○ 文化審議会著作権分科会「審議経過の概要」について(概要)
    平成13年12月 文化審議会著作権分科会
    はじめに
    著作物の創作手段・利用手段等の普及、多種多様な著作物等の流通により、極めて多くの人々が著作権と関わりを持つ時代を迎えている。このような時代においては、[1] 権利に関する基本的な法制の整備、[2] 権利の実効性の確保・円滑な利用の促進(技術の活用、契約システムの改善、教育の充実)、[3] 司法救済制度の充実、[4] 国際的課題への積極的対応、といった広範な施策を総合的に推進することが必要。

    第1章 総括小委員会における審議の経過
    「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(仮称)」締結に伴う著作権法改正
    本条約(平成8年12月に世界知的所有権機関(WIPO)において採択)を早期に締結するため、この条約に規定されている「音の実演」に関する「実演家の人格権」(氏名表示権及び同一性保持権)の創設等の法整備を行うべき。
    著作権法制に関する基本的課題
    我が国の著作権法は、昭和45年の制定以来、経済、社会、技術等の変化に対応しつつ必要な改正を行ってきたが、従来の制度の基本的な部分を見直す必要もあるのではないか、という指摘もあるため、そのような見直しの必要性も含め、著作権法制の基本的な課題について改めて整理・検討を開始することとし、一部の事項については予備的な検討を開始。今後も引き続き、順次検討を進めていくことが必要。

    第2章 情報小委員会における審議の経過
    権利制限の見直しを検討する場合の具体的な視点
    権利制限に関する個別の課題について検討を行う際に共通して基本となる視点について、「許諾なしの利用を例外的に認める必要性の変化」を検討する上での視点、「条約上の条件」との関係の確認、権利制限に伴い必要となり得る「特別の規定」などについて、整理を行った。
    教育・図書館関係の権利制限の見直し
    「著作物等の教育目的の利用」及び「図書館等における著作物等の利用」の2つの課題について、小委員会の下に、それぞれワーキング・グループを設け、権利者・利用者双方の要望の確認、それらの要望に関する考え方の整理等の論点整理を行った。
    複製の範囲
    いわゆる「一時的蓄積」(コンピュータの「ランダム・アクセス・メモリー」(RAM)への著作物の蓄積等電源を切れば消去されるような蓄積)を、「複製」に該当するものとすべきか、という課題について、ワーキング・グループを設けて検討し、「複製権の対象とすることが適当な場合もあると思われる」が、他の権利等での対応が可能な場合などが多いため、「複製」の定義について現時点では法改正が必要とまでは言えないとの結論を得た。

    第3章 放送小委員会における審議の経過
    放送事業者等の権利の拡大
    放送事業者等から要望が出されている、「送信可能化権」「譲渡権・貸与権」「再有線放送権」の付与や、いわゆる「放送前信号」の保護、暗号化された放送の暗号解除の規制、などについて整理・検討。これらのうち、放送・有線放送を直接インターネット等で再送信する行為を防止するため、放送事業者・有線放送事業者に送信可能化権を付与する法整備を早急に行うことが必要との結論を得た。
    その他
    「受信者による録音を前提とした新しい形態の放送」に係る実演家・レコード製作者の権利の強化については、現在関係者間で行われている協議の状況を踏まえて検討を行うことが必要。また、放送番組の二次利用の促進については、適切な契約を行うことによって対応すべきとの結論を得た。

    第4章 国際小委員会における審議の経過
    現在WIPOにおいて検討されている国際条約に関すること、その他著作権に係る国際的な課題について検討。「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(仮称)」については、その早期締結が重要であることを確認。著作権をめぐる国際的な課題について、諸外国の動向も踏まえつつ、今後とも引き続き検討。

    おわりに
    各小委員会における検討の結果、放送事業者等への送信可能化権の付与及び「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(仮称)」締結のために必要な改正については、法制化が早急に必要であるとの結論を得た。

    一方、各小委員会において今後も検討を行うものと整理された課題(著作権法制に関する基本的課題、権利制限の在り方を中心とする情報通信技術の進展に対応した課題、放送・有線放送に関する著作権に係る課題、著作権をめぐる国際的な課題)については、平成14年以降も引き続き検討を進めることが必要。


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