○著作権審議会第8小委員会(出版者の保護関係)中間報告書
    昭和63年3月 文化庁



    目 次
    はじめに
    第1章 出版の実態等
    1 我が国出版の現状
    2 情報伝達媒体としての出版物
    3 出版者の活動
    4 出版物の複製利用
    第2章 現行法制による出版者の保護
    1 著作権法による保護
    2 不正競争防止法による保護
    3 不法行為法による保護
    第3章 外国の立法例及び国際機関における検討
    1 外国の立法例
    2 国際機関における検討
    第4章 出版者の法的保護
    1 出版者の保護の必要性
    2 出版者の権利の性格等
    3 出版者保護の内容等
    4 権利行使の在り方
    おわりに

    (参考)
    1 著作権審議会第8小委員会委員名簿
    2 著作権審議会第8小委員会審議経過



    はじめに
    1出版者は、著作権の伝達者として非常に重要な役割を果たしており、特に言語や美術の著作物を公衆が享受する場合の多くは、出版者が作成し頒布した出版物を通して行われるものであって、出版物は、現代のニューメディアの時代においても、変わることなく重要な情報伝達媒体であると言うことができる。
    2一方、近年、複写機器の発達・普及が目覚ましく、それに伴い、著作物が出版物から複製されるようになった。

    複写複製に関する著作権問題を審議した著作権審議会第4小委員会は、昭和51年に報告書を公表しており、同報告書において「複写機器が国民の日常生活において身近なものとなるにつれ、著作物の複写複製も容易に、かつ、数多くの機会を通じて行われる結果、社会全体における複写複製の総量は加速度的に増大しつつある。このため、著作物の創作者である著作者及び著作物の伝達に重要な役割を果たしている出版者の経済的利益が不当に害される可能性が強まり、現にこれらの者からその経済的利益の侵害に関する主張が出され」ていると述べるとともに、「複製行為が物理的に容易なものとなるに比し、個々の複製に当たって著作権者と連絡し、その許諾を得る手続は、しばしば煩瑣なものであるから」、「複写機器の発達、普及は許諾を得ない複製を増大させることとなろう」と指摘し、その対応策として、著作権思想の普及徹底、集中的権利処理機構の設立等を示した。
    3同報告書が出されて10余年を経過した現在、著作者や出版者の団体により集中的権利処理機構設立の準備が進められているが、報告書が出された昭和51年以降も一層進展しつつある複写機器の発達・普及に対応して、著作権者のみならず、著作物の重要な伝達者である出版者について、複写を中心としたこのような出版物の複製利用の実態を考慮した独自の保護について検討することが要請されることとなった。
    4この出版者の保護に関しては、旧著作権法を全面的に改正する際の著作権制度審議会においても検討されている。昭和41年4月に出された同審議会答申の説明書では、「出版物の組版面は、それ自体が著作物ではなく、あるいは、すでに著作権が消滅した著作物に係るものであっても、他人がそれを利用することに対し、その出版者がなんの保護も与えられないことは妥当ではない。この場合、少なくとも組版面を写真複製等でそのまま利用することについてのなんらかの措置を、主として不正競争防止的な観点から著作権法上講ずることは考慮に価すると考える」としたが、同審議会での検討は、現在のように複写機器が発達・普及する以前になされたものであり、現行法では、出版者の保護の制度として、出版権の設定の制度が旧著作権法から引き継がれているのみである。
    5したがって、複写機器の発達・普及に伴う出版物の複製利用の新たな実態を踏まえて、改めて出版者の保護について検討することが必要とされるところである。

    なお、この問題については、昭和60年に(社)日本書籍出版協会等の団体が、発行された出版物の「版面」を利用した複写複製等により出版の利益を損なう行為から出版者を保護するための出版者独自の権利の創設についての要望書を文化庁へ提出している。また、国会の衆・参両院の文教委員会が、昭和60年に著作権法の一部改正について審議した際、出版者を保護するための検討を行うよう附帯決議を行っている。
    5これらのことから、著作権審議会(林 修三会長)は、昭和60年7月17日に開催された総会において、出版者の保護の問題について検討を開始することを決定し、第8小委員会を設置した。第8小委員会は、主査に北川善太郎京都大学教授を選出し、昭和60年9月以来検討を重ね、その検討結果を中間的に取りまとめたので、ここに公表する。



    第1章 出版の実態等
    書籍、雑誌及び新聞について、その発行点数等我が国出版の現状、情報伝達媒体としての出版物の位置付け、出版者の出版活動の内容、更に、出版物の複製利用の状況を概観することとする。

    1 我が国出版の現状
    我が国における書籍、雑誌及び新聞の発行部数、発行点数等、我が国の出版の現状は次のとおりである。

    (社)全国出版協会出版科学研究所の調査によれば、昭和62年度における書籍の出版点数は、4万2,579点であり、推定発行部数は、4億8,000万冊に上っている。

    また、月刊誌の出版点数は、月平均2,148点、年間推定発行部数は、23億5,000万冊であり、週刊誌については、出版点数が週平均73点、年間推定発行部数が約17億冊となっている。

    また、(社)日本新聞協会の調査によれば、昭和62年度の1日当たりの新聞の平均発行部数は、朝・夕刊セット紙を1部とした場合、4,983万部を数え、1世帯当たり1.26部となっている。

    2 情報伝達媒体としての出版物
    情報伝達媒体と考えられるものには種々あるが、出版物の情報伝達媒体としての実態について触れる。
    1)郵政省は、様々な通信メディアにより提供される情報について、その流通の実態を把握する情報流通センサスを実施している。これは、様々な情報通信メディアにより提供される情報を「ワード(文節)」という単位で計量的にとらえ、発信側で流通させる意図を持って伝達した情報の量(供給情報量)と受信側で見る、聞く、読むなどした情報の量(消費情報量)を計測したものである。調査対象メディアは種々あるが、そのうち、昭和61年度におけるテレビ、ラジオ、新聞、書籍、雑誌について、その調査結果を図1、2に掲げる。

    供給情報量及び消費情報量は、テレビが非常に多く、放送が重要な情報伝達媒体であることが分かる。しかし、新聞、書籍、雑誌の情報消費率は、テレビやラジオと比べ高く、新聞及び雑誌が効果的に情報を伝達しており、また、特に書籍が情報伝達媒体として大いに利用されていると考えることができる。
    図1 昭和61年度におけるメディア別供給情報量と消費情報量

    図2 昭和61年度におけるメディア別情報消費率


     注:情報消費率とは、消費情報量を供給情報量で除したものである。
    出典:郵政省大臣官房企画課コミュニケーション総合研究室編
       「情報化の現況」
    2)毎日新聞社が毎年実施している「読書世論調査」において、書籍、雑誌、新聞、テレビ、ラジオを、読み、見、又は聞く人の割合(読書率又は接触率)が調査されている。その結果によれば、昭和62年には、書籍47%、雑誌63%、書籍又は雑誌74%、新聞91%、。ラジオ54%、テレビ97%となっており、テレビへの接触率が非常に多いが、書籍又は雑誌の読書率も74%、また、新聞への接触率は91%であり、出版物の合計が165%とテレビ及びラジオの接触率の合計151%を超え、伝達媒体としての出版物の重要性を示している(図3参照)。
    図3 書籍・雑誌の読書率と新聞・ラジオ・テレビの接触率(昭和62年)


    また、同じ調査で、書籍・雑誌、新聞、テレビ、ラジオのために使用される1日当たりの平均時間が調査されているが、昭和53年以降、それぞれ、43分、36分、2時間21分、42分程度と多少の変動はあるが、ほぼ一定しており(図4参照)、出版物が情報伝達媒体としての安定した地位を占めていることが分かる。
    図4 1日にマスコミに使う平均時間の推移(昭和53~62年)

    3)総理府が、昭和58年11月に「家庭における情報通信サービスに関する世論調査」を実施し、国民が家庭生活で得ている情報はどのような媒体からかを複数回答により調査しており、その結果は図5のとおりである。

    図5 家庭生活における情報の入手媒体

    テレビやラジオと回答した人が、合計124.0%となっているが、新聞、月刊誌・週刊誌及び書籍・専門誌と回答した者は、合計119.6%、更に県市区町村の広報、チラシ・タウン誌・ダイレクトメール、政府刊行物等その他の出版物を含めれば、171.3%を数えており、このことから、国民の家庭生活において、出版物が重要な情報伝達媒体であることが分かる。
    4)昭和60年11月に総理府が情報に対する認識やニューメディアの利用に関する意向等について調査した「情報社会に関する世論調査」においては、情報を今後何から得たいと思うかを複数回答で調べたところ、図6のような結果が出されている。

    図6 今後希望されている情報入手媒体

    テレビ及びラジオが合計77.5%、新聞が54.9%、新聞を除く出版物が合計23.7%となっており、書籍、雑誌、新聞等の出版物から情報を得たいと答えた者が多数あり、情報伝達媒体として出版物が今後も利用されるであろうことをうかがわせるものである。

    以上、出版物は、情報伝達媒体として重要なものであり、大いに利用されていると言うことができ、今後、ニューメディアの時代においても、有力な情報伝達媒体として出版物が利用されていくものと考えられる。

    また、特に、情報伝達媒体としての出版物は、保存性に優れ、アクセスも簡便であるとともに、詳細で深い内容の情報を容易に盛り込むことが可能であるという特徴を有しており、放送等とは性質が異なる情報伝達媒体と言うことができる。このような点から、学術関係の情報の多くは放送等を通じてよりも書籍や雑誌によって伝達されている。

    3 出版者の活動
    著作物を出版物として作成し、発行するという出版者の出版活動は、書籍、雑誌、新聞のそれぞれについておおむね次のとおりである。

    (1)書籍
    1)情報の収集
    企画を立案するため、各種メディアから情報を収集する。
    2)企画の立案・決定
    収集した情報をもとに時代や世相を把握したり、また、ある分野の学問上や技術上の進展状況をとらえた上で、どのようなテーマについて、どのような読者対象を想定し、だれに執筆してもらうか、いつ発行するのか、図表、イラスト、写真等をどの程度盛り込むのか等を検討し、また、判型、ページ数、発行部数、定価、装丁等について、原価計算を行うなどして検討し、出版についての企画を立案・決定する。

    企画の立案・決定に当たっては、類似図書、類似企画の調査を行うほか、専門家の意見や読者アンケートの結果を参考とする。また、著者の選定に当たっては、著述歴等を考慮する。

    作家等から著作物の出版を依頼される場合があるが、その場合、出版者は、その内容や執筆者の著述歴を考慮して出版するか否かを判断する。
    3)原稿の執筆依頼
    決定された企画に基づき、選定された執筆者に執筆依頼を行い、その際、企画の内容について十分説明するほか、用字、用語、写真、図表、索引等について打合せを行う。必要があれば、参考資料等を提供する。また、執筆者が執筆している間は、その進行状況を把握し、不足資料があれば、収集し、提供する。
    4)原稿の整理
    作成された原稿を整理し、法令上の問題や引用の出所の誤り、文法上の誤り等のチェックを行い、また、企画の内容に合っているかどうかを照合し、必要に応じ執筆者に修正等を依頼する。また、用字、用語を統一する。
    5)写真、イラスト、解説、年表等の検討、準備
    本文中に写真、イラスト、口絵が必要な場合は、執筆者と打合せを行った上で、写真家やイラストレーター等にその作成を依頼する。解説、年表、あとがき等について検討し、その作成を解説者、執筆者等に依頼する。
    6)目次、索引、奥付けの準備
    目次、索引、奥付けについて検討し、原稿を作成する。
    7)宣伝、販売計画の立案と決定
    読者対象等を考慮して、宣伝の方法を検討、決定し、宣伝のためのチラシ、ポスター、新聞広告、ダイレクトメール等の原稿を作成する。また、販売の方法を検討し、決定する。用紙、装丁、判型、発行部数等について決定した後、改めて原価計算を行い、定価を決定する。
    8)造本計画の立案と決定
    用紙、製本の仕方、装丁、カバー、帯、書名書体等について検討、決定し、カバー、帯の原稿を作成するほか、必要に応じて装丁作家を選定し、装丁の作成を依頼する。
    9)組方体裁の決定(割付)
    原稿を書籍の紙面としてどのように作り上げるかを決定する。すなわち、判型、縦・横組、活字の大きさ、書体を決定し、段数、段間、柱(各ページの上部等にいれる章や節の題名、見出し)の位置、けい線、余白等の指定を行い、イラスト、写真、図表等の位置を指定する。
    10)校正
    原稿が印刷に回され、組版が作成され、校正刷りが出来上がると、校正を行う。校正は何回か繰り返し行われる。
    11)印刷・製本
    印刷を委託し、印刷が出来上がると、製本を委託する。
    12)宣伝、販売等
    決定された宣伝方法、販売方法に従い、宣伝、販売を行う。委託販売する場合は、取次店と交渉し、販売を委託する。

    以上を図示すると、次のとおりである。


    (2)雑誌
    雑誌の作成、発行については、書籍の場合と基本的には同じであるが、具体的な内容を見ると、以下のような若干の相違がある。
    1)企画の立案・決定の段階では、雑誌の発行間隔や読者対象は創刊の時点で既に決定されているので、それらを考慮して、出版者が、どのようなテーマについて、だれに執筆してもらうか、自らの取材等に基づき執筆するか等企画を立案し、決定する。
    2)出版者が原稿を編集する場合は、取材やインタビュー等を行った上で原稿を作成したり、座談会を開催し、会議録を作成するなどの作業を行う。
    雑誌の作成、発行における出版者の活動を図示すると、以下のとおりである。



    (3)新聞(日刊紙)
    日刊紙の囲み記事(コラム)や連載記事等の作成については、雑誌の作成の場合と同じである。
    しかし、日刊紙の場合、日々発生する時事の事件をすばやく報道するという書籍、雑誌とは異なる性格があるので、ここではそのような報道のための新聞を作成、発行する場合について概観する。
    1)取材
    どのような事件が発生したか情報を収集し、そのニュース性を判断して、取材を行う。
    2)原稿の作成
    1)の取材に基づき原稿を作成する。その後、作成された多くの原稿を、そのニュース性を判断して取捨選択し、選択された原稿に必要な修正を行う。
    3)原稿の整理
    2)を経た原稿を整理し、その内容を考え、見出しをつける。
    4)小組み
    3)を経た原稿ごとに、校正刷りを作成し、校正する
    5)大組み
    4)を経た原稿について、そのニュース性を相互に判断して実際に掲載する記事を選択し、選択した記事についてどのような紙面として作り上げるかを決定する。その際、他の記事との関連で必要に応じて原稿、見出しを修正する。そして、校正刷りを作成し、校正を行う。
    6)印刷・製本
    以上の経過を経て、印刷し、製本する。
    7)配送
    各地の新聞販売店等に配送する。
    以上を図示すると、以下のとおりである。


    4 出版物の複製利用
    (1)複写機器の普及等
    複写機等の複製機器の発達・普及に伴い、著作物が出版物から複製されることが頻繁に行われるようになった。

    このような出版物の複製の態様としては、従来の写真製版による複製以外に、静電複写機により複写すること、マイクロ撮影機によりマイクロフォームへ記録すること及びそこからマイクロリーダープリンターにより複製すること、ビデオディスク、磁気テープへ入力することによりデータベース化した後、コンピュータ組版により複製することが考えられる。
     これらの利用の実態の全体を把握した資料はないが、出版物の複写に各方面で広範に用いられている静電複写機や、図書館等で資料の保存用にしばしば使用されているマイクロ撮影機の国内向け出荷台数及び複写の用に供される用紙の使用状況は、以下のとおりである。

    1)静電複写機
    静電複写機は、書類や出版物を容易にかつ安価に複写することができることから、企業、官庁、図書館等に広く普及しているほか、複写サービスを行う業者も増えてきている。静電複写機の国内向け出荷台数の推移は、以下のとおりである。

     国内向け出荷台数(指数)
    昭和53年162,129台(100.0)
    昭和54年215,806(133.1)
    昭和55年260,000(160.4)
    昭和56年299,000(184.4)
    昭和57年353,890(218.3)
    昭和58年441,876(272.5)
    昭和59年525,769(324.3)
    昭和60年509,820(314.5)
    昭和61年569,391(351.2)
    昭和62年(見込み)592,000 (365.1)
    注:(社)日本事務機械工業会調べ

    国内向け出荷台数が、昭和53年から昭和62年(見込み)までに約3.7倍に増加しており、国内において稼働している機器の台数が著しく増加していることが分かる。
    また、複写機の性能も、拡大・縮小複写が可能となっており、複写スピードも上がっている等著しく向上している。

    2)マイクロ撮影機
    マイクロ撮影機の国内向け出荷台数の推移は、次のとおりである。

     国内向け出荷台数(指数)
    昭和53年1,565台(100.0)
    542,141(136.8)
    551,923(122.9)
    561,410(90.1)
    572,329(148.8)
    582,573(164.4)
    593,206(204.9)
    603,580(228.8)
    613,199(204.4)
    62(見込み)2,600(166.1)
    注:(社)日本事務機械工業会調べ

    マイクロ撮影機の国内向け出荷台数は、変動はあるものの増加傾向にあり、昭和53年と昭和62年(見込み)を比較すると、約1.7倍に増加しており、国内におけるマイクロ撮影機の稼働台数が年々増加していることが分かる。

    3)コピー用紙の使用状況
    コピー用紙の使用状況は、日本感光紙工業会の推定では、全国における各年に使用されたジアゾ感光紙及びPPC用紙の合計は、以下のとおりとなっており、昭和55年度に比べ、昭和61年度には約1.5倍に伸びている。

     推定複写枚数 (指数)
    昭和55年度447億枚(100.0)
    56515(115.2)
    57538(120.4)
    58565(126.4)
    59612(136.9)
    60641(143.4)
    61662 (148.1)
    注:推定複写枚数は、A4判に換算した枚数である。

    複写機器は出版物の複写ばかりではなく、事務上作成した書類等を複写するために主として使用される場合も多いと考えられるが、稼働台数の増加に伴い、また、利用されるコピー用紙の増加に伴って、それだけ出版物が複写される機会が増加しているものと考えられる。

    (2)出版物の複写利用の実態
    出版物が社会の各分野においてどの程度複写利用されているかを示す全体の資料はないが、具体的事例として、文部省が毎年実施している国公私立大学図書館の実態調査結果及び出版者団体等の行った実態調査の結果を以下に掲げる。
    1)文部省が毎年実施している国公私立大学図書館の実態調査によれば、昭和61年度の複写利用件数は、約730万件であり、昭和46年度と比較すると、約3.7倍に増加している(図7参照)。また、昭和61年度の静電複写機による複写枚数は、約9,500万枚であり、昭和46年と比較すると、約3.4倍になっている(図8参照)。

    図7大学図書館での複写利用件数の推移図8大学図書館での静電複写機による
    複写枚数の推移
    出典:文部省学術国際局「大学図書館実態調査結果報告」

    2)(社)日本書籍出版協会、(社)日本雑誌協会、(社)自然科学書協会及び(社)出版梓会の出版4団体が、全国の上場企業、大学・短大、学術研究機関、情報提供サービス業者を対象として、出版物(書籍、雑誌)からの複写の実態調査を、昭和62年に行っている(注1)。

    その調査結果によると、これらの機関において年間約159億枚が複写されており、その8.6%の約14億枚が出版物からの複写であって(図9参照)、複写に利用された出版物の冊数は、年間約3,700万冊に上ると推計している。また、出版物からの複写枚数のうち、書籍と雑誌からの複写枚数の構成比率は、書籍46.2%、雑誌53.8%であると推計している(図10参照)。

    図9企業・大学等における年間複写総枚数に対する書籍、雑誌からの複写枚数の割合図10図9における書籍、雑誌からの複写枚数の構成比
    (注1)「企業・大学等における出版物からの複写実態調査概要報告書」昭和63年3月

    3)(社)日本音楽著作権協会は、全国の事業所、学術・研究団体、大学その他の学校、図書館等を対象として、複写実態の調査を昭和62年に行った(注2)。

    その調査結果によれば、全国の事業所等における月間の複写総枚数は約52億枚に上っており、その9.1%の約4億8,000万枚が書籍、雑誌、新聞その他の著作物を複写したものであると推計しており(図11参照)、また、月間複写総枚数から全国における年間の複写総枚数を約630億枚と推計し、これは、「日本感光紙工業会年報・昭和61年度版」の年間推定複写枚数663億枚(実績662億枚)とほぼ相応しているとしている。
    図11
    事業所、図書館、学校等における月間複写総枚数に対する著作物の複写枚数の割合

    (注2)「著作物の複写に関する調査報告書」昭和62年5月

    4)2)に掲げた調査では、調査対象別の年間複写総枚数と、このうちに占める出版物からの複写枚数が推計されており、それを図12に示す。また、3)の調査では、調査対象別全体の複写総枚数及びそのうちに占める著作物からの複写枚数が推計されており、図13に示す。

    これらのことから、大学や図書館においては複写量の中で出版物又は著作物が複写される割合が多く、一方、出版物又は著作物から複写された枚数の総量は、上場企業、事務所において多いことが分かる。

    なお、このような著作物からの複写については、図書館における複写サービスのように、著作権の制限規定に基づき一定の範囲で許諾を要することなく複製される場合もあると考えられるが、業務目的の複製など、無許諾で行われれば権利侵害になる場合も相当量あるものと考えられる。

    図12企業・大学等の調査対象別の年間複写総枚数とそれに占める書籍、雑誌からの複写枚数(「企業・大学等における出版物からの複写実態調査概要報告書」による。)

    注)図中のパーセントは、調査対象別の複写総枚数に占める書籍・雑誌からの複写枚数の割合を示す。


    図13事業所、図書館、学校等の調査対象別の月間複写総枚数とそれに占める著作物の複写枚数(「著作物の複写に関する調査報告書」による。)
    注)図中のパーセントは、調査対象別の複写総枚数に占める書籍・雑誌からの複写枚数の割合を示す。


    以上のような調査を勘案すれば、今日、出版物の複写による著作物の複製利用がかなりの数に上っており、無許諾複製が著作者の権利と経済的利益に影響を与えているのみならず、出版物の購入に代えてその複写による情報の入手が頻繁に行われることによって、出版者の、出版活動から得られる経済的利益に影響を与えていることは、影響を受けた出版物の実数を明らかにすることは困難であるものの、否定できないと考えられる。
    (注3)出版物の複写利用がその販売に大きな影響を与えている例として次のような例が指摘されている。
    1)毎年実施されている全国的な合唱コンクールにおいて、昭和62年、作曲家I氏の作品を自由曲として選択し参加した人員の数は、約3万2,000人(約800団体)であったが、同作曲家の当該作品を載せた楽譜集の全国における同年の販売部数は約4,600部にすぎなかった。

    このことは、合唱参加者各自について、楽譜の使用が不可欠であり、かつ、合唱公演に当たり楽譜は通常一度限り使用されるものであることから、コンクールの参加に際し相当数の参加者が、使用する楽曲の楽譜集を小部数のみ購入し、その他は複写によって賄っているものと推測できる。
    2)T出版社発行の社債に関する書籍(定価2,800円、販売部数約5,000部)について、昭和56年、ある証券会社がその一部分及び付録を300部無断で複写し、取引先へ配付した。



    第2章 現行法制による出版者の保護
    出版者は、現在、以下の法制により保護を受けることができると考えられる。
    1 著作権法による保護

    (1)著作者としての保護
    現行著作権法上出版者は、自らが執筆した記事等について著作権を有し、保護されることはもちろん、編集著作物の著作者として保護される場合がある。

    著作権法は、第12条において、「編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する」と規定している。これは、例えば、雑誌について、個々の記事等の選択又は配列に創作性があれば、記事等の個々の著作物の保護とは別に、雑誌を編集著作物として保護するものである。このような編集著作物としては、雑誌、新聞、百科辞典等がある。

    出版者が、素材の選択又は配列について創作性を有する編集物を作成した場合は、出版者は当該編集物の著作者として保護される。

    しかし、編集物に係る著作権は、編集物を編集物として利用する場合に対しては権利が及ぶが、編集物を構成している個々の素材のみを利用することに対しては、権利が及ばない。例えば、出版者が作成した雑誌の全部又は相当部分が複製される場合には、当該出版者の編集著作権が及ぶが、雑誌の個々の記事について複製が行われた場合には、当該記事の著作者の著作権は及ぶけれども、雑誌を作成した出版者の編集著作権は及ばない。
     また、出版物のすべてが編集著作物とは限らないので、出版者が編集著作物の著作者として保護される場合は、限られた場合であると言える。

    (2)設定出版権による保護
    著作権法第79条は、「第21条に規定する権利(複製権)を有する者は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる」と規定している。

    出版権は、「頒布の目的をもって、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利」(法第80条第1項)である。

    この出版権は、一種の用益物権的権利であって、著作物を出版することに関する排他的権利である。出版者は複製権者と出版権の設定契約を結ぶことにより、著作物の出版を排他的に行うことができる。そのため、第三者の出版権侵害に対しても自ら差止請求や損害賠償請求を行うことができる。

    しかし、出版権を出版者に設定するかどうかは、複製権者の意思に係っており、すべての著作物について出版権が設定されるわけではない。特に雑誌については、複製権者が出版者に出版権を設定することはまずなく、雑誌の記事が複製された場合は、出版者は保護を受けられない。

    さらに、出版権は、著作権の一支分権である複製権を前提とする権利であるので、著作権の保護期間が経過した著作物を出版する場合には、出版権の設定ということはあり得ず、その出版物が複製されても、出版者は保護が受けられない。

    (3)その他
    出版者に著作権の譲渡又は信託的譲渡が行われれば、出版者は、著作権者の立場に立つことにより、著作物の違法な複製に対して差止請求等の法的対抗手段を講ずることができる。なお、このような著作権の譲渡契約や信託的譲渡契約が著作者と出版者との間で締結されることは、我が国では少ないと考えられる(注4、注5、注6)

    出版者と著作者の関係は、大半は、出版許諾契約が締結されているにすぎないと考えられ、この場合には、第三者の行う著作物の違法な複製に対して、出版者は自ら直接に法的救済を受けることができない。ただし、第三者が違法に出版を行うことについて、著作者が当該第三者に対して法的対抗手段を講じない場合に、出版者が自ら当該第三者に対し、著作者に代位して(債権者代位権:民法第423条)法的対抗手段を講じ得る場合があると考えられる。

    (注4)楽譜の出版については、出版者が、音楽の著作者から著作権の信託的譲渡を受けている場合がある。

    (注5)著作者が出版者に著作権を譲渡又は信託的譲渡をするのではなく、著作権の行使について代理権を授与する場合や、授権する場合も考えられる。前者の場合には、著作者の名前で出版者が著作権を行使し、後者の場合には、授権された出版者の名前で行使することになるが、いずれにしろ、出版者は、代理権を授与されている又は授権されている事務の範囲で、著作権を行使することができ、著作権の侵害があった場合において、侵害者に対し差止請求を行うことにより、出版者の利益をも確保することができると考えられる。
    ドイツ、フランス等においては、出版契約において、当該著作物の複製や映画化、翻訳等につき、出版者が著作者を代理する旨の条項を設ける慣行があり、イギリスやアメリカにおいても、しばしばこのような条項が出版契約に設けられているとされている。

    (注6)著作権の信託的譲渡を受ける方法や、著作権の行使についての代理又は授権によって出版者が自らの利益を守る方法は、第三者が当該著作物の違法な出版を行うことを差止めることにより、出版者の利益を確保できる点では有効である。しかし、広範に行われており、個々に差止請求を行うことが困難な著作物の複写に対しては、使用料の支払いを条件に許諾を与えて著作者の財産的利益を確保することはできるが、出版者自身の利益を十分に確保することはできない。

    また、出版者が自己の利益を確保するために、著作者から著作権の譲渡を受けることは、財産的権利の移転について著作者が同意することを前提とするものであり、必ずしも実効性のある方法とは言えない。

    2 不正競争防止法による保護
    不正競争防止法では、日本国内で広く認識されている他人の氏名、商号、商標、商品の包装容器その他他人の商品であることを示す表示と同一又は類似のものを使用すること、それを使用した商品を販売することなど他人の商品との混同を生ずる行為、日本国内において広く認識されている他人の氏名、商号等の他人の営業であることを示す表示と同一又は類似のものを使用することなど他人の営業上の施設又は活動と混同を生ずる行為等に対して、差止請求、損害賠償請求等を認め、さらに、刑事罰を規定している。

    出版関係で不正競争防止法の刑罰規定を適用した例として、ある出版者発行の書籍と同一内容でかつ当該出版者の商号並びに当該書籍と類似の装丁を有する書籍を別の出版者が印刷製本した場合に、他人の商品との混同を生じせしめる行為に該当するとした最高裁判所の判決がある(最判昭和33年3月27日、判例時報146号5ページ)。

    このように、他人の周知の商号を無断で使用するなどして出版し、商品又は営業の混同が生ずる場合には、不正競争防止法が適用され、そのような行為を排除をすることは可能である。

    しかし、他の出版者の出版物を写真製版して出版しても、最初の出版者の出版物とは異なる出版者による出版物であることが明らかな形態で発行された場合は、商品又は営業の混同が生ずるとは考えられず、また、出版物の一部分を複製した場合には、それによって商品主体や営業主体の混同が生ずることは考えられない。したがって、出版物の複製に対して不正競争防止法が適用される場合は、限られた場合であると考えられる。

    3 不正行為法による保護
    民法第709条では、故意又は過失により権利を侵害した者に対する損害賠償請求権を定めている。権利侵害については、侵害の対象が民法その他の法律上の権利として承認されているものに限定されるわけではなく、営業上の利益の侵害が不法行為となり得ることについては、判例、学説は一致している。その場合の違法性の判断は、侵害された利益の種類、性質と侵害行為の態様との相関関係によるとされている。

    復刻版の作成については、不法行為法の適用される可能性があると考えられるが、まだ判例はない。

    また、出版物の複写については、通常、出版物の一部分についての小部数の複製であり、このような利用実態からも、出版者は、不法行為法で保護を受けることは難しいと考えられる。



    第3章 外国の立法例及び国際機関における検討
    1 外国の立法例
    イギリス法系の諸国に出版者の保護に関する立法例が見られる。

    1)現行法制
    イギリス著作権法は、発行された版(published edition)の保護を規定している。この版の保護は、録音物、映画フィルム、放送の保護と同じく1956年(昭和31年)のイギリス著作権法の第二部に規定されている。

    同法第15条は、1又は2以上の文学的、演劇的又は音楽的著作物のすべての発行された版に著作権が存するとし、その保護期間は版が最初に発行された暦年の末から起算して25年存続するとしている。ただし、版の保護は、同一の著作物の従前の版の組版面(typographical arrangement)を複製した版には適用されない。

    権利の内容は、版の組版面の複製物を写真術又は類似の方法により作成することであり、出版物を写真製版により復刻することのほか、出版物を複写することも含まれると考えられる。この権利は、発行された版に表わされている著作物の著作権とは別個独立したものであり、そのため、保護期間が経過した著作物を印刷した版でも保護を受けることができる。

    保護の享受者は、版の発行者、すなわち出版者である。
    発行された版に係る保護基準は、イギリス国内等で版の最初の発行があった場合という発行地主義と、版の発行者(出版者)がイギリス国民である場合という国籍主義を併用している。

    このような発行された版の保護は、オーストラリア、バングラディシュ、インド、アイルランド、ニュージーランド、パキスタン、シンガポールの7か国においても立法化されている(注7)。

    なお、イギリス著作権法は、現在、全面的改正のための法案が国会で審議されている。同法案によれば、発行された版の保護については基本的な改正はないが、新たに権利内容について、組版面のそのままの複製物(a facsimile copy of the arrangement)を作成することと規定し、これには縮小又は拡大された複製物を含むとしている。また、私的研究のための公正使用や、教育機関における複製などについて出版者の権利を制限する規定を設けている。

    2) 立法経緯及び立法理由
    イギリス著作権法第15条は、1956年(昭和31年)著作権法において新たに規定された。イギリス出版協会はイギリス政府1951年著作権委員会に対して、出版者によって作成された文学的又は音楽的著作物の独自の版が写真製版等の方法により複製されることに対する版の保護の必要性を指摘した。版の保護を求める理由として写真製版技術の著しい進歩と、著作権の保護期間が経過した著作物を掲載した出版物が写真的に複製されてもそれを防止する手段がないことを挙げている。さらに、イギリス出版協会は、文学的、音楽的著作物の出版物の版を作成する作業と蓄音機用音盤を作成する作業の間に類似したものがあり、著作権法が蓄音機用音盤を保護しているのと同様に版を保護すべきであるとしている。

    この問題を検討した著作権委員会は、1952年(昭和27年)、版を合理的に保護することに同意すること、権利の内容は、写真製版又は類似の手段によるそのままの複製であること、保護の享受者は出版者であること、保護期間は発行後25年とすべきことをその報告書で勧告した。この勧告に基づき、現在の第15条が規定された。

    (注7)他に出版者保護の立法例として、例えば、スペイン法がある。実演家、レコード製作者等の権利を規定する同国「知的所有権法」第2章の第119条及び第120条は、公有となっている未発行の著作物を発行した者は、当該著作物について著作者が有していた権利と同様の権利を発行後10年間有するとしている。

    2 国際機関における検討
    出版者の法的保護については、1987年(昭和62年)12月に、WIPO、ユネスコ合同印刷物(printed word)政府専門家委員会において、検討されている。

    WIPO、ユネスコ両事務局がこの委員会のために作成したメモランダムでは、
    1)複写的複製技術(reprographic reproduction technology)の劇的な発達により、海賊版の発生や印刷された著作物の通常の利用を妨げる事態が生じていること、
    2)これに対し、出版者が保護を受けられない場合があること、
    3)このような状況において、出版者が著作者の権利とは独立した保護を要求することは正当であること、
    4)発行された版の組版面の保護という形態で出版者を保護している国が英国法系の諸国にあること、
    5)出版者は、レコード製作者や放送事業者と同様、著作者の保護と類似の保護を受けるに価すること、
    したがって、出版者に付与すべき権利は著作隣接権であること等の見解を述べている。また、出版者の保護の問題に対して各国が対応する場合の指針となるべき原則として、
    1)発行された版の組版面に関して出版者に適正な保護を与えるよう各国が考慮すべきこと、
    2)出版者の保護は、発行された版の組版面を、そのままの複製物(facsimile copies)を提供する複写又は類似の方法(reprographic or similar processes)により複製することに対して、出版者が許諾する権利を含むものであること、
    3)保護期間は、発行後25年間であること、

    4)発行された版に含まれている著作物に係る権利に適用される制限は、発行された版の組版面の保護にも準用されること、
    5)発行された版の組版面の保護は、著作権の保護に何ら影響を及ぼすものでないこと
    等を掲げている。これは、「外国の立法例」(本章1)で触れたイギリス等における出版者の保護と同様の内容である。

    なお、この委員会では、相当数の出席者は、提案された原則について賛成を表明したが、委員会として、出版者保護の原則を採択することには至らず、この問題については更に検討することとなった。



    第4章 出版者の法的保護
    1 出版者の保護の必要性

    (1)著作物の伝達者の保護
    著作権法は、著作物に関し、著作者の権利を定めて、その保護を図るとともに、著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者についても、その果たしている役割の重要性と、その伝達者としての活動に、著作者が著作物を創作する場合の創作的行為に準ずる知的行為が存在することを評価して、その活動の安定性を確保し、その文化的役割を十分果たすことができるよう、著作者の権利に隣接する権利を定めることによってその保護を図っている。

    すなわち、音楽、演劇等の著作物を解釈し、演ずることにより公衆に対して直接に又はレコード等を通じ間接に著作物を伝達する実演家について、著作者に準ずる創作的な行為があることを評価し、また、著作物等を、レコードや放送等の現代社会における有力な伝達媒体により、公衆に伝達しているレコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者について、レコードの作成や放送番組の編成等の過程における著作者に準ずる知的活動を評価して、これらの者に対し、著作隣接権制度により保護を与えている。

    (2)出版者の保護制度としての設定出版権
    出版者は、その出版活動により著作物を公衆へ伝達しているが、出版者には、現行著作権法上固有の権利は認められていない。しかし、著作権法は、昭和9年の改正以来、出版者に対して複製権者が出版権を設定できる制度を設けて、その著作物を文書又は図画として出版する排他的権利を出版者に与えてその保護を図っている。この制度により、出版者は、出版権の目的である著作物を他の者が頒布を目的として複製することを阻止することができ、その出版活動の安定性を確保することができる。

    (3)出版物の複写利用と出版者の出版活動
    1)ところが、近年の複写機器の著しい発達・普及に伴い、出版者の保護に関して、その出版物が他の者によって出版されることを出版権の設定の制度により阻止する権利を行使するという形態では対応できない類の新たな問題、すなわち、出版物からの著作物の複写という問題が生じてきた。出版物からの複写は、通常、著作物の複写に加えて出版者が作成した出版物の紙面を複写するというものである。すなわち、楽曲の録音に加えて、それが固定されているレコードをも複製するのと同じ類の複製行為である。
    2)著作物を公衆へ伝達する出版者の出版活動は、著作物を出版物の形に加工して伝達媒体とする点に特色を有している。この出版物の作成過程においては、出版者は、著作権の創作行為とは別に、単に著作者の原稿を活字に組み量産するにとどまらず、次のような、一連の出版者独自の知的行為を行っている。
    a)時代や世相、学術出版物にあっては当該学術分野の学問的進展状況等につき情報を収集し、把握することや、類似図書について調査するなど、ある出版物を発行することについて、その学問的、社会的意義を調査研究し、企画を決定する。
    b)書き下しの著作物の出版物については、出版企画に基づき、執筆者を選定し、執筆依頼を行い、必要があれば参考資料等を提供する。原稿が作成されると、法令上の問題や引用の出所の誤りがないか等内容についてチェックを行う。
    c)原稿完成後は、その原稿を出版物の紙面としてどのように作り上げるか、すなわち、活字の選択、段数、段間の設定、見出しやイラスト、写真等の配置を検討し、決定する。

    (注8)印刷は、通常印刷業者に委託されるが、印刷業者の行為は、通常、出版者の指示に従って、組版し、印刷するという作業を行うものであり、その場合は、出版物の作成のための補助的行為にすぎないと考えられる。

    3)このような出版者の知的行為の成果物である出版物について、その複製は、今日、複写機器を用いることにより、極めて簡易に、かつ、低廉に行えるようになっており、それを必要とするあらゆる場所において行われていると言っても過言ではない。これに対して、現在、出版者は、その出版物の無断の複写利用を阻止し、あるいは、その利用者から一定の対価を受けることができるような権利は、原則的に、与えられていない。
    4)すなわち、従来、出版者は前述の出版権の設定の制度により、頒布を目的とする複製には対応することができたが、複写の場合は、通常は頒布を目的としない複製であるため、出版権では対応できない。また、出版権は著作者から設定される権利であることから、雑誌類のように現実には著作者からその設定を受けられない場合には、頒布目的による出版物の複製にも著作権法上対応できない。
    5)このようなことから、例えば、複写されることが多いと言われている学術分野の出版物については、購買対象者の数が少なく、発行部数も少ないため、出版物の作成に要する固定費の割合が多く、1冊当たりの単価が高くなっているが、このような出版物が研究機関等において業務目的で頻繁に複写されることにより購入者の減少を招き、1冊当たりの単価をますます高いものとし、そのため、更に複写を行う機会を増加させ、その継続出版が困難になる場合があるとの指摘もあるところである
    6)このような状況が生じることにより出版活動の安定性が損なわれる場合においても、現行制度においては、著作物の伝達者としての重要な役割を果たしている出版者は、適切な対応を採る立場にはないところである。

    (4)出版者の権利の必要性
    現代社会における有力な情報伝達媒体である出版物を作成し、発行している出版者は、著作物の伝達者として重要な文化的役割を果たしている。したがって、出版者の著作者に準ずる知的行為の成果物という出版物の性格及び複写機器の発達・普及の状況を考慮すれば、出版者に、その出版物の複写を中心とした複製についての一定の権利を認めることが、出版者が、著作物の伝達者としての役割を円滑に果たしうる立場を確保するための必要な方策であり、ひいては、出版活動の安定、活発化により著作物の社会への伝達を促進し、文化の発展に寄与するものとなると考える。

    (注9)以上のような出版者の法的保護についての考え方に対しては、現行著作権法上、出版者は、既に出版権設定の制度により保護されており、更に新たな権利を付与して保護することは、制度上、出版者を二重に保護することになるのではないかとの指摘があった。

    (注10)出版者自身が作成する編集物について、その素材の選択又は配列に創作性が認められる場合には、出版者は編集著作物の著作者としての保護が認められるところから、出版物の作成に係る行為が、編集著作物の創作行為と出版物の作成行為の二重に評価されることになるのではないかとの指摘があった。

    新聞の作成を例に採れば、例えば、ニュース性を判断し、第1面に掲載するいくつかの記事(見出しを含む。)を選択し、その記事をどこに配置するかを決定し、配置していくことは、編集物の素材の選択又は配列行為であると考えられる。しかし、ニュース性を判断した記事等の紙面における具体的な取扱い、すなわち、段数及び行数を決定することや、見出しの配置、その文字の大きさと書体、縦・横書を決定し、記事を組む行為は、編集著作物の創作行為とは言えないが、出版者の知的行為として評価し得るものである。したがって、出版者の行う行為においては、このように編集著作物の創作行為と評価できる選択又は配列行為が行われているが、それに加えて、著作物の伝達者としての出版者の知的行為が行われていると考えることができる。

    この点については、編集物の作成を出版者以外の者が行う場合を考えると、理解できると考えられる。例えば、辞書の編集において、素材の選択や配列は、出版者ではない編集者が行い、どのような読者を対象とした辞書とするか、執筆者をだれにするかの決定、著作者の原稿を実際に紙面にどのような形で具体化するか、すなわち、判型、文字の大きさや割付などの決定等を出版者が行う場合を考えると、編集物の作成行為と出版者の出版活動とは明確に区別することができる。

    また、編集著作物の保護は、著作者の思想又は感情の創作的表現としての編集物である著作物を保護するものであり、他方、新たな出版者の保護は、著作物が化体されている出版物の複写について出版者に権利を認めることによって、著作物の伝達行為としての出版者の知的活動を保護するものである。

    以上のことから、例えば、出版活動としての新聞の発行行為の一部が、編集著作物の創作行為とも見られる場合があるとしても、問題はないと考える。

    2 出版者の権利の性格等
    出版者の権利の性格等は、「出版者の保護の必要性」(本章1)に基づき、次のようなものとすることが適当であると考えられる。
    1)出版者の権利は、著作物の伝達者としての役割の重要性及びその伝達行為に著作物の創作に準ずる知的行為が存在することの評価に基づくものであり、実演家、レコード製作者等の保護と同様に著作隣接権制度の中に位置付け得るものであること(注11)。
    2)出版物が複写機器等により簡易に複製されることに対して、出版者がその出版活動の安定性を確保できるようにするための権利であること。
    3)著作隣接権として位置付けられる出版者の権利は、著作者の権利に変更を加えるものではないこと。
    4)権利の内容、保護期間等については、上記の趣旨に照らして必要な限度において保護を与えるものであり、また、適正な権利行使が行われるような措置が必要であること。
    (注11)出版者は、著作物の伝達者であるとともに、人事異動の記事等事実の伝達にすぎない雑報や、客観的データなど著作物とは言えない情報の伝達者でもある。著作物ではない情報を出版物にして出版した場合にも、著作物を出版した場合と同様、出版者は、固有の知的行為、例えば、当該情報の法律上の問題やその情報の信頼性をチェックし、必要に応じて修正等を行い、また、その情報を出版物に化体するという行為を行っており、著作物を伝達していないという理由で、その出版物の複写について権利を認めないこととすることは適当ではない。
    また、出版者を著作隣接権制度により保護するとすれば、著作物には当らない音をレコードに固定したレコード製作者や、著作物には当らない番組を放送する放送事業者も保護されていることから、著作物と言えない情報を化体した出版物の出版者も、保護し得ると考えられる。

    なお、そのような情報を選択し、配列して表現した場合には、そこに創作性があれば、編集著作物として保護されることになるが、これは、思想又は感情の創作的表現としての著作物自体の保護であり、一方、出版者の権利については、このような情報を出版者自身が収集して表現したものを作成したとしても、出版物として発行に至らなければ保護されないものであり、編集著作物とは別個の観点からの保護である。

    3 出版者保護の内容等
    (1)権利の目的
    出版者に権利を認めその法的保護を図っていく場合、出版者の作成するどのような出版物を出版者の権利に係る出版物として考えるか問題となるところである。
    (1)出版物の範囲
    出版者の保護は、「出版者の保護の必要性」(本章1)で述べたように、複写機器の発達・普及の状況を考慮して、著作物等を出版物として発行することにおける出版者の知的行為にかんがみ、出版者に適切な権利を認めようとするものであり、また、複写の対象となるのは発行された出版物であることから、発行された出版物に限って、出版者を保護することが考えられる。

    また、出版物には、書籍、雑誌のように冊子になっているものと、新聞、地図のようにそうでないものがあるが、そのような形状の区別にかかわりなく出版者の知的行為を評価することができ、かつ、複写利用による出版者の出版活動への影響を見いだし得るところから、そのような区分けをすることなく、すべての出版物について出版者を保護することが適当である。

    さらに、絵や写真等で構成されている画集や地図などのような出版物も、活字のみで組まれているものと同様、その出版活動に出版者の知的行為を見いだすことができるので、区別することなく、一括して保護対象と考えることができる。

    (2)将来の出版形態への対応
    ところで、近年、CD-ROM、ビデオディスク等に図鑑、百科事典等を納めて発行することや、出版物の作成にパソコンやCTS(電算写植システム)を利用するなどのいわゆる「電子出版」が注目されている。「電子出版」においては、出版という専門的な行為がコンピュータ等の新技術を用いることにより個人や企業内において簡易に行えるようになるほか、情報が電子媒体等に蓄積されることから、情報が当該媒体によって提供されるのみならず、通信回線により提供できることにもなり、現在の、紙面を媒体とした情報の提供という形での出版活動の様相が将来変化することも予想されるところである。

    当小委員会としては、出版形態のこのような新しい動向についても留意し、同一の著作物を紙面という媒体で発行した場合との均衡上、出版者が電子媒体等により著作物を伝達する場合の保護について論議したが、CD-ROM等のどの範囲のものに、また、どのような利用に対して権利を認めるべきかについては、「電子出版」に関する技術の開発が目覚ましく進展しつつある現時点では、将来を見通した判断が難しいところから、今後の課題として別途検討することが適当であると考える。

    一方、既存の出版物の紙面が電子媒体等に入力されることについては、新しい技術の開発や普及によって将来広範に行われると予想されるところであり、既存の出版者の保護という観点から、何らかの措置が必要であろう。

    (2)権利の保護内容
    出版者の保護は、「出版者の保護の必要性」(本章1)で述べたように、複写機器の発達・普及の状況等を考慮して、著作物の伝達者としての出版者の役割を円滑に果たし得る方策として、出版物の複写を中心とした複製について一定の権利を出版者に認めるものであり、将来における出版物の利用態様等も考慮して、出版者には、以下のような出版物の紙面の複製について、権利を認めることが適当である。
    1)出版物の紙面の複写機器による複製。これには、複写のほか、例えば、出版物の紙面のマイクロフォーム化、マイクロフォームからのマイクロリーダープリンターによる複製、ファクシミリ機による複製も含まれる。
    2)出版物の紙面の写真製版による複製。これには、作成された写真版による印刷も含まれる。
    3)出版物の紙面のCD-ROM、磁気テープ等への入力(注12)
    (注12) 3)については、「将来の出版形態への対応」(本章3(1)2))の最後で述べたように、将来の技術的発達を考慮すれば今後広範に行われると予想されるところであり、権利を認めることが適当である。

    なお、出版活動における出版者の知的行為にかんがみ、出版者を保護するとすれば、その成果である出版物について、その紙面の複写を中心とした複製以外の利用行為に対しても権利を認めるかどうか問題となるが、放送、有線送信などの無形的利用については、現時点では、出版者に権利を認めるだけの広範な利用実態は存在していないと考えられ、将来的に検討されるべき課題であると考える。

    (注13)同一の紙面を新たに組み直した場合に、元の出版物の出版者の権利を及ぼすこととするかどうかという問題がある。これについては、出版者の権利を著作隣接権として位置付けるならば、レコードについて、既存のレコードの音と同じ音を作り固定した場合と同様に、組み直した場合には、同一の紙面であっても権利が及ばないものと考えられる。これに対して、組み直した場合でも、元の紙面との同一性が保たれている限り、権利が及ぶという考え方もあるが、この場合、出版物の紙面のどの程度の同一性があれば権利が及ぶのかについて、その基準を明確に設定することは困難であり、このような考え方を採ることは適当ではないと考える。

    (注14)(注13)の問題と関連して、同一の紙面を新たに組み直した場合に、当該紙面について、新たに権利を認めて保護するかどうかという問題があるが、この問題は基本的に復刻版の保護をどのように考えるかという問題であって、出版物が複写機器等により簡易に複製されることに対する出版者の保護とは別の観点から、別途検討すべきものと考える。

    (3)権利の性質
     出版者の権利の内容については、上記のように、複写を中心とした出版物の複製に係る権利であるが、この権利の性質について、許諾権とするか報酬請求権とするかという問題がある。
    1)出版物の複写には、頒布を目的として行われる場合と、そうでない場合がある。出版物が多数複写され、頒布された場合には、出版者の出版活動に大きく影響することとなるため、出版者の権利の性質を報酬請求権とすることでは、出版者の保護の実効性を確保することは難しく、出版者の許諾に係るものとすることが適当であると考えられる。

    一方、生活の各分野で複写機を用いた小部数の複写が頻繁に行われている実態を勘案すれば、出版物の複写の通常の利用態様である頒布を目的としない複写については、出版活動に影響を与えることは否定できないにしても、出版者が諾否を決定するのではなく、単に複写について報酬を請求することができる権利にとどめることが適当であると考えられる。

    なお、頒布目的の複写について出版者に許諾権を認め、出版物に掲載されている著作物の著作権者や第三者に対して出版者が当該出版物の複写を差止め得るものとする場合には、出版権設定の制度と重複することになるのではないかとの指摘がある。
    2)一方、出版者の保護の問題は、複写機器の発達・普及に伴い、出版物の複写が頻繁に行われることに対していかに出版者を保護するかということが問題の発端であるので、出版者の権利の性質は、出版物の複写に対応する必要な範囲の権利、すなわち報酬請求権とすることが適当であるとの意見が出されている。

    この見解は、出版物の複写利用が社会の各分野で広く行われており、情報を簡便に入手できる手段として欠くことができないものとなっている点も考慮して、複写利用者に、複写に際し、著作権者に加えて出版者の許諾をも要することとするのではなく、むしろ、著作権者の許諾を得ることを前提とした上で、出版者の利益を確保しながら、出版物の複写を認める形が適当であり、また、出版物の複写が、通常は、小部数の、頒布を目的としないものであることから、権利の性質は報酬請求権とすることで出版者の保護の実効性を十分確保することができるとするものである。頒布目的の複写のように出版者の出版活動に大きく影響するような場合には、出版権設定の制度や不正競争防止法、不法行為法に基づく保護、さらに、債権者代位権の行使により、出版者は対応することができる可能性がある(第2章「現行法制による出版者の保護」参照)と考えられる。

    なお、著作権の保護期間の経過した著作物あるいは著作物に当たらない情報を掲載した雑誌を含む出版物であって、編集著作権もない場合、その保護をどのように考えるかという問題があるが、この問題は、復刻版をどのように保護するかという問題とも関連するものであり、出版物が複写機器等により簡易に複製されることに対する出版者の保護とは別の観点から、別途検討することが考えられる。

    (4)権利の制限
    著作権法は、著作者等の権利の保護を図る一方、著作物等の公正な利用については著作権等を制限し、ある一定の条件の下で自由に著作物等を利用することができるよう措置している。

    出版者の権利は、「権利の保護内容」(本章3(2))で述べたような出版物の紙面を複製する権利であるが、著作権の制限規定のうち複製に係るものとしては以下のものがある。これらの規定を設けた趣旨及びこれらの規定とのかかわりにおいて出版物が利用されると考えられる事例は、以下のとおりである。
    第30条(私的使用のための複製)
    個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用する目的であれば、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合を除き、使用者自身が複製することができることを規定している。ただし、この自動複製機器については、当分の間、専ら文書又は図画を複製する機器を含まないこととしている(著作権法附則第5条の2)。

    第30条は、このような利用が零細な利用であり、著作権を制限しても著作者の経済的利益を不当に害するおそれがないと考えられること等から規定されたものである。

    家庭内等の閉鎖的な範囲内で使用する目的で、著作物を複製する場合、当該著作物が収録されている出版物の紙面を用いて複製することが考えられる。

    第31条(図書館等における複製)
    図書館等における蔵書等を用いた複写サービスや図書館資料の保存のための複製等を許容したもので、図書館等の公共的機能にかんがみ、著作権を制限したものである。

    著作権が制限される場合は、利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分の複製物を1人につき1部提供する場合、図書館資料の保存のため必要がある場合、他の図書館等の求めに応じ、一般に入手することができない図書館資料の複製物を提供する場合であるが、いずれの場合も図書館資料である出版物の紙面を用いて複製することが考えられる。

    第32条(引用)
    公表された著作物は、公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内において引用して利用することができること、また、国又は地方公共団体の機関が公表する広報資料等の著作物を、説明の材料として新聞、雑誌に転載することができることを規定している。これは、著作物の引用が社会的に広く実態として行われており、その引用が公正な慣行に合致し、かつ、目的上正当な範囲内にとどまる限り、著作権を及ぼすことが適当ではないこと、また、転載については、国や地方公共団体の広報資料等が広く社会に伝播されるべき性質のものであることにかんがみ、著作権を制限したものである。

    絵画、図表等を引用、転載する場合、これらの著作物が収録されている出版物の紙面を用いて写真製版して自己の著作物の出版物に掲載することが考えられる。

    また、出版物の紙面自体の特徴を論ずる文章中に、当該紙面を写真製版して掲載することが考えられる。

    第33条(教科用図書等への掲載)
    公表された著作物を、学校教育の目的上必要と認められる限度で、著作者への通知と文化庁長官が定める補償金を支払うことを条件として、教科用図書等に掲載することができることを規定している。これは、学校教育の目的上最も適した著作物を使用する必要があり、教科用図書等への掲載の許諾を著作者の意思に係るものとすることは適切ではないことから、著作権を制限しているものである。

    統計資料、絵画、写真等の著作物を教科用図書に掲載する場合、当該著作物が収録されている出版物の紙面を用いて写真製版して掲載することが考えられる。

    第34条(学校教育番組用教材への掲載)
    公表された著作物を、学校教育の目的上必要と認める限度で、著作者への通知と相当の額の補償金の支払いを条件として、学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠した学校教育番組において放送することができることとするとともに、当該放送番組用教材に掲載することができることを規定している。これは、第33条の場合と同様な理由で著作権を制限したものである。

    著作物を放送番組用教材に掲載する場合、当該著作物が収録されている出版物の紙面を用いて写真製版して掲載することが考えられる。

    第35条(学校その他の教育機関における複製)
    学校等の教育機関において教師等の教育を担当する者が、授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度で、公表された著作物を複製することができると規定するとともに、著作物の種類、用途、複製の部数、態様に照らして著作権者の利益を不当に害することがあってはならないとしている。これは、学校等の教育機関においては、教育という性格上著作物を複製利用することが必要であり、また、実態として頻繁に行われていることにかんがみ、著作者の利益を不当に害しない範囲内で著作物を複製することができるよう著作権を制限しているものである。

    教育機関において授業を担当する者が著作物を複製し授業において使用する場合に、当該著作物が収録されている出版物の紙面を用いて複製することが考えられる。

    第36条(試験問題としての複製)
    公表された著作物を、入学試験等の問題として、その目的上必要と認められる限度で複製することができることを規定している。これは、試験という性格上事前に著作者の許諾を得ることとすることは適当ではなく、また、著作権者の経済的利益を害しない特殊な利用であるので、著作権を制限しているものである。

    著作物を試験問題として複製する場合に、当該著作物が収録されている教科書等の出版物の紙面を用いて複製することが考えられる。

    第39条(時事問題に関する論説の転載)
    新聞、雑誌に掲載された時事問題に関する論説は、他の新聞、雑誌に転載することができることを規定している。これは、論説が広く社会に伝播され、更に議論の対象となるべきものであるという著作物としての特質にかんがみ、報道としての利用についてのみ著作権を制限したものである。

    新聞に掲載された論説を他の新聞に転載する場合、当該論説が掲載されている新聞の紙面を用いて写真製版して転載することが考えられる。

    第40条(政治上の演説等の利用)
    公開して行われた政治上の演説等を、同一の著作者のものを編集する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができると規定し、出版物に掲載することも認めている。また、国又は地方公共団体の機関における公開の演説等を、報道の目的上必要と認められる場合には、新聞や雑誌に掲載することができると規定している。これは、政治上の演説等は、社会へ広く伝播され自由に利用されるべき性格のものであることにかんがみ、大幅な自由利用を認めたもので、また、公開の演説等は同様に広く伝達されるべきものであることにかんがみ、新聞等への掲載について著作権を制限したものである。

    政治上の演説等を利用する場合、当該演説等が収録されている出版物の紙面を写真製版して政治討論会等の資料として利用することが考えられる。また、公開の演説等を報道する場合、当該演説等が収録されている新聞の紙面を用いて写真製版して他の新聞に掲載することが考えられる。

    第41条(時事の事件の報道のための利用)
    時事の事件を報道する場合、当該事件を構成し、または当該事件の過程において見られ、聞かれる著作物を報道の目的上正当な範囲内において複製し、及び当該事件報道に伴って利用することができることを規定している。これは、時事の事件を報道する場合には、事件となっている著作物を利用して報道する必要があること、また、事件において見たり聞いたりできる著作物が報道に伴って利用されることは必然的であることから、著作権を制限したものである。

    時事の事件、例えば、絵画の盗難事件について報道する場合に、当該絵画が収録されている出版物の紙面を用いて複製して報道のために利用することが考えられる。
    また、海賊出版について報道するため、真正品と海賊版の両者の紙面を複製して利用することが考えられる。

    第42条(裁判手続等における複製)
    裁判手続において必要な場合や行政等の目的遂行のための内部資料として必要と認められる限度で著作物を複製することができることを規定している。これは、裁判、行政等の目的を実現するために必要な著作物の利用を公正な利用として認め、著作権を制限したものである。

    裁判手続上、又は行政を遂行する際の内部資料として著作物を複製する場合、当該著作物が収録されている出版物の紙面を用いて複製することが考えられる。
    また、出版物の紙面の同一性を争う裁判等において、裁判手続上紙面を複製することが考えられる。

    第46条(公開の美術の著作物等の利用)
    公園等一般公衆に開放されている屋外の場所等に設置されている美術の著作物は、販売を目的として複製する場合を除き、自由に利用することができることを規定している。これは、公開の場所に設置されている美術の著作物については、実態としてさまざまな形で利用されていることから、著作者の利益を著しく害すると考えられる場合を除き、自由利用を認めたものである。

    公開の場所に設置されている彫刻等の美術の著作物を、本条に基づき利用する場合に、既存の出版物に収録されている当該彫刻等の写真をその出版物の紙面を用いて更に複製して利用することが考えられる。

    第47条(美術の著作物等の展示に伴う複製)
    美術の著作物等の原作品を展示する場合に、展示する者が当該著作物を鑑賞者のために解説、紹介することを目的とした小冊子に掲載することができることを規定している。これは、展覧会等において展示してある美術の著作物について解説・紹介用の小冊子に掲載することが通常行われており、原作品を展示することに関する許諾とは別に複製に係る許諾を得ることとすることは、小冊子への利用という複製の態様から考えて適当ではないことによる。

    美術の著作物等を本条により小冊子に掲載する場合、その著作物の原作品によらず、当該著作物が収録されている美術全集、写真集などの既存の出版物の紙面を用いて複製して小冊子に掲載することが考えられる。

    これらの制限規定のうち著作隣接権に準用されている規定は、第30条、第31条、第32条、第35条、第36条、第41条、第42条であり、準用の理由は、著作権を制限する理由と同様である。また、第33条、第34条、第39条、第40条、第46条、第47条は準用されていない。第33条、第34条は、著作隣接権の対象である実演等が教科用図書や学校向け放送番組用教材に掲載されることは考えられないこと、第39条、第40条、第46条、第47条は、それぞれ新聞等に掲載されている論説、政治上の演説等または美術の著作物等の著作物に着目した規定であるので、実演等の複製利用とは関係がないことから準用されていないものである。

    上記のように著作権の制限に基づく著作物の利用と出版物の利用とは密接に関係しているが、これを分析すると、出版物の紙面それ自体を利用することを目的とする場合と、著作権の制限規定により著作物が利用されることに伴い紙面が利用される場合がある。

    前者の場合は、第30条、第31条、第32条、第41条、第42条の適用事例の全部又は一部であるが、現行の著作隣接権についても、これらの著作権の制限規定を、それぞれの制限規定の趣旨を考慮して準用していることから、出版者の権利についても同様に制限することが適当であると考えられる。

    また、後者の場合においても、著作物の利用とその著作物が収録されている出版物の紙面の利用とが密接に関連していることを考慮するならば、出版者の権利を制限しないこととすることは、新たに認められる出版者の権利によって、著作物の公正な利用を図るための著作権の制限規定を設けた趣旨が十分生かされないことになり適当ではない。したがって、著作権の制限規定により著作物が利用されることに伴い出版物の紙面が利用される場合は、出版者の権利をも制限することが適当であると考えられる。

    (5)保護期間
    著作権法は、著作物等を一定の期間保護し、その後は社会の共有財産としてだれもが利用できるよう、著作者等の権利について保護期間を設けている。出版者に権利を認める場合、その保護期間をどのように設定するか問題となるところである。

    著作権法は、著作隣接権の保護対象となっている実演、レコード、放送又は有線放送について、それぞれ実演を行った時から、音を最初に固定した時から、放送又は有線放送を行った時から20年間の保護期間を定めている。

    「出版者の保護の必要性」(本章1)で述べたように、出版者の権利を、著作隣接権として位置付けるとすれば、その保護期間は、現行法上著作隣接権によって保護されているレコード等の保護期間である20年とすることが考えられる。

    また、出版物の実態についてみても、同一の紙面で20年を超えて出版される事例は少ないことから、20年間の保護で実際にも大きな支障はないものと考える。

    (注15) 昭和62年12月31日までに国内で発行された書籍(雑誌、検定教科書、1枚ものの地図、楽譜等は除く。)で、昭和63年5月現在入手可能なもの408,232点について、その最初に発行された年からの経過年別構成比を5年単位で累積すると、以下のとおりである。

    過去 5年以内に発行されたもの47.2%
    過去10年以内に発行されたもの75.6%
    過去15年以内に発行されたもの89.9%
    過去20年以内に発行されたもの95.4%
    過去25年以内に発行されたもの97.6%
    過去30年以内に発行されたもの98.7%
    過去35年以内に発行されたもの99.2%
    出典:日本書籍出版協会「日本書籍総目録1988」

    なお、発行された版を保護しているイギリス、オーストラリア等の国では、その保護期間は、版の発行後25年間である。また、発行された版の保護について検討したWIPO、ユネスコ合同印刷物政府専門家委員会では、WIPO、ユネスコ両事務局作成のメモランダムにおいて、保護期間を、版の発行後25年間としている。

    保護期間の始期については、「出版物の範囲」(本章3(1)1))で述べたように発行された出版物の紙面に限って保護することとしていること、客観的にとらえやすいことから、発行時とすることが適当であり、この時点で権利が自動的に発生するものとする。ただし、起算は最初に発行された日の属する年の翌年からとする。

    (6)保護基準
    出版者にその出版物について権利を認める場合、どのような出版物について保護の対象とするかという保護の基準が問題となる。

    現行著作権法において保護対象となっている著作物、実演、レコード、放送及び有線放送に関する保護基準は、以下のとおりである。

    著作物については、1)日本国民(我が国の法令に基づき設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物とする国籍主義、2)最初に国内において発行された著作物(最初に著作権法の適用地外において発行されたが、その発行の日から30日以内に国内において発行されたものを含む。)とする発行地主義を規定している。
    実演については、1)国内において行われる実演とする行為地主義と、2)保護を受けるレコードに固定されている実演、3)保護を受ける放送又は有線放送において送信される実演を規定している。

    レコードについては、1)日本国民であるレコード製作者のレコードとする国籍主義、2)国内において最初に固定されたレコードとする固定地主義を採用している。
    放送及び有線放送に係る保護基準は、1)日本国民である放送事業者又は有線放送事業者の放送又は有線放送とする国籍主義、2)国内における放送設備又は有線放送設備から行われる放送又は有線放送とする発信地主義を採用している。

    出版物に係る保護基準については、これらの現行法上の保護基準との均衡を考慮して、日本国民である出版者の出版物とする国籍主義の他に、国内において最初に発行された出版物とする発行地主義を採用することが適当であると考える。

    この基準に合致しない出版物、例えば、外国籍を有する者が外国で最初に発行した出版物については、国際的保護の枠組みが存在しない以上、保護する必要はないと考える。

    (7)既に発行された出版物の取扱い
    出版者に権利を新しく認める場合、法律施行前に既に発行された出版物の取扱いを法律施行後どうするかという問題がある。

    この問題を考えるに当たっては、現行法上の著作隣接権に関する取扱いが参考になると考える。

    現行法上著作隣接権制度によって保護されているもののうち、実演、レコード、放送については、旧著作権法が全面的に改正されて、現行法となった際に、新しく著作隣接権制度による保護対象とされたもので、現行法附則第2条第3項によって、現行法の施行前の実演、レコード、放送については、著作隣接権に関する規定を適用しない旨規定し、原則として保護しないこととしている。有線放送については、昭和61年の法律改正の際、同制度により新しく保護されることになったが、改正法の附則第3条において法律施行前に行われた有線放送については改正法の規定を適用しない旨規定し、放送の場合と同様な取扱いをしている。

    出版者の権利については、法律施行前に発行された出版物でも、法律施行時以後において複写される機会が多いことから、出版者の権利の保護期間が経過していないものについては、法律施行時において当該保護期間の残存する期間、法律施行後、この複写について権利を及ぼすとの考え方もあるが、出版者の権利は著作隣接権として新たに設けるものであり、既存の著作隣接権の保護と区別して例外的に、そのような保護を認める特段の根拠はなく、権利創設に伴う出版物の複写利用者の負担増も段階的に増える形が望ましいと考えられるところから、法律施行時以後に発行された出版物に限って保護することが適当であると考える。

    4 権利行使の在り方
    出版者が新しく権利を認められた場合、その権利行使の在り方が問題となる。
    権利行使の方法としては、出版者が個別に権利行使する方法と、出版者の権利を集中的に管理する機関を通して権利行使する方法がある。

    現在、音楽、小説、放送脚本については、個々の著作者から権利の信託的譲渡等を受けて、集中的に管理する機関が存在しており、利用者は、音楽等を利用しようと思えば、個々の著作者と交渉しなくても当該機関の許諾を得て、一定の使用料を支払うことによって利用することができることになっている。また、実演家及びレコード製作者が享有している商業用レコードの二次使用又はレコードの貸与に係る報酬請求権については、文化庁長官が指定する団体があるときは、その団体によってのみ行使することができるとされており、現在、実演家、レコード製作者のそれぞれの団体がこの権利の行使を個々の権利者に代わって行っているところである。

    出版物の複写利用者は、多種多様であり、その数も多く、そのような利用者の利用について個々の権利者が権利行使を行うことは、実際上困難であり、利用者の側においても、多くの利用者に個別に出版物の利用について交渉を行うことは、事務処理上煩雑である。そのため、出版物の複写について、権利者保護の実効性を上げ、かつ、出版物の利用の円滑化を図るという観点から、出版物の複写に関する権利は集中的に管理されることが適当であるとされている。

    また、権利行使の在り方については、出版者に認める権利を報酬請求権とするか許諾権とするかという問題にも係るところである。報酬請求権については、前述のように、商業用レコードの二次使用又はレコードの貸与に関する実演家及びレコード製作者の報酬請求権の場合と同様、団体による権利行使を、法律上定めることが適当であると考えられる。

    出版者がその出版物について新たに権利を付与された場合には、出版者の権利と著作権が一体的に管理されることが適当であると考える。これは、出版者にとって、編集著作権等を有している場合には、この権利と新たな権利の管理を、同一の機関に委託した方が事務処理上簡便であり、また、出版物の複写利用者にとっても、単一の機関が権利処理に当たることが望ましいと考えられるからである。



    おわりに
    1以上のとおり、本小委員会では、著作物の伝達者として重要な役割を果たしている出版者の法的保護について検討し、その出版活動における知的行為と複写機器の著しい発達・普及という状況を考慮すれば、出版者に固有の権利を著作権法上認めて保護することが必要であるとの意見が大勢を占めた。
    2出版者に固有の権利を認めることについては、国際的に立法例は少なく、また、複製技術の著しい発達への対応の一環としての出版者の保護についての国際機関における検討も緒についたばかりのところである。

    しかし、今や世界有数の複写機器生産国と言われている我が国において複写機器が近年著しく発達・普及した点や、我が国において出版者が著作者から著作権の譲渡を受ける慣行が存在しない点を考慮するならば、出版物の複写機器による複製利用が文化に対して果たしている役割も勘案し、諸外国に先駆けて、出版者が、著作物の伝達者としての役割を円滑に果たし得る立場を確保するための独自の権利を、複写を中心とした出版物の複製に対応した必要な範囲内で認めることが適当であると考える。

    このような形で、著作物の伝達者としての出版者の保護を認めることにより、我が国文化の活力を維持し、一層の発展を図ることができると考えるものである。


    (参考)
    1 著作権審議会第8小委員会(出版者の保護関係)委員名簿

    主査
    北 川 善太郎 京都大学法学部教授
    阿 部 浩 二 岡山大学法学部教授
    大 家 重 夫 久留米大学法学部教授
    大 林   清 著作者団体協議会会長
    神 森 大 彦(社)日本工学会著作権委員会長
    栗 原   均(社)日本図書館協会常務理事
    黒 川 徳太郎(財)NHKサービスセンター著作権業務室長
    齊 藤   博 新潟大学法学部教授
    田 村   進(社)日本新聞協会編集部主管(昭和62.5.16~)
    (宝子山幸充 同前編集部主管 昭和60.9.21~昭和62.5.15)
    椿   孝 雄(社)日本書籍出版協会常任理事(昭和62.9.17~)
    (美作太郎(社)新評論会長 昭和60.9.21~昭和62.9.16)
    豊 田 亀 市(社)日本書籍出版協会著作権委員(昭和60.10.17~)
    (今村広(社)偕成社社長 昭和60.9.21~昭和60.10.16)
    広 橋   亮 千葉大学工学部教授
    森 川 汎 士(社)経済団体連合会開発部長



    2 著作権審議会第8小委員会(出版者の保護関係)審議経過
    (昭和60年7月17日著作権審議会第47回総会で第8小委員会の設置を決定)

    第1回会議 昭和60年9月21日
    審議の進め方について
    第2回会議 10月25日
    関係団体から意見聴取
    第3回会議 11月22日
    検討項目の決定
    第4回会議 12月20日
    各国の法制、国際機関における検討状況、出版者保護の必要性について
    第5回会議 昭和61年2月19日
    出版者保護の必要性、保護の対象について
    第6回会議 6月6日
    保護の対象、保護の享受者について
    第7回会議 7月18日
    権利の内容について
    第8回会議 9月3日
    権利の内容、権利の制限について
    第9回会議 11月8日
    権利の制限、保護期間、その他の問題について
    第10回会議 昭和62年1月16日
    権利の制限、保護期間、その他の問題について
    第11回会議 2月13日
    出版者の権利と著作権の集中的権利処理との関係について
    第12回会議 3月9日
    保護の必要性、保護の内容(権利の性質等)について
    第13回会議 4月17日
    保護の必要性、保護の内容(権利の性質、権利の制限等)について
    第14回会議 5月22日
    保護の必要性、保護の内容(遡及効等)について
    第15回会議 6月26日
    保護の必要性、保護の内容(遡及効等)について
    第16回会議 8月4日
    保護の必要性、出版権設定の制度との関係、保護の内容(遡及効等)について
    第17回会議 9月29日
    出版権設定の制度との関係、保護の内容(権利の内容)について
    第18回会議 11月16日
    保護の内容(権利の内容)、出版権設定の制度との関係、編集著作権との関係について
    第19回会議 昭和63年1月25日
    電子出版及びその関連技術の動向、保護の内容(権利の内容)について
    第20回会議 4月6日
    企業・大学等における出版物からの複写実態調査について
    第21回会議 5月13日
    保護の内容(権利の内容、権利の性質)、権利行使の在り方について
    第22回会議 6月10日
    保護の内容(権利の性質)、編集著作権との関係、既に発行された出版物の取扱いについて
    第23回会議 7月18日
    第8小委員会中間報告(素案)について
    第24回会議 8月22日
    第8小委員会中間報告(案)について
    第25回会議 9月2日
    第8小委員会中間報告(案)について
    第26回会議 9月27日
    第8小委員会中間報告(案)について


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