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附属書一C 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(抄) |
目次 |
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第一部 | 一般規定及び基本原則 |
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第二部 | 知的所有権の取得可能性、範囲及び使用に関する基準 |
第一節 著作権及び関連する権利 | |
第二節 商標 | |
第三節 地理的表示 | |
第四節 意匠 | |
第五節 特許 | |
第六節 集積回路の回路配置 | |
第七節 開示されていない情報の保護 | |
第八節 契約による実施許諾等における反競争的行為の規制 | |
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第三部 | 知的所有権の行使 |
第一節 一般的義務 | |
第二節 民事上及び行政上の手続及び救済措置 | |
第三節 暫定措置 | |
第四節 国境措置に関する特別の要件 | |
第五節 刑事上の手続 | |
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第四部 | 知的所有権の取得及び維持並びにこれらに関連する当事者間手続 |
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第五部 | 紛争の防止及び解決 |
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第六部 | 経過措置 |
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第七部 | 制度上の措置及び最終規定 |
1 加盟国は、この協定を実施する。加盟国は、この協定の規定に反しないことを条件として、この協定において要求される保護よりも広範な保護を国内法令において実施することができるが、そのような義務を負わない。加盟国は、国内の法制及び法律上の慣行の範囲内でこの協定を実施するための適当な方法を決定することができる。 |
2 この協定の適用上、「知的所有権」とは、第二部の第一節から第七節までの規定の対象となるすべての種類の知的所有権をいう。 |
3 加盟国は、他の加盟国の国民(注1)に対しこの協定に規定する待遇を与える。該当する知的所有権に関しては、「他の加盟国の国民」とは、世界貿易機関のすべての加盟国が千九百六十七年のパリ条約、千九百七十一年のベルヌ条約、ローマ条約又は集積回路についての知的所有権に関する条約の締約国であるとしたならばそれぞれの条約に規定する保護の適格性の基準を満たすこととなる自然人又は法人をいう(注2)。ローマ条約の第五条3又は第六条2の規定を用いる加盟国は、知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会(貿易関連知的所有権理事会)に対し、これらの規定に定めるような通告を行う。 |
注1 この協定において「国民」とは、世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域については、当該関税地域に住所を有しているか又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する自然人又は法人をいう。 | |
注2 この協定において「パリ条約」とは、工業所有権の保護に関するパリ条約をいい、「千九百六十七年のパリ条約」とは、パリ条約の千九百六十七年七月十四日のストックホルム改正条約をいい、「ベルヌ条約」とは、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約をいい、「千九百七十一年のベルヌ条約」とは、ベルヌ条約の千九百七十一年七月二十四日のパリ改正条約をいい、「ローマ条約」とは、千九百六十一年十月二十六日にローマで採択された実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約をいい、「集積回路についての知的所有権に関する条約」(IPIC条約)とは、千九百八十九年五月二十六日にワシントンで採択された集積回路についての知的所有権に関する条約をいい、「世界貿易機関協定」とは、世界貿易機関を設立する協定をいう。 |
(a) | 一般的な性格を有し、かつ、知的所有権の保護に特に限定されない司法共助又は法の執行に関する国際協定に基づくもの | |
(b) | 内国民待遇ではなく他の国において与えられる待遇に基づいて待遇を与えることを認める千九百七十一年のベルヌ条約又はローマ条約の規定に従って与えられるもの | |
(c) | この協定に規定していない実演家、レコード製作者及び放送機関の権利に関するもの | |
(d) | 世界貿易機関協定の効力発生前に効力を生じた知的所有権の保護に関する国際協定に基づくもの。ただし、当該国際協定が、貿易関連知的所有権理事会に通報されること及び他の加盟国の国民に対し恣意的又は不当な差別とならないことを条件とする。 |
第五条 保護の取得又は維持に関する多数国間協定 |
前二条の規定に基づく義務は、知的所有権の取得又は維持に関してWIPOの主催の下で締結された多数国間協定に規定する手続については、適用しない。 |
第六条 消尽 |
この協定に係る紛争解決においては、第三条及び第四条の規定を除くほか、この協定のいかなる規定も、知的所有権の消尽に関する問題を取り扱うために用いてはならない。 |
第七条 目的 |
知的所有権の保護及び行使は、技術的知見の創作者及び使用者の相互の利益となるような並びに社会的及び経済的福祉の向上に役立つ方法による技術革新の促進並びに技術の移転及び普及に資するべきであり、並びに権利と義務との間の均衡に資するべきである。 |
第八条 原則 |
1 加盟国は、国内法令の制定又は改正に当たり、公衆の健康及び栄養を保護し並びに社会経済的及び技術的発展に極めて重要な分野における公共の利益を促進するために必要な措置を、これらの措置がこの協定に適合する限りにおいて、とることができる。 |
2 加盟国は、権利者による知的所有権の濫用の防止又は貿易を不当に制限し若しくは技術の国際的移転に悪影響を及ぼす慣行の利用の防止のために必要とされる適当な措置を、これらの措置がこの協定に適合する限りにおいて、とることができる。 |
第二部 知的所有権の取得可能性、範囲及び使用に関する基準 |
第一節 著作権及び関連する権利 |
第九条 ベルヌ条約との関係 |
1 加盟国は、千九百七十一年のベルヌ条約の第一条から第二十一条まで及び附属書の規定を遵守する。ただし、加盟国は、同条約第六条の二の規定に基づいて与えられる権利又はこれから派生する権利については、この協定に基づく権利又は義務を有しない。 |
2 著作権の保護は、表現されたものに及ぶものとし、思想、手続、運用方法又は数学的概念自体には及んではならない。 |
第十条 コンピュータ・プログラム及びデータの編集物 |
1 コンピュータ・プログラム(ソース・コードのものであるかオブジェクト・コードのものであるかを問わない。)は、千九百七十一年のベルヌ条約に定める文学的著作物として保護される。 |
2 素材の選択又は配列によって知的創作物を形成するデータその他の素材の編集物(機械で読取可能なものであるか他の形式のものであるかを問わない。)は、知的創作物として保護される。その保護は、当該データその他の素材自体には及んではならず、また、当該データその他の素材自体について存在する著作権を害するものであってはならない。 |
第十一条 貸与権 |
少なくともコンピュータ・プログラム及び映画の著作物については、加盟国は、著作者及びその承継人に対し、これらの著作物の原作品又は複製物を公衆に商業的に貸与することを許諾し又は禁止する権利を与える。映画の著作物については、加盟国は、その貸与が自国において著作者及びその承継人に与えられる排他的複製権を著しく侵害するような当該著作物の広範な複製をもたらすものでない場合には、この権利を与える義務を免除される。コンピュータ・プログラムについては、この権利を与える義務は、当該コンピュータ・プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合には、適用されない。 |
第十二条 保護期間 |
著作物(写真の著作物及び応用美術の著作物を除く。)の保護期間は、自然人の生存期間に基づき計算されない場合には、権利者の許諾を得た公表の年の終わりから少なくとも五十年とする。著作物の製作から五十年以内に権利者の許諾を得た公表が行われない場合には、保護期間は、その製作の年の終わりから少なくとも五十年とする。 |
第十三条 制限及び例外 |
加盟国は、排他的権利の制限又は例外を著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害しない特別な場合に限定する。 |
第十四条 実演家、レコード(録音物)製作者及び放送機関の保護 |
1 レコードへの実演の固定に関し、実演家は、固定されていない実演の固定及びその固定物の複製が当該実演家の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を防止することができるものとする。実演家は、また、現に行っている実演について、無線による放送及び公衆への伝達が当該実演家の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を防止することができるものとする。 |
2 レコード製作者は、そのレコードを直接又は間接に複製することを許諾し又は禁止する権利を享有する。 |
3 放送機関は、放送の固定、放送の固定物の複製及び放送の無線による再放送並びにテレビジョン放送の公衆への伝達が当該放送機関の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を禁止する権利を有する。加盟国は、この権利を放送機関に与えない場合には、千九百七十一年のベルヌ条約の規定に従い、放送の対象物の著作権者が前段の行為を防止することができるようにする。 |
4 第十一条の規定(コンピュータ・プログラムに係るものに限る。)は、レコード製作者及び加盟国の国内法令で定めるレコードに関する他の権利者について準用する。加盟国は、千九百九十四年四月十五日においてレコードの貸与に関し権利者に対する衡平な報酬の制度を有している場合には、レコードの商業的貸与が権利者の排他的複製権の著しい侵害を生じさせていないことを条件として、当該制度を維持することができる。 |
5 実演家及びレコード製作者に対するこの協定に基づく保護期間は、固定又は実演が行われた年の終わりから少なくとも五十年とする。3の規定に基づいて与えられる保護期間は、放送が行われた年の終わりから少なくとも二十年とする。 |
6 1から3までの規定に基づいて与えられる権利に関し、加盟国は、ローマ条約が認める範囲内で、条件、制限、例外及び留保を定めることができる。ただし、千九百七十一年のベルヌ条約第十八条の規定は、レコードに関する実演家及びレコード製作者の権利について準用する。 |
第二節 第十五条~第二十一条、第三節 第二十二条~第二十四条(略) |
第四節 意匠 |
第二十五条 保護の要件 |
1 加盟国は、独自に創作された新規性又は独創性のある意匠の保護について定める。加盟国は、意匠が既知の意匠又は既知の意匠の主要な要素の組合せと著しく異なるものでない場合には、当該意匠を新規性又は独創性のある意匠でないものとすることを定めることができる。加盟国は、主として技術的又は機能的考慮により特定される意匠については、このような保護が及んではならないことを定めることができる。 |
2 加盟国は、繊維の意匠の保護を確保するための要件、特に、費用、審査又は公告に関する要件が保護を求め又は取得する機会を不当に害しないことを確保する。加盟国は、意匠法又は著作権法によりそのような義務を履行することができる。 |
第二十六条、第五節 第二十七条~第三十四条、第六節 第三十五条~第三十八条、第七節 第三十九条 (略) |
第八節 契約による実施許諾等における反競争的行為の規制 |
第四十条 |
1 加盟国は、知的所有権に関する実施許諾等における行為又は条件であって競争制限的なものが貿易に悪影響を及ぼし又は技術の移転及び普及を妨げる可能性のあることを合意する。 |
2 この協定のいかなる規定も、加盟国が、実施許諾等における行為又は条件であって、特定の場合において、関連する市場における競争に悪影響を及ぼすような知的所有権の濫用となることのあるものを自国の国内法令において特定することを妨げるものではない。このため、加盟国は、自国の関連法令を考慮して、このような行為又は条件(例えば、排他的なグラント・バック条件、有効性の不争条件及び強制的な一括実施許諾等を含むことができる。)を防止し又は規制するため、この協定の他の規定に適合する適当な措置をとることができる。 |
3 加盟国は、当該加盟国の国民又は居住者である知的所有権の保有者がこの節の規定の対象とする事項に関する他の加盟国の法令に違反する行為を行っていると信ずる理由を有している当該他の加盟国が、当該法令の遵守を確保することを望む場合には、要請に応じ、当該他の加盟国と協議を行う。この場合において、いずれの加盟国も、自国の法令に基づく措置をとり及び完全に自由に最終決定を行うことを妨げられない。要請を受けた加盟国は、要請を行った加盟国との協議に対し、十分かつ好意的な考慮を払い、適当な機会を与える。当該要請を受けた加盟国は、国内法令に従うこと及び当該要請を行った加盟国による秘密の保護についての相互に満足すべき合意がされることを条件として、当該事案に関連する公に入手可能な秘密でない情報その他当該要請を受けた加盟国により入手可能な情報を提供することにより協力する。 |
4 加盟国は、自国の国民又は居住者がこの節の規定の対象とする事項に関する他の加盟国の法令に違反すると申し立てられて手続に服している場合には、要請に基づき、3に定める条件と同一の条件に基づいて当該他の加盟国と協議を行う機会を与えられる。 |
第三部 知的所有権の行使 |
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第一節 一般的義務 | ||
第四十一条 |
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1 加盟国は、この部に規定する行使手続によりこの協定が対象とする知的所有権の侵害行為に対し効果的な措置(侵害を防止するための迅速な救済措置及び追加の侵害を抑止するための救済措置を含む。)がとられることを可能にするため、当該行使手続を国内法において確保する。このような行使手続は、正当な貿易の新たな障害となることを回避し、かつ、濫用に対する保障措置を提供するような態様で適用する。 | ||
2 知的所有権の行使に関する手続は、公正かつ公平なものとする。この手続は、不必要に複雑な又は費用を要するものであってはならず、また、不合理な期限を付され又は不当な遅延を伴うものであってはならない。 | ||
3 本案についての決定は、できる限り、書面によって行い、かつ、理由を示す。この決定は、少なくとも手続の当事者に対しては不当に遅延することなく提供される。本案についての決定は、当事者が意見を述べる機会を与えられた証拠にのみ基づく。 | ||
4 手続の当事者は、最終的な行政上の決定について及び、事件の重要性に係る加盟国の国内法上の管轄に関する規定に従い、本案についての最初の司法上の決定の少なくとも法律面について、司法当局による審査の機会を有する。ただし、刑事事件の無罪判決に関し審査の機会を与える義務を負わない。 | ||
5 この部の規定は、一般的な法の執行のための司法制度とは別の知的所有権に関する執行のための司法制度を設ける義務を生じさせるものではなく、また、一般的に法を執行する加盟国の権能に影響を及ぼすものでもない。この部のいかなる規定も、知的所有権に関する執行と一般的な法の執行との間の資源の配分に関して何ら義務を生じさせるものではない。 | ||
第二節 民事上及び行政上の手続及び救済措置 |
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第四十二条 公正かつ公平な手続 |
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加盟国は、この協定が対象とする知的所有権の行使に関し、民事上の司法手続を権利者(注)に提供する。被申立人は、十分に詳細な内容(主張の根拠を含む。)を含む書面による通知を適時に受ける権利を有する。当事者は、独立の弁護人を代理人とすることが認められるものとし、また、手続においては、義務的な出頭に関して過度に重い要件を課してはならない。手続の当事者は、その主張を裏付けること及びすべての関連する証拠を提出することについての正当な権利を有する。手続においては、現行の憲法上の要請に反しない限り、秘密の情報を特定し、かつ、保護するための手段を提供する。
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第四十三条 証拠 |
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1 一方の当事者がその主張を十分裏付ける合理的に入手可能な証拠を提出し、かつ、他方の当事者の有する当該主張の裏付けに関連する証拠を特定した場合には、司法当局は、適当な事案において秘密の情報の保護を確保することを条件として、他方の当事者にその特定された証拠の提示を命ずる権限を有する。 | ||
2 手続の一方の当事者が必要な情報の利用の機会を故意にかつ十分な理由なしに拒絶し若しくは合理的な期間内に必要な情報を提供せず又は行使に関連する手続を著しく妨げる場合には、加盟国は、双方の当事者が主張又は証拠に関し意見を述べる機会を与えられることを条件として、提供された情報(情報の利用の機会の拒絶によって悪影響を受けた他方の当事者が提示した申立て又は主張を含む。)に基づいて、暫定的及び最終的な決定(肯定的であるか否定的であるかを問わない。)を行う権限を司法当局に与えることができる。 | ||
第四十四条 差止命令 |
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1 司法当局は、当事者に対し、知的所有権を侵害しないこと、特に知的所有権を侵害する輸入物品の管轄内の流通経路への流入を通関後直ちに防止することを命ずる権限を有する。加盟国は、保護の対象であって、その取引が知的所有権の侵害を伴うことを関係者が知るか又は知ることができる合理的な理由を有することとなる前に当該関係者により取得され又は注文されたものに関しては、当該権限を与える義務を負わない。 | ||
2 政府又は政府の許諾を受けた第三者が権利者の許諾を得ないで行う使用については、当該使用を明示的に定める第二部の規定に従うことを条件として、加盟国は、この部の他の規定にかかわらず、当該使用に対する救済措置を、第三十一条(h)の規定による報酬の支払に限定することができる。当該使用であってそのような救済措置の限定の対象とならないものについては、この部に定める救済措置が適用され、又は、当該救済措置が国内法令に抵触する場合には、宣言的判決及び適当な補償が行われるものとする。 | ||
第四十五条 損害賠償 |
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1 司法当局は、侵害活動を行っていることを知っていたか又は知ることができる合理的な理由を有していた侵害者に対し、知的所有権の侵害によって権利者が被った損害を補償するために適当な賠償を当該権利者に支払うよう命ずる権限を有する。 | ||
2 司法当局は、また、侵害者に対し、費用(適当な弁護人の費用を含むことができる。)を権利者に支払うよう命ずる権限を有する。適当な場合において、加盟国は、侵害者が侵害活動を行っていることを知らなかったか又は知ることができる合理的な理由を有していなかったときでも、利益の回復又は法廷の損害賠償の支払いを命ずる権限を司法当局に与えることができる。 | ||
第四十六条 他の救済措置 |
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侵害を効果的に抑止するため、司法当局は、侵害していると認めた物品を、権利者に損害を与えないような態様でいかなる補償もなく流通経路から排除し又は、現行の憲法上の要請に反しない限り、廃棄することを命ずる権限を有する。司法当局は、また、侵害物品の生産のために主として使用される材料及び道具を、追加の侵害の危険を最小とするような態様でいかなる補償もなく流通経路から排除することを命ずる権限を有する。このような申立を検討する場合には、侵害の重大さと命ぜられる救済措置との間の均衡の必要性及び第三者の利益を考慮する。不正商標商品については、例外的な場合を除くほか、違法に付された商標の単なる除去により流通経路への商品の流入を認めることはできない。 | ||
第四十七条 情報に関する権利 |
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加盟国は、司法当局が、侵害の重大さとの均衡を失しない限度で、侵害者に対し、侵害物品又は侵害サービスの生産又は流通に関与した第三者を特定する事項及び侵害物品又は侵害サービスの流通経路を権利者に通報するよう命ずる権限を有することを定めることができる。 | ||
第四十八条 被申立人に対する賠償 |
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1 司法当局は、当事者に対し、その申立てにより措置がとられ、かつ、当該当事者が行使手続を濫用した場合には、その濫用により不法に要求又は制約を受けた当事者が被った損害に対する適当な賠償を支払うよう命ずる権限を有する。司法当局は、また、申立人に対し、費用(適当な弁護人の費用を含むことができる。)を被申立人に支払うよう命ずる権限を有する。 | ||
2 知的所有権の保護又は行使に係る法の運用に関し、加盟国は、当該法の運用の過程において措置が誠実にとられ又はとることが意図された場合に限り、公の機関及び公務員の双方の適当な救済措置に対する責任を免除する。 | ||
第四十九条 行政上の手続 |
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民事上の救済措置が本案についての行政上の手続の結果として命ぜられる場合には、その手続は、この節に定める原則と実質的に同等の原則に従う。 |
第三節 暫定措置 | ||
第五十条 |
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1 司法当局は、次のことを目的として迅速かつ効果的な暫定措置をとることを命ずる権限を有する。 | ||
(a) | 知的所有権の侵害の発生を防止すること。特に、物品が管轄内の流通経路へ流入することを防止すること(輸入物品が管轄内の流通経路へ流入することを通関後直ちに防止することを含む。)。 | |
(b) | 申し立てられた侵害に関連する証拠を保全すること。 | |
2 司法当局は、適当な場合には、特に、遅延により権利者に回復できない損害が生ずるおそれがある場合又は証拠が破棄される明らかな危険がある場合には、他方の当時者に意見を述べる機会を与えることなく、暫定措置をとる権限を有する。 | ||
3 司法当局は、申立人が権利者であり、かつ、その権利が侵害されていること又は侵害の生ずる差し迫ったおそれがあることを十分な確実性をもって自ら確認するため、申立人に対し合理的に入手可能な証拠を提出するよう要求し、並びに被申立人を保護し及び濫用を防止するため、申立人に対し十分な担保又は同等の保証を提供することを命ずる権限を有する。 | ||
4 暫定措置が他方の当事者が意見を述べる機会を与えられることなくとられた場合には、影響を受ける当事者は、最も遅い場合においても、当該暫定措置の実施後遅滞なく通知を受ける。暫定措置の通知後合理的な期間内に、当該暫定措置を変更するか若しくは取り消すか又は確認するかの決定について、被申立人の申立てに基づき意見を述べる機会を与えられる審査を行う。 | ||
5 暫定措置を実施する機関は、申立人に対し、関連物品の特定に必要な情報を提供するよう要求することができる。 | ||
6 1及び2の規定に基づいてとられる暫定措置は、本案についての決定に至る手続が、合理的な期間(国内法令によって許容されるときは、暫定措置を命じた司法当局によって決定されるもの。その決定がないときは、二十執務日又は三十一日のうちいずれか長い期間を超えないもの)内に開始されない場合には、被申立人の申立てに基づいて取り消され又は効力を失う。ただし、4の規定の適用を妨げるものではない。 | ||
7 暫定措置が取り消された場合、暫定措置が申立人の作為若しくは不作為によって失効した場合又は知的所有権の侵害若しくはそのおそれがなかったことが後に判明した場合には、司法当局は被申立人の申立てに基づき、申立人に対し、当該暫定措置によって生じた損害に対する適当な賠償を支払うよう命ずる権限を有する。 | ||
8 暫定措置が行政上の手続の結果として命ぜられる場合には、その手続は、この節に定める原則と実質的に同等の原則に従う。 |
第四節 国境措置に関する特別の要件(注) |
注 加盟国は、関税同盟を構成する他の加盟国との国境を越える物品の移動に関するすべての管理を実質的に廃止している場合には、その国境においてこの節の規定を適用することを要求されない。 | |
第五十一条 税関当局による物品の停止 |
加盟国は、この節の規定に従い、不正商標商品又は著作権侵害物品(注1)が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が、これらの物品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう、行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続(注2)を採用する。加盟国は、この節の要件を満たす場合には、知的所有権のその他の侵害を伴う物品に関してこのような申立てを可能とすることができる。加盟国は、自国の領域から輸出されようとしている侵害物品の税関当局による解放の停止についても同様の手続を定めることができる。 |
注1 この協定の適用上、 | ||
(a) | 「不正商標商品」とは、ある商品について有効に登録されている商標と同一であり又はその基本的側面において当該商標と識別できない商標を許諾なしに付した、当該商品と同一の商品(包装を含む。)であって、輸入国の法令上、商標権者の権利を侵害するものをいう。 | |
(b) | 「著作権侵害物品」とは、ある国において、権利者又は権利者から正当に許諾を受けた物の承諾を得ないで、ある物品から直接又は間接に作成された複製物であって、当該物品の複製物の作成が、輸入国において行われたとしたならば、当該輸入国の法令上、著作権又は関連する権利の侵害となったであろうものをいう。 | |
注2 権利者によって若しくはその承諾を得て他の国の市場に提供された物品の輸入又は通過中の物品については、この手続を適用する義務は生じないと了解する。 |
第五十二条 申立て |
前条の規定に基づく手続を開始する権利者は、輸入国の法令上、当該権利者の知的所有権の侵害の事実があることを権限のある当局が一応確認するに足りる適切な証拠を提出し、及び税関当局が容易に識別することができるよう物品に関する十分詳細な記述を提出することが要求される。権限のある当局は、申立てを受理したかしなかったか及び、権限のある当局によって決定される場合には、税関当局が措置をとる期間について、合理的な期間内に申立人に通知する。 |
第五十三条 担保又は同等の保証 |
1 権限のある当局は、申立人に対し、被申立人及び権限のある当局を保護し並びに濫用を防止するために十分な担保又は同等の保証を提供するよう要求する権限を有する。担保又は同等の保証は、手続の利用を不当に妨げるものであってはならない。 |
2 意匠、特許、回路配置又は開示されていない情報が用いられている物品に関して、この節の規定に基づく申立てに従い、当該物品の自由な流通への解放が司法当局その他の独立した当局以外の権限のある当局による決定を根拠として税関当局によって停止された場合において、第五十五条に規定する正当に権限を有する当局による暫定的な救済が与えられることなく同条に規定する期間が満了したときは、当該物品の所有者、輸入者又は荷受人は、侵害から権利者を保護するために十分な金額の担保の提供を条件として当該物品の解放についての権利を有する。ただし、輸入のための他のすべての条件が満たされている場合に限る。当該担保の提供により、当該権利者が利用し得る他の救済措置が害されてはならず、また、権利者が合理的な期間内に訴えを提起する権利を行使しない場合には、担保が解除されることを了解する。 |
第五十四条 物品の解放の停止の通知 |
輸入者及び申立人は、第五十一条の規定による物品の解放の停止について速やかに通知を受ける。 |
第五十五条 物品の解放の停止の期間 |
申立人が物品の解放の停止の通知の送達を受けてから十執務日(適当な場合には、この期間は、十執務日延長することができる。)を超えない期間内に、税関当局が、本案についての決定に至る手続が被申立人以外の当事者により開始されたこと又は正当に権限を有する当局が物品の解放の停止を延長する暫定措置をとったことについて通報されなかった場合には、当該物品は、解放される。ただし、輸入又は輸出のための他のすべての条件が満たされている場合に限る。本案についての決定に至る手続が開始された場合には、合理的な期間内に、解放の停止を変更するか若しくは取り消すか又は確認するかの決定について、被申立人の申立てに基づき意見を述べる機会の与えられる審査を行う。第一段から第三段までの規定にかかわらず、暫定的な司法上の措置に従って物品の解放の停止が行われ又は継続される場合には、第五十条6の規定を適用する。 |
第五十六条 物品の輸入者及び所有者に対する賠償 |
関係当局は、物品の不法な留置又は前条の規定に従って解放された物品の留置によって生じた損害につき、申立人に対し、物品の輸入者、荷受人及び所有者に適当な賠償を支払うよう命ずる権限を有する。 |
第五十七条 点検及び情報に関する権利 |
秘密の情報の保護を害することなく、加盟国は、権限のある当局に対し、権利者が自己の主張を裏付けるために税関当局により留置された物品を点検するための十分な機会を与える権限を付与する。当該権限のある当局は、輸入者に対しても当該物品の点検のための同等の機会を与える権限を有する。本案についての肯定的な決定が行われた場合には、加盟国は、権限のある当局に対し、当該物品の荷送人、輸入者及び荷受人の名称及び住所並びに当該物品の数量を権利者に通報する権限を付与することができる。 |
第五十八条 職権による行為 |
加盟国において、権限のある当局が、ある物品について知的所有権が侵害されていることを伺わせる証拠を得た際に職権により行動して当該物品の解放を停止する制度がある場合には、 |
(a) | 当該権限のある当局は、いつでも権限の行使に資することのある情報の提供を権利者に求めることができる。 | |
(b) | 輸入者及び権利者は、速やかにその停止の通知を受ける。輸入者が権限のある当局に対し当該停止に関して異議を申し立てた場合には、当該停止については、第五十五条に定める条件を準用する。 | |
(c) | 加盟国は、措置が誠実にとられ又はとることが意図された場合に限り、公の機関及び公務員の双方の適当な救済措置に対する責任を免除する。 |
第五十九条 救済措置 |
権利者の他の請求権を害することなく及び司法当局による審査を求める被申立人の権利に服することを条件として、権限のある当局は、第四十六条に規定する原則に従って侵害物品の廃棄又は処分を命ずる権限を有する。不正商標商品については、例外的な場合を除くほか、当該権限のある当局は、変更のない状態で侵害商品の積戻しを許容し又は異なる税関手続に委ねてはならない。 |
第六十条 少量の輸入 |
加盟国は、旅行者の手荷物に含まれ又は小型貨物で送られる少量の非商業的な性質の物品については、この節の規定の適用から除外することができる。 |
第五節 刑事上の手続 |
第六十一条 |
加盟国は、少なくとも故意による商業的規模の商標の不正使用及び著作物の違法な複製について適用される刑事上の手続及び刑罰を定める。制裁には、同様の重大性を有する犯罪に適用される刑罰の程度に適合した十分に抑止的な拘禁刑又は罰金を含む。適当な場合には、制裁には、侵害物品並びに違反行為のために主として使用される材料及び道具の差押え、没収及び廃棄を含む。加盟国は、知的所有権のその他の侵害の場合、特に故意にかつ商業的規模で侵害が行われる場合において適用される刑事上の手続及び刑罰を定めることができる。 |
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第六十二条 | ||
1 加盟国は、第二部の第二節から第六節までに規定する知的所有権の取得又は維持の条件として、合理的な手続及び方式に従うことを要求することができる。この手続及び方式は、この協定に合致するものとする。 | ||
2 知的所有権の取得について権利が登録され又は付与される必要がある場合には、加盟国は、権利の取得のための実体的な条件が満たされていることを条件として、保護期間が不当に短縮されないように、権利の登録又は付与のための手続を合理的な期間内に行うことを確保する。 | ||
3 千九百六十七年のパリ条約第四条の規定は、サービス・マークについて準用する。 | ||
4 知的所有権の取得又は維持に関する手続並びに、加盟国の国内法令が定める場合には、行政上の取消し及び異議の申立て、取消し、無効等の当事者間手続は、第四十一条の2及び3に定める一般原則により規律される。 | ||
5 4に規定する手続における最終的な行政上の決定は、司法当局又は準司法当局による審査に服する。ただし、退けられた異議の申立て又は行政上の取消しに係る決定については、これらの手続を求めた理由に基づき無効確認手続を行うことができることを条件として、当該審査の機会を与える義務を負わない。 |
第五部 紛争の防止及び解決 |
第六十三条 透明性の確保 |
1 この協定が対象とする事項(知的所有権の取得可能性、範囲、取得、行使及び濫用の防止)に関し加盟国が実施する法令、最終的な司法上の決定及び一般に適用される行政上の決定は、各国政府及び権利者が知ることができるような方法により当該加盟国の国語で公表し又は、公表が実際的でない場合には、公に利用可能なものとする。各加盟国の政府又は政府機関の間において有効なこの協定が対象とする事項に関する合意も公表する。 |
2 加盟国は、この協定の実施について貿易関連知的所有権理事会が検討することに資するために1に規定する法令を同理事会に通報する。同理事会は、その義務の履行について加盟国の負担を最小とするよう努めるものとし、また、当該法令についての共通の登録制度の設立に関するWIPOとの協議が成功する場合には、当該法令を同理事会に直接通報する義務を免除することを決定することができる。この関連において、同理事会は、千九百六十七年のパリ条約第六条の三に基づくこの協定上の義務に従って行われる通知について、必要となる措置を検討する。 |
3 各加盟国は、他の加盟国からの書面による要請に応じて、1に規定する種類の情報を提供することができるように準備する。加盟国は、知的所有権の分野に関する特定の司法上若しくは行政上の決定又は二国間協定がこの協定に基づく自国の権利に影響を及ぼすと信ずるに足りる理由を有する場合には、当該特定の司法上若しくは行政上の決定若しくは二国間協定を利用すること又はこれらの十分詳細な情報を得ることを書面により要請することができる。 |
4 1から3までの規定は、加盟国に対し、法令の実施を妨げる等公共の利益に反し又は公私の特定の企業の正当な商業上の利益を害することとなるような秘密の情報の開示を要求するものではない。 |
第六十四条 紛争解決 |
1 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、紛争解決了解によって詳細に定められて適用される千九百九十四年のガットの第二十二条及び第二十三条の規定は、この協定に係る協議及び紛争解決について準用する。 |
2 千九百九十四年のガット第二十三条1の(b)及び(c)の規定は、世界貿易機関協定の効力発生の日から五年間、この協定に係る紛争解決については、準用しない。 |
3 2に規定する期間の間、貿易関連知的所有権理事会は、千九百九十四年のガット第二十三条1の(b)及び(c)に規定する種類の苦情であってこの協定に従って申し立てられるものの範囲及び態様を検討し、並びに承認のため閣僚会議に勧告を提出する。この勧告の承認又は2に規定する期間の延長は、閣僚会議がコンセンサス方式によってのみ決定する。承認された勧告は、その後の正式な受諾手続なしにすべての加盟国について効力を生ずる。 |
第六部 経過措置 |
第六十五条 経過措置 |
1 2から4までの規定に従うことを条件として、加盟国は、世界貿易機関協定の効力発生の日の後一年の期間が満了する前にこの協定を適用する義務を負わない。 |
2 開発途上加盟国は、1に定めるところによりこの協定を適用する日から更に四年の期間、この協定(第三条から第五条までの規定を除く。)の適用を延期することができる。 |
3 中央計画経済から市場自由企業経済への移行過程にある加盟国であって、知的所有権制度の構造的な改革を行い、かつ、知的所有権法令の準備及び実施において特別な問題に直面しているものも、2に規定する延期の期間を享受することができる。 |
4 開発途上加盟国は、2に規定するこの協定の当該開発途上加盟国への一般的な適用の日において、この協定により物質特許の保護をその領域内で物質特許によって保護していない技術分野に拡大する義務を負う場合には、第二部第五節の物質特許に関する規定の当該技術分野への適用を更に五年の期間延期することができる。 |
5 1から4までに規定する経過期間を援用する加盟国は、当該経過期間の間の国内法令及び慣行の変更がこの協定との適合性の程度を少なくすることとはならないことを確保する。 |
第六十六条 後発開発途上加盟国 |
1 後発開発途上加盟国は、その特別のニーズ及び要求、経済上、財政上及び行政上の制約並びに存立可能な技術的基礎を創設するための柔軟性に関する必要にかんがみ、前条1に定めるところによりこの協定を適用する日から十年の期間、この協定(第三条から第五条までの規定を除く。)を適用することを要求されない。貿易関連知的所有権理事会は、後発開発途上加盟国の正当な理由のある要請に基づいて、この期間を延長することを認める。 |
2 先進加盟国は、後発開発途上加盟国が健全かつ存立可能な技術的基礎を創設することができるように技術の移転を促進し及び奨励するため、先進加盟国の領域内の企業及び機関に奨励措置を提供する。 |
第六十七条 技術協力 |
この協定の実施を促進するため、先進加盟国は、開発途上加盟国及び後発開発途上加盟国のために、要請に応じ、かつ、相互に合意した条件により、技術協力及び資金協力を提供する。その協力には、知的所有権の保護及び行使並びにその濫用の防止に関する法令の準備についての支援並びにこれらの事項に関する国内の事務所及び機関の設立又は強化についての支援(人材の養成を含む。)を含む。 |
第七部 制度上の措置及び最終規定 |
第六十八条 知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会 |
貿易関連知的所有権理事会は、この協定の実施、特に、加盟国のこの協定に基づく義務の遵守を監視し、及び加盟国に対し、知的所有権の貿易関連の側面に関する事項について協議の機会を与える。同理事会は、加盟国により与えられる他の任務を遂行し、特に、紛争解決手続において加盟国が要請する支援を提供する。その任務を遂行するに当たって、同理事会は、適当と認める者と協議し、情報の提供を求めることができる。WIPOと協議の上、同理事会は、その一回目の会合から一年以内に、WIPOの内部機関と協力するための適当な取決めを作成するよう努める。 |
第六十九条 国際協力 |
加盟国は、知的所有権を侵害する物品の国際貿易を排除するため、相互に協力することを合意する。このため、加盟国は、国内行政機関に連絡先を設け、これを通報し、及び侵害物品の貿易に関して情報を交換することができるように準備する。加盟国は、特に、不正商標商品及び著作権侵害物品の貿易に関して、税関当局間で情報の交換及び協力を促進する。 |
第七十条 既存の対象の保護 |
1 この協定は、加盟国がこの協定を適用する日の前に行われた行為に関し、当該加盟国について義務を生じさせるものではない。 |
2 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定は、加盟国のこの協定を適用する日における既存の保護の対象であって、当該加盟国において同日に保護されており又はこの協定に基づく保護の基準を満たし若しくは後に満たすようになるものに関し、当該加盟国について義務を生じさせる。この2から4までの規定について、既存の著作物についての著作権に関する義務は、千九百七十一年のベルヌ条約第十八条の規定に基づいてのみ決定されるものとし、また、既存のレコードに関するレコード製作者及び実演家の権利に関する義務は、第十四条6の規定に従って準用される同条約第十八条の規定に基づいてのみ決定される。 |
3 加盟国がこの協定を適用する日に公共のものとなっている保護の対象については、保護を復活する義務を負わない。 |
4 保護の対象を含む特定の物に関する行為がこの協定に合致する加盟国の国内法令に基づき初めて侵害行為となる場合であって、当該行為が世界貿易機関協定を当該加盟国が受諾する日の前に開始されたとき又は当該行為について当該日の前に相当な投資が行われたときは、加盟国は、この協定を適用する日の後継続して行われる当該行為に関し権利者が利用し得る救済措置の制限を定めることができる。ただし、その場合には、加盟国は、少なくとも、衡平な報酬の支払を定める。 |
5 加盟国は、この協定を適用する日の前に購入された著作物の原作品又は複製物については、第十一条及び第十四条4の規定を適用する義務を負わない。 |
6 加盟国は、この協定が知られる日の前に使用の許諾が政府によって与えられた場合には、権利者の許諾を得ない使用について、第三十一条の規定又は特許権が技術分野について差別することなく享受されるとの第二十七条1の要件を適用することを要求されない。 |
7 加盟国において登録が保護の条件となっている知的所有権の場合には、当該加盟国がこの協定を適用する日に係属中の保護の出願については、この協定に規定する一層広範な保護を請求するために補正をすることを認める。当該補正には、新たな事項を含まない。 |
8 加盟国が世界貿易機関協定の効力発生の日に第二十七条の規定に基づく義務に応じた医薬品及び農業用の化学品の特許の保護を認めていない場合には、当該加盟国は、 |
(a) | 第六部の規定にかかわらず、同協定の効力発生の日から、医薬品及び農業用の化学品の発明の特許出願をすることができるよう措置をとる。 | |
(b) | (a)の特許出願について、出願日又は、優先権が利用可能であり、かつ、主張される場合には、当該優先権に係る出願の日にこの協定に定める特許の対象に関する基準を適用していたものとして、この協定を適用する日に当該基準を適用する。 | |
(c) | (a)の特許出願であって、(b)の基準を満たすものについて、特許の付与の日以後、第三十三条の規定に従い(a)の特許出願の出願日から計算した特許期間の残りの期間この協定に従って特許の保護を与える。 |
9 加盟国において、ある物質が8(a)の規定に従ってされた特許出願の対象である場合には、第六部の規定にかかわらず、当該加盟国において販売の承認を得た日から五年間又は当該日から当該加盟国において物質特許が与えられ若しくは拒絶されるまでの期間のいずれか短い期間排他的販売権を認める。ただし、世界貿易機関協定が効力を生じた後他の加盟国においてその物質について特許出願がされ、特許が与えられ及び販売の承認が得られている場合に限る。 |
第七十一条 検討及び改正 |
1 貿易関連知的所有権理事会は、第六十五条2に規定する経過期間が満了した後この協定の実施について検討する。同理事会は、この協定の実施により得られた経験を考慮に入れ、当該経過期間の満了の日から二年後及びその後も同一の間隔で検討を行う。同理事会は、また、この協定の修正又は改正を正当化する関連する新たな進展を考慮して検討を行うことができる。 |
2 他の多数国間協定で達成され、かつ、効力を有する知的所有権の一層高い保護の水準であって、世界貿易機関のすべての加盟国により当該協定に基づき受け入れられたものに適合するためのみの改正は、貿易関連知的所有権理事会のコンセンサス方式によって決定された提案に基づき、世界貿易機関協定第十条6の規定に従い閣僚会議が行動するために閣僚会議に付することができる。 |
第七十二条 留保 |
この協定のいかなる規定についても、他のすべての加盟国の同意なしには、留保を付することができない。 |
第七十三条 安全保障のための例外 |
この協定のいかなる規定も、次のいずれかのことを定めるものと解してはならない。 |
(a) | 加盟国に対し、その開示が自国の安全保障上の重大な利益に反するとその加盟国が認める情報の提供を要求すること。 | |||||||
(b) |
加盟国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要と認める次のいずれかの措置をとることを妨げること。
|
|||||||
(c) | 加盟国が国際の平和及び安全の維持のため国際連合憲章に基づく義務に従って措置をとることを妨げること。 |