第4回 入賞事例

    これらの教育実践事例資料は、教育関係者が著作権教育を目的として、非営利で利用する場合に限り、自由にご利用いただけます。

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    絵本の中に思いを

    担当教諭 村田 直江

    受賞のことば

    旭東小学校・写真

    図画工作科の中では避けて通れないものとして、著作権の課題があります。子どもによっては社会的に価値の高いものだけに著作権があると思っていたり、著作権があるので、何が何でもコピーはいけないと考えていたりという状況がありました。

    著作権は誰でも持っている権利であるという事を理解させたうえで、本実践を行いました。

    子どもたちは、作品を制作するときの自分の思いを大切に、一生懸命に取り組みました。出来上がった作品を大切にする気持ちが大きくなり、友だちも、同じ気持ちで制作しているという事に気づいていきました。著作権を守るのは、「作者だけではなく、作者以外のみんなで守るべきだ」という意見が出るようになり、子どもたちが自他の作品を尊重し大切にしていこうとすることに気づくことが出来ました。何より嬉しく感じております。

    また、図書館アドバイザーの方を招いて、作者の作品制作の際の思いや「奥付」に示される作品管理についての話を聞き、著作権について話し合う活動もしてきました。

    今後も、子どもたちの実態に合わせた著作権教育を実施する必要性を感じています。

    この度は、誠にありがとうございました。 (教諭 村田 直江)

    教育活動の概要 題名 絵本の中に思いを
    対象学年 6年1組
    授業科目 図画工作科
    授業時間数 5時間
    実施期間 平成20年1月~2月
    レポート・教材
    ねらい

    これまで図画工作科では、自分の手を使っての作品作りが主流であった。しかし、コンピュータの導入でさらに楽しい作品作りが出来るようになり、作品に広がりが見られルようになった。簡単にコピーでき、大きさも自由に変えられ、変形も自在である。このことから、「著作権」の問題が浮かび上がってくる。学校では許可されることであっても社会的にはどうなのだろうという目を養うことが大切であるため、ゲストティーチャーや中学校との交流の中で学習を進めることで、子どもたちの「著作権」を考える態度を育てたいと考えた。

    内容

    これまで読んだ絵本の中から「お気に入り」の絵本の1シーンを選び、自分の合成写真で1冊の絵本に作り変えるという活動である。絵本をスキャナで取り込む必要があることから著作権とのかかわりを考え、その中に自分の写真が入ることで絵本の価値を下げてはいけないことも学習をすることになる。本当にスキャナでのコピーは許されるのか、どのような場合は許されるのかという事については専門家の教えを請うということにした。絵本作家がどのような心で作品を作っているのかという事を子供たちは知ることが出来、自分たちの作品の見直しに繋がった。同じようなデザインを行っている中学生との交流で著作権を話題としていった。

    成果と課題

    著作権の文面そのものを理解するということではなく、大切な作品は自分を含め誰にとっても大切なのだという目を養えたことがよかった。それは、4年生のころから情報モラルや著作権の授業を受けてきた子どもたちであるからこそ、作品を大切にすることを中心に考えることができたのだと思う。この延長線上で、デジタルの利便性と危険性をさらに理解していくことが課題である。

    児童・生徒の感想

    出来上がった自分だけの絵本であるが、奥付には「原作者」を載せることの必要性に気づいた子どもが出てきた。話し合いを持ち、全員で確認した。

    インターネット上の写真は使ってよいか?

    • 勉強で使うのならいいけれど、そうでなければいけない。
    • 学校の授業なら良い。
    • 学校の授業だからといって、何でもコピーしていいのかな?相手の気持ちを考えよう。
    • 許可が必要。

    コピーしたからといって、お金を払うのは?

    • 日本は謝って終わりにしていることが多いけど、一生懸命に作った人のことも考えよう。
    • 作品で生活している人にとってみれば謝っただけではすまない。
    • 自分で楽しむだけでなく、コピーしたものを本物より安く売って利益を得ている人はいけない。

    著作権を守るのはだれ?

    • 作った人。
    • 周りの人。
    • みんなで。
    児童・生徒の変容

    本校は、著作権教育を情報モラルの一つとして図画工作科を中心に取り組んできた。子どもたちも著作権という言葉を見聞きしている。「真似はいけない」という事だけが子どもたちに浸透している感があった。「真似ると自分の作品を作る時に、自分の作品ではなくなるから。」「人の作品の真似をしても、いいのはできないから。最悪の場合、いじめの原因になるかも知れないから。」「人の作品だから、アイデアをとってしまうから。」という理解が殆どであった。

    しかし、作品作りにおける態度に迫ることで、「なぜ、真似はいけないのか。」という事を真剣に考えるようになり、制作者・著者の制作態度にまで思いを寄せるようになった。「真似をした、しない」で言い争うこともなくなり、相手の気持ちを考えられるようになった。作品を大切にすることを学習することで、作品に興味半分のいたずら書きに近いようなものを描くことはなくなった。以来、子どもたちはこれを守っていた。

    デジタル画像を使うことで、全く同じものができることに気づき、それだけに著作権をより大事にしなければならないことを理解した。

    選考委員コメント

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