Home >> 外国著作権法 >> タイ編

    タイ編

    著作権法 B.E.2537(1994年)


    第1条

    本法は、著作権法B.E.2537として引用することができる。

    第2条

    本法は、官報に告示された日より数え90日を経過した日から施行する。

    第3条

    著作権法B.E.2521は、廃止する。

    第4条

    本法において
    ”著作者”とは、本法において著作権のある著作物と認められる著作物を作成し、又は創作する者をいう。
    “著作権”とは、著作者により創作された著作物について、本法に基づく行為をなす排他的権利をいう。
    “文芸的著作物”とは、書籍、小冊子、文書、印刷物、義、説教、講演、演説のようないずれかの種類の文芸的著作物をいい、コンピュータ・プログラムを含む。
     “コンピュータ・プログラム”とは、コンピュータ言語の種を問わず、コンピュータを機能せしめるため、又はひとつの結果を得るために、コンピュータと共に使用される指令又は一連の指令等をいう。
     “演劇的著作物”とは、演劇的な構成をもつ舞踊、舞踏、所作又は実演の著作物をいい、無言劇を含む。
     “美術的著作物”とは、次に述べる1又は2以上の著作物をいう。
    (1) 絵画又は素描の著作物 1又は2以上の素材上の、線、光、色の他の要素又はそれらの組み合わせから成る構成物の創作物をいう。
    (2) 彫刻の著作物 有体の体積をもつ構成物の創作物をいう。
    (3) 石版画の著作物 印刷の手法による絵画の創作物をいい、印刷に用いる板木及び板金を含む。
    (4) 建築の著作物 建物又は構造物の意匠、内装又は外装の意匠、周辺風景の意匠、建物又は構造物の模型の創作物をいう。
    (5) 写真の著作物 光をフィルム若しくはガラス体にレンズを通して達せしめる影像の記録装置を用い、定則の化学薬品で現像される、又はその他の装置や手法によって写真や影像を記録、生じさせるいずれかの過程による、写真の創作物をいう。
    (6) 図形の著作物 地図、構成、写生図又は地理学、地形学若しくは科学に関する立体の著作物をいう。
    (7) 応用美術の著作物 (1)ないし(6)にあげた著作物を、それぞれ単独で又はそれらを組み合わせて、その著作物の価値の鑑賞とは別に、実用のため、例えば、その著作物の実用的な使用、用具若しくは器具の装飾又は商業的な利益のために用いる著作物をいう。
     これらについては、美術的価値の有無を問わず、これらの著作物の写真及び図面を含む。

     “音楽的著作物”と、音律と歌詞又は音律のみであるかを問わず、演奏又は歌唱を目的として構成される著作物をいい、編曲した楽譜を含む。
     “視聴覚著作物”とは、いずれかの媒体に記録された一連の視覚的影像から成り、その媒体に適した機器により再上映することができる著作物をいい、かかる著作物のサウンド・トラックを含む。
     “映画の著作物”とは、継続的に動画として上映できる、又は継続的に動画として上映できるように他の媒体に記録できる、一連の視覚的影像から成る視聴覚著作物をいい、かかる映画の著作物のサウンド・トラックを含む。
     “録音物”は、いずれかの媒体に記録された、一連の音楽、実演の音その他の音であって、その媒体に適した機器により再演奏することができる著作物をいう。但し、映画の著作物その他の視聴覚著作物のサウンド・トラックを含まない。
     “実演家”とは、上演し、歌唱し、口述し、翻訳を吹き替え、ナレーションをし、解説し、又は台本に従い若しくはその他の仕方で演じる実演家、演奏家、歌手、振付師、舞踊家等をいう。
     “放送の著作物”とは、ラジオ放送、音又は映像のテレビでの放送その他これらに類似する手段で公衆に伝達される著作物をいう。
     “複製とは、その物理的な手法の如何を問わず、原著作物、複製物又は発行物から、その全部又は一部を模写し、模倣し、複写し、製版し、録音し、録画し又は録音・録画することを含み、コンピュータ・プログラムにあっては、その全部又は一部を、その手法を問わず、プログラムの化体する媒体から、新著作物を創作することなく、その実質的部分を複製又は増製することをいう。
     “翻案”とは、その全部又は一部であるを問わず、新著作物を創作することなく、原著作物の実質的部分を転化、改変又は模倣により複製することをいい
    (1) 文芸的著作物にあっは、翻訳、変形又は選択及び配列による収集を含み
    (2) コンピュータ・プログラムにあっては、新著作物を創作することなく、プログラムの実質的部分の変形、修正により複製することを含み
    (3) 演劇的著作物にあっては、そこに用いる言語が元の言語であれ、それと異なる言語であれ、非演劇的著作物を演劇的著作物に変形すること、又は演劇的著作物を非演劇的著作物に変形することを含み
    (4) 演劇的著作物にあっては、そこに用いる言語が元の言語であれ、それと異なる言語であれ、非演劇的著作物を演劇的著作物に変形すること、又は演劇的著作物を非演劇的著作物に変形することを含み
    (5) 音楽的著作物にあっては、旋律の編曲、歌詞又は音律の変更を含む。
     “公衆への伝達”とは、実演、講義、説教、演奏、音又は影像により知覚を呼び起こすこと、建築、頒布その他の方法で公衆に著作物を使用することを可能とすることをいう。
     “発行”とは、その形態又は性質の如何を問わず、著作者の同意を得てなされる著作物の複製物の頒布であって、その複製物は、著作物の性質からみて相当な量を公衆が使用できるものであることを要する。演劇的著作物、音楽的著作物又は映画の著作物の実演又は演奏、文芸的著作の講義又は朗読、著作物の音及び影像の放送、美術的著作物の展示及び建築の著作物の建築は発行ではない。
     “担当公務員”とは、本法に基づきその職をなすことを大臣に任命された者をいう。
     “長官”とは、知的財産庁の長官をいい、長官に指名された者を含む。
     “委員会”とは、著作権委員会をいう。
     “大臣”とは、本法を主管する大臣をいう。

    第5条

    商務大臣は、本法を主管するものとし、担当公務員の指名及び本法施行のための政令を提出する権限をもつ。
     官報に公告されている政令は、効力規定である。


    第1章 著作権

    第1節 著作物

    第6条

     本法において著作権のある著作物とは、その表現の態様又は形式を問わず、文芸、学術又は美術の分野に属する文芸、演劇、美術、音楽、視聴覚、映画、録音、音及び映像の放送の著作物その他の著作物をいう。
     著作権の保護は、着想又は手順、工程、体系、使用の手法、操作、概念、原則、発見、科学的・数学的理論には及ばない。

    第7条

     本法において、次に述べる事項は、著作権のある著作物とみなされない。
    (1) 文芸、学術又は美術の分野に属する著作物ではない、単なる情報の性格をもつにすぎない時事の記事及び事実
    (2) 憲法及び法令
    (3) 省、庁その他の政府又は地方機関の規則、準則、告示、命令、説明及び公的回答
    (4) 判決、命令、決定及び公的報告
    (5) 省、庁その他の政府又は地方機関によって作成された、前記(1)ないし(4)の事項に関する資料の翻訳物及び収集物

    第2節 著作権の取得

    第8条

     著作物の著作者は、次の条件に従い、著作する著作物について著作権者となる。
    (1) 未発行の著作物にあっては、著作者がタイ国民であるかタイに居住していること、又はタイがその加盟国である著作権の保護に関する条約の加盟国の国民であかその加盟国に居住していること。但し、その居住地が永住地であること又は著作物の創作に際し、大部分の時間をその居住地で過ごすことが条件とされる。
    (2) 発行された著作物にあっては、最初の発行がタイ国内若しくはタイがその加盟国である著作権の保護に関する条約の加盟国でなされたこと、最初の発行がタイ国外若しくはタイがその加盟国である著作権の保護に関する条約の加盟国ではない国でなされたが、最初の発行の日から30日以内にタイ国内若しくはタイがその加盟国である著作権の保護に関する保護条約の加盟国で発行されたこと、又は著者が最初の発行のときに(1)に定めた保護の資格をもつこと。
     著作者がタイ国民でなければならない場合に、著作者が法人であるときは、法人はタイ国法によって設立されなければならない。
    第9条

    雇用の過程において著作者により創作された著作物の著作 権は、文書による別段の合意がない限り、著作者に帰属する。 但し、雇用者は、雇用の目的に従い、その著作物を公衆に伝 達する権利をもつ。

    第10条

    委託に基づき創作された著作物の著作権は、著作者と雇用 者が別段の合意をしない限り、雇用者に帰属する。

    第11条

    本法において著作権のある著作物の翻案物である著作物の 著作権は、それが著作権者の同意を得て作成されたものであ るときは、翻案物を作成した者に帰属する。但し、翻案され た元の著作者によって創作された著作物の著作権者の権利を 害しないことを条件とする。

    第12条

    著作権者の同意を得て作成した、本法において著作権のあ る著作物の編集物若しくは合成物、又は機械その他の装置に より読み若しくは伝達できるデータその他の素材の編集物若 しくは合成物の著作権は、編集物若しくは合成物を作成した 者に帰属する。但し、他人の著作物を模倣しない態様での選 択又は配列によって編集物若しくは合成物の作成がなされて いること、編集又は合成された元の著作者によって創作され た著作物、データその他の素材の著作権者の権利を害しない ことを条件とする。

    第13条

    第8条、第9条及び第10条の規定は、第11条又は第12条に よる著作権の取得に準用する。

    第14条

    省、庁その他の政府又は地方機関は、その雇用、命令又は 指揮の過程で創作された著作物の著作権者となる。但し、文 書による別段の合意があるときは、この限りではな。

    第3節 著作権の保護

    第15条

     第9条、10条及び14条の規定に従うことを条件として、著作権者は、次の排他的権利を専有する。
    (1) 複製又は翻案
    (2) 公衆への伝達
    (3) コンピュータ・プログラム、視聴覚著作物、映画の著作 物及び録音物の原作品又はその複製物の貸与
    (4) 著作権から生じる利益の他人への供与
    (5) 条件を付し又は付さないでする、上記(1)ないし(3) に述べた権利の許諾。但し、その条件は、不当に競争を制 限するものであってはならない。
    前項の(5)に述べた条件が競争の不当な制限を構成するか 否かは、政令に定められる規則、方法及び条件により決定 される。
    第16条

    本法により、著作権者が、ある者に上記第15条(5)による 権利の行使を許諾しても、文書による別段の合意がない限り、 著作権者がその他の者に同様の許諾を与えることを妨げない。
    第17条

    著作権は、譲渡することができる。
     著作権者は、その著作権の全部又は一部を譲渡すること及 び期間を限定し又は保護の全期間にわたり譲渡することがで きる。
     相続の場合を除き、その他の方法による著作権の譲渡は、 譲渡人、譲受人両者の署名のある文書によりなされなければ ならない。譲渡契約に期間が定められていないときは、その 譲渡は、10年間継続するとみなされる。
    第18条

    本法において著作権のある著作物の著作者は、彼自身を著 作者として表示する権限及び著作者の名誉若しくは声望を害 するような著作物の歪曲、削除、改変その他著作物を害する 行為を譲受人その他の者に禁止する権限をもつ。著作者が死 亡しているときは、著作者の相続人が、著作権の保護の全期間、 その権利の執行のために争訟する権限をもつ。但し、文書に よる別段の合意があるときは、この限りではない。

    第4節 著作権の保護期間
    第19条

    第21条及び第22条の規定に従うことを条件として、本法に おける著作権は、著作者の生存中及びその死後50年存続する。
     共同著作の著作物にあっては、著作権は、共同著作者の生 存中及び最終に死亡した共同著作者の死後50年存続する。
     著作者又はすべての共同著作者が著作物の発行前に死亡し ているときは、著作権は、著作物の最初の発行の時から50年 存続する。
     著作者が法人のときは、著作の時から50年存続する。著作 物がこの期間内に発行されるときは、著作権は、最初の発行 の時から50年存続する。
    第20条

    変名又は無名の著作者によって創作された著作物の本法に おける著作権は、著作の時から50年存続する。著作物がこの 期間内に発行されるときは、著作権は、最初の発行の時から 50年存続する。
     著作者の身元が知られたときは、第19条の規定を準用する。
    第21条

    写真の著作物、視聴覚著作物、映画の著作物、録音物又は 音及び映像の放送の著作物の著作権は、著作の時から50年存 続する。著作物がこの期間内に発行されるときは、著作権は、 最初の発行の時から50年存続する。
    第22条

    応用美術の著作物の著作権は、著作の時から25年存続する。 著作物がこの期間内に発行されるときは、著作権は、最初の 発行の時から50年存続する。
    第23条

    第14条に規定する雇用、命令又は指揮の過程で創作された 著作物の著作権は、著作の時から50年存続する。著作物がこ の期間内に発行されるときは、著作権は、最初の発行の時か ら50年存続する。
    第24条

    著作権の保護期間の始期である第19条ないし第23条に定め る発行は、著作権者の同意を得た著作物の発行をいう。
    第25条

    著作権の保護期間が年の途中で経過したときで、その経過 の日がその暦年の最終日でないとき、又はその経過の正確な 日付が不分明なときは、著作権は、その暦年の最終日まで存 続する。
    第26条

    著作権の保護期間の経過後になされた著作権のある著作物 の発行は、その著作物の著作権を再度発生せしめる理由には ならない。

    第5節 著作権の侵害
    第27条

    本法において著作権のある著作物に対し、第15条(5)に規 定する許諾なくしてなされる次の行為は、著作権の侵害とみ なされる。

    (1) 複製又は翻案

    (2) 公衆への伝達
    第28条

    本法において著作権のある視聴覚著作物、映画の著作物又 は録音物に対し、第15条(5)に規定する許諾なくしてなされ る次の行為は、音に対するものであれ、影像に対するもので あれ、著作権の侵害とみなされる。

    (1) 複製又は翻案

    (2) 公衆への伝達

    (3) 著作物の原作品又は複製物の貸与
    第29条

    本法において著作権のある音及び映像の放送に対し、第15 条(5)に規定する許諾なくしてなされる次の行為は、著作権 の侵害とみなされる。
    (1) その全部又は一部であるを問わず、視聴覚著作物、映画 の著作物、録音物又は音及び映像の放送著作物を作成する こと。
    (2) その全部又は一部であるを問わず、再放送すること。
    (3) 金銭の支払その他の商業的利益を受ける反対給付として、 公衆に視聴させる音及び映像の放送著作物を作成すること。
    第30条

    本法において著作権のある音及び映像の放送に対し、第15 条(5)に規定する許諾なくしてなされる次の行為は、著作権 の侵害とみなされる。

    (1) 複製又は翻案

    (2) 公衆への伝達

    (3) 著作物の原作品又は複製物の貸与

    第31条

    その著作物が他人の著作権を侵害して作成されたものであ ることを知り、又は知り得べかりし者が、利益を目的として、 その著作物について次の行為をすることは、著作権の侵害と みなされる。
    (1) 売却、売却のための保持、売却のための提供、賃貸、リー スのための提供、割賦による売却又は割賦のための提供
    (2) 公衆への伝達
    (3) 著作権者に損害を生ぜしめ得る態様における頒布
    (4) 王国への自己輸入又は注文による輸入


    第6節 著作権侵害の例外

    第32条

    他人の本法において著作権のある著作物を、著作権者によ る著作権のある著作物の通常の使用を妨げず、著作権者の正 当な権利を不当に害しないで使用することは、著作権の侵害 とはみなされない。  前項に従うことを条件として、著作権のある著作物に関して なされる次の行為は、著作権の侵害とはみなされない。
    (1) 営利を目的としない著作物の調査又は研究
    (2) 私的使用又は使用者及びその家族若しくは近親者のため にする使用
    (3) 著作物の著作権者を表示してなされるその著作物の解説、 批評又は紹介
    (4) 作物の著作権者を表示してなされるマス・メディアに よるニュースの報道
    (5) 裁判手続き又は権限ある公務員による行政手続のために なされる複製、翻案、展示若しくは陳列又はこれらの手続 きの結果を報告するためのこれらの行為
    (6) 営利を目的としないことを条件として、教師による教授 のための複製、翻案、展示、陳列
    (7) 営利を目的としないことを条件として、教師又は教育機 関によって、そのクラス内又は教育機関内の生徒に対し頒 布し、又は売却するためになされる著作物の一部の複製、 翻案、又は短縮又は要約
    (8) 試験の問題又は答案の一部としてする著作物の使用/TD>
    第33条

    第32条第1項に従うことを条件として、本法において著作権 のある著作物の一部を、著作権者を表示して、正当に引用、 複製、模倣又は参照することは、著作権の侵害とはみなされ ない。
    第34条

    複製が営利を目的とせず、かつ、第32条第1項に従うことを 条件として、図書館司書が、次の場合に、本法において著作 権のある著作物を複製することは、著作権の侵害とはみなさ れない。
    (1) その属する図書館又は他の図書館における使用のために する複製
    (2) 調査又は研究を目的とする他の者のために、著作物の一 部を、正当に複製すること
    第35条

    本法において著作権のある著作物とされるコンピュータ・ プログラムに対してなされる次の行為は、著作物の侵害とは みなされない。但し、営利を目的とせず、第32条第1項に従う ことを条件とする。
    (1) コンピュータ・プログラムの調査又は研究
    (2) 調査又は研究を目的とする他の者のために、著作物の一 部を、正当に複製すること
    (3) コンピュータ・プログラムの著作権者を表示してなされ る著作物の解説、批評又は紹介
    (4) コンピュータ・プログラムの著作権者を表示してなされ るマス・メディアによるニュースの報道
    (5) 他者からプログラムを適法に購入又は取得した者が、そ の保全又は滅失予防を目的として、合理的な量でコンピュー タ・プログラムを増製する行為
    (6) 裁判手続き又は権限ある公務員による行政手続のために なされる複製、翻案、展示若しくは陳列又はこれらの手続 きの結果を報告するためのこれらの行為
    (7) 試験の問題又は答案の一部としてするコンピュータ・プ ログラムの使用
    (8) 使用のために必要な限度でするコンピュータ・プログラ ムの翻案
    (9) 公益のためにする参照又は調査のためにコンピュータ・ プログラムを保全するためのコンピュータ・プログラムの 増製
    第36条

    その活動から利益を得る目的で組織され又は行われたもの ではなく、直接的にも間接的にもその実演の観賞に対して対 価を得ることなく、かつ、実演家に報酬を支払わないで、適 切に、演劇的著作物又は音楽的著作物を公に実演することは、 著作権の侵害とはみなされない。但し、それは、公の慈善事業、 教育、宗教又は社会福祉の目的をもつ協会、団体その他の組 織によって行われること、及び第32条第1項に従うことを条件 とする。
    第37条

    公共の場所に公然と設置されている、建築の著作物以外の 美術的著作物の、素描、絵画、構造物、版画、塑像、彫像、 石版画、写真、映画又は映像の放送その他の類似の使用は、 その美術的著作物の著作権の侵害とはみなされない。
    第38条

    建築の著作物の素描、絵画、版画、塑像、彫像、石版画、写真、 映画又は映像の放送は、その建築の著作物の著作権の侵害と はみなされない。
    第39条

    美術的著作物がその構成要素となっている著作物の写真、 映画又は映像の放送は、その美術的著作物の著作権の侵害とは みなされない。
    第40条

    著作者以外の者が美術的著作物の著作権を共有していると き、その美術的著作物の著作者が、元の美術の著作物の一部 の複製の形で、又は元の美術的著作物の創作に応用された習 作から得られた印刷型台、写生図、設計図、模型若しくはデー タを用いて、第2の創作を行う場合、著作者がその元の美術的 著作物の実質的部分を複製若しくは模写しない限り、その美 術的著作物の著作権の侵害とはみなされない。
    第41条

    本法において著作権のある建築の著作物とされる建物の外 観を変更することなく修繕することは、著作権の侵害とはみ なされない。
    第42条

    映画の著作物の保護期間の経過後に、映画の著作物を公衆 に伝達することは、この映画の著作物の創作のために用いら れた文芸的著作物、演劇的著作物、美術的著作物、音楽的著 作物、視聴覚著作物、録音物その他の著作物に存する著作権 の侵害とはみなされない。
    第43条

    本法において著作権のある著作物が、政府の所有する著作 物であるとき、権限ある公務員により、又はその公務員の命 により、政府の役務のためにそれらの著作物を複製すること は、第32条第1項に従うことを条件として、著作権の侵害とは みなされない。


    第2章 実演家の権利

    第44条

    実演家は、自らの実演に関する行為につき、次の排他的権 利を専有する。
    (1) 実演の音及び映像の放送又は公衆への伝達。但し、既に 記録されている記録媒体を用いてする音及び映像の放送又 は公衆への伝達を除く。
    (2) 記録されていない実演を記録すること。
    (3) 実演家の同意なしに記録されている実演の記録物を複製 すること、実演家の同意を得て作成された記録物を他目的 に使用するために複製すること、又は第53条により実演家 の権利の例外とされる実演の記録物を複製すること。
    第45条

    既に商業目的をもって頒布されている実演の音の記録物又 はその複製物を、音の放送をし、又は直接に公衆に伝達する 者は、実演家に相当な報酬を支払わなければならない。当事 者間に報酬につき合意が調わないときは、そのような場合に おける通常の報酬を考慮して、長官が報酬を定める。
     前項に基づき長官によってなされた命令に不服のある当事 者は、長官の命令を記載した文書を受領したときから90日以 内に、委員会に不服申立をすることができる。委員会の決定は、 最終のものである。
    第46条

    実演又は実演の音の記録に参加する実演家が複数のときは、 これらの実演家は、その権利を主張し、又は行使するために、 共同の代理人を指名することができる。
    第47条

    実演家は、次の条件に従うことを条件に、第44条に定める その実演についての権利を享有する。
    (1) 実演家がタイ国民であるか王国内に常居所をもつこと、 又は、
    (2) 実演又はその主要部分が王国内で行われるかタイもその 加盟国である実演家の権利の保護を目的とする条約の加盟国において行われること
    第48条

    実演家は、次の条件に従うことを条件として、第45条に定 める報酬を受ける権利をもつ。
    (1) 実演家が、実演の音の記録が行われたとき若しくはその 権利を主張するときに、タイ国民であるか王国内に常居所 をもつこと、又は、
    (2) 実演の音の記録若しくはその主要部分が王国内で行われ るかタイもその加盟国である実演家の権利の保護に関する 条約の加盟国で行われること
    第49条

    第44条に規定する実演家の権利は、その実演が行われた暦 年の最終日から50年間存続する。実演が記録されているとき は、その実演家の権利は、その実演の記録がなされた暦年の 最終日から50年間存続する。
    第50条

    第45条に規定する実演家の権利は、その実演の音の記録が 行われた暦年の最終日から50年間存続する。
    第51条

    第44条及び第45条に規定する実演家の権利は、その全部又 は一部を譲渡すること及び期間を限定し又は保護の全期間に わたり譲渡することができる。
     複数の実演家が参加しているときは、実演家はそれぞれ特に 自己に属する権利を譲渡することができる。
     相続の場合を除き、その他の方法による権利の譲渡は、譲 渡人、譲受人両者の署名のある文書によりなされなければな らない。譲渡契約に期間が定められていないときは、その譲 渡は、3年間継続するとみなされる。
    第52条

    実演家の同意なく、又は第45条に規定する報酬を支払うこ となく、第44条に特記されている行為をした者は、実演家の 権利を侵害したものとみなされる。
    第53条

    第32条ないし第34条、第36条、第42条及び第43条の規定は、 実演家の権利に準用する。


    第3章 特定環境における著作権の使用
    第54条

    営利を目的とせず、調査、教授又は研究を目的として、印 刷物の形体その他類似の形体で既に公衆に伝達されている著 作物について、本法に基づく許可を得ることを望むタイ国民 は、以前に、タイ語にその著作物を翻訳すること若しくはタ イ語で出版されている翻訳物の複製物を複製することの許諾 を著作権者に求めたが拒絶されたこと、又は相当の期間が経 過したが今なお合意を得ることができないことを立証して、 長官にその申立てをすることができる。但し、申立ての時に、 次の条件をみたすことを条件とする。
    (1) 著作権者が、著作物の最初の発行後3年を経過するも、発 行するためにタイ語にその著作物を翻訳していないこと、 若しくはそれを何人にも許諾していないこと、又は、
    (2) 著作権者がタイ語の翻訳物を発行したが、その翻訳物の 最後の発行後3年を経過してなお続く発行がなされず、かつ、 発行された翻訳物のすべての版が絶版になっていること。
     第1項に基づく申立ては、次の規則、方法及び条件をみたさ なければならない。
    (1) 長官は、第1項に基づく申立てに対し、(1)又は(2)に 定められた期間が経過してなお6 ヶ月が過ぎていないとき は、許可を与えることはできない。
    (2) 長官が許可を与えたとしても、被許可者は、翻訳し、又 は許可された翻訳物を発行する権利があるだけであり、ま た、長官は、許可に定められた期間が経過せず又は経過し てもなお6 ヶ月が過ぎていないときは、同一の著作権のある 著作物からタイ語の翻訳物を作成することを何人に対して も許可することはできない。
    (3) 被許可者は、認められた許可を他人に譲渡することは、 禁止される。
    (4) 著作権者又はその許諾を受けた者が自らタイ語の翻訳物 を作成、又はタイ語に翻訳したものを発行したこと、その 内容が第55条に基づいて許可を受けた印刷物の内容と同一 であること、及びタイ国内で売られている同性質のその他 の著作物の価格と同等の適切な価格で印刷物を頒布してい ることを長官に示したときは、長官は、被許可者に与えた 許可は終結した旨の命令を出し、この命令は遅滞なく被許 可者に伝えられなければならない。長官の終結命令の前に、 作成又は翻訳された印刷物の複製物は、それらが品切れと なるまで頒布することができる。
    (5) 被許可者は、次の場合を除き、許可を受けてタイ語で翻 訳又は発行した印刷物の複製物を輸出してはならない。
      (a) 海外における受取人がタイ国民であるとき。
      (b) 研究、教授又は調査目的に資する印刷物であるとき。
      (c) 印刷物の配送が商業目的でないとき。
      (d) 印刷物が配送される国が、タイ国に、印刷物をその国 へ配送すること又はその国内で頒布することを認めてい るとき。
    第55条

    第54条に基づく申立てを受領した長官は、許可にかかわる 報酬及び条件につき、関係当事者間の合意を得るべく斡旋し なければならない。当事者間の合意が成立しないときは、長 官は、そのような場合における通常の報酬を考慮して、相当 な報酬を定める命令をし、又は適切とみられる許可の条件を 定めることができる。
     報酬及び条件が定められたときは、長官は、申立人に対し、 許可証明書を交付しなければならない。
     第1項に基づき長官によってなされた命令に不服のある関係 当事者は、長官の命令を記載する文書を受領したときから90 日以内に、委員会に不服申立をすることができる。委員会の 決定は、最終のものである。


    第4章 著作権委員会
    第56条

    “著作権委員会” と呼ばれる委員会が設立される。この委員 会は、議長として商務大臣の常設秘書及び内閣の指名による 12人以下の委員から構成され、そのうち6人以上の者は、著作 権者又は実演家の権利の所有者の団体の代表者及び著作権又 は実演家の権利の使用者の団体の代表者の中から指名されな ければならない。
     委員会は、秘書又は補助秘書として、何人も指名すること ができる。

    第57条

    委員の任期は2年である。現にその職にない委員は、再任さ れることができる。
     前に指名されていた委員の在任中に、委員がその任期終了 前に職を失ったとき、又は内閣がその追加委員を指名したと きは、空席を補充すべく指名された委員又は追加された委員 の任期は、前に指名されていた委員の残任期間と同一である。

    第58条

    委員は、次の場合はその職を失う。
    (1) 死亡
    (2) 辞職
    (3) 内閣からの罷免
    (4) 破産したとき
    (5) 無能力者又は準無能力者となったとき
    (6) 過失により犯した犯罪又は軽罪で懲役に服した場合を除 き、最終判決で懲役刑を宣告されたとき

    第59条

    委員会の会合の定足数は、委員総数の過半数であることを 要する。議長が欠席し、又はその職を果すことができないと きは、出席している委員は、委員会を司会する委員を選ばな ければならない。委員会の決は、過半数で決める。  各委員は、1票をもつ。票が同数のときは、司会する議長が 追加の決定票をもつ。

    第60条

    委員会は、次の義務を負う。
    (1) 本法における政令の提出のため、大臣に助言し、又はそ の相談にのること。
    (2) 第45条及び第55条に基づく長官の命令に対する不服申立 を判断すること。
    (3) 著作権のある著作物若しくは実演家の権利の使用者から 使用料を徴収すること、及び本法に基づく権利その他の利 益を保護又は保全することについて、著作者若しくは実演 家の協会若しくは組織を支援若しくは助成すること。
    (4) 大臣に命ぜられるその他の事項を検討すること。
     委員会は、委員会の委託する事項を検討し、又は履行する ための小委員会を設置する権限をもつ。第59条の規定は、小 委員会の会合に準用する。
     委員会又は小委員会は、必要なときは、証言を求めるために、 何人に対してであれ、召喚状を発する権限、又は検討のため に文書その他資料の提出を求める権限をもつ


    第5章 国際的著作権と実演家の権利
    第61条

    タイもその加盟国である著作権の保護に関する条約若しく は実演家の保護に関する条約の加盟国の国民である著作者の 著作権のある著作物及び実演家の権利、又はタイがその加盟 国である国際機関の著作権のある著作物は、本法により保護 される。
     大臣は、著作権の保護に関する条約又は実演家の権利の保 護に関する条約の加盟国の名を官報で報じる権限をもつ。


    第6章 著作権と実演家の権利に関する争訟
    第62条

    民事事件であれ刑事事件であれ、著作権又は実演家の権利 に関する争訟にあっては、争われている著作物は、本法にお いて著作権のある著作物又は実演家の権利の目的物であるこ と、及びその著作物の著作権者又はその目的物の実演家の権 利の所有者は、原告であることが推定される。但し、被告が 著作権者又は実演家の権利の所有者がいないと主張するとき、 又は原告の権利につき争うときは、この限りではない。
     その著作物又は実演家の権利の目的物にその著作権者又は 実演家の権利の所有者であると主張する者の名又は変名が付 されているときは、その名又は変名の所有者が、著作者又は 実演家であると推定される。
     著作物又は実演家の権利の目的物に名若しくは変名が付さ れていない場合、又は付されていても著作権者又は実演家の 権利の所有者であるという主張がない場合で、出版社若しく は印刷者若しくはその双方であると主張する者の名若しくは 変名があるときは、出版社がその著作物又は実演家の権利の 目的物の著作権又は実演家の権利の所有者であると推定さ れる。

    第63条

    著作権の侵害又は実演家の権利の侵害にあっては、著作権 者又は実演家の権利の所有者が侵害を知り、かつ、侵害者が 何人かを知った時から3年を経過したときは、その訴訟を提起 することができない。著作権又は実演家の権利の侵害が行わ れた日から10年を経過したとき、また同じである。

    第64条

    著作権又は実演家の権利の侵害にあっては、裁判所は、著 作権者又は実演家の権利の所有者に補償するために、侵害者 に対して、侵害の重篤さを考慮して定める損害賠償額の支払 いを命ずることができる。このとき利益の損失及び著作権又 は実演家の権利の所有者の権利の執行に要した費用を含むも のとする。

    第65条

    著作権又は実演家の権利の侵害となる行為をなし、又はそ れを行うおそれのあることの明白な証拠がある場合、著作権 者又は実演家の権利の所有者は、その行為を中止し又は抑制 することを命ずる差止命令を、裁判所に求めることができる。
     前項に定める差止命令は、第64条に定める損害賠償を求め る著作権者又は実演家の権利の所有者の権利を害しない。

    第66条

    本法における違反行為については、和解することができる。


    第7章 担当公務員
    第67条

    本法施行のために、担当公務員は刑法典に定める公務員で あり、次の権限をもつ。
    (1) 本法に定める違反行為がなされる合理的な疑いがあると き、物品を捜索し若しくは検査するために、誰のものであれ、 その建物、事務所、工場若しくは倉庫に、日の出から日没 の間、又はその場所における勤務時間内に立ち入ること、 又は輸送機器に立ち入ること。
    (2) 本法に定める違反行為がなされる合理的な疑いがあると き、争訟提起のために、違反行為に関する文書若しくは資 料を差押え又は押収すること。
    (3) 何人に対しても、証拠、会計簿、文書その他の証拠が、 本法に定める違反行為の発見若しくは違反行為を証明する ための証拠として有用であると考えられる合理的な疑いが あるとき、証言又は会計簿、文書その他の証拠の提出を命 ずること。
     何人であれ、担当公務員の業務に適切に協力しなければな らない
    第68条

    義務の遂行にあたり、担当公務員は、関係する者に対し、 身分証明書を提示しなければならない。
     その身分証明書は、大臣が定める方式によるものでなけれ ばならない。


    第8章 罰則
    第69条

    第27条、第29条、第30条又は第52条に定める著作権又は 実演家の権利を侵害する者は、2万バーツ以上20万バーツ以下 の罰金に処す。
     前項に定める違反行為が取引行為によってなされるときは、 その違反者は、6ヶ月以上4年以下の懲役若しくは10万バーツ 以上80万バーツ以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    第70条

    第31条に定める著作権侵害を犯した者は、1万バーツ以上 10万バーツ以下の罰金に処す。
     前項に係る違反行為が取引行為によってなされるときは、 違反者は、3 ヶ月以上2年以下の懲役若しくは5万バーツ以上 40万バーツ以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    第71条

    第60条第3項に定める委員会又は小委員会が求める証言又 は文書若しくは資料の提出をしない者は、3 ヶ月以下の懲役若 しくは5万バーツ以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    第72条

    担当公務員が第67条に定める義務を遂行するにあたり、担 当公務員への協力の提供を妨害し若しくは行わない者、又は 第67条に定める担当公務員の命令を無視する者は、3 ヶ月以 下の懲役若しくは5万バーツ以下の罰金に処し、又はこれを 併科する。

    第73条

    本法に定める違反行為を犯し、制裁を受けた者が、その刑 から開放された後5年以内に本法に定める違反行為を更に犯し たときは、その違反行為につき定められた刑の2倍の刑が科せ られる。

    第74条

    法人が本法に定める違反行為を犯したときは、法人の理事 又は支配人の全員は、法人の違反行為について知らず、又は その同意なしに法人に違反行為があったことを立証すること ができないときは、法人と共犯になるとみなされる。

    第75条

    本法に定める著作権又は実演家の権利の侵害を構成する物 品で、タイ国内で作成又はタイ国内に輸入され、かつ、第69 条又は第70条に定める違反者の所有に属する物品はすべて、 著作権者又は実演家の権利の所有者へ交付され、違反行為を なすのに使用された物品は、すべて没収される。

    第76条

    判決により科せられた罰金の1/2は、著作権者又は実演家の 権利の所有者に支払われる。著作権者又は実演家の権利の所 有者が受領した罰金を超える額の損害賠償を求める民事訴訟 を提起する著作権者又は実演家の権利の所有者の権利は、影 響を受けない。

    第77条

    長官は、第69条第1項及び第70条第1項に定める違反行為の罰 金を定める権限をもつ。


    経過規定
    本法の施行の日に存続する、B.E.2474の文芸的及び美術的著作物 の保護に関する法律並びにB.E.2521における著作権のある著作物は、 本法により与えられる著作権の保護を享有する。
     B.E.2474の文芸的及び美術的著作物の保護に関する法律並びに B.E.2521の著作権法の下で著作権のある著作物とはされない本法施 行前に作成された著作物は、本法により与えられる著作権の保護を 享有する。

    * 施行日:1995年3月21日
    **この翻訳は、タイ当局から提出された英語の翻訳に基づいてWIPO 国際局により作成された翻訳の日本語訳である。
    **目次は、WIPO国際局により付加されている。




    ページの上部へ戻る