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    第3章  関連権

    31条 出演者の権利
     知的財産法第29条3項b)に定められた規定における録音物・収録物に固定された実演会を直接に複製することは、当該録音物・収録物から複製物を作成することをいう。
     知的財産法第29条3項b)に定められた規定における録音物・収録物に固定された実演会を間接に複製することは、電子通信ネット、放送番組、郵政遠距離通信ネットサービス*20またはその他の類似形式のように、当該録音物・収録物を利用せずに、複製物を作成することをいう。
     知的財産法第29条3項c)に定められた固定されていない実演会を公衆に対してその他の方法で伝達することは、放送による以外のあらゆる技術手段によって、固定されていない実演会を、公衆に対して伝達することをいう。

    32条 許諾なくロヤルティ、報酬支払いを要しない関連権の利用
     営利を目的としない関連権を利用する場合は、許諾を受けることなく、ロヤルティ・報酬を支払うことない場合であって、以下の場合を含む。
     知的財産法第32条1項a)に定められた個人の学術研究を目的として、自ら複製物を1セット作成すること*21
     知的財産法第32条1項b)に定められた講義*22を目的として公表された実演会の録音物・収録物・放送番組を除き、講義を目的として自ら複製物を1セット作成すること。

    *20 郵政遠距離通信ネットサービスは、旧制度下のPost &Telecommunication会社(現在は企業グループとなっている)が行っていた電話回線を利用した通信ネットと思われる。ベトナムでは、郵便事業と電話事業等がP&Tに一元化されており、現在では電話回線事業が自由化される一方、郵便事業は独占のままという状態になっている。
    *21 細則には「法第32条1項……に定められた」と付け加えられているが、それ以外の部分は完全に同一の文言である。
    *22 講義と翻訳したが、授業でダンスを踊ってみせるという場合も実演会に含んでよいと思われるので、授業というほうが適切であったかもしれない。ただし、正式の授業に限る趣旨であろう。

    33条 合理的な引用
     知的財産法第32条1項c)に定められた情報提供を目的とする合理的な引用は、情報提供のみを目的として、引用された部分を利用することであり、以下の条件に適合しなければならない。
     引用された部分は、情報提供された課題を紹介し、評論し、または明確にすることのみを目的とする。
     実演会、録音物・収録物、放送番組から引用された部分の数量または実質からみて、引用に用いられた実演家の権利、録音物・収録物の製作者の権利、または引用のために使用された実演会、録音物・収録物、放送番組についての放送組織の権利を侵害せず、また引用された実演会、録音物・収録物、放送番組の性質または特徴に適合していること。

    34条 一時的な複製物
     知的財産法第32条1項d)に定められた放送権を有する放送組織の一時的な複製物は、時限がある固定物であって、放送組織が直近の再放送に利用するため自らの手段または設備により固定したものである。特別な場合には、当該複製物は、正式アーカイブセンターに保存される。

    35条 録音物・収録物の利用
     知的財産法第33条1項a)に定められたスポンサー、有料広告、または形式を問わず金銭を受領して放送される番組を実現するため、営利目的で公表された録音物・収録物を直接に利用することは、放送組織が衛星、デジタル環境*23を通じて伝えられることを含み、無線または有線によって放送するために、放送組織が当該録音物・収録物を利用することをいう。
     33条1項a)に定められたスポンサー、有料広告、または形式を問わず金銭を受領して放送される番組を実現するため、営利目的で公表された録音物・収録物を間接に利用することは、再送信*24、放送された番組の再放送、デジタル環境にある番組を転送することをいう。
     知的財産法第33条1項b)に定められた経営、営利活動に公表された録音物・収録物を利用することは、組織または個人が、直接にまたは間接に、レストラン、ホテル、店舗、スーパーマーケット、カラオケサービス、郵政遠距離通信サービス、デジタル環境、ならびに観光・航空・公共交通活動、またはその他の経営営利活動に利用するため、公表された録音物・収録物を利用することをいう。
     知的財産法第33条に定められた場合には、録音物・収録物の利用の際における実演家の報酬の享有は、録音物・収録物、放送番組を実現するとき、実演家と録音物・収録物の製作者の間の合意による。
     ロヤルティ、報酬またはその他の物質的権利の分割は、権利主体または著作者の権利、関連権の集中管理組織の合意による。
     著作者の権利、関連権の集中管理組織は、ロヤルティ、報酬またはその他の物質的権利の徴収と分配について、別の著作者の権利、関連権の集中管理組織に委託することができる。委託を受けた集中管理組織は、合意により一定の料金を受けることができる。

    *23 デジタル環境は、ネットワーク、デジタル放送(VTC)を含むものである。
    *24 全国番組VTCを地方局が同一時間に同一番組を放送すること。
     
    36条 放送番組の保有者
     知的財産法第第44条3項に定められた放送番組の保有者は、放送するために自らの資金と、物質的、技術的な設備を投資した放送組織である。
     放送番組を制作するため、著作物、録音物、収録物を利用するとき、放送組織は、法律の規定に基づき、著作者の権利の保有者、関連権の保有者に対して、義務を履行しなければならない。


    第4章  著作者の権利および関連権の登録証明

    37条 著作者の権利および関連権の登録
     知的財産法第50条に定められた規定に従って、著作者、著作者の権利の保有者、関連権の保有者は、直接に、または他の組織若しくは個人に委任して、文学芸術著作権局または著作者、著作者の権利の保有者、関連権の保有者が居住するか本部をおく地方の文化通信局に申請書を提出することができる。
     知的財産法第13条2項、17条に定められた著作者の権利、関連権を保護される著作物、実演会、録音物収録物を有する外国の個人、法人は、直接に、または著作者の権利若しくは関連権の集中管理組織に委任し、文学芸術著作権局または著作者、著作者の権利の保有者、関連権の保有者が居住するか本部をおく地方の文化通信局に申請書を提出することができる。

    38条 著作者の権利を登録された著作物の複製物、関連権の登録された実演会、録音物・収録物、放送番組の固定されたものの複製物
     著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書を発行したとき、文学芸術著作権局は、知的財産法第50条2項b)に定められた著作者の権利を登録された複製物、関連権を登録された対象の固定されたものの複製物を1セット*25、保管する責任を有する。
     映像、彫像、レリーフ、および建築に付ける、実物大以上、超大きい*26、扱いにくい著作物については、知的財産法第50条2項b)に定められた著作者の権利を登録する著作物の複製物は、3D写真により代用する。

    *25 1セット=1部=a copyの趣旨である。訳文によっては、「一部」=a partと理解できるものもあるが、言語は1コピーである。
    *26 「超大きい」は、どちらかというと、法律用語にふさわしくない、むしろブログ等に多用されるoversizedに相当する用語である。

    39条 著作者の権利登録証明書および関連権登録証明書の発行権限
     文学芸術著作権局は、知的財産法第51条1項・2項に定められた著作者の権利登録証明書および関連権登録証明書を発行し、再発行し、変更し、効力を取り消す権限を有する。
      a)  著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書の再発行、または変更を希望する著作者、著作者の権利の保有者、関連権の保有者は、知的財産法第50条に定められた規定に基づき、その理由を明らかにした申請書を提出する。
    b)  文学芸術著作権局は、著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書が失われた場合に、著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書を再発行し、著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書が破れ、毀損され、または著作者の権利、関連権保有者が変更する場合には、著作者の権利登録証明書または関連権登録証明書を変更する。
    c)  文学芸術著作権局は、著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書の発行を受けた者が、著作者、著作者の権利の保有者ではなく、または登録された著作物、実演会、録音物収録物、放送番組が法律の規定に基づく保護対象に属しないと確定した場合に、著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書を取り消す。
     地方の文化通信局は、著作者の権利登録証明書または関連権登録証明書についての発行申請書、再発行申請書、変更申請書を法律の規定に従って受理したとき、文学芸術著作権局に対して、権限によって審査、解決するように申請書を移送する。
     地方の文化通信局は、文学芸術著作権局の審査、解決結果を受けたとき、申請書を提出した組織または個人に対して送付する責任を有する。
     組織または個人は、著作者の権利または関連権に関する手続をするとき、法律の規定に基づき、文学芸術著作権局に手数料、料金の支払い義務を負う。
     文化通信省は、申請書、著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書のフォームを発行する。

    40条 著作者の権利登録証明書および関連権登録証明書の効力
     民法典または知的財産法典が発効する日の前に、ベトナム著作者の権利保護企業、ベトナム著作者の権利保護機関、著作権局、文学芸術著作権局によって発行された著作権にかかる証明書は、その効力を維持される。


    第5章 著作者の権利および関連権の集中管理組織、助言サービス業務組織

    41条 著作者の権利および関連権の集中管理組織
     知的財産法第56条1項に定められた規定に基づき、著作者の権利および関連権の集中管理組織が活動するとき、以下の条件を守らなければならない。
      a)  著作者の権利および関連権の集中管理組織は、著作者、著作者の権利の保有者、関連権の保有者から委任を受けなければならない。
    b)  著作者の権利および関連権の集中管理組織は、具体的な権利単独ないし複数の権利の管理について、著作者、著作者の権利の保有者、関連権保有者の代理を行う委任を受ける。
    c)  ロヤルティ、報酬、または権利単独ないし複数の権利の利用から発生した物質的権利の徴収および分配は、著作者の権利、関連権の集中管理組織の活動定款に定められる。
     著作者、著作者の権利の保有者、関連権保有者は、著作者の権利または関連権の集中管理組織にまだ委任していない場合には、文化通信省は、ロヤルティ、報酬その他の物質的権利の分割について指導する。
     複数の集中管理組織の権利に関係がある著作物、録音物・収録物、放送番組が、権利単独または複数の異なる権利が代理を行う委任の対象となる場合には、関係者が交渉し、使用許諾を与え金銭の徴収と分割を行うため、1組織を指定して、代理人として合意することが出来、その実施前に文化通信省に報告する。
     著作者の権利、関連権の集中管理組織は、文学芸術著作権局に対して、6ヶ月および1年ごとに、または臨時に、自らの活動について報告し、情報提供する制度を実施しなければならない。

    42条 著作者の権利および関連権の助言サービス業務組織
     著作者の権利および関連権の助言サービス業務組織の長と個人は、以下の条件を満たすとき、著作者の権利および関連権の助言サービス業務組織は、知的財産法第57条1項に定められた規定に基づき設立される。
      a)  完全な民事行為能力を有するベトナム国民である。
    b)  ベトナムに在住する(resident)。
    c)  法律大学の卒業証明書を有する。
     文学・芸術著作権局において、6ヶ月および1年ごとに、または臨時に、著作者の権利および関連権の助言サービス業務組織の活動について報告し、情報提供する制度を実施する。


    第6章  著作者の権利および関連権の保護

    43条 自己の権利の保護
     知的財産法第198条1項a)に定められた著作者の権利、関連権侵害を防ぐため、技術的手法を採用することは、権利主体が著作者の権利または関連権を保護するために、著作物、著作物の著作者、権利保有者、著作物の利用期間および条件についての情報、およびその情報を表すあらゆるデータ、コードまたは記号を確定する目的で、権利管理情報を著作物の原本または複製物、録音物・収録物、放送番組に付し、著作物の公衆に対する伝達とともに*27、権利管理情報を提供することをいう。また、権利管理情報を保護しまたは著作物への違法なアクセス若しくは保有権の違法な利用を妨げるため、権利主体は法律の規定に基づき、技術的手法を採用することができる*28
     権利主体は、自らの合法な権利を保護するため、知的財産法第198条1項に定められた手法を利用することができる。

    *27 伝達と権利管理情報の提供の同時性までは求めていないようである。
    *28 「著作物にアクセスする際の保有権の違法な利用」とすれば、関連権の保護対象のようなものは落ちている。

    44条 著作者の権利および関連権についての民事訴訟の訴権
     以下の権利主体は、著作者の権利、関連権に関する適法な権利を保護するため、管轄裁判所における訴権を有する。
      a)  著作者
    b)  著作者の権利または関連権の保有者
    c)  著作者または著作者の権利、関連権の保有者の適法な承継人
    d)  著作者の権利または関連権の保有者から権利を譲り受ける個人または組織
    dd)  契約に基づき、著作物を利用する個人または組織
    e)  実演家
    g)  録音物、収録物の製作者
    h)  放送組織
    i)  権利を委託される著作者の権利または関連権の集中管理組織
    k)  法律の規定に基づくその他の権利主体
     国家機関、関連のある組織は、自らの任務権限範囲において、著作者の権利、関連権の分野に属する公共の利益、国家利益を保護するために、裁判所に対して民事訴権を有する。

    45条 著作者の権利、関連権の登録に関する苦情と告発
     以下の者は、苦情、告発の申請書の提出権を有する。
      a)  著作者、著作者の権利の保有者、関連権の保有者、委任される組織または個人は、著作者の権利登録証明書、関連権の登録証明書の発行、再発行、変更、または廃止について、苦情を申し立てる権利を有する。
    b)  あらゆる第三者は、著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書の発行について、告発権を有する。
     苦情、告発の手続は、以下のように定められる。
      a)  著作者の権利、関連権の登録について、苦情を申し立てる者は、文学芸術著作権権利局に申請書を提出しなければならない。苦情申立書において、苦情を申し立てる年月日、苦情を申し立てる者の氏名、住所、苦情を申し立てる機関、組織、個人の名称または氏名および住所、苦情の内容と理由、または苦情を申し立てる者の要求を明らかに記入する。苦情申立書は、苦情を申し立てる者によって署名されなければならない。苦情申立書に、著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書、または著作者の権利登録証明書、関連権登録証明書の効力廃止決定書、発行・再発行・変更について拒絶決定書のような資料、またはその他の関連のある資料、根拠を添付する。
    b)  告発する者は、管轄機関に対して告発申立書を提出しなければならない。告発申立書において、告発する年月日、告発する者の氏名、住所、告発申し立て機関、組織、個人の名称氏名および住所、告発する内容と理由、および告発する者の要求内容を明確に記入する。告発申立書は、告発する者によって署名されなければならない。告発申立書に、関連のある資料、根拠を添付する。
     苦情・告発についての法律の規定に基づく期間内に、文学芸術著作権局、文化通信省、または管轄機関は、書面により苦情・告発を申し立てる者に対して、回答しなければならない。
     文学芸術著作権局、文化通信省または管轄機関の回答に不服である場合には、苦情・告発を申し立てる者は、法律の規定に基づき、管轄レベルに苦情・告発を申し立てる権利を有する。


    第7章  施行条項

    46条 経過規程
     知的財産法典が有効になる日以前に有効であった法規範文書に基づき保護されていた著作者の権利および関連権は、知的財産法典が有効になる日に保護期間が残存する場合には、知的財産法典の規定に基づき、保護が継続される。
     知的財産法典が有効になる日以前に管轄機関に提出した著作者の権利または関連権登録申請書は、提出した時点において有効であった法規範文書の規定に基づき、取り扱いが継続される。
     知的財産法典が有効になる日以前の著作者の権利または関連権の侵害行為または契約違反行為は、その違反行為がなされた時点において有効であった法律の規定に基づき処分される。

    47条 施行の効力
     本細則は、官報に掲載される日から15日後に施行の効力がある。本細則は、民法典にある著作者の権利についての若干の規定の施行細則について、1996年11月29日に発行された政府の76/CP号細則の規定から置き換えられる。

    48条 施行の責任
     大臣・省庁のリーダー、政府に属する機関のリーダー、プロビンスまたは中央市の人民委員会会長、これらに関連する権利義務を有する機関、組織または個人は、本細則について施行する責任を負う。
     文化通信省大臣は、本細則について施行を指導し、実施を組織する責任を負う。


      政府を代表して
      首相
       
      Nguyen Tan Dung





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