第7回 入賞事例

    これらの教育実践事例資料は、教育関係者が著作権教育を目的として、非営利で利用する場合に限り、自由にご利用いただけます。

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    「ディベートを通して考える著作権」

    担当教諭 吉田 拓也

    受賞のことば

    樟蔭高等学校

    このような賞をいただき、本当にありがとうございました。
    今回は、学習指導要領改訂で話題になっている「言語活動の充実」を意識して、ディベートに挑戦してみました。
    1番のねらいは、相手チームと討議を交え、調べた知識や経験を自らの言葉にすることでした。講義的に学ぶ著作権よりも、深く考え、個人の新たな意思や態度を生み出すきっかけにしたかったのです。
    成果としては、自ら調べた考えや意見を述べて、説得する実践力が身についたように思います。また、生徒たちのディベート中の真剣な表情、終了時の安堵感や満ち足りた様子は、通常授業では到底見られないものでした。そこで議論された考え方も、しっかりと醸成されたもので、ペーパー試験で計る能力以外に、とても有益な機会となりました。
    (教諭 吉田 拓也)

    教育の概要 題名 「ディベートを通して考える著作権」
    対象学年 高校1年生
    授業科目 教科「情報」
    授業時間数 8回(連続2時間×4回)
    実施期間 平成23年5月~6月
    レポート・教材
    ねらい  単に知識として学ぶ著作権教育では、生徒がどの程度理解しているのだろうか。身近にある著作権問題に遭遇したとき、生徒はどのような態度を示すのだろうか。ある生徒によると、画像ファイルや音楽ファイルなどを扱う違法と思われる行為は横行しているようだ。著作権法を知って行うことと、知らないで行うことには、とても大きな差があるし、いずれにしても著作権者の心を傷つける行為としては、問題意識を持たなければならない。
    今回の授業手法はディベートである。賛否の立場をはっきりさせて、相手チームと討議を交える。調べた知識や経験を自らの言葉にすることは、そのテーマをより深く考えることになり、今までと違う意思や態度を生み出す大きなきっかけになるのではないだろうか。
    内容  まずは、モデルディベートとして実際にディベートを行っているVTRをみせる。そして、その意義やねらいを生徒に伝え、全体像をはっきり把握させる。クラスの人数や授業時間を考慮したグループ数を決めたら、スタートである。テーマは、こちらで用意しておいた3つの著作権に関するものを紹介する。
    生徒に調べ学習をする準備時間や、対策を練る時間をきっちりとるようにし、情報収集には図書館やコンピュータの利用を許可し、自分たちの意見や予想される質問に対しての論理を準備させた。
    著作権をテーマにした論題は、次のとおりである。
    <1>「著作権の罰金は安すぎる。是か非か。」
    <2>「動画投稿サイトへの投稿は厳しく取り締まるべきだ。是か非か」
    <3>「本屋での撮影は認められるべきだ。是か非か」
    成果と課題  あらかじめ教師によって決められた立場に立って、意見を述べる。人前で自らが調べた内容を伝え、ジャッジするものを説得するプレゼンテーション能力も求められる。プレゼンテーション能力や説得力などは、急速に社会で求められている。賛否の立場が決まると、急いで情報収集し、さらに相手の立場に立って、切り口をイメージする。その対策にも万全を期す。
    そういった一連の活動を終えた生徒がディベートする姿は、ある意味予想外だった。ディベート中の真剣な表情、終わったときの安堵感や充足感は、通常の授業では到底見られない表情である。
    もちろん、そこでの議論で得た著作権に対する考え方は、とてもしっかりと醸成されたものであり、ペーパー試験で計る能力以外に調べた考えや意見を述べて、説得する実践力を身につけるという意味ではとても有益な課題だったと確信できる。
    児童・生徒の感想
    • 著作権が親告罪であることを初めて知ったが、親告罪のよいところ、わるいところを知ることができ、それについて考える時間ができた。
    • 法律の解釈の難しさを感じたが、国内での判例や海外での事例を知って、日本という国の著作権に対する考えが少しわかったような気がした。
    • 動画投稿サイトへの投稿について、多くの事例を知り、動画投稿サイト自体が悪いわけではない気がした。海外での利用状況などがわかり、日本の傾向がわかったような気がした。
    • 動画投稿サイトでの違法行為の数や事例を知ることができたし、動画投稿サイトの利用する側の人たちの動向の変化がよくわかった。通報ボタンをもっと大きくわかりやすくするなど、まだ工夫の余地があることがわかった。ただ、単純に取締りを厳しくするだけでは、ダメだということも感じた。
    • 本屋での撮影することを公に認めてしまえば、どれほど悪影響がでるのかが、よくわかった。ディジタル万引きが犯罪ではないこと、しかしマナーやその後の効果を考えれば、やってもよい行為とはいえないことがわかった。
    • 作家さんの気持ち、書物を扱うお仕事をしている人の気持ちを考える機会ができたし、私は、絶対に反対だという思いが再確認できた。
    選考委員コメント

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