○ 文化審議会著作権分科会「審議経過報告」について(概要)
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平成15年1月 文化審議会著作権分科会 |
はじめに |
「知的財産戦略大綱」「知的財産基本法」に示された政府全体の方針の中で著作権に関係する部分は、[1] 法律ルールの整備、[2] 円滑な流通の促進、[3] 国際的課題への対応、[4] 著作権教育の充実、[5] 司法救済制度の充実、の5分野に整理することができる。これら5つの分野について、5つの小委員会を設置し、知財戦略を具体化するための施策を検討。 |
第1章 法制問題小委員会 |
個別の権利の在り方に関する事項 |
| ○映画の著作物の保護期間の延長 |
映画の著作物の保護期間(公表後50年)と一般著作物の保護期間(著作者の生存期間+死後50年)との間の実質的な差異を解消することが適当。 (「映画の著作物」には、アニメ、ビデオ、映画、ゲームソフトなどが含まれる。) |
○「私的使用のための複製」によるオリジナルの中古市場への流通への対応 |
コピーコントロール技術の導入拡大やDVD型の技術の導入を権利者自身が早急に行うべき。当面は、「私的録音録画補償金制度」による対応も考えられる。 |
○「私的録音録画補償金制度」の見直し |
権利者、製造業者等の意見が対立しているため、当事者間協議の場の設置が必要。 |
権利制限の見直しに関する事項 |
(1) | 教育の情報化等に対応するため、「例外的な無許諾利用」の範囲を拡大[1] | コンピュータ教室等での「児童生徒」等によるコピー | [2] | 「遠隔授業」における教材等の送信 | [3] | 「インターネット試験」等での試験問題の送信 | [4] | 再生困難となった図書館資料の記録方式変換のためのコピー | [5] | ボランティア等による「拡大教科書」の作成 |
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(2) | 図書館からの貸出に係る補償金制度(いわゆる「公貸権(公共貸与権)」)の拡大
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(3) | 映像コンテンツの保護強化のため、「公衆向けのビデオ上映会」を例外的に無許諾で行える範囲を、学校における上映等に限定 |
引き続き検討する事項 |
「著作権法の単純化」「アクセス権の創設」等については、引き続き検討。 |
第2章 契約・流通小委員会 |
「ビジネスモデル」及び「契約システム」の構築に対する支援
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権利を保護しつつ著作物の流通を促進するため、適切な「ビジネスモデル」と「契約システム」の構築を支援することが必要。 |
権利者による「意思表示」のためのシステムの開発 |
権利者の意思を正確・簡単に伝えられる「意思表示システム」が必要。当面は、シンプルな「マーク」を策定し、段階的に普及していくべき。 |
「契約」に関わる法制の改正 |
ライセンス契約(著作物の利用許諾契約)におけるライセンシー(利用者)の保護等については、引き続き検討。 | |
第3章 国際小委員会 |
海賊版対策 |
アジア諸国を中心に流通している我が国著作物の海賊版を防止・撲滅するために、海賊版実態把握の強化や諸外国との戦略的連携など、7つの提言を行った。 |
インターネット上の著作権侵害に対する国際裁判管轄及び準拠法 |
国境を越えた著作権の侵害に対する国際裁判管轄及び準拠法の決定ルールについては、ベルヌ条約等既存の条約上の関連規定の明確化を図るなど、国際的な取組を進めるべき。 |
WIPOで検討中の新条約の議論への参画 |
現在WIPOで検討中の視聴覚的実演や放送機関に関する条約案の早期策定に向けて、我が国として積極的に貢献すべきである。特に、放送機関の権利については、早急に国内的な整理を行うべき。 |
第4章 著作権教育小委員会 |
著作権教育が目指すもの |
基本的な目標を「社会のすべての人々が、各人にとって必要な著作権についての知識や意識を持ち、知的創造活動の所産である著作物を創ったり、既にある著作物等の利用が適切に促進されること」としたうえで、「すべての人々」に係る目標、「学校教育」に係る目標、「大学教育」に係る目標等を具体的に示した。 |
第5章 司法救済制度小委員会 |
侵害行為の立証負担の軽減 |
被告が侵害行為を否認する場合には、被告自身が自己の行為を具体的に説明しなければならないこととする。 |
損害額の立証負担の軽減 |
「海賊版の販売数」×「正規品の単位当たり利益」を損害額として算定できる新たな「損害額算定制度」を導入する。 (海賊版の無料配布やネット配信などの場合も同様とする。) |
引き続き検討する事項 |
法定賠償制度、侵害の量の推定、弁護士費用の敗訴者負担、三倍賠償制度、権利侵害の対象となる行為の見直し、罰則の見直し、裁判外紛争解決等の在り方等については、引き続き検討。 |