一つとしてその重要性がさらに増すと考えられる。

    [4] 重要性を増す国際的な視点
    今後はインターネットなどを通じて著作物が国境を越えて大量に流通することとなるため、更なる国際的な対応が必要となってきている。

    (4) 高度情報化社会の制度的基盤としての著作権制度の重要性
    [1] 実効性の確保を巡る環境の変化
    著作権関係者の多様化による保護の徹底の困難さ、権利侵害の捕捉及び裁判手続きの困難さ、権利侵害が生じた場合の被害の急速な拡大、技術進歩の展開の速さなどにより、法令に定められている権利が、現に実効性を持って保護されるのかという、著作権保護の実効性の確保が重要課題となっている。

    [2] 実効性向上に向けた施策の必要性
    保護をより確かなものとするためには、法令によるルール設定に加え、私契約による解決策、技術進歩による解決策なども視野に入れ、それぞれの施策が相俟って、適切な対価が支払われることも含め、十分な著作権保護が実現するよう幅のある政策展開が行われることが必要である。

    3 最近の国際的な政策動向
    (1) WIPO(世界知的所有権機関)における取組
    [1] WIPO新条約の策定及び実施
    WIPOにおいては、近年の急激なデジタル化・ネットワーク化に対応した国際的な著作権保護ルールとして、新たにインターネット条約とも呼ばれる「WIPO新条約」(「WIPO著作権条約」及び「WIPO実演・レコード条約」の二条約の総称。)が1996年(平成8年)12月に採択された。その主な内容は、インタラクティブ送信(双方向性送信)に関する規定、技術的手段に関する義務、権利管理情報に関する義務となっている。
    現在、WIPO新条約に対応した著作権法制の整備を行うことが各国の大きな課題になっており、我が国も、本条約上の義務を満たすべく1997年(平成9年)及び1999年(平成11年)に著作権法の改正を行ない、WIPO著作権条約に関しては、本年締結済みであり、WIPO実演・レコード条約についても、我が国が早期に締結を行うことが望まれる。

    [2] 「WIPOデジタル・アジェンダ」の公表

    WIPOは1999年(平成11年)9月に、電子商取引と知的所有権の問題について議論するため、「電子商取引と知的所有権に関する国際会議」を開催し、電子商取引に関連した知的所有権分野における重要課題として10項目から成る「WIPOデジタル・アジェンダ」を発表し、これらの課題に積極的に取り組んでいる。

    [3] 新たな条約策定に向けた交渉
    WIPO新条約に盛り込まれなかった、映像に関する実演家及び放送事業者の権利に関し、デジタル化・ネットワーク化に対応した新たな条約の作成に向けた検討が現在WIPOにおいて行われている。

    (2) WTO(世界貿易機関)における取組
    [1] TRIPS協定による著作権保護の途上国への拡大
    1995年(平成7年)に設立されたWTOのTRIPS協定(「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」)には、著作権を含む知的所有権の保護に関する義務が規定されている。開発途上国については2000年(平成12年)1月より履行義務が発生したところであり、本協定により、知的所有権の保護の範囲が、途上国も含めたよりグローバルなものになったといえる。また、途上国に対する法令レビューも行われている。

    [2] WTO紛争解決手続きによる二国間紛争の解決
    WTOでは、加盟国間の紛争を解決するため、専門家からなる小委員会(パネル)において審理を行うなどの手続きが設けられている。著作権分野に関する最近の紛争案件としては、ECが米国に対しTRIPS協定違反で提訴し、小委員会(パネル)より報告書が出された件がある。

    [3] 次期交渉(新ラウンド)における著作権の取り扱い
    WTOの新ラウンドにおける著作権の扱いに関しては、新たな技術発展に対応したTRIPS協定の見直し、フォークロア(民間伝承)及び伝統的知識の保護などに関し議論が行われているが、各国の意見に隔たりがある。

    (3) 欧米における政策動向
    [1] 米国の対応
    米国では、NII(全米情報基盤構想)に関する議論を経て、1998年(平成10年)10月、「デジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)」が策定された。同法は、WIPO新条約の締結のための立法措置を主な内容とするが、オンライン・サービス・プロバイダーの法的責任に関する規定を設けたほか、技術的手段に関する規定については、コピー・コントロール(著作物の複製の管理)に加え、条約上の義務にはなっていないアクセス・コントロール(著作物を見たり聞いたりするような使用・受信などの行為の管理)に関して規定を設けている。
    [2] EU(欧州連合)の対応
    欧州委員会は、WIPO新条約に対応するなどのため1997年(平成9年)12月に、「EU著作権指令案」を提案し、EU理事会で現在も検討が進められている。また、1998年(平成10年)11月、「電子商取引の法的側面に関するEU指令案」を提案し、2000年(平成12年)5月に欧州議会で承認された。この指令では、オンライン・サービス・プロバイダーの法的責任などについて、著作権分野に限らない横断的な制度を規定している。

    (4) 産業界の自主的な取組及び政策提言
    [1] 民間主導の電子商取引への自主的な取組
    1999年(平成11年)1月、電子商取引に関し産業界による自主的な国際ルール作りを推進することを目的とした国際的な民間団体として、「電子商取引に関するグローバル・ビジネス・ダイアログ(GBDe)」が設立され、知的所有権、準拠法、法的責任など9つの項目について討議が行われている。

    また、音楽分野においては、ネット配信時代における著作権保護システムの標準化を目指し、1998年(平成10年)10月に、SDMI(Secure Digital Music Initiative)と呼ばれる国際的なフォーラムが設立されている。

    [2] 民間からの政策提言
    GBDeは、電子商取引の発展に必要な最小限の法整備などに関し、各国政府や国際機関に対し民間サイドの討議の結果を積極的に提言している。 我が国においては、(社)経済団体連合会から、1999年(平成11年)7月に、「電子商取引の推進に関する提言」が発表されている。

    4 我が国の国際著作権政策の基本方針
    (1) 基本方針を検討する際の視点
    [1] グローバルな政策協調
    著作物の交流は国境を越えて行われることから、従来から著作物の保護と利用の確保も各国の法制の調和のもとに行われ、各国における文化振興に寄与してきた。しかしながら、近年インターネットの発達などにより著作物の国境を越えた流通が飛躍的に増加し、世界的な市場が成立してきたため、グローバルな枠組みの下で、各国の政策調和を図ることが不可欠になっている。

    [2] 文化振興、経済発展といった複合的視点の必要性
    著作物の経済的財としての側面が拡大するのに伴い、著作権に関する対外交渉は、著作権制度の法制的な調和を求めるだけでなく、通商問題化し、各国の経済的利害関係が交錯する場となっている。このため文化振興、更には産業、貿易振興といった複合的な観点から我が国の国益をどのように確保するかの視点が重要になっており、著作権者などの権利者団体に加え産業界とも緊密な連携を図ることが必要である。
    (2) 新たな政策課題の全体像とその性格
    [1] デジタル化・ネットワーク化への更なる対応
    著作権の分野では、他の政策分野に先駆けて、デジタル化・ネットワーク化に対応した国際ルールの策定を行ってきており、1996年(平成8年)にはWIPO新条約が作成された。なお、WIPO新条約に盛り込まれなかった映像に関する実演家及び放送事業者の分野については、現在条約策定に向けた検討が行われているところであり、早期の決着が望まれる。

    [2] 電子商取引に伴う新たな横断的課題への対応
    電子商取引の急速な発展に伴い、条約レベルの国際ルールが現時点では成立していない分野においても、各国の動向を踏まえつつ、迅速に政策の整合性確保を図る必要が出てきている。また、デジタル化・ネットワーク化への対応に当たっては、基本的に著作権法制分野の国際ルールの策定が中心であったが、電子商取引に対応するために必要な新たな施策は、他の法領域、他の行政分野における様々な横断的な施策との連携が必要となっているところに特色がある。

    [3] アジアに対する政策展開
    アジアなどの途上国において、音楽、映画、ゲームソフトなど我が国の著作物が大量に流通するとともに、一方で海賊版が作成され、我が国の権利者が損害を被っている実態がみられるため、アジアとの連携・協力の強化及び我が国著作物への侵害の防止(違法複製品対策)について、実効性の確保の視点から幅広い施策の展開が必要である。
    (3) 今後の政策実施に当たっての基本方針
    [1] 我が国からの政策発信
    情報技術(IT)革命、電子商取引の発展に伴い、国際的な枠組みによる著作権保護の重要性が増大していることに鑑みると、我が国から政策発信し、新たな国際的著作権保護の枠組み構築へ貢献することが重要である。

    [2] 知的所有権関係省庁間の連携の推進
    著作権など知的所有権に関し、対外施策の策定など、中長期的展望に立った総合的な政策立案と迅速な政策の実施を推進するに当たっては、著作権に関連した産業政策分野、他の知的所有権の政策分野とも連携を図ることが必要であり、文化庁と通商産業省など知的所有権関係省庁間の連携がこれまで以上に重要となっている。

    [3] 官民協調の促進
    産業全体の中で、著作権制度に関わる産業の比重及び重要性が高まってきていることから、創作活動の活性化と同時に産業振興の観点から、官民一体となった政策の立案・実施が、これまで以上に求められている。

    5 今後の重点課題に関する施策の在り方
    (1) 映像分野などにおける国際ルールの策定
    [1] 視聴覚的実演の国際ルール策定への参画
    ビデオ化、DVD化及び衛星放送の進展により、映画などの利用形態が多様化している。実演に関しては、WIPO実演・レコード条約において「音」に関する実演家のみについて権利が認められた。一方、視聴覚的実演すなわち「映像」に関する実演家については、本年12月に条約作成のための外交会議が開催されることとなっている。

    我が国としては、米、EU間で意見が対立している権利の移転問題に関し、両者の架け橋となる内容を提案するなど、積極的に参画してきたところであり、今後とも本年12月の外交会議に向けて、議論に貢献する必要がある。なお、外交会議に向けた対処方針作成に当たっては、映像の創作と円滑な利用の確保の観点から、国内において、関係団体、関係省庁などと緊密な連携を取ることが重要である。

    [2] 放送事業者の権利の在り方の検討
    WIPO実演・レコード条約においては、放送事業者の権利は対象とされなかったため、現在、WIPOにおいて放送事業者についてもデジタル化・ネットワーク化に対応した保護水準に改善することを目指した検討がなされている。我が国としても、WIPOにおける新たな国際ルール作りの議論の上で今後とも積極的な役割を果たしていくことが重要である。

    (2) 電子商取引に対応した政策展開
    [1] オンライン・サービス・プロバイダーの法的責任の明確化
    著作物のインターネット配信などが拡大するのに伴い、オンライン・サービス・プロバイダーがその利用者の権利侵害行為に対して負うべき法的責任に関するルールの策定が、電子商取引に関連する環境整備として重要になってきている。

    米国では、著作権侵害に関し直接責任が問われる場合には、損害賠償義務は故意・過失がなくても発生するため、「デジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)」において、サービス・プロバイダーの法的責任に関する規定を設け、ルールを明確化した。具体的には、ユーザーによりアップロードした素材の蓄積、システム・キャッシングにおける中間的・一時的蓄積などに関し、サービス・プロバイダーについて一定要件の下、著作権侵害による金銭的責任を免除している。また、ノーティス・テイクダウン(通知及び削除)の免責のための要件を規定しており、サービス・プロバイダーは、著作権者から一定要件を備えた著作権侵害主張の通知を受けた場合、速やかに素材を削除し、アクセスを禁止しなければならない。

    他方、EUは、2000年(平成12年)5月に欧州議会で承認された「電子商取引の法的側面に関するEU指令案」において、著作権だけでない分野横断的な視点から、サービス・プロバイダーの法的責任について規定している。

    我が国としても、WIPOなどの場を通じ、米国及びEUなどにおける制度整備の状況、国際的な議論の動向に関する情報収集を行いつつ、できるだけ早期に考え方を明らかにする必要がある。

    [2] データベースの取り扱いの検討
    著作権によって保護されないような創作性のないデータベースの保護に関しては、EUにおいてデータベースに対する投資に着目した保護が行われているほか、米国においても不正競争防止的なアプローチにより保護を行うための法案が議会で審議されている。我が国においても、欧米の政策動向を注視しつつ、保護の在り方の議論を適宜進める必要がある。

    [3] 国際私法上の課題(準拠法及び国際裁判管轄)への取組
    インターネットの普及に伴い、国境を越えた著作権侵害の紛争が発生する可能性が高まる中、国際的な紛争に関する準拠法・裁判管轄などに関するルールの整備がこれまで以上に重要になっている。

    準拠法に関しては、インターネットサーバーからの著作物の送信行為に関し、送信国の法令を適用するか(発信地主義)、受信国の法令を適用するか(受信地主義)といった問題に関し国際的な議論が必要である。

    国際裁判管轄に関しては、ハーグ国際私法会議において、民事訴訟全般に関する国際ルール策定に向けた議論が行われており、同会議の条約案においては、不法行為に係る裁判管轄に関し、行為地及び損害発生地が規定されているところ、その解釈などに関し、著作権の視点からも十分な議論が必要である。

    [4] 裁判外の紛争解決(ADR)の活用
    電子商取引が本格的に普及すると、インターネット上の著作権侵害などの紛争案件が増加することが予想されており、裁判手続以外の紛争解決(ADR:Alternative Dispute Resolution)のための、仲裁・調停制度に対するニーズが高まっており、我が国においても検討が必要である。また、インターネット・ドメインネームに関しWIPO仲裁・調停センターにおいて、オンラインによる紛争処理が進められているところ、著作権分野についてもオンラインの紛争処理の適用可能性につき検討する必要がある。

    [5] 電子的権利管理システム(ECMS)の発展
    インターネットの普及に伴い、電子商取引が一般化しつつある現状下においては、オンライン上で著作物の検索、権利処理などを行う電子的権利管理システム(ECMS:Electronic Copyright Management System)の発展が重要課題となっており、国際的にも様々なプロジェクトが進行している。

    民間のプロジェクトの国際的な互換性、相互接続のための支援策の展開と国際標準化を行うことが必要である。

    (3) アジア地域との連携の強化及び違法複製品対策
    アジアなどの途上国においては、我が国のCD、ゲームソフト、ビデオなどが大量に流通するとともに、一方で違法複製品(海賊版)による著作権侵害の事例が発生しており、途上国における著作権保護に向けた施策の更なる展開が必要になっている。

    [1] 対アジア施策を展開するに当たっての基礎的調査の実施
    アジアにおける我が国著作物の違法複製品(海賊版)に関し、効果的な政策を展開するため、関係団体、関係省庁などとも緊密な連携を図りつつ、具体的な侵害実態などの情報の把握を更に進める必要がある。


    [2] 途上国の著作権制度確立のための支援・協力と
      著作権教育及び普及啓蒙
    アジアの途上国などにおいて、著作権に対する意識を向上させるため、著作権思想の普及・啓蒙、著作権教育に関する支援を行う必要がある。また、開発途上国に関しては、TRIPS協定の遵守義務が本年より発生していることも踏まえ、著作権制度の整備支援、WIPO新条約加盟の促進のための働きかけを行う必要がある。さらに、遅れている著作権管理団体の設立・育成に向けた支援を行うことが重要である。

    [3] アジアにおける権利侵害への対応と
      権利管理システムの展開
    アジア地域を中心に我が国の著作物の著作権侵害及びコンテンツ産業の被害が報告されているため、我が国の権利者団体及び産業界から海賊版対策について要望が寄せられており、我が国の著作物の権利侵害などへの対応という視点も十分に踏まえた対応が必要となっている。また、インターネット上を中心とした著作物の円滑な利用と権利侵害防止を図るために、将来的な課題として、アジア地域における国際的な電子的権利管理システムの検討を行う必要がある。

    [4] APEC(アジア太平洋経済協力)及び
      二国間政策協議などを通じた多面的な政策展開
    対アジア政策の展開に当たっては、これまで実施してきた各種協力事業に加え、APECなどの多国間(マルチ)及び二国間(バイ)政策協議などの様々な政策手段の特性を生かしつつ、多面的な政策展開を実施していくことが必要となっている。

    6 おわりに
    この中間報告は、国際的な著作権政策の全体像及び今後の政策の在り方について大きな方向性を提言したものであり、個々の政策については国内法の改正につながる内容のものも多く、更に詳細な検討がなされる必要があることは言うまでもない。また、この中間報告に対して、広く各方面から御意見が寄せられることを期待する。


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