(2) 集中的権利処理機構設立の経緯 |
著作権法改正作業を進めていた上院の司法委員会は、1975年(昭和50年)、その審議報告の中で、「新著作権法で許容される範囲を超えて、図書館等で複写業務を行う場合には、その著作権処理を適正に行える集中的なシステムを作ることが望ましい。」旨の勧告を行つた。
この勧告を受けた権利者である著作者及び出版者の団体は、利用者である図書館や情報センターとも話し合い、1977年(昭和52年)、著作物利用者から使用料を徴収する機関であるコピーライト・クリアランス・センター(Copyright Clearance Center:略称CCC)を設立した。そして、1978年(昭和53年)1月1日の新著作権法施行と同時に業務を開始し現在に至つている。 |
(3) 業務の範囲 |
CCCが取り扱う著作物の種類は、専門雑誌、論文集及びその他逐次刊行物に掲載された個々の記事及び論文である。単行本については、現在取扱いの対象からはずされており将来の課題とされている。取り扱う逐次刊行物の範囲に限定はないが、実際上、物理、化学等の自然科学系の学術関係のものが多い。
また、CCCが取り扱う逐次刊行物は、国内のものに限らない。CCCは、外国の出版者についても、この著作権処理システムへの参加を認めている。 |
(4)集中的権利処理の方法 |
〔機構〕 |
CCCは、民間の非営利法人であり、西ドイツの管理団体ヴオルトのように著作権を集中的に管理することにつき、特別な法律の規制を受けてはいない。CCCの創設に必要とした基金は、すべて民間の寄附金で賄われた。主として出版者からであるが、一部大手企業も寄附金を提供している。創設されたCCCを運営するのは、理事会及び諮問委員会であり、その委員構成は、出版者、著作者及び著作物利用者の代表者からなる。 |
〔権利委託の方法〕 |
CCCは、単なる使用料徴収及び分配の窓口にすぎず、著作権は通常、著作者から権利の譲渡を受けた出版者にある。 |
〔使用料徴収の方法〕 |
CCCは、同機構を利用しようとする権利者である出版者と著作物利用者である企業等が、CCCに登録することを前提にしている。すなわち、出版者は、その社名、出版物名、その出版物に掲載された著作物の使用料金等を、また、著作物利用者は、その機関名、担当者名等を、CCCに登録する。この場合、使用料の決定にはCCCは関与せず、権利者自身が決めることとなる。(現実には、各記事ごとに無料から15ドル(1ドル=約240円として約3,600円)までと幅があるが、標準としては2ドル(約480円)前後である。)。以上述べた登録の現状等を1980年(昭和55年)の統計でみると、CCCに登録している出版者は381社(その内150社(39%)は外国出版者であり、その半分はイギリスの出版者である。)で、登録出版物は3,790種である。また、利用者数は1,247団体であり、この内企業が過半数を占め、大学、研究所、官庁の順である。なお、使用料徴収総額は、1980年(昭和55年)─約33万ドル(7,920万円)、1981年(昭和56年)─約39万ドル(約9,360万円)そして1982年(昭和57年)─約62万ドル(約1億4,880万円)となつている。
CCCに登録した出版者は、刊行する出版物の巻頭又は発行人欄の近くに、使用料を支払えば複写を許諾するという内容の文章とともに所定の使用料コード(この使用料コードには、ISSN番号(International Standard Serial Number=国際標準逐次刊行物番号)、発行年及び著作物ごとの使用料に関する情報が含まれている。)を印刷する。なお、この方法は1983年(昭和58年)1月から適用されたもので、それまでの登録出版物には、そこに掲載されている個々の論文等の最初のページに使用料コードが記載されている。
CCCに登録されている出版物に掲載されている論文等を複写した者は、通常各月ごとに複写実績の報告を行う。これには、使用料コードが記載されているページを一枚余分に複写し、これに必要事項を記入した上で一括して送る方法、CCC所定の記録表(log sheet)に必要事項を記入し送る方法、コンピユータを利用して必要事項を提供する方法の3つの方法がある。なお、複写物を外部の者に提供する図書館等については、いくつかの特別な方法が用意されている。
CCCは、著作物利用者からの報告に基づき、複写実績の確認を行つた後、使用料の請求を行う。使用料の支払方法は、このほか預託金制、同時払制等が用意されている。
なお、1983年(昭和58年)1月からすべての複写実績を報告し、使用料を支払う方法に加えて、包括的な使用料の支払い制度が導入されることとなつた。これは、複写物の需要の多い企業等の団体向けに設けられたもので、企業等がこの方法を選択すると、当該企業等で行われる一定期間(90日)の複写実績から算出された年間使用料を支払えばよいことになり、複写実績を報告する事務的負担が軽減される(この制度は、内部利用のための複写だけに適用される。)。 |
〔使用料分配の方法〕 |
CCCが徴収した使用料は、四半期ごとに、著作物利用者から報告された複写実績に基づき、各記事一部当たり通常25セント(約60円)の管理手数料を差し引かれた後、複写頻度に応じて出版者に分配される(出版者から著作者に使用料が分配されるか否かは、両者の契約上の問題であり、CCCは関与しない。)。
なお、使用料分配の現状であるが、CCCの運営は、当初取り決められた管理手数料では賄いきれず、本来権利者に支払われるべき使用料の半分以上をCCCの業務運営費に充当している。 |
3 その他 |
(1)スウエーデン |
〔著作権法制及び集中的権利処理機構設立の経緯〕 |
1968年(昭和43年)、学校(大学は除く)における著作物の複写の実態を調べたところ、1億5,000万枚の複写物が作成されていることが分かつた。この実態を重視した権利者団体は政府に使用料の支払いを求め、1973年(昭和48年)、政府と著作者及び出版者の団体(18団体)との間で学校(大学を除く。)における著作物の複写に関する協定が締結された。スウエーデン著作権法及び写真法には学校等の教育機関が著作物を複製することについて特別な規定がないところから、この協定は、これらの法律に規定された著作権の制限規定である私的使用のための複製の適用範囲を超えた複写に対する権利者団体と著作物利用者団体(政府)との自主的な取り決めといえる。なお、これらの法律には、スウエーデンの著作者のほとんどを代理している組織との協定があるならば、その協定の対象となる著作物を教育目的のために複製できるとする規定があることから、この協定に加わつていない権利者の著作物(外国著作物を含む)についても教育機関は自由に利用することができる。
権利者団体は、この協定に関する事務を行うためボーナス(BONUS)という団体を設立した。その後、この協定は何回か改定され、1981年(昭和56年)の協定では、この協定に長い間の懸案であつた大学を含めることとされた(1981年(昭和56年)の協定は、1981・7・1~1984・6・30まで有効。)。 |
〔業務の範囲〕 |
この協定により利用できる著作物の範囲は、映画の著作物を除くすべての著作物である。ただし、権利者は、ボーナスに対し複写してほしくない著作物を協定の対象から除外することを求めることができる。 |
〔使用料徴収の方法〕 |
使用料の徴収は、各学校が一定期間(1981年(昭和56年)の協定では、1982・1・1~1982・6・30の間)の複写実績の報告を政府に提出し、この報告により使用料の算定根拠となる年間の複写枚数が推定され、これに基づき政府が一定金額をボーナスに支払う。 1981年(昭和56年)の協定では、毎年次のような使用料となる。 |
〔使用料分配の方法〕 |
使用料の分配は、使用料を受け取つたボーナスが抽出調査を実施し、その結果に基づいて、使用料総額から管理手数料を差し引いた上で、ボーナスに付属する5つの管理団体(教育文献、一般書籍、定期刊行物、絵画、楽譜)にそれぞれ一定の割合で分配する。そして各管理団体に分配された使用料は、それらの団体の内部の取り決めによつて利用されることとなる。なお、協定に加わつていない権利者は、政府からではなく、ボーナスから使用料を受けとることができる。 |
(2)ノルウエー |
〔著作権法制及び集中的権利処理機構設立の経緯〕 |
1980年(昭和55年)、著作者及び出版者の団体(23団体)は政府と学校(専門学校、大学は除く)における著作物の複写に関する協定を締結した。ノルウエー著作権法及び写真法には、スウエーデンと同様、学校等の教育機関における著作物の複製に関し特別の規定がないことから、この協定は私的使用のための複製の適用範囲を超えた複写に対する権利者団体と著作物利用者団体(政府)の自主的な取り決めといえる。権利者側23団体のうち10団体は、この協定の事務を処理するため著作権管理委員会コピーフアグ(KOPIFAG)を設立した。 なお、コピーフアグは、1983年(昭和58年)にコピノル(KOPINOR)と改称されている。 |
〔業務の範囲〕 |
協定の内容は、基本的にはスウエーデンと同じである。学校等の教育機関は、協定の内容に従い、権利者によつて許諾を与えられた著作物を複写することができる。 |
〔使用料徴収の方法〕 |
政府は、自己の経費により統計調査を実施し、両当事者の協議を経て複写枚数等を確定した上で、1982年(昭和57年)であれば、特別な場合を除き、複写ページごとに0.0925ノルウエークローネ(1ノルウエークローネ=約35円として約3円)の使用料を支払う。 |
〔使用料分配の方法〕 |
使用料を受け取つた権利者側は、個々の権利者には分配せず、各権利者団体に分配を行う。 |
(3)オランダ |
〔著作権法制及び集中的権利処理機構設立の経緯〕 |
オランダでは、1972年(昭和47年)、著作権法の改正が行われ、企業その他の団体が報酬の支払い等の条件の下に、著作物を複製することが認められるようになつた。その後、1974年(昭和49年)に制定された政令により政府機関、図書館、教育機関等においても同様の措置がとられ、それと同時に著作者及び出版者の団体によりリプロレヒト協会(Stichting Reprorecht)が設立された。 |
〔使用料徴収の方法〕 |
1974年(昭和49年)の政令では、政府機関等が著作物を複製できる範囲についてだけでなく、使用料についても明定しており、著作物利用者は、これに基づいて使用料を支払えばよいこととなつている(政府機関・図書館・科学教育機関─複写ページ当たり0.1フロリン(1フロリン=約90円として約9円)、科学教育機関以外の教育機関─複写ページ当たり0.025フロリン(約2円))。企業その他の団体については、この金額が有力な手掛りとされているが、具体的な使用料の額については、まだ交渉中のようである。なお、使用料の徴収事務は、リプロレヒト協会と契約している音楽著作権の管理団体ブーマ(BUMA)が行つている。 |
〔使用料分配の方法〕 |
分配は、個々の権利者に分配することを原則としているが、現在のところ抽出調査により得られた資料を基にして8つの部門(専門誌、学術文献、教育文献、文学作品、定期刊行物、楽譜、オランダで出版された前記以外の文献、オランダ以外で出版された文献)に分配されている。 |
第2章 我が国の複写にかかわる著作権の集中的処理の在り方について
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次に諸外国の実態を踏まえ、我が国における著作権の集中的処理の在り方について、1 対象とする複写の範囲、2 対象とする著作物の範囲、3 集中的権利処理の方法、4 新しい著作物利用手段と集中的権利処理機構の順に検討を行うこととした。 |
1 対象とする複写の範囲について |
複写の目的及び態様に照らして、どのような複写を著作権処理の対象とするかが問題となる。複写機器は、現状では企業、官公庁、研究所、図書館、学校、コピー業者等に広く普及している。そして、これらの施設では、多くの著作物が内部利用のためや外部提供のために複写されている。ただし、これらの施設で行われる複写がすべて違法となるわけではない。前述したように、著作権法では公益上その他の理由により、著作権者の権利行使が一定の場合に、一定の条件の下で制限されることが定められている。つまり、この著作権の制限規定の適用範囲内であれば、著作物利用者は、著作権者の許諾を得ることなく複写することができる。
現行法の枠内で著作権の集中的処理を考えた場合、著作権処理の対象となるのは、著作権の制限規定に該当せず著作権者の許諾を必要とする著作物の複写に対してである。
権利者の権利を管理する集中的権利処理機構としては、現行法に照らし適法とは考えられない複写はすべて著作権処理の対象に含めることも可能であるが、技術的及び実務的な面などから考えれば緊急性を有し、かつ、着手可能な範囲から順次対処していく方が現実的である。諸外国においても特定の分野における著作権処理のシステムを確立した上で、次の段階に進んでいく例が多い(例えば、西ドイツにおいてもまず企業との契約が行われ、その後教育機関(政府)とも契約を締結するようになつた。)。
以上の点を念頭に置き、集中的権利処理機構が著作権処理の対象とする複写の範囲について、その問題点を整理した。 |
(1)企業その他の団体における内部利用のための複写 |
企業等でどのような種類の著作物がどの程度複写されているかについて、正確に把握する資料はない。しかしながら、複写機器が現状では主として事務用、業務用として広く普及しており、また、企業等では、各部門における会議用、研修用、研究用等や従業員個人の事務用、研究用等のために著作物が複写されている(企業等によつては、図書室、資料室等を設け、これらの施設で集中的に複写を行つているところもある。)と考えられるところから、かなり多くの著作物が複写されていると推測できる。
ところで、このような著作物の複写は、それが企業等の内部において使用することを目的とすることから、著作権の制限規定である私的使用のための複製に該当し、著作権者の許諾を要しないものと考えられている場合も多くあると思われるが、現行法では、この私的使用のための複製について次のように規定している。 |
法第30条(私的使用のための複製) 著作権の目的となつている著作物は個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合にはその使用する者が複製することができる。
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本条に関し、著作権審議会第四小委員会では、詳細な検討を行つたが、解釈上の留意点の1つとして次のような点を指摘している。
「使用の目的であるが個人的な立場において又は私的な場である家庭内若しくは、これと同一視し得る閉鎖的な範囲(例えば親密な少数の友人間)内において使用するための著作物の複製(Personal use又はDomestic useのための複製)を許容したものであり、例えば、企業その他の団体内において従業員が業務上利用するため著作物を複製する場合には、仮に従業員のみが利用する場合であつても、許容されるものではない。」
このように企業等の業務遂行上、内部利用のために著作物を複製することは、著作権者の許諾を必要とするとしている。
また、このことは舞台装置の設計図が企業内で複製された事例に関し、昭和52年7月22日に出された東京地方裁判所の判決においても、企業その他の団体において内部的に業務上利用するために著作物を複製する行為は、私的使用のための複製には該当しない旨判示している。
以上の点から、集中的権利処理機構は、企業その他の団体における内部利用のための複写について著作権処理を求めることができる。
なお、第4小委員会では学術研究機関における内部利用のための複写に関し、「法第30条の趣旨から見て私的使用のための複製の範囲には含まれないものと考えられる。」とし、このような複写についても著作権者の許諾が必要であるとしている。しかしながら、学術研究機関に設置された法第31条(図書館等における複製)の適用がある図書館等が法第31条の認める範囲内で複写物を提供することは適法なものであり、また、大学の講義を担任する研究者が法第35条(学校その他の教育機関における複製)の適用範囲内で著作物を複写することも適法である。したがつて、このような機関における個々の著作物の複写について、著作権処理を要するものとするかどうかを判断するに当たつては、他の著作権の制限規定との関係も考慮する必要がある。なお、これらの規定との関連については後述する。
また、裁判手続及び立法・行政目的のための複製に関しては、法第42条に特別の規定がある。 |
法第42条(裁判手続等における複製) 著作物は、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
集中的権利処理機構は、国又は地方公共団体等が、法第42条の適用範囲を超えた複写を行つている場合については、その複写に対し著作権処理を求めることができる。しかし、実際に著作権処理を行うに当たつては、使用料額、支払い方法等著作物の利用に関する許諾条件を取り決めることとは別に、法第42条の適用範囲内の複写とその範囲を超える複写が明確に区別できるようにしなければならない。したがつて、この場合、国又は地方公共団体等と集中的権利処理機構との間でガイドラインを設定する必要がある。
ところで、これは後述する法第31条及び第35条の場合についても言えることであるが、ガイドラインの設定に当たつては、複写を行う利用者の性格、複写の目的及び態様、著作物又は出版物の種類などを勘案して、著作権処理を必要とする範囲とその場合における取り扱いについて、当事者が相互の立場を尊重しつつ協議を行うことが望まれる。なお、当初の段階から詳細なガイドラインを取り決めることが困難な場合は、第4小委員会における解釈等を参考にしながら、法律に規定された用語又は条文の解釈、運用等に関する基本的な合意事項を当事者間で確認した上で著作権処理を実施し、当該処理の過程で生じた問題点を踏まえながら、より詳細で明確なガイドラインの設定をめざし話し合いを続けていく方法も考えられる。 |
(2)図書館等における複写 |
現行法では、図書館等における複写について次のような規定があり、この解釈については第4小委員会でも詳細に検討されている。 |
(3)学校その他の教育機関における複写 |
現行法では、学校その他の教育機関における複写について、次のような規定があり、この解釈については第4小委員会でも詳細に検討されている。 |
法第35条(学校その他の教育機関における複製) 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
|
本条は、学校その他の教育機関が果たす公益性に鑑み、一定の場合に一定の条件の下で、教育目的上正当と認められる範囲内の複製について著作権者の許諾を必要としないとしている。
第4小委員会では、全国学校図書館協議会の行つた小学校、中学校及び高等学校に対する抽出調査(昭和50年6月)及び関係者の話を基に「このような状況から判断する限り、現在の段階においては、現行法により許容される複製の範囲を著しく逸脱するものではないと考えられるが、著作権者の利益を不当に害するものと認められる事例も無いわけではなく、出版社等の側からは、違法な複写複製の例が幾つか指摘されているところである」とし、おおむね適正な複写が行われているとしながらも、法第35条の適用範囲を超えた複写もないわけではないとしている。
集中的権利処理機構は、学校その他の教育機関において、法第35条の適用範囲を超えた複写が行われていれば、その複写に対し著作権処理を求めることができる。ただし、実際に著作権処理を行うに当たつては、関係者間で、この規定の運用・解釈に関するガイドラインの設定が必要であると考える。その場合、特に法第35条但書の規定をどのような形で具体化するかが大きな課題となろう。 |
(4)その他 |
(1)~(3)に該当しない場合で、現行法により適法とは考えられない複写については、いろいろな場合が考えられるが主としてコピー業者(コピー専業業者だけでなく、書店、喫茶店、文房具店、大学生協等で複写機器を設置している事業者を含む。)が行う著作物の複写を問題として検討を行つた。法第30条では、私的使用のための複製を認めているが、その複製主体を著作物を使用する者に限定している。このことは、第4小委員会においても検討され、「例えば、コピー業者のような複製を事業とする者に依頼する複製は、この要件に該当しないものと解される。」としている。
このことから利用者が持ち込んだ著作物を複写し提供することは違法なものと考えられ、集中的権利処理機構としては、このような複写について著作権処理を求めることができる。
なお、コピー業者が設置したコイン式複写機器を利用して利用者本人が著作物を複写する場合が考えられる。この点につき第4小委員会報告では、法第30条との関係で、次のように述べられている。
「コイン式複写機器による複製については、条文上はその可否が必ずしも明らかでないが、本条は使用する者が自ら行う複製行為を許容したものであることから、本条の趣旨として自己の支配下にある機器によるべきことが要請されているものと理解すべきである。」
したがつて、集中的権利処理機構としては、このような複写についても著作権処理の対象として考慮できると考える。
ところで、現在私的使用のための複製を規定している法第30条の改正等を含む著作権法の一部を改正する法律案が国会に提出されている。この法律案が国会で成立すると法第30条は、次のように改正される(改正により、下線の部分が追加される。)。 |
法第30条(私的使用のための複製) 著作権の目的となつている著作物は、個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する場合には、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製するときを除き、その使用する者が複製することができる。
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この改正により、コピー業者の設置した複写機器等を用いて利用者本人が行う複製が私的使用のための複製として許容される複製に該当しないことが明確になることとなる。 また、この法律案には権利侵害に対する罰則を定めている法第119条の改正が含まれているが、この改正により複写機器等の自動複製機器を公衆の利用に供するために設置した業者が、営利を目的として権利者の許諾がない著作物の複製に当該機器を使用させた場合、当該業者に罰則が適用されることとなる。
ただし、改正法の附則では複写機器のような専ら文書又は図画の複製に供する自動複製機器についてはこれらの規定を当分の間適用しないこととしている。これは、我が国においてこの会議で提言しているような複写にかかわる集中的権利処理機構がまだ存在していないことを考慮したものであり、集中的権利処理機構が設立され、複製にかかわる著作権の処理体制が整つた場合には廃止されることが予定されている。その意味からも集中的権利処理機構に関する権利者側の努力が望まれるところである。
なお、改正法の附則にかかわらず、利用者の依頼を受けて業者自らが行う複写や使用目的が私的使用とはいえない業務用の複写について著作権処理が必要なことはいうまでもない。 |
2 対象とする著作物の範囲について |
次に問題になるのが、集中的権利処理機構がどのような著作物を著作権処理の対象とするかである。著作物利用者にとつては、複写する著作物のすべてが対象とされた方が、個々の権利者に連絡をとり許諾を得る必要がなくなるため便利である。しかし、著作物によつては著作権を集中的に管理する緊急性が少ない著作物も多く、また、権利委託や使用料の徴収、分配等の実務的な面の制約もあると考えられることから、ある程度複写頻度の高い著作物から順次著作権処理を始めた方が現実的と考える。
以上のことを念頭に置き、集中的権利処理機構が著作権処理の対象とする著作物の範囲について、いくつかの面から検討を加えた。 |
(1)著作物の種類 |
著作権法第2条第1項第1号では、著作物の定義を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」とし、同法第10条では著作物の例示として、1)小説、脚本、論文、講演その他言語の著作物、2)音楽の著作物、3)舞踊又は無言劇の著作物、4)絵画、版画、彫刻、その他美術の著作物、5)建築の著作物、6)地図又は学術的な性質を有する図画、模型、その他図形の著作物、7)映画の著作物、8)写真の著作物が規定されている。これらの例示の中で現在の複写機器の性能及び用途から考えて、言語の著作物が最も多く複写されているものと考えられる。
諸外国において対象としている著作物の範囲を整理すれば、別表2のとおりである。アメリカ合衆国では、言語の著作物の中でも学術関係の著作物を中心にしている。CCC方式は、CCCの著作権処理システムを利用したいと考える出版者が、必要な手続を経た上で、刊行する出版物に所定の使用料コードを印刷しておけばよいため、本来的には対象とする著作物の種類に制限はない。しかし、利用者が企業、大学、研究所等を中心にしていることもあり、現実には学術関係の著作物、その中でも自然科学系の著作物が、多いのが現状である。西ドイツでは企業等の団体との包括契約に基づき使用料を徴収しているが、その契約の中で学術関係の逐次刊行物を著作権処理の対象とすると明記しており、学術中心の考え方を明らかにしている。スウエーデン、ノルウエーでは、映画を除くほとんどの著作物を対象としている。オランダでは、著作権法で企業その他の団体が報酬の支払い等を条件として著作物を複写できるとし、その著作物とは、学術の著作物であると規定している。
このような諸外国の実態から判断する限り、企業や研究機関等においては、言語の著作物、その中でも、主として学術関係の著作物が複写されているものと考えられる。特に、アメリカ合衆国では、どのような出版者でもCCCの著作権処理システムに参加することができるとしているが、結果として学術関係の出版者の登録が多いことは、現実に学術関係の著作物が最も多く複写されており、権利者もそのことによつて大きな被害を被つていることを示している。企業や研究機関における複写の実態については、アメリカ合衆国、西ドイツ等と大きな差はないものと考えられるので、我が国においても、当初は学術関係の著作物を中心として考えていく必要があろう。
なお、この場合、学術関係の著作物を特定分野の専門文献、雑誌等に掲載された論文又は記事に限定せず、実用書、実務書等の記事にまで拡大することが考えられるが、このことについては、複写の実態、著作者の意向、機構の事務能力等から判断して著作権処理が可能であれば限定する必要はないと考える。 |
(2)刊行の態様 |
複写問題が、主に刊行された出版物の複製に起因していることから、出版物の態様に着目し、出版物について期間を定めて逐次出版される雑誌、論文集等を逐次刊行物、それ以外を単行本等とする区分に基づき、検討を行つた。
諸外国の場合、アメリカ合衆国、西ドイツでは、逐次刊行物に限定している。ただし、両国とも単行本等の取り扱いを放棄しているわけではなく、将来は著作権処理の対象とするとしている。一方、スウエーデン、ノルウエー、オランダではこの区別をしていない。
諸外国の実態から判断する限り、我が国でも逐次刊行物に掲載された著作物の利用頻度が高いと推測できる。最近では、技術革新のテンポが速く、企業、研究機関では技術力の開発・研究に大きな力を入れていること等を考えると、最新の論文・記事等が掲載されている逐次刊行物の複写利用が多いと考えられる。また、科学技術に関する文献情報をオンラインにより、主として企業や研究機関に提供している日本科学技術情報センター(JICST)では、その情報を主として内外の逐次刊行物の記事・論文等に求めていることから考えても、企業・研究機関等の最新の著作物に対する需要が高いことがある程度推測できる。したがつて、まず逐次刊行物を著作権処理の対象とすべきであろう。
しかしながら、例えば、人文社会系の研究機関では、単行本等からの複写も多いと考えられること、企業や自然科学系の研究機関でも単行本等からの複写も少なくないと考えられることから、単行本等についても可能な限り集中的権利処理機構が取り扱うことが望ましい。
なお、出版物を複写して作成した複製物から複写する場合が著作権処理の対象となることはいうまでもない。 |
(3)刊行の時期 |
出版物が刊行された時期に着目し、ある時点、例えば集中的権利処理機構が設立された時点以前に出版された著作物についても著作権処理の対象とするかどうかの問題がある。
この問題については、権利者と集中的権利処理機構との間で、過去に出版された著作物に関する権利委託をどのような形式で行うかなど解決しなければならない点が多い。しかし、集中的権利処理機構が設立されても、著作権処理の対象となる著作物の量が少なければ、機構の設立意義が減少するばかりでなく、機構の運営そのものが成り立たなくなることを考えると、諸外国のように、可能な限り既に発行された著作物も含めるよう努力すべきである。 |
(4)国内外著作物の別 |
我が国が加入している著作権条約(ベルヌ条約、万国著作権条約)との関係で、我が国が保護義務を負う外国著作物についても、著作権処理の対象とするかどうかの問題がある。
アメリカ合衆国のCCCでは、著作権処理システムを利用したいと考える出版者は、国内、国外の区別なく参加可能である。CCCの場合、個々の著作物の複写頻度に応じて使用料を徴収し各出版者に分配するので、外国著作物の取り扱いについて著作権処理手続上の障害は少ない。西ドイツでは、外国の著作権管理団体と相互管理契約が締結されれば、当該外国の著作物についても著作権処理の対象とするとしており、現在、オランダのリプロレヒト協会と協定を締結している。スウエーデン、ノルウエー、デンマーク、フインランドの北欧四か国では、共に教育機関における複写を中心に著作権処理を行つており、著作権法制及び著作権処理の方法も類似していることから、これら4か国の間では相互管理協定が締結されている。
企業や研究機関等でどの程度外国著作物が複写されているかを示す正確な資料はないが、特に、自然科学系の著作物の場合、海外の先端技術に関する論文等を参考にする機会も多いと考えられるところから、かなりの量が複写されていると推測できる。したがつて、著作物利用者からみれば、国内著作物だけでなく、外国著作物についても著作権処理ができる方が便利である。
我が国の集中的権利処理機構が外国著作物の著作権処理を行うためには、通常、個々の権利者から直接権利委託を受ける方法と、外国の著作権管理団体と相互管理協定を締結する方法の2通りが考えられる。
前者の場合、使用料の徴収及び分配の手続上の問題は少なく、我が国で設立された集中的権利処理機構が当初から外国著作物についても取り扱うことは可能であると考える。後者の場合、諸外国において相互管理協定の一方の当事者となるべき著作権管理団体が多くないこと、また、著作権処理を行つている国においても、著作権処理の方法等に大きな差異があるため、協定の締結には解決すべき問題点が多いと思われる。
しかし、いずれにしても、著作物利用者の便を考えれば、外国著作物を取り扱うことができるよう積極的に努力すべきであろう。 |
3 集中的権利処理の方法について |
実際に著作権処理を行うためには、関係権利者の体制作りが必要となるが、以下に記す各項目について、諸外国の実態、我が国の現行法制、我が国の出版界の現状等を考えながら検討を行つた。 |
(1)権利委託 |
著作権は、一般に著作物を創作した者、すなわち、著作者に与えられる権利である。関係者によつて設立された集中的権利処理機構が複写に関する著作権処理を行うことができるようにするためには、この権利が、直接、間接を問わず、集中的権利処理機構に権利委託されていなければならない。 |
ア 我が国における著作権管理の現状 |
我が国の場合、著作権を集中的に処理している団体として、文芸作品の著作権を管理している社団法人日本文芸著作権保護同盟、放送脚本の著作権を管理している協同組合日本放送作家組合、音楽の著作権を管理している社団法人日本音楽著作権協会がある。また、美術、写真等についてもいくつかの団体があり、それぞれの団体は必要な範囲内で著作者から権利委託を受けている。しかしながら、複写される著作物の大部分を占める学術関係の著作物については、著作権を管理している団体は存在しない。
次に、我が国における出版に関する著作者と出版者との契約の内容であるが、我が国の出版界の現状では、著作物を出版する際には、通常、著作権者である著作者と出版者との間で、次のような契約が行われている。1)著作者が出版者に著作物の出版を許諾することを内容とする出版許諾契約(この出版許諾契約については、独占的契約と非独占的契約の2通りがある。)、2)著作者が出版者に出版権を設定することにより、著作物の出版に関し、排他的権利を附与することを内容とする出版権設定契約、3)著作権の全部又は一部を出版者に譲渡することを内容とする著作権譲渡契約である。この場合、我が国では、ほとんどが1)又は2)の契約であり、特に逐次刊行物については、ほとんど1)の契約である。また、これらの契約を行う際、出版者に対して複写を念頭においた権利行使の委任が行われている例は少ない。なお、理学・工学等の自然科学系の学協会の一部に、学協会が発行している紀要・論文集等の学協会誌に掲載された会員の論文等の著作権を当該学協会が管理し、著作物利用者からの転載又は複写の申し込みに許諾を与えている例がある。
これらのことから、我が国では、集中的権利処理機構が主として取り扱うこととなるであろう学術関係の著作物については、一般に著作者が個人で著作権を所有している場合が多く、また、その権利を著作者自身が管理しているのが現状であると考えられることから、著作権を集中化するためには、新たに権利委託に関する契約慣行が確立される必要がある。 |
イ 権利委託の方法 |
具体的な権利委託の方法を検討するに当たつては、次のような点の考慮が必要と考える。 まず、著作物の複写というものは、複写機器を利用した新たな複製態様であるが、集中的権利処理機構が取り扱うのは主として刊行された出版物を利用した複写である。したがつて、複写による発行部数の減少が出版物の発行の継続を困難にしつつあるといわれる分野も多い学術関係の著作物については、複写によつて出版者も経済的損失を被つており、また、出版者が著作物の伝達に重要な役割りを果たしているという点から、集中的権利処理機構が徴収した使用料の分配においても、出版者の利益が考慮される必要がある。次に、出版物を利用した複写という点から、集中的権利処理機構としては、著作物を出版物単位で把握した方が実務的にも便利でありまた膨大な著作者数を考えれば集中的権利処理機構が直接著作者から権利委託を受けるより、その前段階としてある程度権利が出版者に集中化されていた方が権利委託事務を簡素化できる。更に、集中的権利処理機構の設立については、現在までの検討状況及び組織力等の点から、出版者(学者や研究者の団体である学協会についても、前述のとおり出版物を発行している団体も多く、その意味では出版者といえる。)が大きな役割りを果たすと考えられることから、その際、出版者が一定の地位を得て機構に参加できた方が業務運営が円滑にいくと考えられる。
以上の点から、権利委託の方法については、著作者が当該著作物を発行した出版者を通じて集中的権利処理機構に権利委託する方法が実際的であり、また、合理的であると思われる。したがつて、自己の創作した著作物が複写利用されてもよいと考え、かつ、集中的権利処理を望む著作者は、出版者と出版に関する契約を行う際に、集中的権利処理機構への権利委託についても念頭においた契約を行い、機構への権利委託については出版者が行えばよいことになる。諸外国の実態から考えても、このような方法で権利委託を行つている例が多い。
なお、権利委託に関する契約の際、複写禁止期間の設定、許諾を与える複写量又は複写範囲の制限等の条件を付すことができるかどうかの問題がある。このことについては、著作物利用者が集中的権利処理機構の許諾を得て一定の使用料を支払うことにより著作物を円滑に複写できるということが機構本来の目的であることから、このような条件を付けた権利委託は原則として適当でないと考える。
ところで、著作者が集中的権利処理機構に権利委託する場合の著作者から出版者への権利委託の方法であるが、著作者が出版者に対し、著作権処理を委任する方法と著作権処理に必要な範囲内で著作権を譲渡する方法がある。前述したように我が国の出版界の現状では出版者が著作者から著作権の譲渡を受けて著作者のために権利を管理する慣行がないので、我が国の出版界の慣行に大きな影響を与えないという点では、権利の移転のない委任が適当と思われる(出版者はこの契約の際に分配される使用料の一定部分を受け取ることを取り決めることが考えられる。)。しかしながら、複写に関する著作権処理という観点から見ると、出版者が著作権者としての立場に立ち、その権利が集中的権利処理機構に委託されている方が機構と著作物利用者との契約がより円滑に行われ、著作者及び出版者の利益確保に貢献できると考えられるので、著作者の権利保護が十分に図られ、かつ、現在の出版慣行に大きな影響を与えないよう配慮できれば、譲渡形式での権利委託の方法をとることも考えられる。
なお、譲渡形式での権利委託の方法については、前述した著作者の権利保護等の立場から、次の点に配慮した上で検討する必要がある。
第1には、この譲渡は著作者に代つて集中的権利処理機構が複写に関する著作権処理を行うためになされることから、いわゆる信託的な譲渡が望ましい。したがつて契約の際には、集中的権利処理機構が徴収した使用料の一定割合が著作者にも分配されるよう使用料を受け取る権利が著作者に留保されること、出版者が一定の条件に違反した場合、著作者が譲渡した権利の返還を請求できること等が明記される必要がある。
第2に、著作者は、複写に関する著作権処理を行うため、必要最少限度の権利を譲渡すれば足り、例えば、出版、録音、放送等の他の利用に関する著作者の権利行使に支障があるような内容での譲渡は必要ではない。したがつて、複写は、そのほとんどが出版物を利用した複製であること、また、同一著作物が異なつた出版者から刊行される場合も多いこと(例えば、逐次刊行物に連載していたものを、別の出版者から単行本として出版する。)を考えると、譲渡する権利の範囲は、刊行された出版物に掲載された著作物を、当該出版物を用いて複写する権利に限定することで足りると考えられる。しかしながら、著作権の支分権である複製権の譲渡について、このように限定された譲渡に排他的な物権的効果が生じうるかについては定説もないことから若干疑問が残るところである。 |
(2)機構 |
次に実際に著作権処理を行うに当たつては、権利者と著作物利用者の窓口となる機関、いわゆる集中的権利処理機構の設立が必要となる。
集中的権利処理機構は、著作物利用機会の増大及び利用態様の多様化により、著作権を個人で管理しきれなくなつてきたことから生まれたものであり、我が国では、前述したように音楽・脚本・文芸作品等の分野でこれらの著作権を集中的に管理する団体が設立されてきた。複写分野における諸外国の集中的権利処理機構を見た場合も、アメリカ合衆国のCCC、スウエーデンのボーナス等は、複写に関する著作権処理の必要性から設立されたものである。
我が国の場合、前述したとおり、著作権処理の対象としては、学術関係の著作物を中心に考える必要があるが、当該著作物については現在のところ著作権を有効に管理し得る団体がないことから、新たに複写に関する著作権処理を行う団体を設立しなければならない。
ところで、新たに団体を設立する場合、誰が中心となり団体を設立するかという問題がある。集中的権利処理機構の設立母体としては、著作者団体と出版者団体が考えられる。著作者団体としては、学術関係の著作物の主たる執筆者である学者や研究者等がその研究分野ごとに形成している学協会があるが、その数は非常に多く、日本学術会議に登録している団体だけでも約1,000団体ある。これらの学協会の中で連合体又は集合体として組織化されているのは理学や工学等の自然科学系の一部(例えば、社団法人日本工学会、化学関係学協会連合協議会)であり、他の団体はそれぞれの分野で単独で活動しているのが現状のようである。一方、出版者団体は、組織化が進んでおり、その取り扱う出版物の種類や団体の目的によりいくつかの団体を形成している(例えば、社団法人日本書籍出版協会、社団法人日本雑誌協会、社団法人自然科学書協会)。
我が国の場合、学術関係の著作物については、一般的に著作権を著作者個人が所有し、管理する傾向が強いことから、著作者団体が中心になつて集中的権利処理機構を設立する方法もあると考えるが、権利委託のところで述べたように著作者が出版者を通じて機構に権利委託した方が種々の点で実際的であり合理的であること、出版者団体が組織力を有し機構を運営することに適していると考えられる現状等から、著作者団体と出版者団体が協議、協力して機構を設立することが最も現実的であると思われる。諸外国の実態を見ても、その著作権法制、出版慣行に我が国と大きな差異があるものの、出版者団体が集中的権利処理機構設立に重要な役割りを果たしている。
なお、設立された集中的権利処理機構の業務運営に当たつては、著作者、出版者双方の意見が反映されるような組織作りが必要であり、また、利用者団体の意見を十分聴取し得るような場を設ける必要もあろう。更に、場合によつては、業務運営の円滑化のため学識経験者等の参加も考慮すべきであろう。
ところで、複写される著作物は学術関係の著作物に限らないことから、集中的権利処理機構が設立され、その業務がある程度軌道に乗つた段階では、文芸作品、美術作品、音楽作品(楽譜、歌集など)等の複写利用に関する著作権処理を機構としてどのように取り扱うかという問題が生じると考えられる。このような著作物の取り扱いについては、先述したような既存の著作権管理団体との調整が必要であり、また、仮に小説、脚本及び音楽の著作物について集中的権利処理機構が著作者から権利委託を受け複写にかかわる著作権を管理するためには、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和14年4月5日 法律第67号)により、文化庁長官の許可を受ける必要がある等種々の問題があるが、ある利用者に対し複数の団体が個々に著作権処理を求めることは、著作物利用者の事務的負担等の面から好ましくないので、著作権処理の窓口は出来る限り単一化する方向でこの問題の取り扱いを検討すべきである。 |
(3)使用料の徴収及び分配 |
最後に新たに設立された集中的権利処理機構が、どのような方法で著作物利用者から使用料を徴収し、権利者に分配するかという問題がある。 |
ア 許諾 |
集中的権利処理機構と著作物利用者との著作物の複写に関する許諾契約は、1件ごとに許諾を行う形式では、事務処理上非能率的であることから、1つの契約により機構が管理している全著作物の利用を認める包括許諾制の採用が望ましい。諸外国においても、例えば、スウエーデン、ノルウエーでは、権利者団体と政府との協定の中で、また、アメリカ合衆国では、権利者である出版者と著作物利用者とが、それぞれCCCに登録することにより著作物の複写利用を包括的に認めている。 |
イ 使用料の徴収 |
使用料の徴収方法には大きく分けて2通りある。1つは、使用料の算定基礎となる複写実態について1つのフイクシヨンを設定し、包括的に使用料を徴収する方法である。これには出版物の年間購入料の一定割合を支払う方法、複写ページ当たりの金額を決め、複写実態の抽出調査により全体の複写枚数を推定した上で使用料額を決定する方法、あるいは、複写機器1台当たりの使用料を定め(設置場所により金額を変えることも考えられる。)、機器の台数によつて使用料を決定する方法等が考えられる。もう1つは、正確な複写実態に沿つて著作物ごとに個別に使用料を徴収する方法である。これは複写ページ又は各記事当たりの金額を決め(アメリカ合衆国では、著作物によつて使用料が違う。)、著作物利用者が複写実績を自主申告することにより、使用料額を決定する方法等が考えられる。
前者の場合集中的権利処理機構としては、一度著作物利用者と契約を結べば、以後安定した使用料を徴収できること、著作物利用者としては正確な複写実績報告の必要がないことから事務的負担が少ない等の長所がある。しかし、著作物利用者により複写実態はまちまちであると考えられるところから、複写実態にあつた契約ができるかどうかという問題、権利者に対して公平な分配が可能かどうかなどの問題がある。
一方、後者の場合、複写実態に応じた使用料の徴収ができる長所があるものの、著作物利用者の事務的負担が大きく、申告制であることから、アメリカの例からみても申告漏れ等が考えられ、その意味から安定した使用料収入が確保できないおそれもある。
諸外国においては、スウエーデン、ノルウエーのように包括徴収の国、アメリカ合衆国のように個別徴収の国(ただし、昭和58年から複写物の需要の多い企業等の団体向けに包括的な使用料徴収制度を導入した。)、更に西ドイツのように包括徴収と個別徴収のどちらかを選択できる国と様々である。 |
ウ 使用料の分配 |
徴収した使用料を、どのような方法で分配するかという問題がある。この問題に対する著作者・出版者の一番の関心事は複写による経済的損失が著作権の集中的処理によりどのような形式で補償されるかである。したがつて、集中的権利処理機構としても著作物利用者から徴収した使用料をどのような方法で分配するかが最も重要な課題であり、一連の使用料の徴収・分配手続を検討する上においても、この分配方針を念頭において決める必要がある。
集中化された著作権の行使から生ずる使用料の分配については、著作権が一般に個人に与えられた権利であることから、著作物の複写頻度に応じて、個々の著作者・出版者へ分配されるのが原則であり、可能な限り個別分配に向けての努力がなされねばならないが、関係権利者間の合意が得られた場合には、特定の分野ごとの団体別分配を行い、各団体の共通目的のために利用することも考えられる。
このことを前提にし、集中的権利処理機構からどのような方法で著作者・出版者に分配するかを整理すると、次のような類型が考えられる。
第1の方法は、集中的権利処理機構が、個々の著作者・出版者に分配する方法である。この方法が最も公平と思われるが、集中的権利処理機構の分配事務の煩雑化、分配経費の負担増の点で難点がある。第2の方法は、機構が分配資料と共に著作者取り分も含めて出版者に分配し、著作者へは出版者の責任において分配する方法である。この方法は、機構の事務的負担は軽減されるが出版者の負担が大きくなる難点を持つている。第3の方法は、機構が、出版者については個別に分配し、著作者については著作者団体に分配し、その利用方法については当該団体の内部意思に委ねる方法である。この方法は、分配資料作成の段階で、どの出版物が複写されたかは比較的容易に把握できるが、どの出版物のどの著作物が複写されたかの把握は技術的に困難であること、また、たとえどの著作物が複写されたかの把握ができたとしても、著作者の数は非常に多く、個々の著作者に分配される金額はあまり多くはならないと考えられることから、分配された使用料を、学者や研究者等の研究助成など著作者の共通目的のために利用しようとする考え方に基づく。なお、このほか集中的権利処理機構が出版者団体と著作者団体に分配する方法等が考えられるが、個別分配が原則という点から、仮にこのような分配方法を採用したとしても、これは集中的権利処理機構発足当初の経過的な措置にとどめるべきである。
我が国で採用される使用料の徴収・分配の方法を考えた場合、著作物の複写頻度に応じて、個々の権利者に正確に分配しようとするならば、個別徴収の方がよい。ただし、個別徴収を厳格に追及していたアメリカ合衆国のCCCが、著作物利用者からの複写報告に伴う事務的負担の軽減要求もあり包括的な徴収方法を導入したことを考えると、個別徴収については著作物利用者の事務的負担との関係を十分検討する必要がある。
包括徴収の場合、個々の権利者に個別分配するためには、通常、抽出調査による分配資料の作成が必要となる。我が国でも包括的に徴収した使用料を抽出調査した資料を基に、個別分配している例があり、音楽著作物の放送使用料やキヤバレー、ナイトクラブ等の社交場における演奏使用料の分野でこの方法が採用されている。しかしながら、著作物の複写は、著作物利用者によつて利用される著作物の傾向がまちまちであることから音楽のようによく利用される著作物を全体の傾向として把握しにくいこと等を考えると、抽出調査の実施に当たつては、その方法を慎重に検討する必要があろう。 |
エ まとめ |
以上のとおり、包括許諾制を前提として、使用料の徴収方法を包括徴収と個別徴収に分け、それらの長所、短所そして分配方針との関係を検討してきたが、これらの点から判断すると、特に企業その他の団体における内部利用のための複写については、複写実態の把握の難易又は著作物利用者の事務的負担等の面から、我が国においても包括徴収方式を導入することが考えられる。しかしながら、著作物利用者の中には、複写量がわずかな者や詳細な複写実績の報告が可能な者もいるなど著作物利用者側の複写実態や事務的体制を画一的に判断することはできない。したがつて、集中的権利処理機構としては、例えば西ドイツのヴオルトのように著作物利用者が包括徴収方式と個別徴収方式のどちらかを選択できるなど幅のある徴収方法を検討する必要がある。また、個別分配が原則であるという点から、逐次刊行物に比べれば複写頻度が少なく、複写されるページ数についても1ページから全ページまでと幅のある単行本については個別徴収方式を採用したり、アメリカ合衆国のCCCのように個別徴収方式の長所を取り入れた包括徴収方式を採用するなどの方法についても検討の余地があると考える。
以上見てきたように使用料の徴収については、それぞれの方法に長所、短所が混在しているため、どの方法が適当か明確に結論付けることは困難であるが、今後関係者間で使用料の徴収から分配に至る手続について話し合う場合、個別分配が原則であるという点を念頭に置いた上でそれぞれの徴収方法の長所、短所を見極め、更に、集中的権利処理機構の運営面、著作物利用者の事務的負担との関係等も十分考慮し、種々の角度から慎重に検討する必要があると考える。 |
(4)その他 |
徴収する使用料の額については、西ドイツ、スウエーデン、ノルウエーのように他の利用条件と共に、企業の団体、政府などの著作物の利用者団体との協議を経て取り決める場合とアメリカ合衆国のCCCのように権利者の意思により使用料を設定する場合の2通りが考えられるが、特に後者の場合、複写機器が広く普及し、一般国民の間で複写物の利用がこれだけ身近なものとなつた現在、著作物の複写利用を禁止するような高額な使用料の設定には問題がある。なお、使用料は、必ずしも原稿料や印税等の出版の際の著作権使用料を基準にして考える必要はなく、諸外国の実態等を参考にしつつ適正な額を決定すればよいと考える。また、このほか著作物利用者の経済的負担等の関係で、例えば非営利の学術研究機関と営利性のある企業との間に使用料の格差を設ける等の配慮も必要であり、更に、集中的権利処理機構は著作物利用者に対し機構が管理している著作物を周知させるため、例えば出版物に機構の管理著作物である旨の表示をするなどの方法も検討する必要があると考える。
最後に、著作権の集中的処理については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)との関係も考慮する必要がある。独禁法第23条では、著作権法に規定された権利の行使と認められる行為について独禁法の適用を除外している。しかしながら、この規定は、著作権の行使であればどのような態様による行為でも認めたわけでなく、その行為が私的独占、不当な取引制限の禁止規定(第3条)、不公正な取引方法の禁止規定(第19条)に実質的に違反すれば、独禁法上の責任をまぬがれるものではない。
個々の権利者の著作権を集中的に管理しこれらの権利に基づき、権利行使を行う集中的権利処理機構の設立・運営については、種々の独禁法上の問題があると思われるので、権利委託、使用料徴収の方法及び使用料額等の決定に当たつては、関係者間で慎重に対処する必要があろう。 |
4 新しい著作物利用手段と集中的権利処理機構 |
近年の情報処理技術及び情報通信技術の飛躍的な進歩に伴い、CATV、キヤプテンシステム、文字多重放送、衛星放送、ビデオデイスク等のいわゆるニユーメデイアと呼ばれる新たな情報伝達手段が開発、実用化されつつある。また、情報処理技術の著しい進歩は情報の集約化を可能にし、我が国においても情報を整理、統合したうえでコンピユータに蓄積し、利用者が容易に情報を検索できるデータベースが種々の分野で製作、利用されている。これらの中でもデータベースについては、現在既に求める文献を探し出す有力な手段となつている。例えば我が国では、日本科学技術情報センター(JICST)が提供しているJOIS(JICST On-line Information System)というデータベースシステムがある。
このシステムでは、企業、研究所等の利用者に対し科学技術に関する論文又は記事の題号、著作者名、その他書誌的事項、内容の抄録等の情報をオンラインで提供している。利用者は、この情報に基づき自分の求めている論文等を確認し、必要に応じて出版物を購入したり当該センターや図書館等に複写物の提供を求めるのである。更に、最近では、例えば光デイスクのように安価で大量の情報が蓄積できる記憶媒体の開発などによりデータベースを通じて有線又は無線により著作物の全文を直接利用者に提供することも可能になつてきており、このような方法による著作物の利用は新しい情報伝達手段の開発、普及に伴つて今後益々増大すると予想される。
これらニユーメデイア及びデータベースの開発、普及に伴う著作物の利用については、著作者のより有効な権利保護を図るとともに、著作物のより円滑な利用を図ることが更に重要な問題になつてくると考える。後者については、例えばデータベースに著作物を利用する場合の著作権処理を考えると、権利者は著作物をデータベースの記憶媒体に入力(インプツト)する段階でデータベースサービス事業者と様々な出力(アウトプツト)を念頭に置いて包括的な契約を行えばその利益を十分に確保でき、また、著作権処理の能率化も図れるため今後はこのような契約方法が一般的になると思われるが、将来の状況によつては個々の権利者との著作権処理が困難になることも予想される。
したがつて、これらニユーメデイア及びデータベースにかかわる著作物の利用についても集中的権利処理方式による著作権処理の検討が必要であり、更に、この問題とここで提言した集中的権利処理機構とがどのようにかかわりあつてくるのかの検討も必要であると考える。
なお、著作権審議会では、昭和59年3月に第7小委員会を設置し、ニユーメデイア及びデータベースにかかわる著作権問題についての審議を開始しているが、この第7小委員会においては以上のような点についても併せて検討されることが望ましい。また、権利者及び著作物利用者双方においては、第7小委員会における審議の結果も参考にしながら、具体的な著作権処理の方法に関する継続的な研究をしていく必要があると考える。 |
第3章 提言
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以上のとおり、この会議は、現行法を前提とした我が国での複写分野における著作権の集中的処理の在り方について種々の観点から検討を行つてきた。複写機器の普及では世界でも有数の国であり、また、国民の複写物に対する需要も多いという我が国の現状にあつて、集中的権利処理機構が設立され、権利者と著作物利用者との間で公正な慣行が定着することが望まれる。そのためには、権利者の機構設立に対する継続的な努力と著作物利用者を含めた関係各方面の人々のこの問題に対する深い理解と積極的な協力がなければならないと考える。
最後に、今後関係者間で集中的権利処理機構の設立に関する話し合いが行われる際の参考に資するため、以下の提言を示すこととする(集中的権利処理機構の概念図については、附属資料別表3を参照のこと)。 |
1 対象とする複写の範囲 |
集中的権利処理機構が著作権処理を行う複写は、現行法に照らし適法とは考えられない複写であつてその範囲は広いが、技術的及び実務的な面を考えれば緊急性を有し、かつ、着手可能な範囲から順次対処していく方が現実的である。
なお、著作権の制限規定により著作権者の権利行使が一定の条件の下で制限されている分野の複写については、使用料額、支払い方法等著作物の利用に関する許諾条件を取り決めることとは別に、当事者間で著作権処理を要する複写とそうでない複写についてガイドラインを設定する必要があるが、その場合当事者が相互の立場を尊重しつつ協議を行うことが望まれる。 |
2 対象とする著作物の範囲 |
複写される可能性がある著作物の範囲は広いが、それらの中には著作権の集中管理の緊急性が少ないものも多く、また、実務的な制約もあると考えられることから、学術関係の著作物のようにある程度複写頻度の高い著作物から順次対処していく方が現実的である。 |
3 権利委託 |
集中的権利処理機構が主として取り扱うこととなるであろう学術関係の著作物については、一般に著作者が個人で著作権を管理しているのが現状であるので、新たに権利委託に関する契約慣行を確立する必要がある。この場合、複写は主として出版物を利用していること、また、円滑な権利委託を行う必要があるという面から、著作者が当該著作物を発行した出版者を通じて集中的権利処理機構に権利委託する方法が実際的であり合理的である。 なお、権利委託に際しては、著作者に不利益が与えられないよう配慮すべきである。 |
4 集中的権利処理機構の設立 |
学術関係の著作物については、現在著作権を有効に管理し得る団体がないため新たに複写に関する著作権処理を行う団体を設立する必要がある。このことについては、著作者団体が中心になつて設立する方法もあるが、著作者が出版者を通じて権利委託を行つた方が種々の点で実際的であり合理的であるということや出版者団体が組織力を有し機構を運営することに適していると考えられる現状等から、著作者団体と出版者団体とが協議、協力して機構を設立することが最も現実的である。
なお、設立された集中的権利処理機構の業務運営に当たつては、著作者、出版者双方の意見が反映されるような組織作りが必要であり、また、利用者団体の意見を十分聴取し得るような場を設ける必要もあると考える。 |
5 著作物の複写利用に関する許諾契約 |
集中的権利処理機構と著作物利用との著作物の複写利用にかかわる許諾契約は、1件ごとに許諾を行う形式では事務処理上非能率的であることから、1つの契約により機構が管理している全著作物の利用を認める包括許諾制の採用が望ましい。 |
6 使用料の徴収及び分配方法 |
この会議では、包括許諾制を前提として、使用料の徴収方法を包括徴収と個別徴収に分け、これらの長所及び短所を整理するとともに、徴収方法と分配方法との関連等についても問題点の分析をした上で、その検討結果を報告書に示した。使用料の徴収については、それぞれの方法に長所、短所が混在しているため、どの方法が適当か明確に結論付けることは困難であるが、今後関係者間で使用料の徴収から分配に至る手続について話し合う場合、個別分配が原則であるという点を念頭に置いた上でそれぞれの徴収方法の長所、短所を見極め、更に、集中的権利処理機構の運営面、著作物利用者の事務的負担との関係等も十分考慮し、種々の角度から慎重に検討する必要がある。 |
7 新しい著作物利用手段と集中的権利処理機構 |
ニユーメデイア及びデータベースの開発及び普及に伴い種々の著作物が大量に利用されるようになつた場合、個々の権利者との著作権処理が困難になることも予想されるので、この分野における集中的権利処理方式による著作権処理の検討が必要であり、更にこの問題とこの会議で提言した集中的権利処理機構とがどのようにかかわり合つてくるのかの検討も必要であると考える。 |