資料
    条約、各国著作権法における関係規定等

    1 著作者の経済的権利

    (1) 複製権

    ○条約
    〔ベルヌ条約〕
    第9条(複製権)
    (1)文学的及び美術的著作物の著作者でこの条約によって保護されるものは、それらの著作物の複製(その方式及び形式のいかんを問わない。)を許諾する排他的権利を享有する。
    (2)~(3)略

    ○国際機関における検討
    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕
    INR/CE/III/2
    定義(パラ29)
    (a)~(e) 略
    (f)レコード又はレコードに固定された実演の「複製」とは、複製物を作成する手段又は複製物が作成される媒体にかかわらず、全体又は部分の複製物を作成することをいい、レコード又はレコードに固定された実演の電子的形式による蓄積を含む。その蓄積の期間を問わない。
    (g)~(k) 略

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第101条(定義)
    「複製物」とは、現在知られており又は将来開発される方法によって著作物を固定する有体物であって、それから直接に又は機械若しくは装置の助けを借りて著作物を知覚し、複製し又は伝達することができるもの(レコードを除く。)をいう。「複製物」は、著作物が最初に固定される有体物(レコードを除く。)を含む。

    第106条(著作権のある著作物の排他的権利)
    この法律に基づく著作権の所有者は、第107条から第118条までの規定に従うことを条件として、次に掲げることを行い、又は許諾する排他的権利を有する。

    (1)著作権のある著作物を複製物又はレコードに複製すること。
    (2)~(5) 略
    〔英国著作権法〕
    第17条(複製による著作権侵害)
    (1) 略
    (2)文芸、演劇、音楽又は美術の著作物に関する複製とは、著作物をいずれかの有形形式に再製することをいう。
    これは、著作物を電子的手段によりいずれかの媒体に蓄積することを含む。
    (3)美術の著作物に関して、複製は、二次元の著作物の三次元の複製物を作成すること及び三次元の著作物の二次元の複製物を作成することを含む。
    (4)映画、テレビジョン放送又は有線番組に関する複製は、映画、放送又は有線番組の部分を構成するいずれかの影像の全体又はいずれかの実質的部分の写真を作成することを含む。
    (5)発行された版の印刷配列に関する複製とは、その配列の現物通りの複製物を作成することをいう。
    (6)いずれかの種類の著作物に関する複製は、一時的であり、又は著作物の他のある使用に付随する複製物の作成を含む。

    〔ドイツ著作権法〕
    第15条(総則)
    1著作者は、その著作物を有形的に使用することにつき排他的権利を有する。その権利は、とりわけ、次に掲げるものを含む。
    一 複製権(第16条)
    二~三 略
    2~3 略

    第16条(複製権)
    1複製権とは、方法及び数量のいかんを問わず、著作物の複製物を作成する権利をいう。
    2画像ないし音の連続物(録画ないし録音物)を繰り返し再生するための装置へ著作物を写調することをも複製という。録画ないし録音物へ著作物の再生物を収録することであると、録画ないし録音物から他の録画ないし録音物へ著作物を写調することであるとを問わない。

    〔フランス知的所有権法〕
    第122条の3
    複製とは、著作物を間接的に公衆に伝達することができるすべての方法により、著作物を有形的に固定することをいう。
    2この複製は、特に印刷、図案、版画、写真、鋳造並びに図形的及び造形的美術のすべての方法、映画的又は磁気的な機械的記録によって行うことができる。
    3 略

    〔コンピュータ・プログラムの法的保護に関するECディレクティブ〕
    第4条(制限される行為)
    第5条及び第6条の規定に従い、第2条において意味する権利者の排他的権利は、次のことを行い、又は許諾する権利を含む。
    a)いかなる手段及び形式によるか、一部分又は全体であるかを問わず、コンピュータ・プログラムの恒久的又は一時的な複製。コンピュータ・プログラムをロード、ディスプレイ、ラン、トランスミット又はストアすることは、そのような複製を必要とする限り、権利者による許諾を必要とする。
    b)~c) 略

    第5条(制限される行為の例外)
    1契約に別段の定めがないときは、エラー修正を含め、適法な所有者がその所定の目的に沿って、コンピュータ・プログラムを使用するために必要な場合には、前条a)及びb)に掲げる行為は権利者による許諾を必要としない。
    2~3 略

    (2) 放送・送信に関する権利

    ○条約
    〔ベルヌ条約〕
    第11条(上映権・演奏権等)
    (1)演劇用又は楽劇用の著作物及び音楽の著作物の著作者は、次のことを許諾する排他的権利を享有する。
    (i) 略
    (ii)著作物の上演及び演奏を何らかの手段により公に伝達すること。
    (2) 略

    第11条の2(放送権等)
    (1)文学的及び美術的著作物の著作者は、次のことを許諾する排他的権利を享有する。
    (ii)~(iii) 略
    (i)著作物を放送すること又は記号、音若しくは影像を無線で送るその他の手段により著作物を公に伝達すること。
    (2)~(3) 略

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第101条(定義)
    著作物の「公の」実演又は展示とは、次のことを意味する。
    (1)公開の場所又は家族及び知人の通常の集まりの範囲を越えた相当多数の者が集まる場所において著作物を実演し又は展示すること。
    (2)著作物の実演若しくは展示をいずれかの装置若しくは方式を用いて(1)に定める場所又は公衆に送信し又は伝達すること。この場合、実演又は展示を受信することができる公衆の構成員がそれを同一の場所で受信するか離れた場所で受信するかを問わず、また、同時に受信するか異なる時に受信するかを問わない。

    実演又は展示の「送信」とは、影像又は音をそれが発信される場所から離れた場所で受信する装置又は方式によって実演又は展示を伝達することをいう。

    第106条(著作権のある著作物の排他的権利)
    この法律に基づく著作権の所有者は、第107条から第118条までの規定に従うことを条件として、次のことを行い又は許諾する排他的権利を有する。
    (1)~(3) 略
    (4)文芸、音楽、演劇及び舞踏の著作物、無言劇並びに映画その他の視聴覚著作物の場合に、著作物を公に実演すること。
    (5)文芸、音楽、演劇及び舞踏の著作物、無言劇並びに絵画、図画又は彫刻の著作物(映画その他の視聴覚著作物の個々の影像を含む。)の場合に、著作権のある著作物を公に展示すること。

    〔英国著作権法〕
    第6条(放送)
    (1)この部において、「放送」とは
     (a) 公衆の構成員により適法に受信されることができ、又は、
     (b) 公衆の構成員への提供のために送信される

    視覚的影像、音その他の情報の無線電信による送信をいい、放送することへの言及は、それに従って解釈される。
    (2) ~(5)  略

    第16条(著作物の著作権により制限される行為)
    (1)著作物の著作権者は、この章の以下の規定に従って、連合王国において次の行為を行う排他的権利を有する。
     (a)~(c) 略
     (d) 著作物を放送し、又はそれを有線番組サービスに挿入すること
     (e) 略
    (2)~(4) 略

    〔ドイツ著作権法〕
    第15条(総則)
    1 略
    2著作者は、更にその著作物を無形的に公に再生することにつき排他的権利(公の再生権)を有する。その権利は、とりわけ、次に掲げるものを含む。
     一 略
     二 放送権(第20条)
     三~四 略
    3著作物の再生は、それが多数の者のためになされるとき、公であるとされる。ただし、これらの者の範囲が限定され、かつ、これらの者が相互の関係を通して、又は開催者との関係を通して個人的に相互につながりのあるときは、この限りでない。

    第20条(放送権)
    放送権とは、著作物をラジオ放送、テレビジョン放送のごとき放送により、又は有線放送若しくは類似の技術的装置によって、公衆に提示する権利をいう。

    〔フランス知的所有権法〕
    第122条の2
    1上演・演奏とは、なんらの方法、特に次の方法により著作物を公衆に伝達することをいう。
    公の朗読、演奏、演劇的上演、公の展示、公の上映及びテレビ放送された著作物の公開の場所における伝達
    テレビ放送
    2テレビ放送とは、あらゆる性質の音、影像、記録、資料及び伝言を電気通信の方法によって放送することをいう。
    3著作物を衛星に向けて発信することは、上演・演奏とみなされる。

    ○諸外国の検討例

    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〕
    〈知的所有権作業部会報告書中間草案〉
    第IV部 暫定答申及び勧告
    1.送信による頒布
    a.頒布権(Distribution Right)
    著作権法第106条(3)は次のように解釈されるよう修正されるべきであると勧告する。

    第106条(著作権のある著作物の排他的権利)
    (3)著作権のある著作物の複製物又はレコードを販売その他の所有権の移転、又は貸与、又は送信によって公衆に頒布すること。

    著作権法第101条の「送信」の定義は次のように解釈されるよう修正されるべきであると勧告する。

    第101条(定義)
    実演又は展示の「送信」とは、影像又は音をそれが発信される場所から離れた場所で受信する装置又は方式によって実演又は展示を伝達することをいう。複製物の「送信」とは、著作物の複製物又はレコードをそれが発信される場所から離れた場所で固定される装置又は方式によって著作物の複製物又はレコードを頒布することをいう。送信が実演又は展示の伝達と複製物の頒布の両者を構成する場合、送信の主要な目的又は効果が、送信の受信者に対して著作物の複製物又はレコードを頒布することであるならば、かかる送信は複製物の頒布とみなされる。
    著作権法第602条は以下のように解釈されるよう修正されるべきであると勧告する。

    第602条(侵害となる複製物又はレコードの輸入)
    (a)合衆国外で取得された著作物の複製物又はレコードをこの法律に基づく著作権者の許諾を得ずに有体物の輸送又は送信の如何を問わず、合衆国に輸入することは、第106条に基づく複製物又はレコードを頒布する排他的権利の侵害となり、かつ、第501条に基づいて訴えることができる。

    〔オーストラリア著作権集中検討グループ報告書〕
    「変化へのハイウェイ:新しい通信環境における著作権」
    勧告1 新たな、公衆への送信権
    技術的に中立で広い範囲を基底とする、公衆への送信を許諾する権利を1968年著作権法に導入すべきである(パラ1.3)。
    この新たな送信権は、
    受信装置を使用し、又は知覚を可能とする方法若しくはその方法の組合せによって著作物を公衆に有形的に送信する行為をカバーしなければならない。
    既存の放送権を包含するとともに、有線放送の加入者への送信権を拡張し代替するものでなければならない。
    既存の公の実演権とは別個の独立した権利とすべきである。
    録音物及び放送の著作権者を含む、すべての著作権者に与えられなければならない。

    勧告2 放送権
    放送権は、新たな送信権の一部として、1968年著作権法の中に存続させるべきである。このため、放送の定義には、1992年放送サービス法の下の放送サービスを行う者により、又は、ABC若しくはSBSの国営放送サービスの一部としてなされるすべての送信を含むこととし、その他のオン・デマンド・サービス、双方向サービス、コンピュータ・ネットワーキングのような公衆への送信は除外されるべきである。放送事業の定義は、放送サービス法にいう放送サービスの定義と関連付けられるべきであり、公衆への送信権の範囲に属する著作物の限界的使用が特記されなければならない。(パラ1.3.2)

    勧告3 公衆
    「公衆」の定義は1968年著作権法に導入されるべきではなく、司法による解釈に委ねられるべきである。(パラ1.3.3)
    しかしながら、電子的又は類似の手段により商業目的で著作物を送信することが公衆への送信とみなされるようにするため、新たな規定を同法に設けるべきである。(パラ1.3.3)

    (3) 「ディスプレイ」に関する権利

    ○国際機関における検討
    〔文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約議定書についてのWIPO事務局の当初の提案〕
    BCP/CE/I/3
    公の展示の権利(パラ116)
    考えられる議定書には、文学的及び美術的著作物の著作者はその原作品又は著作物の複製物の公の展示を許諾する排他的権利を享有することを、規定すべきであることが提案される。

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第101条(定義)
    著作物の「展示」とは、著作物の複製物を直接に又はフィルム、スライド、テレビジョン影像その他の装置若しくは方式を用いて見せることをいい、映画その他の視聴覚著作物の場合には個々の影像を非連続的に見せることをいう。
    著作物の「公の」実演又は展示とは、次のことを意味する。参照

    第106条(著作権のある著作物の排他的権利)参照

    〔ドイツ著作権法〕
    第18条(展示権)
    展示権とは、未公表の美術の著作物又は未公表の写真の著作物の原作品又は複製物を公に展示する権利をいう。

    第19条(口述権、上演権及び上映権)
    1~3 略
    4上映権とは、美術の著作物、写真の著作物、映画の著作物又は学術ないしは技術に属する描写を技術的装置によつて公に提示する権利をいう。上映権は、それらの著作物の放送を公に提示する権利(第22条)を含まない。

    〔フランス知的所有権法〕
    第122条の2
    1上演・演奏とは、なんらの方法、特に次の方法により著作物を公衆に伝達することをいう。
    公の朗読、演奏、演劇的上演、公の展示、公の上映及びテレビ放送された著作物の公開の場所における伝達
    テレビ放送
    2~3 略


    2 実演家・レコード製作者の経済的権利

    (1) 放送・送信に関する権利

    ○条約
    〔ローマ条約〕
    第7条(実演家の権利)
    1この条約によって実演家に与えられる保護は、次の行為を防止するができるものでなければならない。
    (a)]実演家の承諾を得ないでその実演を放送し又は公衆に伝達すること(放送又は公衆への伝達に利用される実演が、それ自体既に放送されたものである場合及び固定物から行われるものである場合を除く。)。
    (b)~(c)略

    2 略
    第12条(レコードの二次使用)
    商業上の目的のために発行されたレコード又はその複製物が放送又は公衆への伝達に直接使用される場合には、単一の衡平な報酬が、使用者により実演家若しくはレコード製作者又はその双方に支払われる。当該報酬の配分の条件については、当事者間に合意がない場合には、国内法において定めることができる。

    第16条(留保宣言)
    1いずれの国も、この条約の締約国となった時に、この条約に定めるすべての義務を負い、及びすべての利益を享受する。ただし、締約国は、国際連合事務総長に寄託する通告により、いつでも、次のことを宣言することができる。
    (a)第12条に関し、
    (i)同条の規定を適用しないこと。
    (ii)一定の使用について同条の規定を適用しないこと。
    (iii)他の締約国の国民でないレコード製作者のレコードについて同条の規定を適用しないこと。
    (iv)他の締約国の国民であるレコード製作者のレコードについて同条に定める保護を与える場合に、その保護の範囲及び期間を、自国民によって最初に固定されたレコードについて当該他の締約国が与える保護の範囲及び期間に制限すること。ただし、自国における受益者と同様の者に対して当該他の締約国が保護を与えていないという事実をもって、保護の範囲の相違があるものと解してはならない。
    (a) 略
    2 略

    〔TRIPS協定〕
    第14条(実演家、レコード(録音物)製作者及び放送機関の保護)
    1レコードへの実演の固定に関し、実演家は、固定されていない実演の固定及びその固定の複製物が当該実演家の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を防止することができるものとする。実演家は、また、現に行っている実演について、無線による放送及び公衆への伝達が当該実演家の許諾を得ないで行われる場合には、これらの行為を防止することができるものとする。
    2~5 略
    61から3までの規定に基づいて与えられる権利に関し、加盟国は、ローマ条約が認める範囲内で、条件、制限、例外及び留保を定めることができる。ただし、1971年のベルヌ条約第18条の規定は、レコードに関する実演家及びレコード製作者の権利について準用する。

    ○国際機関における検討
    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕
    INR/CE/III/2
    定義(パラ29)
    (a)~(h)略
    (i)「放送」とは、公衆によって受信されることを目的とし、無線により影像若しくは音、又は影像若しくは音のデジタル表現を送信することをいう。衛星による影像又は音の送信も、公衆が通常利用できる装置により影像又は音を受信できる場合は、「放送」である。
    (j)実演又はレコードの「公衆への伝達」とは、実演の影像若しくは音、レコードに固定された音、又は音のデジタル表現を放送以外の方法により送信することをいい、送信が発信される場所からの距離が、送信がなければ影像又は音をその場所では知覚することができないような単一又は複数の場所において、家族及び親密な知人の通常の範囲外の者が利用できるような方法により行われる送信をいう。これらの者が、同じ場所及び同じ時に影像若しくは音を知覚できるか、又は別の場所及び(若しくは)別の時に知覚できるかを問わない。
    (k)レコードの「公の演奏」とは、家族及び親密な知人の通常の範囲外の者がいる場所、又はいることができる場所において、なんらかの装置又は方法を用い、レコードに固定された音又は音のデジタル表現を聴かせることをいう。前記の者が同じ場所及び同じ時にいるか、若しくはいることができるか、又は別の場所及び(若しくは)別の時にいるか、若しくはいることができるかを問わず、かつ聞くことができる音が、前(j)号にいう公衆への伝達を行う必要なしに知覚できる場合をいう。
    実演家のなま実演に関する財産権(パラ41)
    (a)なま実演の放送
    (b)なま実演の公衆への伝達
    (c)略
    実演家のレコードに固定された実演に関する財産権(パラ63)
    (a)~(c)略
    (e)実演の固定物の放送
    (f)実演の固定物の公衆への伝達
    (g)実演の固定物の公の演奏
    文書に、以下の定めをすることを提案する。(パラ64)
    (a)~(d)略
    (e)前項の(e)号から(g)号に定める権利を衡平な報酬を受ける権利に制限することは、文書の当事国の国内法令の定めるところによる。
    (f)前号の国内法令に与えられる権能の定めは、自然人又は法人の要求により特定される場所への特定される時間におけるオン・デマンド送信方式でのデジタル手段による実演の固定物の公衆への伝達には適用されない。
    (g)前項の(e)号から(g)号に定める権利を集中的管理機構によって管理することを要求し、並びに管理の経費及び関係の実演家又は実演家を代理する団体が承認した他の目的のための経費を控除した後に、関係実演家に分配を行うことを要求することについては、文書の当事国の国内法令の定めるところによる。
    (h)略

    レコード製作者のレコードに関する財産権(パラ67)
    (a)~(d)略
    (e)レコードの放送
    (f)レコードの公衆への伝達
    (g)レコードの公の演奏
    文書に、以下の定めをすることを提案する。(パラ68)
    (a)~(d)略
    (e)前項の(e)号から(g)号に定める権利を衡平な報酬を受ける権利に制限することは、文書の当事国の国内法令の定めるところによる。
    (f)前号の国内法令に与えられる権能の定めは、自然人又は法人の要求により特定される場所への特定される時間におけるオン・デマンド送信方式でのデジタル手段によるレコードの公衆への伝達には適用されない。
    (g)前項の(e)号から(g)号に定める権利を集中的管理機構によって管理することを要求し、並びに管理の経費及び関係のレコード製作者及びレコード製作者を代理する団体が承認した他の目的のための経費を控除した後に、関係レコード製作者に分配を行うことを要求することについては、文書の当事国の国内法令の定めるところによる。
    (h)略

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第101条(定義)参照

    第106条(著作権のある著作物の排他的権利)
    この法律に基づく著作権の所有者は、第107条から第118条までの規定に従うことを条件として、次に掲げることを行い、又は許諾する排他的権利を有する。
    (1)~(3)略
    (4)文芸、音楽、演劇及び舞踏の著作物、無言劇並びに映画その他の視聴覚著作物の場合には、著作権のある著作物を公に実演すること。
    (5) 略

    第114条(録音物の排他的権利の範囲)
    (a)録音物の著作権者の排他的権利は、第106条(1)、(2)及び(3)に明記する権利に限定され、かつ、第106条(4)の規定に基づく実演の権利を含まない。
    (b)~(d) 略

    〔英国著作権法〕
    第1条(著作権及び著作権のある著作物)
    (1) 著作権は、この部の規定に従って次の種類の著作物に存続する財産権である。
     (a) 略
     (b) 録音物、映画、放送又は有線番組
     (c) 略
    (2)~(3) 略

    第20条(放送又は有線番組サービスへの挿入による侵害)
    著作物の放送又は有線番組サービスへの挿入は、次のものの著作権により制限される行為である。
     (a) 略
     (b) 録音物又は映画
     (c) 略

    第182条(実演の録音・録画又は生の送信について要求される同意)
    (1) 実演家の権利は、その同意を得ずに次のことを行う者により侵害される。
    (a) 略
    (b)資格ある実演の全体又はいずれかの実質的部分を生で放送し、又は生で有線番組サービスに挿入すること。
    (2) 略

    〔ドイツ著作権法〕
    第76条(放送)
    1実演家の実演は、その同意を得た場合に限り、放送することができる。
    2適法に録画ないし録音物に複製されている実演家の実演は、録画ないし録音物が発行されているときは、実演家の同意を得ることなく、放送することができる。ただし、これについては、実演家に対して相当なる報酬が支払われなければならない。

    第86条(関与の請求権)
    実演家の実演が収録されている発行録音物が、実演を公に再生するために利用されるときは、録音物の製作者は、実演家に対して、実演家が第76条第2項及び第77条に基づき収得する報酬について、相当なる関与を目的とする請求権を有する。

    〔フランス知的所有権法〕
    第212条の3
    1実演家の実演の固定、複製及び公衆への伝達、並びにその実演の音及び影像が同時に固定された場合におけるその音及び影像のすべての個別使用は、実演家の文書による許諾を条件とする。
    2 略

    第213条の1
    1レコード製作者とは、音の連続の最初の固定について発意と責任をとる自然人又は法人をいう。
    2第214条の1にいうレコード以外のレコードのすべての複製又は販売、交換若しくは貸与による公衆への提供又は公衆への伝達は、レコード製作者の事前の許諾を必要とする。

    第214条の1
    1レコードが商業目的で発行されたときは、実演家及び製作者は、次のことに反対することができない。
    興業において使用されていないレコードを公開の場所において直接伝達すること。
    レコードをラジオ放送すること及びこのラジオ放送の全体を有線により同時に送信すること。
    2商業目的で発行されたレコードのこれらの使用は、レコードの固定の場所のいかんを問わず、実演家及び製作者に報酬請求権を与える。
    3~5 略

    〔貸与権、公貸権及び著作隣接権に関するECディレクティブ〕
    第8条 公衆への放送及び伝達
    1加盟国は、実演自体がすでに放送の実演又は固定物から作成された場所を除き、実演家について、その実演の公衆への無線による放送、及び伝達を許諾し、又は禁止する排他的権利を定める。
    2加盟国は、個々の(single)正当な報酬が利用者により確実に支払われるようにするため(商業目的で発行されたレコード又はそのレコードの複製物が無線による放送又は公衆へのすべての伝達のために使用されたときには、この報酬が、関係する実演家とレコード製作者との間で確実に分配されるようにするため)、権利を定める。加盟国は、実演家とレコード製作者との間に合意がない場合の両者の間でこの報酬を分配するための条件を定めることができる。
    3加盟国は、放送事業者について、無線による放送の再放送、並びに入場料を支払った公衆がいる場所における放送の公衆への伝達を許諾し、禁止する排他的権利を定める。

    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〕
    〈知的所有権作業部会報告書中間草案〉
    第IV部 暫定答申及び勧告
    4.公の実演権(Public Performance Right)
    録音物の公の実演に関し、現行法上権利が認められていないことは見直されるべきであり、現在議会に提案されている、デジタル送信による録音物の実演について許諾権を付与するとの改正案(H.R.2576,S.1421)を政府が支持していることに留意する。

    (2) 上演・演奏に関する権利

    ○条約
    〔ローマ条約〕参照
    〔TRIPS協定〕参照

    ○国際機関における検討
    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕参照

    ○諸外国の立法例
    〔英国著作権法〕
    第19条(著作物の公の実演、上映又は演奏による侵害)
    (1)~(2) 略
    (3)著作物の公の演奏又は上映は、録音物、映画、放送又は有線番組の著作権により制限される行為である。
    (4) 略

    〔ドイツ著作権法〕
    第77条(公の再生)
    実演家の実演が、録画ないし録音物により若しくはその実演の放送によって、公に知覚できるようにされるときは、これについて実演家に対して相当なる報酬が支払われなければならない。
    第86条(関与の請求権)参照

    〔貸与権、公貸権及び著作隣接権に関するECディレクティブ〕参照

    (3) 翻案権

    ○国際機関における検討
    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕
    INR/CE/III/2
    実演家のレコードに固定された実演に関する財産権(パラ63)
    (a)~(c) 略
    (d) 実演の固定物の翻案
    (e)~(g) 略
    レコード製作者のレコードに関する財産権(パラ67)
    (a)~(c) 略
    (d) レコードの翻案
    (e)~(g) 略

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第101条(定義)
    「二次的著作物」とは、翻訳、編曲、脚色、小説化、映画化、録音、美術複製、抄録、要約その他著作物を改作し、変形し、又は翻案することができる形式等既存の一又は二以上の著作物の基礎として作成される著作物をいう。「二次的著作物」は、改訂、注釈、改良その他の変形から成る著作物であって、全体として独創的な著作物を構成するものを含む。

    第106条(著作権のある著作物の排他的権利)
    この法律に基づく著作権の所有者は、第107条から第118条までの規定に従うことを条件として、次に掲げることを行い、又は許諾する排他的権利を有する。
    (1) 略
    (2) 著作権のある著作物を基礎として二次的著作物を作成すること。
    (3)~(5) 略

    第114条(録音物の排他的権利の範囲)
    (a) 略
    (b)第106条(2)の規定に基づく録音物の著作権者の排他的権利は、録音物に固定されている実際の音が再整理され、再調整され、又は順序若しくは質が変更されている二次的著作物を作成する権利に限定される。
    (c)~(d) 略


    3 人格権

    (1) 著作者人格権(同一性保持権)

    ○条約
    〔ベルヌ条約〕
    第6条の2(著作者人格権)
    (1)著作者は、その財産的権利とは別個に、この権利が移転された後においても、著作物の創作者があることを主張する権利及び著作物の変更、切除その他の改変又は著作物に対するその他の侵害で自己の名誉又は声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利を保有する。
    (2)(1)の規定に基づいて著作者に認められる権利は、著作者の死後においても、少なくとも財産的権利が消滅するまで存続し、保護が要求される国の法令により資格を与えられる人又は団体によって行使される。もっとも、この改正条約の批准又はこれへの加入の時に効力を有する法令において、(1)の規定に基づいて認められる権利のすべてについて著作者の死後における保護を確保することを定めていない国は、それらの権利のうち一部の権利が著作者の死後は存続しないことを定める権能を有する。
    (3) 略

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第101条(定義)
    「視覚芸術の著作物」とは、次に掲げるものをいう。
    (1)絵画、素描、版画又は彫刻であって、一部のみが存在するもの、著作者により署名され、かつ、通し番号を付された200部以下の限定版として存在するもの、又は彫刻の場合には、著作者により通し番号を付され、かつ、著作者の署名その他著作者を明らかにする記号を有する200以下の多数の鋳造され、彫刻され、若しくは組み立てられたもの。
    (2)もっぱら展示を目的として製作されたスチール写真影像であって、著作者により署名された一部のみが存在し、又は著作者により署名され、かつ、通し番号を付された200部以下の限定版として存在するもの。
    ただし、「視覚芸術の著作物」は次に掲げるものを含まない。
    (A)(i)ポスター、地図、地球儀、海図、技術図面、図表、ひな形、応用美術、映画その他の視聴覚著作物、書籍、雑誌、新聞、定期刊行物、データベース、電子情報サービス、電子出版又は類似の出版物
    (ii)広告宣伝品目、又は広告、販売促進、記述、カバー若しくは包装用の材料又は容器
    (iii)(i)又は(ii)に掲げる品目の部分
    (B)職務上の著作物
    (C)の法律に基づく著作権保護を受けない著作物

    第106条のA(著作者の地位の主張及び同一性保持に対するある種の著作者の権利)
    (a) 著作者の地位の主張及び同一性保持の権利
    第107条の規定に従うことを条件とし、かつ、第106条に規定する排他的権利とは別個に、視覚芸術の著作物の著作者は、
     (1)~(2) 略
    (3)第113条(d)項に規定する制限に従うことを条件として、次のことを行う権利を有する。
    (A)自分の名誉又は声望を害するおそれのある著作物のいずれかの故意の改変、切除その他の変更を阻止すること。その著作物のいずれかの故意の改変、切除その他の変更は、その権利の侵害となる。
    (B)名声が認められている著作物のいずれかの破壊を阻止すること。その著作物のいずれかの故意の又は重大な過失による破壊は、その権利の侵害となる。
    (b) 略
    (c) 例外
    (1)時の経過又は材料の固有の性質の結果である視覚芸術の著作物の変更は、(a)項(3)(A)にいう、改変、切除その他の変更ではない。
     (2)著作物の保存又は公開(照明及び配置を含む。)の結果である視覚芸術の著作物の変更は、その変更が重大な過失に起因しない限り、(a)項(3)にいう破壊、改変、切除その他の変更ではない。
    (3)(a)項(1)及び(2)に定める権利は、第101条の「視覚芸術の著作物」の定義の(A)又は(B)に掲げるいずれかの品目の中、その上又はそれに関連してある著作物を複製し、描写し、記述し、その他使用することには適用されず、また、著作物のこのようないずれの複製、描写、記述その他の使用も、(a)項(3)にいう破壊、改変、切除その他の変更ではない。
    (d) 権利の存続期間
     (1)1990年の視覚芸術家の権利法第610条(a)項に定める発効日(1991.6.1)以後に創作される視覚芸術の著作物に関して、(a)項により付与される権利は、著作者の生存間からなる期間の間存続する。
     (2)1990年の視覚芸術家の権利法第610条(a)項に定める発効日前に創作された視覚芸術の著作物であって、その権原がそのような発効日現在著作者から移転されていないものに関して、(a)項の規定により付与される権利は、第106条により付与される権利と同一期間の間存続し、かつ、それらの権利と同時に消滅する。
     (3)~(4) 略
    (e) 移転及び放棄
     (1)(a)項により付与される権利は、移転することができない。ただし、これらの権利は、著作者が署名した証書において著作者が放棄に明示的に同意する場合には、放棄することができる。そのような証書は、放棄が適用される著作物及びその著作物の使用を明記し、かつ、放棄はそのように明記された著作物及び使用にのみ適用される。二人以上の著作者により作成される共同著作物の場合には、一人のそのような著作者が行うこの規定に基づく権利の放棄は、そのような権利をそのようなすべての著作者について放棄する。
     (2) 略

    〔英国著作権法〕
    第80条(著作物を傷つける取扱いに反対する権利)
    (1)著作権のある文芸、演劇、音楽又は美術の著作物の著作者及び著作権のある映画の監督は、この条の定める状況において、その著作物を傷つける取扱いに従わせない権利を有する。
    (2)この条の目的上、
    (a)著作物の「取扱い」とは、次のもの以外の、著作物へのいずれかの追加、それからの削除、その改変又はその翻案をいう。
    (i)文芸又は演劇の著作物の翻訳
    (ii)キー又は音域の単なる変更を伴う音楽の著作物の編曲又は編作
    (b)著作物の取扱いが、著作物の歪曲又は切除となり、その他著作者又は監督の名誉声望を害するときは、その取扱いは、傷つける取扱いである。
    (3)~(8) 略

    第81条(権利の例外)
    (1)第80条(著作物を傷つける取扱いに反対する権利)により与えられる権利は、次の例外に従う。
    (2)この権利は、コンピュータ・プログラム又はいずれのコンピュータ生成著作物にも適用されない。
    (3)この権利は、時事の事件の報道を目的として作成されるいずれの著作物に関しても適用されない。
    (4)この権利は、次のものにおける発行を目的として作成され、又はそのような発行を目的として著作者の同意を得て提供された文芸、演劇、音楽又は美術の著作物の次のものにおける発行に関しては適用されない。
    (a) 新聞、雑誌又は類似の定期刊行物
    (b) 百科事典、辞書、年鑑その他の参照用の集合著作物
    この権利は、また、発行された版のいずれの修正もなしにそのような著作物をいずれかの場所で行われるその後のいずれの利用に関しても適用されない。
    (5) 略

    第86条(権利の存続期間)
    (1)第77条、第80条及び第85条により与えられる権利は、著作物に著作権が存続する限り、引き続き存続する。
    (2) 略

    第87条(同意及び権利の放棄)
    (1) 略
    (2)これらの権利のいずれも、権利を放棄する者が署名した文書による証書により放棄することができる。
    (3) 放棄は、
    (a)特定の著作物、特定の種類の著作物又は著作物一般に関することができ、また、現存の又は将来の著作物に関係することができ、また、
    (b)条件付き又は無条件とすることができ、また、取消しを受けることを表明することができる。
    また、放棄が関係する著作物の著作権者又は将来の著作権者のために行われるときは、放棄は、反対の意図が表明されない限り、その者の許諾を得た者及び権利承継人に及ぶことが推定される。
    (4) 略

    〔ドイツ著作権法〕
    第14条(著作物の改変)
    著作者は、その著作物の改変その他の侵害で、著作物に関する自らの正当なる精神的又は個人的利益を危うくするものを禁止する権利を有する。

    第62条(変更の禁止)
    1 略
    2利用の目的上必要な限り、著作物の翻訳、及び他の音調若しくは音域への移行又は転用にすぎない著作物の変更は、許される。
    3美術の著作物及び写真の著作物においては、著作物を他の大きさに移行すること、及び複製のために用いられる方法により自ら生ずる変更は、許される。
    4教会、学校又は授業の用に供するための編集物(第46条)においては、第1項から第3項までの規定によつて許される変更の他に、教会、学校又は授業の用に供するために必要な言語の著作物の変更が、許される。ただし、この変更には、著作者の同意、その死後にあつては、その権利承継人(第30条)が著作者の近親者(第60条第3項)であるとき、又は著作者の終意処分に基づいて著作権を取得したときは、その者の同意を要する。著作者又は権利承継人が、意図された変更につき通知を受けてから一ヶ月内に反対の意思を表示せず、かつ、変更の通知に際してその法的効果に言及されているときは、同意が与えられたものとみなす。

    〔フランス知的所有権法〕
    第121条の1
    1著作者は、その名、その資格及びその著作物の尊重を要求する権利を享有する。
    2この権利は、著作者の一身に専属する。
    3この権利は、永久的で、譲渡できず、かつ、時効にかからない。
    4この権利は、死亡により、著作者の相続人に移転することができる。
    5この権利の行使は、遺贈条項によって第三者に授与することができる。

    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〕
    〈知的所有権作業部会報告書中間草案〉
    第IV部 暫定答申及び勧告
    7.国際的論点
    デジタル通信の世界で人格権の及ぶ程度と範囲とに関して懸念が生じている。既存の著作物を改変したり再構成する能力ゆえに、従前にも増して人格権の重要性が高まっていると考える者もいれば、デジタルの世界にあっては人格権が再考されるべきであるという見解を採る者もいる。我々は、かかる見解に賛成するものである。今や、デジタル化された情報に係る人格権の及ぶ範囲、程度、そしてその譲渡可能性とについて、新たに考えられるべきなのである。

    (2) 実演家の人格権

    ○国際機関における検討
    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕
    INR/CE/III/2
    実演家の人格権(パラ35)
    (a)実演家は自己の実演につき実演をした者であることを主張する権利。この権利には、実行可能である限り、その氏名を自己の実演の固定物の複製物に、又は自己の実演若しくはその固定物の公の利用に関連して、通例の方法により表示する権利を含む。
    (b)自己の名誉又は声望に重大な損害を与えるような自己の実演の重大な歪曲、切除その他の改変、又はその他の侵害行為に対して異議を申し立てる権利。
    前項により付与される権利は、実演家の死後は、少なくとも実演家の財産権が消滅するまでは存続し、また実演家の死後は、保護が要求される国の法令によって権限を与えられる自然人又は機関によって行使されることを定める。ただし、著作者死後の著作者人格権の保護を定めていない国は、実演家の死後は前項に定める権利は消滅することを定めることができる。(パラ36)

    ○諸外国の立法例
    〔ドイツ著作権法〕
    第83条(改変に対する保護)
    1実演家は、その実演の改変その他の侵害で、実演家としての名誉又は声望を害するおそれのあるものを、禁止する権利を有する。
    2 略
    3この権利は、実演家の死亡とともに消滅する。ただし、実演家がその期間の経過する前に死亡したときは、実演後25年をもつてはじめて消滅する。その期間は、第69条によつて計算する。実演家の死亡後にあつては、この権利は、その近親者(第60条第3項)に帰属する。

    〔フランス知的所有権法〕
    第212条の2
    1実演家は、その名、その資格及びその実演の尊重を要求する権利を有する。
    2譲渡不能で時効にかからないこの権利は、実演家の一身に専属する。
    3この権利は、故人の実演及び名声の保護のために、相続人に移転することができる。


    4 著作者等の権利の制限

    (1) 私的使用のための複製

    ○条約
    〔ベルヌ条約〕
    第9条(複製権)
    (1)参照
    (2)特別の場合について(1)の著作物の複製を認める権能は、同盟国の立法に留保される。ただし、そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする。
    (3) 略

    〔ローマ条約〕
    第15条(保護の例外)
    1締約国は、国内法令により、次の行為については、この条約が保障する保護の例外を定めることができる。
    (a) 私的使用
    (b)~(d) 略
    2 略

    ○国際機関における検討
    〔文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約議定書についてのWIPO事務局の当初の提案〕
    BCP/CE/I/2
    コンピュータ・プログラム(パラ38)
    (a)その著作権者の許諾なしには、以下の(b)及び(c)に従いつつ、私的利用目的でのコンピュータ・プログラムの複製は認められないこと。
    (b)コンピュータ・プログラムの著作権者の許諾なしに、コンピュータ・プログラムの複製物の適法な所有者がこのようなプログラムの複製物又は翻案物を一個作成することを認めることは、その複製物又は翻案物が以下のようなものである限り、国内法に委ねられる問題であること。
    (i)プログラムがある機械のために適法に獲得されたものである場合に、当該プログラムをその機械に接続して使うために必要不可欠なものであり、その機械の使用のための、かつ、その使用の範囲内のものであること;
    (ii)記録保存のための、及び、必要である場合(プログラムのオリジナル・コピーが紛失し、壊れ、又は使用不可能となった場合)に、適法に得られた複製物をもとに戻すためのものであること;但し、このような複製物又は翻案物は上記に述べた以外の目的で使用することはできず、また、当該コンピュータ・プログラムの複製物や翻案物の継続的な所有が適法に終了した場合に廃棄されなければならないこと;
    (c)また、コンピュータ・プログラムの著作権者の許諾なしに、コンピュータ・プログラムの複製物の適法な所有者がそのプログラムをそのコーディング(coding)及び構造(structure)が調査できるような形に逆コンパイルすることを認めることも、以下に従う限り、国内法に委ねられる問題であること;
    (i)独立して創作する他のプログラムと当該原プログラムとの互換性を達成するために必要な情報が、他の情報源から容易に得ることができず、互換性を達成するために必要な関連する独自プログラムの部分だけに関するものである場合に限って、このような逆コンパイルが認められるべきこと;
    (ii)このような逆コンパイルを通じて得られた情報が独立して創作されるコンピュータ・プログラムの互換性を達成するためだけに利用しうるものであり、その表現においてこの独自プログラムと実質的に類似するようなプログラムを作成するために、又は、その他のいかなる著作権を侵害する行為のためにも使用できないこと。
    BCP/CE/I/3
    装置による個人的使用のための私的複製(パラ102)
    (a)書籍(全部分)、コンピュータ・プログラム、電子的データベース又は楽譜の機械的電子的装置による私的複製、及びすべての著作物及び録音物の私的な連続的デジタル複製(private serial digital reproduction)は、その複製が個人的目的であっても、関係する著作物の著作者又は録音製作者の許諾なしには許可されない。
    (b)連続的デジタル複製以外の視聴覚著作物、録音物に収録された著作物及び録音物自体の個人的使用のための私的複製、並びに個人的使用のための私的複写複製(その複写複製が(a)により保護される場合を除く)は、著作者の許諾なしに許可されるものとする。その条件は、複製により関係する著作者及び録音物製作者の正当な利益に対し引き起こされる侵害が、個人使用のための私的複製に通常に使用される複製機器に又はそのような複製に通常に使われるブランクな機材に又はその両方にかかる支払という方法により、除去される又は少なくとも適当なレベルにまで縮小されるというものである。
    (c)(b)に述べた支払はそのような機器又は機材(輸出されるものは除く)を製造する人々又はそのような機器又は機材をその国に輸入する人々(個人使用のための個人による輸入を除く)によりなされる。

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第107条(排他的権利の制限-公正使用)
    第106条及び第106条のAの規定にかかわらず、批評、解説、ニュース報道、授業(教室における使用のための多数の複製を含む。)、研究、調査等を目的とする著作権のある著作物の公正使用(複製物又はレコードへの複製その他第106条に明記する手段による公正使用を含む。)は、著作権侵害とならない。特定の場合に著作物の使用が公正使用となるかどうかを判定する場合には、次に掲げる要素を考慮する。
    (1)使用の目的及び性格(使用が商業性を有するかどうか又は非営利の教育を目的とするかどうかの別を含む。)
    (2)著作権のある著作物の性質
    (3)著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量及び実質性
    (4)著作権のある著作物の潜在的市場又は価格に対する使用の影響
    前記のすべての要素を考慮して公正使用の事実認定が行われる場合には、著作物が未発行という事実自体は、そのような事実認定を妨げない。

    〔英国著作権法〕
    第29条(研究及び私的学習)
    (1)研究又は私的学習を目的とする文芸、演劇、音楽又は美術の著作物の公正利用は、著作物の、又は発行された版の場合には印刷配列の、いずれの著作権をも侵害しない。
    (2)第1項にいう目的のための発行された版の印刷配列の公正利用は、その配列のいずれの著作権をも侵害しない。
    (3)研究者又は学習者自身以外の者による複製は、次の場合に該当するときは、公正利用ではない。
    (a)司書又は司書のために行動する者の場合に、第40条に基づく規則が第38条又は第39条(論文又は発行された著作物の部分-同一資料の多数の複製物に対する制限)に基づいて行うことを許さないいずれかの行為をその者が行うとき。
    (b)他のいずれかの場合に、複製を行う者が、実質的に同一の時に、かつ、実質的に同一の目的のために2人以上の者に提供される実質的に同一の資料の複製物となることを知り、又はそう信じる理由を有するとき。

    〔ドイツ著作権法〕
    第53条(私的その他自己のための複製)
    1~3 略
    4データ処理のためのプログラム(第2条第1項第1号)の複製又はその本質的な部分の複製も、つねに権利者の同意を得た場合に限り許される。
    5~6 略

    〔フランス知的所有権法〕
    第122条の5
    著作物が公表されたときは、著作者は、次に掲げる行為を禁止することができない。

    一 略
    三~四 略

    第122条の6
    第122条の5第2号の規定にかかわらず、著作物がソフトウェアに関するものである場合には、使用者によるバックアップコピーの作成又はソフトウェアの使用を除き、著作者又はその承継人による明示の許諾を得ないいかなる複製も違法とする。
    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〕
    知的所有権作業部会報告書中間草案〉
    第IV部 暫定答申及び勧告
    5.公正使用(Fair Use)
    公共図書館及び学校における著作物の公正使用に関するガイドラインを作成するため、権利者とユーザーの両方が参加する会議(conference)を開催することとする。

    (2) 図書館等における複製

    ○条約
    〔ベルヌ条約〕参照

    ○国際機関における検討
    〔文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約議定書についての
     WIPO事務局の当初の提案〕
    BCP/CE/I/3
    図書館、公文書保管所及び教育施設における複写複製(パラ88)

    (a)[図書館及び記録保存所:置き換えのための複製物]
    国内法は、複製が図書館又は記録保存所によりなされる場合、複写複製が著作者の許諾を必要としないと規定できる。ただし、その図書館及び記録保存所は、その活動により直接又は間接に商業的利益を得ないものでなければならない。また、その複製の目的は、紛失・毀損した複製物又は当該図書館・記録保存所の若しくは他の図書館・記録保存所で永久的収集に使用できなくなった複製物を置き換えることでなければならない。さらに、合理的な条件で当該著作物を置き換えた複製物を入手することが不可能である場合でなければならない。

    ただし、以下のことを条件とする。この場合の著作物には、コンピュータ・プログラム、データ・ベース、楽譜、(練習問題集のような)1回使用の出版物その他のその複写複製によりその通常の利用を妨げられる若しくは不当に著作者の利益が害される性質の著作物は含まれない。さらに、複製行為が繰り返される場合には他の複製と切り離され、関連のない独立して行われるものでなければならない。

    (b)[図書館及び記録保存所:第3者への複製]
    国内法は、複製が図書館又は記録保存所によりなされる場合、複写複製が著作者の許諾を必要としないと規定できる。ただし、その図書館及び記録保存所は、その活動により直接又は間接に商業的利益を得ないものでなければならない。さらに、以下の条件を満たすものでなければならない。
    また、
    複製されるものが、挿絵を伴った若しくは伴わない、(コンピュータ・プログラム又は楽譜以外の)著作物の編集物若しくは定期刊行物のある号の中に公表されている記事その他の事項、又は文章表現の短い抜粋、であること
    複製の目的は自然人の要求を満たすためである
    図書館又は記録保存所は、複製が研究、学問又は私的研究の目的のためだけに使用されることを確信すること
    ただし、複製行為が繰り返される場合には、他の複製と切り離され、関連なく独立して行われるものでなければならない。さらに、このような複製を行うことを可能とする集中的許諾(すなわち、集中管理機構によって図書館又は記録保存所が了解するように又は認識できるように行われる当該目的のための許諾)を利用することができないことが条件となる。
    (c) 略

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第108条(排他的権利の制限─図書館及び記録保存所による複製)
    (a)第106条の規定にかかわらず、図書館若しくは記録保存所又は職務の範囲内で行動するその職員が、この条に明記する条件に基づいて、著作物の複製物1部若しくはレコード1枚のみを複製し、又はそのような複製物若しくはレコードを頒布することは、著作権侵害とはならない。ただし、次に掲げることを条件とする。
    (1)複製又は頒布が、直接又は間接の商業的利益を目的としないで行われること。
    (2)図書館若しくは記録保存所の収集物が、
    (i)公衆に開放されているか、又は
    (ii)図書館若しくは記録保存所又はそれが属する施設と特に関係がある研究者のみならず、専門分野において研究を行う他のものの利用にも供されること、及び
    (3)著作物の複製又は頒布が、著作権表示を伴うこと。
    (b)~(h) 略

    〔英国著作権法〕
    第37条(図書館及び記録保存所─導入規定) 略

    第38条(司書による複製─定期刊行物中の記事)
    (1)所定の図書館の司書は、所定の条件が満たされる時は、本文、本文に伴ういずれかの挿絵又は印刷配列のいずれかの著作権を侵害することなく、定期刊行物中の記事の複製物を作成し、及び提供することができる。
    (2)所定の条件は、次のことを含む。
    (a)研究又は私的学習の目的のために複製物を必要とし、かつ、他のいずれの目的にもそれらを使用しないことを司書に納得させる者のみに複製物が提供されること。
    (b)いずれの者も、同一記事の二複製物以上又は定期刊行物の同一号に含まれる二記事以上を提供されないこと。
    (c)複製物を提供される者が、それらの作成に要する費用(図書館の一般経費への分担額を含む。)を下回らない金額をそれらについて支払うことを要求されること。
    第39条(司書による複製─発行された著作物の部分)略
    第40条(同一資料の多数の複製物の作成に対する制限)略
    第41条(司書による複製─他の図書館への複製物の提供)略
    第42条(司書又は記録保管人による複製─著作物の代替複製物)略
    第43条(司書又は記録保管人による複製─ある種の未発行の著作物)略
    第44条(輸出の条件として作成を要求される著作物の複製物)略

    〔ドイツ著作権法〕
    第53条(私的その他自己使用のための複製)
    1 略
    2次の目的のために、著作物の個々の複製物を作成し又は作成させることは許される。
    自らの学術的使用のため。ただし、複製がこの目的上必要であり、かつ、その範囲に限る。
    二~三 略
    3~6 略

    第54条(報酬義務)
    1 略
    2著作物の性質上、第53条第1項から第3項までにより、作品の複写により、又は、類似の効果を有する方法により、複製されることが予測できる場合は、著作物の著作者は、かような複製の用に供される機器の製造者に対して、機器の販売その他の取引によって生じた、かような複製をなす可能性につき相当なる報酬の支払を目的とした請求権を有する。製造者とともに機器をこの法律の施行地域内に営利を目的として輸入しもしくは再輸入する者は、連帯債務者として責を負う。この種の機器が、学校、大学並びに職業教育その他専門教育・再教育の施設(教育施設)、研究施設、公の図書館において、又は、複写物作成用の機器を有償にて備える施設において、操作される場合は、著作者は、機器の操作者に対しても、相当なる報酬の支払を目的とした請求権を有する。操作者が一括して支払う義務を負う報酬の額は、諸事情から、特に設置の場所及び通常の使用から推定された機器利用の方法及び範囲に従って算定される。
    4~6 略

    〔フランス知的所有権法〕
    第122条の10
    作品の発行によって、複写による複製権は、第3部第2編に定められ、文化大臣がその目的のために承認した団体に譲渡され移行されるものとする。承認された(複数の)団体のみが、このように譲渡された権利を管理するため、使用者とのいかなる取決めをも締結することができる。ただし、販売、貸与、宣伝、若しくはプロモーションの目的で行われるコピーへの許諾条項については、著作者、若しくは権利者からの同意があることを条件とする。著作者、若しくは権利者から、作品の公表日に指示がない限り、承認された団体の一つがこの権利の被譲渡団体とみなされる。

    複写は紙、若しくは写真技術と同等に扱われる媒体にコピーする形態、若しくは直接読むことができる効果を有する形態で行われる複製であると解釈される。

    第一節の規定は、著作者、若しくは権利者が販売、貸与、広告若しくはプロモーション目的でコピーを行うことのできる権利への妨げとはならない。

    いかなる契約の定めがあったとしても、本条の規定はその発行日にかかわりなく、いかなる保護作品に対しても適用されるものとする。

    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〕
    知的所有権作業部会報告書中間草案

    (3) 非営利・無料の貸与

    ○条約
    〔TRIPS協定〕
    第11条(貸与権)
    少なくともコンピュータ・プログラム及び映画の著作物については、加盟国は、著作者及びその承継人に対し、これらの著作物の原作品又は複製物を公衆に商業的に貸与することを許諾し又は禁止する権利を与える。映画の著作物については、加盟国は、その貸与が自国において著作者及びその承継人に与えられる排他的複製権を著しく侵害するような当該著作物の広範な複製をもたらすものではない場合には、この権利を与える義務を免除される。コンピュータ・プログラムについては、この権利を与える義務は、当該コンピュータ・プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合には、適用されない。

    第14条(実演家、レコード(録音物)製作者及び放送機関の保護)
    1~3 略
    4第11条の規定(コンピュータ・プログラムに係るものに限る)は、レコード製作者及び加盟国の国内法令で定めるレコードに関する他の権利者について準用する。加盟国は、1994年4月15日においてレコードの貸与に関し権利者に対する衡平な報酬の制度を有している場合には、レコードの商業的貸与が権利者の排他的複製権の著しい侵害を生じさせていないことを条件として、当該制度を維持することができる。

    ○国際機関における検討
    〔文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約議定書についてのWIPO事務局提案〕
    BCP/CE/IV/2
    レンタル(パラ68)
    あらゆる複製物について、その複製物が次のような複製物である場合には、著作者またはその他の著作権者の許諾による販売又は所有権移転の後といえども、排他的レンタル権を認める旨の規定を議定書に加えることを提案する。
    (i)複製物のフォーマット(フィルム、アナログまたはデジタルのテープまたはディスク等)の違いを問わず、視聴覚著作物;
    (ii)複製物のフォーマット(アナログまたはデジタルのテープまたはディスク等)の違いを問わず、実演がレコード(録音物)に記録される著作物;
    (iii)複製物のフォーマット(紙、アナログまたはデジタルのテープ等)の違いを問わず、コンピュータ・プログラム。ただし、プログラム自体がレンタルの基本的な対象となっていない場合を除く(その場合には、販売またはその他の所有権移転の前後を問わず、当該プログラムにレンタル権は存在しない);
    (iv)(i)から(iii)までの各号に記載した以外のあらゆる著作物(たとえば、書かれたもの、グラフィック著作物、データベース)。ただし、当該著作物がデジタル・フォーマットによるもの(デジタルのテープまたはディスク等)である場合に限る。当該複製物が他のフォーマット、たとえば紙またはアナログ記録によるものである場合はこの限りでない(他のフォーマットによるものである場合には、著作者またはその他の著作権者は、当該複製物のレンタルを禁止する権利はなく、当該複製物のレンタルについて報酬請求権もない(つまり、この場合には、レンタル権は「消尽した」ことになるのである))。

    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕
    INR/CE/III/2
    実演家のレコードに固定された実演に関する財産権(パラ63)
    (a) 略
    (b)販売その他の所有権の移転、又は貸与、公貸その他の占有の移転による実演の固定物の複製物の頒布
    (c)~(g)略
    文書に、以下の定めをすることを提案する。(パラ64)
    (a)当該実演家の許諾により、若しくはその許諾に従って販売され、又はその他の方法により所有権が移転された実演の固定物の複製物に関して、前項(b)号に定める権利を適用しないことについては、文書の当事国の国内法令の定めるところによる。
    (b)(a) 号の国内法令に与えられる権能の定めは、実演の固定物の複製物の貸与には適用がない。
    (c)~(h) 略
    レコード製作者のレコードに関する財産権(パラ67)
    (a) 略
    (b)販売その他の所有権の移転、又は貸与、公貸その他の占有の移転によるレコードの複製物の頒布
    (c)~(g) 略
    文書に、以下の定めをすることを提案する。(パラ68)
    (a)当該レコード製作者の許諾により、若しくはその許諾に従って販売され、又はその他の方法により所有権が移転されたレコードの複製物に関して、前項(b)号に定める権利を適用しないことについては、文書の当事国の国内法令の定めるところによる。
    (b)(a)号の国内法令に与えられる権能の定めは、レコードの複製物の貸与には適用がない。
    (c)~(h) 略

    ○諸外国の立法例
    〔英国著作権法〕
    第18条(複製物の公衆への頒布による侵害)
    (1)著作物の複製物の公衆への頒布は、著作権のあるあらゆる種類の著作物の著作権により制限される行為である。
    (2)この部における著作物の複製物の公衆への言及は、従前流通していない複製物を連合王国その他において流通させる行為をいい、次の行為をいわない。
    (a) それらの複製物の以後のいずれかの頒布、販売又は貸与
    (b) それらの複製物の連合王国への以後のいずれかの輸入
    ただし、録音物、映画及びコンピュータ・プログラムに関して、複製物を公衆に頒布するという制限される行為は、複製物の公衆へのいずれかの貸与を含む。


    附則7
    81964年公立図書館・博物館法第8章(図書館施設への請求の制限)中、(5)の次に、以下を加える。
    (6)レコード、映画及びコンピュータ・プログラムの複製物の貸与に関する「1988年著作権、意匠及び特許法」第一部の規定(著作権)は、有償であるか又は無償であるかを問わず図書館が行うこのような著作物の複製物の貸出しに適用する。

    〔英国─著作者に公貸権を与えるため及び関連する目的のための法律〕
    第1条(公貸権の設定)
    (1)主務大臣が作成して実施する要綱に従って、英国内の地方図書館当局が公衆に貸し出す書籍について中央基金から随時支払いを受ける「公貸権」として知られる権利を著作者に与える。

    〔ドイツ著作権法〕
    第17条(頒布権)
    (1)頒布権とは、著作物の原作品又は複製物を公衆に提示し、又は取引に供する権利をいう。
    (2)著作物の原作品又は複製物が、この法律の施行地域において頒布の権利を有する者の同意を得て、譲渡の方法によって取引に供されたときは、その再頒布は許される。

    第27条(複製物の賃貸借及び使用貸借)
    1著作物の複製物が、第17条第2項によってその再頒布が許されるものの賃貸借又は使用貸借については、その賃貸借又は使用貸借が賃貸人又は貸主の営利の目的に資するもの、又は複製物が公衆に提供された施設(文庫、レコード収集又は他の複製物の収集)によって賃貸又は貸し出されるときは、著作者に対して相当なる報酬が支払われなければならない。報酬請求権は、管理団体を通してのみ行使することができる。
    2第1項は、著作物がもっぱら賃貸借又は使用貸借の目的のために発行され、又は複製物が労働ないし雇用関係の中で、もっぱらその義務の履行に際して利用する目的のために貸し出されるときは適用しない。

    〔貸与権、公貸権及び著作隣接権に関するECディレクティブ〕
    第1条 調和の対象
    1この章の規定に従い、加盟国は、第5条に従うことを条件とし、著作物の原作品及び複製物並びに第2条第1項に掲げる対象物の貸与及び公貸を許諾し、又は禁止する権利を定めるものとする。
    2このディレクティブにおいて、貸与とは、直接又は間接に経済的又は商業的利益を目的とし、一定期間、利用に供することをいう。
    3このディレクティブにおいて、公貸とは、公共用機関を通じて、直接又は間接に経済的又は商業的利益を目的とせず、一定機関、利用に供することをいう。
    4第1項の権利は、著作物の原作品、複製物その他第2条第1項に掲げる対象物の販売その他の頒布行為によって消尽しない。

    第5条 排他的公貸権の制限
    1加盟国は、少なくとも著作者がその公貸の報酬を得るものであれば、第1条に定める公貸に関する排他的権利を制限することができる。加盟国は、文化促進目的を考慮し、自由にこの報酬を決定することができる。
    2加盟国は、レコード、映画(film)及びコンピュータ・プログラムに関して、第1条に定める排他的権利を適用しないときは、少なくとも著作者のために、報酬を導入する。
    3加盟国は、一定の機関に前項及び前々項の報酬の支払いを免除することができる。
    4委員会は、加盟国と協力し、1997年7月1日より前に共同体内における公貸に関する報告書を作成するものとする。この報告書を欧州議会及び閣僚理事会へ送付するものとする。


    5 著作物等の複製の技術的制限等

    (1) 著作物等の複製の技術的制限の解除装置等の規制

    ○国際機関における検討
    〔文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約議定書についてのWIPO事務局提案〕
    BCP/CE/IV/2
    権利の執行(パラ98)
    (a)以下のものについて、販売もしくはレンタルを目的とする製造もしくは輸入、または販売もしくはレンタルによる頒布が行われた場合につき、パラグラフ96に示す規定にもとづく著作権侵害規定と同様の、司法当局の適用による制裁を定めること;
    (i)著作物の複製物の作成を防止または制限するための装置、または作成される複製物の品質を劣化させるための装置(以下、これらの装置につき「コピー防止装置またはコピー規制装置」)を回避することを特に目的として、または主な目的として、設計され、または改造された、あらゆる装置;
    (ii)
    (b)上記パラグラフ96に示した規定に従って定められる、暫定的(保全)措置、民事的救済措置、刑事制裁および水際措置を適用する際には、(a)の(i)(ii)に記載する不正な装置は、すべて侵害複製物と同視する旨を規定すること;
    (c)著作物の著作者またはその他の著作権者は、次の場合においては、上記パラグラフ96に示した規定に従って定められる損害賠償について、自己の著作権が侵害された場合と同様の権利を有する、との規定を設けること;
    (i)当該著作物の複製物が、権利者自身によって、またはその許諾によって、作成され、コピー防止装置またはコピー規制装置を付して、販売またはレンタルに供された場合において、当該装置を回避することを特に目的として、または主な目的として、設計または改造された装置が、販売もしくはレンタルを目的として製造もしくは輸入された場合、または販売もしくはレンタルによって頒布された場合;
    (ii)

    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕
    INR/CE/III/2
    権利の執行(パラ100)
    (a)下記の装置の販売若しくは貸与を目的とする製造若しくは輸入、または販売若しくは貸与による頒布について、前記99項に記した規定にもとづき、実演家のレコードに固定された実演に関する権利及びレコード製作者のレコードに関する権利の侵害に対して定めがあり、かつ裁判所が適用する制裁と同じ制裁を定める義務
    (i)レコードの複製物の作成を防止若しくは制限し、または作成される複製物の性能を損なうことを目的とする装置(この装置を以下「複製防護装置又は複製制御装置」という。)の機能を免れることを特に若しくは主として意図し設計された装置、又はそれに適合した装置
    (ii)
    (b)前記99項に記した規定に従ってとられる暫定的(保全)処分、民事救済、刑事制裁及び国境における措置の適用にあたって、前記(a)号(i)及び(ii)にいう不法な装置を、レコードの権利侵害複製物と同一に取り扱う旨定める義務
    (c)当該実演家及びレコード製作者は、下記の場合に、そのレコードに固定された実演又はレコードの権利がそれぞれ侵害された場合と同様に、前記99項に記された規定に従って与えられる損害の賠償を受けることができる旨定める義務
    (i)レコードの複製物が実演家及びレコード製作者により作成され、又はそれらの者の許諾を得て作成され、複製防護装置又は複製制御装置と組み合わせて販売又は貸与のために提供されている場合に、この装置の機能を免れることを特に又は主として意図して設計された装置、又はそれに適応した装置が、販売若しくは貸与の目的で製造若しくは輸入され、又は販売若しくは貸与により頒布される場合
    (ii)

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第1002条(複製制御装置の組込み)
    (a) 輸入、製造及び頒布の禁止)
    いずれの者も、次に掲げる方式に合致しないいずれのデジタル録音装置又はデジタル音声インターフェイス装置をも輸入し、製造し、又は頒布してはならない。
    (1)連続複製制御方式(SCMS)
    (2)SCMSと同一の機能的特質を有する方式であって、著作権状況及び世代状況に関する情報が、その方式の連続複製制御方法を使用した装置とSCMSを使用した装置との間で正確に送られ、受けられ、かつ、作用することを要求するもの
    (3)その他のいずれかの方式であって、無許諾の連続複製を防止するものとして商務長官が証明するもの
    (b) 略
    (c) 方式の回避の禁止
    いずれの者も、(a)項に規定する方式を全体的又は部分的に実施するいずれのプログラム又は回路を回避し、迂回し、除去し、無効とし、その他阻止することを主たる目的又は効果とするいずれかの装置を輸入し、製造し若しくは頒布し又はそのようないずれかの役務を提供し、若しくは実行してはならない。
    (d) デジタル音楽記録物への情報のコード化
    (1)不正確な情報のコード化の禁止
    いずれの者も、記録するための原材料の種類コード、著作権状況又は世代状況に関する不正確な情報を録音物のデジタル音楽記録物にコード化してはならない。
    (2)要求されない著作権情報のコード化
    この章のいずれの規定も、デジタル音楽記録物の輸入又は製造に従事するいずれの者に対しても、その著作権状況をそのようないずれのデジタル音楽記録物にコード化することを要求するものではない。
    (e) 略

    〔英国著作権法〕
    第296条(複製防止を回避するための装置)
    (1)この条は、著作権のある著作物の複製物が、著作権者により又はその許諾を得て、複製防止の電子的形式により公衆に頒布される場合に適用される。
    (2)複製物を公衆に頒布する者は、それが侵害複製物を作成するために使用されることを知り、又はそう信じる理由を有しながら次のことを行う者に対して、著作権者が著作権侵害について有する権利と同一の権利を有する。
    (a)使用された複製防止の形式を回避することを特に予定され、又はそのように適応されたいずれかの装置又は手段を作成し、輸入し、販売若しくは貸与し、販売若しくは貸与のために提供若しくは陳列し、又は販売若しくは貸与のために広告すること。
    (b)ある者がその複製防止の形式を回避することを可能とし、又は援助することを意図される情報を公表すること。
    (2A)(1)における公衆に頒布される複製物がコンピュータ・プログラムの複製物である場合、(2)は、「販売若しくは貸与のために広告すること」という文言が「販売若しくは貸与のために広告すること又は業務上所持(possesses)すること」と読み換えられて適用される。
    (3)さらに、その者は第99条又は第100条(ある種の物品の引渡し又は押収)に基づき、それが著作権のある著作物の侵害複製物を作成するために使用される意図をもってある者が自己の占有、保管又は管理の下に有するそのようないずれかの装置又は手段に関して、著作権者が侵害複製物に関して有する権利と同一の権利を有する。
    (4)この条における複製防止への言及は、著作物の複製を阻止し、若しくは制限し、又は作成された複製物の品質を害することを意図されるいずれかの装置又は手段を含む。
    (5)~(6) 略

    〔ドイツ著作権法〕
    第69条(権利の侵害)
    1権利者は、所有者又は占有者に対して、違法に作成され、頒布され、又は違法な頒布を目的とするすべての複製物が廃棄されるよう求めることができる。(後略)
    21項は、もっぱらプログラム保護のための技術的仕組みを不法に排除し、又は迂回することを容易にすることに供される手段に準用する。

    〔フランス知的所有権法〕
    第122条の5
    著作物が公表されたときは、著作者は、次に掲げる行為を禁止することができない。
    複写する者の私的使用に厳密に当てられ、かつ、集団的使用を目的としない複写又は複製。ただし、原著作物が創作された目的と同一目的の利用に当てられる美術の著作物の複写を除く。

    第122条の6
    第122条の5第二号にかかわらず、ソフトウェアの著作物について、使用者によるバックアップ・コピーの作成以外のすべての複製及び著作者又はその権利承継人が明示的に許諾していないソフトウェアのすべての使用は、違法である。

    〔コンピュータ・プログラムの法的保護に関するECディレクティブ〕
    第7条 特別の保護手段
    1加盟国は、第4条、第5条及び第6条の規定を害することなく、その国内法に従って、次の(a)、(b)及び(c)に掲げるいずれかの行為を侵す者に対抗する適切な救済措置を定めるものとする。
    (a)~(b)略
    (c)コンピュータ・プログラムの保護のために適用されている技術的装置の無許諾での除去又は回避を促進することのみを目的としている手段を流通させ又は商業用目的で所持する行為
    2~3 略

    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〕
    <知的所有権作業部会報告書中間草案>
    第IV部 暫定答申及び勧告
    2.技術的制限の保護(Technological Protection)
    著作権侵害及び救済に関する著作権法第5章は新たに以下の第512条を含むよう修正されるべきであると勧告する。
    いずれの者も、第106条に基づく排他的権利の行使を妨げ若しくは阻止するプロセス、処理、メカニズム、又はシステムを、著作権者又は法の権限なしに、回避し、迂回し、除去し、無効とし、その他阻止することを主たる目的又は効果とするいずれかの装置を輸入し、製造し、若しくは頒布し、又はそのようないずれかの役務を提供し、若しくは実行してはならない。

    著作権法第501条は次のように解釈されるよう修正されるべきであると勧告する。

    第501条(著作権侵害)
    (a)第106条から第118条までに規定する著作権者の排他的権利又は第106条のAに規定する著作者の排他的権利のいずれかを侵害するいずれの者又は第602条の規定に違反して複製物若しくはレコードを合衆国に輸入するいずれの者も、著作権又は場合により著作者の権利の侵害者となる。第512条の規定を違反するものは、違反者の装置、製品、構成部品又はサービス阻止のプロセス、処理、メカニズム又はシステムを利用する著作物の著作権の侵害者となる。

    著作権法第503条は次のように解釈されるよう修正されるべきであると勧告する。

    第503条(侵害救済─侵害物件の押収及び処分)
    (a)裁判所は、この法律に基づく訴訟の係属中いつでも、合理的と認める条件によって、著作権者の排他的権利を侵害して作成され、又は使用されたと主張されるすべての複製物又はレコード及び、そのような複製物又はレコードを複製することができるすべての金属版、鋳型、母型、原型、テープ、フィルム陰画その他の物品及び第512条に違反して輸入、製造又は頒布されたと主張されるすべての装置、製品、若しくは構成部品の押収を命ずることができる。
    (b)裁判所は、終局判決の一部として、著作権者の排他的権利を侵害して作成され、又は使用されたと認められるすべての複製物又はレコード及び、そのような複製物又はレコードを複製することができるすべての金属版、鋳型、母型、原型、テープ、フィルム陰画その他の物品及び第512条に違反して輸入、製造又は頒布されたと認められたすべての装置、製品、若しくは構成部品の廃棄その他の合理的な処分を命ずることができる。

    著作権法第506条は次のように解釈されるよう修正されるべきであると勧告する。

    第506条(刑事犯)
    (a) 刑事侵害
    故意に、かつ、商業的利益又は私的な財政的収益を目的として著作権を侵害する者は、合衆国法典表題18第2319条に規定するところに従って処罰される。
    (b) 没収及び破棄
    いずれかの者が(a)項の侵害のため有罪と宣告されるときは、裁判所は、その有罪の判決において、同項に規定する刑罰に加えて、侵害侵害物件であるすべての複製物又はレコード及びその製造に使用されたすべての道具、装置、製品、構成部品又は設備の没収及び廃棄その他の処分を命ずる。


     

    (2) 著作物等の受信の技術的制限の解除装置等の規制

    ○国際機関における検討
    〔文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約議定書についてのWIPO事務局提案〕
    BCP/CE/IV/2
    権利の執行(パラ98)参照
    (a)(i)
    (ii)放送され又はその他の方法で公衆に伝達される秘密化された番組の、当該番組を受信する権利のない人々による受信を可能にし、又は援助することができる機能を有する、あらゆる装置;
    (b)
    (c)(i)
    (ii)権利者が権利を有する著作物が、権利者自身によって、又はその許諾によって、放送その他の方法で公衆に伝達される秘密化された番組に収録された場合において、当該番組を受信する権利のない人々による受信を可能にし、又は援助する機能を有する装置が、販売若しくはレンタルを目的として製造若しくは輸入された場合、又は販売若しくはレンタルによって頒布された場合。

    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕
    INR/CE/III/2
    権利の執行(パラ100)参照
    (a)(i)
    (ii)放送され、その他公衆に伝達されるスクランブル信号による番組を、番組を受信する資格を有しない者が受信することを可能にし、又はその受信を助けることを可能にする装置
    (b)
    (c)(i)
    (ii)実演家及びレコード製作者が権利を有するレコードが、それらの者により又はそれらの者の許諾を得て放送され、その他公衆に伝達されるスクランブル信号による番組に使用される場合に、番組を受信する資格を有しない者によるその番組の受信を可能にする装置、又は受信を助ける装置が、販売若しくは貸与の目的で製造若しくは輸入され、又は販売若しくは貸与により頒布される場合

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国通信法〕
    第605条 (e)
    (4)装置又は設備が衛星有線プログラミングの無許諾解読を予備的に補助する情を知り、若しくは意図をもって、電子、機械又はその他の装置若しくは設備を製造、組み立て、改変、輸入、輸出、販売又は頒布する者、若しくは第605条(a)により禁じられているいずれかの行為をもくろむ者は、各違反につき500,000ドル以下の罰金、又は5年以下の禁固刑、若しくはその両方に処せられる。このパラグラフの違反に関して定められたすべての処罰と救済を目的としてこれより制定される禁止行為は、禁止行為がそれぞれそのような装置に該当するように、別個の違反行為と考えられる。

    〔英国著作権法〕
    第297条(番組の不正受信の罪)
    (1)連合王国内のある場所から提供される放送又は有線番組サービスに挿入される番組を、その番組の受信に適用されるいずれかの料金の支払いを回避する意図をもって、不正に受信するものは、罪を犯し、かつ、即決裁判により、標準等級の水準5を越えない罰金に処せられる。
    (2)

    第298条(送信の無許諾受信のための機器等についての権利及び救済)
    (1)次のものは、以下の権利及び救済についての資格を有する。
    (a)連合王国内のある場所から提供される放送又は有線番組サービスに挿入される番組の受信について料金を取る者
    (b)連合王国内のある場所から他のいずれかの暗号送信を送る者
    (2)その者は、次のことを行う者に対して、著作権者が著作権侵害について有する権利及び救済と同一の権利及び救済を有する。
    (a)ある者がそうすることについて資格を有しないときに、その者が番組その他の送信を受信することを可能とし、若しくは援助することを予定され、又はそのように適応されたいずれかの機器又は装置を作成し、輸入し販売し、又は貸与すること。
    (b)ある者がそうすることについて資格を有しないときに、その者が番組その他の送信を受信することを可能とし、若しくは援助することを企図されるいずれかの情報を公表すること。
    (3)~(6) 略

    〔北米自由貿易協定(NAFTA)〕
    1707条:暗号化プログラムをもつ衛星信号の保護
    本協定の発効の日から1年以内に、各加盟国は、
    (a)暗号化プログラムをもつ衛星信号の法定頒布者による許諾なしに、そのような信号のデコードを専ら補助するための装置又はシステムを製造、輸入、販売、貸与、若しくは他の方法で利用できる状態にすることを、刑事犯罪とする。;また、
    (b)商業活動、又はそれ以上の頒布に関連して、暗号化プログラムをもつ衛星信号の法定頒布者の許諾なしにデコードされたそのような信号を受信すること、また、(a)号により禁止されている活動に従事することを、民事犯罪とする。
    各加盟国は、(b)号で確立される民事犯罪について、このような信号の内容に利害関係を有するすべての者により提起され得るよう規定するものとする。

    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〕
    <知的所有権作業部会報告書中間草案

    〔オーストラリア著作権集中検討グループ報告書 「変化へのハイウェイ:新しい通信環境における著作権」〕
    勧告12 送信の無許諾受信
     送信の無許諾受信に関しては、2つの新たな罪が制定されるべきである。
    ・送信の不正受信
    ・無許諾のデコーダーの製造、輸入、販売又は貸与
    当著作権集中検討グループは、上記の罪について1968年著作権法(パラ5.2)にではなく、連邦刑法に含める方がより適切であると考える。
    無許諾のデコーダーを製造、輸入、販売又は貸与する者に対する、民事上の救済請求措置を導入すべきである(パラ5.2)。この新たな民事救済請求は、
    (i)傍受された送信の利用料を徴収する者、その徴収利用料を受けるべき者又は暗号化した送信の製作者に対して、権利が与えられなければならない。
    (ii)無許諾のデコーダーを製造、輸入、販売又は貸与する者、また、権利がないにもかかわらずサービスを受けようとする者を幇助することを意図して情報を発行する者に対して、求められなければならない。
    同様な権利と救済策が、著作権侵害者に対峙する者に有効でなければならない(パラ5.2)。



    (3) 著作権管理情報に関する措置

    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〕
    <知的所有権作業部会報告書中間草案>
    第IV部 暫定答申及び勧告
    3.著作権管理情報
    著作権法第101条は以下のように「著作権管理情報」の定義を含むよう修正されるべきであるとワーキング・グループは勧告する。
    「著作権管理情報」とは、著作権者の氏名又は他のこれを特定する情報、著作物の使用期間又は使用条件、及びISBN番号のような証明番号、若しくはこれらに限定されない著作権のある著作物に関連した情報をいう。
    また、ワーキング・グループは詐欺的な著作権表示若しくは当該表示の詐欺的な除去への禁止規定を含むよう、著作権法第506条が新たに以下の(g)項及び(h)項を含むよう修正されるべきであると勧告する。
    (g) 詐欺的な著作権管理情報の表示
    著作権のある著作物のコピーに虚偽の著作権管理情報を情を知って詐欺の意図をもってデジタル的につなぐ者、又は虚偽のそのような著作権管理情報を付している物品を情を知って詐欺の意図をもって公に頒布し若しくは公の頒布のために輸入する者は、2,500ドル以下の罰金に処せられる。

    (h) 著作権管理情報の詐欺的な除去
    著作権のある著作物のコピーにデジタル的に付されている著作権管理情報を詐欺の意図をもって除去し、又は変更する者は、2,500ドル以下の罰金に処せられる。


    6 著作権等の帰属、譲渡、利用許諾等

    (1) 著作権等の帰属


    (2) 著作権契約の様式化

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第204条(著作権の所有権の移転の実施)
    (a)法律の作用によらない著作権の所有権の移転は、譲渡証書又は移転の覚え書が文書によって作成され、かつ、譲渡された権利の所有者又はその者の正当な授権代理人によって署名されていない限り、無効とする。
    (b) 略

    〔英国著作権法〕
    第90条(譲渡及び許諾)
    (1)~(2) 略
    (3)著作権の譲渡は、譲渡人による又はその者のために署名される文書によらない限り、有効でない。
    (4) 略

    第92条(排他的許諾)
    (1)この部において、「排他的許諾」とは、この条によらなければ著作権者が排他的に行使することができることとなる権利を行使することを許諾を得た者(許諾を与える者を含むすべての者を除く。)に許諾する著作権者により又はその者のために署名される文書による許諾をいう。
    (2) 略

    〔ドイツ著作権法〕
    第40条(将来の著作物に関する契約)
    1著作者が将来の著作物に関する利用権を許与する義務を負う契約で、将来の著作物が詳細には定められていず、又はその種類のみが定められているものは、書面による方式を要す。この契約は、その締結から5年を経過した後は、当事者双方により解除することができる。解約告知期間は、6ヶ月とする。ただし、より短い期間につき約定があるときは、この限りではない。
    2~3 略


    (3) 著作物等の利用許諾の推定

    ○諸外国の立法例
    〔ドイツ著作権法〕
    第31条(利用権の許与)
    1~3 略
    4未知の利用方法を目的とする利用権の許与及びその許与義務の負担は、無効とする。
    5 略

    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)
    <知的所有権作業部会報告書中間草案>〕
    第IV部 暫定答申及び勧告
    6.許諾(Licensing)
    現状では、知的所有権についての強制許諾を追加することは必要ではなく、また、望ましいことではないと考えている。デジタル環境下では、取引に要するコストと強制許諾に伴う節約とが、極小化することが可能である。NIIにおいて、ライセンスに係る法的枠組みとしてどのようなものが適用されることになろうとも、市場はその発展に委ねられるべきなのである。


    7 情報のデジタル化及び公衆への提供行為の評価


    (1) 情報をデジタル化した者の権利

    ○諸外国の検討例
    〔データベースの法的保護に関するECディレクティブ草案〕
    第10条(保護の対象:データベースの無許諾抽出を阻止する権利)
    1このディレクティブの適用上、「無許諾抽出を阻止する権利」という語は、データベースから素材の一部又は全部を抽出し、再利用する行為を阻止するデータベースの権利の所有者の権利を意味するものとして扱われる。
    2加盟国は、データベースの権利の所有者に、データベースの内容の全体又は実質的な部分を商業目的で無許諾で抽出し、又は再利用することを阻止する権利を与えなければならない。こうしたデータベースの内容の無許諾抽出を阻止する権利は、そのデータベースが著作権に基づく保護を受ける資格があるか否かにかかわらず、適用される。この権利は、データベースの内容が既に著作権又は隣接権により保護されている著作物である場合には適用されない。

    第11条 (データベースの内容に関して行われる行為─内容の無許諾抽出)
    1第10条第2項に規定されるデータベースの内容を無許諾で抽出し、再利用することを阻止する権利にかかわらず、一般に利用可能なデータベースに含まれている著作物又は素材を、別途創作・収集したり、その他の情報源から取得することが不可能である場合、当該データベースから著作物・素材の全体又は実質的な部分を商業目的で抽出し、再利用する権利は、財政投資や時間・労力の節約を理由とするものでなければ、公正かつ非差別的な条件に基づいて許諾されるものとする。許諾の問題に関して要求され、追究されることとなる、商業目的に係る正当性を明定した布告が提起される。
    2データベースの内容を抽出し、再利用する権利は、以下によりデータベースが一般に利用可能になっている場合にも、公正かつ非差別的な条件に基づいて許諾されるものとする。
    (a)情報収集又は情報公開の目的で法令に基づいて設立又は認可された公的機関又は公的団体、あるいはこのような一般的使命のある公的機関による場合。
    (b)公的機関により与えられた排他的特権に基づき独占的地位を享有している会社等による場合。
    3本条の適用上、データベースは、自由に検索されない限り、一般に利用可能になっているとはみなされないものとする。
    4加盟国は、このような許諾に関する当事者間の仲裁のための適切な手段を規定する。
    5データベースの適法な使用者は、データベース作成者の許諾なしに、当該データベースから著作物・素材の実質的でない部分を商業目的で抽出し、再利用することができる。但し、その情報源は明示されなければならない。
    6データベースの適法な使用者は、データベース作成者の許諾なく、かつその情報源の明示なしに、当該データベースから著作物・素材の実質的でない部分を個人的かつ私的な利用に限って抽出し、再利用することができる。
    7本条の適用上、「商業目的」とは、以下に該当しない使用目的を意味する。
    (a) 私的な、個人的な使用目的;及び
    (b)非営利の使用目的。
    8(a)本条第4項及び第5項の適用上、「実質的でない部分」とは、公衆の利用に供されたデータベースの一部で、その複製が元のデータベースとの関係で質的及び量的に評価して、当該データベースの利用に関するデータベースの権利の所有者の排他的権利を侵害しないと考えられるものを意味する。
    (b)いずれの場合においても、適法な使用者は、実質的でない部分の抽出及び再利用が、当該データベースの利用に関するデータベースの権利の所有者の排他的権利を侵害しないこと、また、目的を達成するために必要なこと以外の行為は行われないことを、証明する義務を有する。
    9本条の規定は、このような抽出や再利用が他のいかなる権利・義務も侵害しない範囲に限り、適用される。ここにいう権利・義務には、個人情報の保護、プライバシー、安全保障、国家機密等の事項に関する加盟国・ECの法律又は国際的義務を含む。

    第12条(保護期間)
    1無許諾抽出を阻止する権利は、データベースの創作の日から15年間存続するものとし、始期は以下の日の属する年の翌年の1月1日とする。
    (a)データベースが最初に公衆の利用に供された日。又は、
    (b)データデースの本質的な変更があった日。

    2(a)データベースの内容の本質的な変更は、無許諾の抽出を阻止する権利に係る新たな保護期間をもたらすものとする。
    (b)本条で規定する保護期間の適用上、「本質的な変更」とは、データベースの全部又は一部の本質的な改変となる。データベースの内容に係る本質的でない追加、削除及び修正の連続的な集積をいう。

    3(a)データベースの内容の本質的でない変更は、当該データベースの無許諾の抽出を阻止する権利に係る新たな保護期間をもたらさないものとする。
    (b)本条で規定する保護期間の適用上、「本質的でない変更」とは、データベースの内容を全体として本質的に改変することとならない、本質的でない追加、削除及び修正をいう。

    第13条(データベースからの無許諾抽出を阻止する権利に基づく保護の受益者)
    1このディレクティブに基づき与えられる、無許諾抽出や再利用からのデータベースの内容の保護は、その作成者がECの国民又はEC域内に常居所のある者であるデータベースに適用される。
    2データベースがこのディレクティブの第3条第4項の規定に基づき創作される場合、前項は、加盟国の法律に従って設立された会社(companies and firms)で、登記された事務所、本社又は主要な営業地域がEC内にあるものにも適用される。加盟国の法律に従って設立された会社がEC域内には登記された事務所しか有していない場合には、その事業は加盟国の1か国の経済と効果的かつ経済的な関連を有していなければならない。
    3無許諾抽出されることを阻止する権利を、第三国において製作され、本条第1項及び第2項の規定には該当しないデータベースに拡大する協定は、EC委員会からの提案に基づき閣僚理事会が締結する。この手続により与えられるデータベースの保護期間は、このディレクティブの第12条第1項に基づき与えられる期間を超えない。


    (2) 送信事業者の権利
    ○条約
    〔ローマ条約〕
    第3条(定義)
    この条約の適用上、
    (a)~(e) 略
    (f)「放送」とは、公衆によって受信されることを目的とする無線による音の送信又は影像及び音の送信をいう。

    ○諸外国の立法例
    〔英国著作権法〕
    第9条(著作物の著作者)
    (1) この部において、著作物に関して「著作者」とは、それを創作する者をいう。
    (2) その者は、次の者であるとみなされる。
      (a) ~(b)  略
      (c) 有線番組の場合には、番組が挿入されている有線番組サービスを提供する者
      (d)  略
    (3) ~(5)  略

    〔貸与権、公貸権及び著作隣接権に関するECディレクティブ〕
    第6条 固定の権利
    1
    2加盟国は、放送事業者について、有線により伝達されるものであっても空中を越えて伝達されるものであっても、その放送(ケーブル又は衛星によるものを含む。)の固定を許諾し、又は禁止する排他的権利を定めるものとする。
    3ケーブルにより放送事業者の放送を単に再伝達する場合、ケーブル送信者は、前項に定める権利を有さない。

    ○諸外国の検討例
    〔オーストラリア著作権集中検討グループ報告書「変化へのハイウェイ:新しい通信環境における著作権」〕

    勧告5 放送及びその他の送信の著作権の在り方
    (i)第91条の特別な放送事業者に係る法律は、1968年著作権法からはずされるべきである。これは、オーストラリア国内において合法的に行われ、公衆に合法的に受信され得るすべての放送に著作権による保護を与えるよう修正されるべきである。(パラ2.3)
    (ii)著作権法第99条から特別な放送事業者及びその法令に係る言及をはずし、放送の著作権者は放送を製作する者であるというように、修正すべきである。放送の製作者について規定する法第22条(5)は、送信内容に責任をもち、かつその送信のための必要な手筈を整えた者が放送の製作者であるというように、修正すべきである。
    (パラ2.3)
    (iii)勧告2で提案されている意味を敷衍すれば、放送以外の送信については著作権による保護は与えられるべきではない。(パラ2.3)


    8 映画に関する規定の見直し


    (1) 著作物の分類
    ○条約
    〔ベルヌ条約〕
    第2条(保護を受ける著作物)
    (1)「文学的及び美術的著作物」には、(略)、映画の著作物(映画に類似する方法で表現された著作物を含む。)、(略)のような文芸、学術及び美術の範囲に属するすべての製作物を含む。
    (2)~(8) 略

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第101条(定義)
    「視聴覚著作物」とは、その著作物が収録されているフィルム、テープ等の有体物の性質にかかわらず、映写機、ビューアー、電子機器等の機械又は装置を用いて見せることを本来意図する一連の関連する影像及び場合によりそれに伴う音から成る著作物をいう。
    「映画」とは、連続して見せると動きを感得させる一連の関連する影像及び場合によりそれに伴う音から成る視聴覚著作物をいう

    〔英国著作権法〕
    第5条(録音物及び映画)
    (1)この部において、
    「映画」とは、それから動く影像がいずれかの手段により製作されることができるいずれかの媒体上の記録物をいう。

    〔ドイツ著作権法〕
    第2条(保護著作物)
    1保護を受ける文学、学術及び美術の著作物には、とりわけ、次のものが属する。
    一~五 略
    映画の著作物。映画の著作物と類似の方法をもつて作成される著作物を含む。
    七 略
    2 略

    第95条
    第88条(映画化の権利)、第90条(権利の制限)、第91条(写真に関する権利)、第93条(改変に対する保護)及び第94条(映画製作者の保護)は、影像の連続物及び影像・音の連続物で、映画の著作物としては保護されないものに、準用する。
    (注)第89条(映画の著作物に関する権利)、第92条(実演家)

    〔フランス知的所有権法〕
    第112条の2
    この法律の適用上、次のものは、特に精神的著作物とみなされる。
    一~五 略
    映画の著作物その他音を伴い又は伴わない影像の動く連続から成る著作物(以下「視聴覚著作物」という。)
    七~十四 略

    ○諸外国の検討例
    〔知的所有権と全米情報基盤(NII)〈知的所有権作業部会報告書中間草案〉〕
    第I部 法
    A.著作権法
    1.保護の目的物と範囲
    d.保護対象物の分類
    一般にマルチメディア著作物には、先行して存在している以下の要素の中の2、3点が含まれている。それは、テキスト(言語著作物)、コンピュータ・プログラム(言語著作物)、音楽(録音物)、静止画像(絵画及びグラフィックスの著作物)及び動く画像(視聴覚著作物)である。「言語著作物」の定義は、「視聴覚著作物以外の、著作物・・・・」という文言で始まっている。したがって、これがなければ言語著作物として分類されるはずのテキスト及びコンピュータ・プログラムは、視聴覚著作物に分類される著作物に含まれている場合には、その視聴覚著作物の一部と解され得ることになる、というのが合理的な解釈となる。このことは、録音物についても言える。音楽ビデオは、録音物と視聴覚著作物の両方の分類に属する訳ではない。一個の視聴覚著作物として分類されるのである。かくして、言語著作物と録音物の場合には、「視聴覚著作物」というカテゴリーは、他のカテゴリーに対する切り札となるもののように思われる。視聴覚著作物は、静止画像も含む-少なくとも、関連のあるものを。したがって、一般に、マルチメディア著作物は視聴覚著作物と解されることが多くなろう。

    マルチメディアの著作物のカテゴリーを考える際に多少無理な分析が必要になること、また、著作物のタイプの「雑種」がますます増えてくること、を思えば、カテゴリー分けはもう役に立たないことになる可能性もある。今後は著作権法上のカテゴリー分けの廃止も、考えられるかも知れない。


    (2) 著作者及び著作権等の帰属
    ○条約
    〔ベルヌ条約〕
    第14条の2(映画の著作物の著作権者の権利)
    (1)
    (2)(a)映画の著作物について著作権を有するものを決定することは、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
    (b)もつとも、法令が映画の著作物の製作に寄与した著作者を映画の著作物について著作権を有する者と認める同盟国においては、それらの著作者は、そのような寄与をすることを約束したときは、反対の又は特別の定めがない限り、その映画の著作物を複製し、頒布し、公に上演し及び演奏し、有線で公に伝達し、放送し、他の方法で公衆に伝達し並びに字幕を挿入し及び吹替えをすることに反対することができない。
    (c)~(d) 略
    (3) 略

    〔ローマ条約〕
    第19条(映画に固定された実演)
    この条約のいかなる規定にもかかわらず、実演家がその実演を影像の固定物又は影像及び音の固定物に収録することを承諾したときは、その時以後第7条(実演家の権利)の規定は、適用しない。

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第101条(定義)
    「職務上の著作物」とは、次に掲げるものをいう。
    (1)
    (2)集合著作物の個々の著作物、映画その他の視聴覚著作物の部分、翻訳、付随的著作物、編集著作物、教科書、試問、試問用回答資料又は地図書として使用するために特に注文又は委託を受けた著作物であって、当事者が署名した文書によって職務上の著作物とみなすことに明白に同意したもの。

    〔英国著作権法〕
    第9条(著作物の著作者)
    (1)この部において、著作物に関して「著作者」とは、それを創作する者をいう。
    (2)その者は、次の者であるとみなされる。
    (a)録音物又は映画の場合には、録音物又は映画の作成に必要な手筈をととのえる者
    (b)放送の場合には、放送を行う者(第6条第3項参照)又は受信及び即時再送信により他の放送を中継する放送の場合には、その他の放送を行う者
    (c)放送の場合には、放送を有線番組の場合には、番組が挿入されている有線番組サービスを提供する者
    (d)発行された版の印刷配列の場合には、発行者
    (3)コンピュータにより生成される文芸、演劇、音楽又は美術の著作物の場合には、著作者は、著作物の創作に必要な手筈をととのえる者であるとみなされる。
    (4)~(5) 略

    〔ドイツ著作権法〕
    第89条(映画の著作物に関する権利)
    1映画の製作に際し協力する義務を負う者は、その者が映画の著作物に関する著作権を取得する場合に、疑いのあるときには、映画の著作物及びその翻訳物その他映画的改作物ないしは変形物を、知られているすべての利用方法をもって、利用する排他的権利を、映画製作者に許与するものとする。
    2映画の著作物の著作者が、第1項に掲げる利用権をあらかじめ第三者に許与したときは、著作者は、なお、つねにこの権利を、制限を付けて又は制限を付けることなく、映画製作者に許与する権能を有する。
    3

    第92条(実演家)
    実演家で、映画の著作物の製作に際して協力する者又はその実演が適法に映画の著作物の製作のために利用される者には、その映画の著作物の使用に関して、第75条(複製)第2文、第76条(放送)及び第77条(公の再生)に基づく権利は帰属しない。

    第94条(映画製作者の保護)
    1映画製作者は、映画の著作物が収録されている録画物又は録画・録音物を複製し、頒布し、及び公の上映又は放送のために利用することにつき排他的権利を有する。映画製作者は、更に、録画物又は録画・録音物のあらゆる改変又は省略で、その録画物又は録画・録音物について有する映画製作者の正当なる利益を害するおそれのあるものを、禁止する権利を有する。
    2~4 略

    〔フランス知的所有権法〕
    第132条の24
    歌詞を伴い又は伴わない楽曲の著作者以外の視聴覚著作物の著作者と製作者とを結ぶ契約は、反対の定めがない限り、L.111-3条、L.121-4条、L.121-5条、L.122-1条からL.122-7条、L.123-7条、L.131-2条からL.131-7条、L132-4条及びL.132-7条の規定によって著作者に認められる権利を害することなく、視聴覚著作物の排他的利用権の製作者への譲渡を伴う。
    視聴覚製作契約は、著作物の図形的及び演劇的権利の製作者への譲渡を伴わない。
    この契約は、著作物の作成に役立った要素で保存されるものの目録及びこの保存の条件について定める。

    第132条の25
    著作者の報酬は、利用形態ごとに支払われる。
    L.131-4条の規定を留保して、一定の特定しうる視聴覚著作物の伝達を受けることについて公衆が料金を支払うときは、報酬は、配給者が映画劇場経営者に与えることがある逓減料率を考慮して、この料金に比例する。報酬は、製作者より著作者に支払われる。

    第212条の4
    視聴覚著作物の製作について実演家と製作者との間で締結される契約の署名は、その実演家の実演を固定し、複製し、及び公衆に伝達することの許諾を意味する。
    この契約は、著作物の各利用形態ごとに異なる報酬を定める。

    〔貸与権、公貸権及び著作隣接権に関するECディレクティブ〕
    第2条 貸与及び公貸の権利者及び対象物
    1貸与及び公貸を許諾し、又は禁止する排他的権利は次に掲げる対象物について、次に掲げる者に帰属する。
    著作者(著作物の原作品及び複製物)
    実演家(実演の固定物)
    レコード製作者(レコード)
    映画(film)の最初の固定物の製作者(映画(film)の原作品及び複製物)。このディレクティブにおいて、‘映画(film)’とは、音を伴っていても伴っていなくても、映画(cinematographic)又は視聴覚著作物(audiovisual work)又は動的影像(moving images)のことをいう。
    2このディレクティブにおいて、映画(cinematographic)又は視聴覚著作物(audiovisual work)の主たる監督は、その著作者又は著作者の1人とみなされる。加盟国は、共同著作者とみなす他の者を定めることができる。
    3~4 略
    5第7項を害することなく、実演家により映画製作者との間で映画(film)製作に関する契約が個々に又は集中的に結ばれた場合、この契約により保護される実演家は、第4条に従い、貸与権を譲渡したと推定される。ただし、そうでないとの契約条項があれば、それに従うものとする。
    6加盟国は、著作者について第5項に掲げるものと同様の推定条項を定めることができる。
    7加盟国は、その契約が第4条にいう意味での正当な報酬を定めていれば、実演家と映画(film)製作者との間で結ばれた映画(film)の製作に関する契約の署名は、貸与を許諾する効果を有するということを定めることができる。また、加盟国は、本項は、第2章に含まれる権利に準用されるということも定めることができる。

    第4条 放棄できない正当な報酬を受ける権利
    1著作者又は実演家が、レコード、又は映画(film)の原作品又は複製物に関する貸与権をレコード又は映画(film)の製作者に移転又は譲渡した場合、当該著作者又は実演家は、その貸与の正当な報酬を得る権利を保持する。
    2貸与の正当な報酬を得る権利は、著作者又は実演家によって放棄されることができない。
    3正当な報酬を得るこの権利の管理は、著作者又は実演家を代表する徴収団体に委任することができる。
    4加盟国は、正当な報酬を得る権利の徴収団体による管理が義務付けられるかどうか、及びその程度、並びに誰からこの報酬が支払い要求され、徴収されるかという問題を定めることができる。


    (3) 頒布権・輸入権
    ○条約
    〔ベルヌ条約〕
    第14条(映画化権・上映権)
    (1)文学的又は美術的著作物の著作者は、次のことを許諾する排他的権利を享有する。
    (i)著作物を映画として翻案し及び複製すること並びにこのように翻案され又は複製された著作物を頒布すること。
    (ii)
    (2)~(3) 略

    第14条の2(映画の著作物の著作権者の権利)
    (1)映画の著作物は、翻案され又は複製された著作物の著作者の権利を害することなく、原著作物として保護されるものとし、映画の著作物につい著作権を有する者は、原著作物の著作者と同一の権利(前条に定める権利を含む。)を享有する。)
    (2) (a)~(d) 略
    (3) 略

    ○国際機関における検討

    〔文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約議定書についてのWIPO事務局提案〕
    BCP/CE/I/3
    ベルヌ条約が頒布権を規定しているのは映画の著作物(及びそれに翻案される著作物)に関してのみである(第14条(1)及び第14条の2(1))。しかしながら同条約の英語本文とフランス語本文には相違がある。英語版には“頒布(distribution)”という語が使用されているが、一方、フランス語版には“流通させる(mise en circulation)”という表現が使用されている。英語の“頒布”は2とおりに解釈される:すなわち、最初の頒布のみの意味と、頒布のすべての行為の意味である。“流通させる”という表現には最初の頒布の意味だけが示されているように思われる。(パラ123)

    頒布権が著作物の複製物の最初の頒布(“流通させる”)だけでなく、その後のあらゆる種類の頒布(“流通”)をも禁止する権利を保護するものであるとの解釈に対しては満足のいく理由がないことはかなり明らかであると思われる。こうした一般的な権利を承認するとの提案も、1967年のベルヌ条約改正のストックホルム外交会議で、各国代表の圧倒的多数により拒絶された。(オーストリア、イタリア及びモロッコの代表により提出された提案(会議文書S/72)は、ベルヌ条約9条1項となった草案規定の簡単な修正によるそのような権利の承認を提唱した。これら代表は、“複製”の語の後に“及び流通”という文言を追加することを提案した。これにより、複製を許諾する排他的な権利が、複製及び複製物の以後のすべての頒布(流通)を排他的に許諾する権利に変えられるはずであった。第1委員会第6会合において、この提案は賛成7、反対17、棄権8で否決された(第1委員会議事録要旨パラ709参照)。)(パラ124)

    BCP/CE/IV/2
    上記の検討に基づき、プロトコルにおいて頒布に関する一般的権利について規定することが正当化されると思われる。また、頒布権は最初の販売又はその他の所有権移転により消尽する、という規定を加えることも、正当化されると思われる。(パラ60)

    輸入権は検討議題に存続させるとの委員長の声明に鑑みて、委員会が、前項の考慮事項を勘案して、輸入権に関する各種の問題を検討することを提案する。(パラ84)

    〔実演家及びレコード製作者の権利の保護に関する新文書についてのWIPO事務局提案〕
    INR/CE/III/2
    実演家のレコードに固定された実演に関する財産権(パラ63)
    (a) 略
    (b)参照
    (c)実演家の許諾により、若しくはその許諾に従って複製物の販売その他の所有権が移転された後に行われる場合であっても、かつ輸入される複製物がその許諾を得て作成されたか、若しくは許諾を得ず作成されたかを問わず、実演の固定物の複製物の当該の国への輸入、又は2以上の国が商品の自由な流通を含む諸目的のために単一の経済地域若しくは関税同盟を形成している場合で、かつ当該諸国の国内法令にその定めがある場合の当該諸国のいずれかへの実演の固定物の輸入
    (d)~(g) 略

    文書に、以下の定めをすることを提案する。(パラ64)
    (a)参照
    (b)~(h) 略

    レコード製作者のレコードに関する財産権(パラ67)
    (a)
    (b)(参照
    (c)レコード製作者の許諾により、若しくはその許諾に従って販売その他の所有権が移転された後に行われる輸入であっても、かつ輸入される複製物がその許諾を得て作成されたか、若しくは許諾を得ず作成されたかを問わず、レコードの複製物の当該の国への輸入、又は2以上の国が商品の自由な流通を含む諸目的のために単一の経済地域若しくは関税同盟を形成している場合で、かつ当該諸国の国内法令にその定めがある場合の当該諸国のいずれかへの輸入
    (d)~(g) 略

    文書に、以下の定めをすることを提案する。(パラ68)
    (a) (参照
    (b)~(h) 略

    ○諸外国の立法例
    〔アメリカ合衆国著作権法〕
    第106条(著作権のある著作物の排他的権利)
    この法律に基づく著作権の所有者は、第107条から第118条までの規定に従うことを条件として、次に掲げることを行い又は許諾する排他的権利を有する。
    (1)~(2) 略
    (3)著作権のある著作物の複製物又はレコードを販売その他の所有権の移転又は貸与によって公衆に頒布すること。
    (4)~(5) 略

    第109条(排他的権利の制限-個々の複製物又はレコードの移転の効果)
    (a)第106条(3)の規定にかかわらず、この法律に基づいて適法に作成された個々の複製物若しくはレコードの所有者又はその所有者から許諾を得た者は、著作権者の許諾を得ることなく、その複製物若しくはレコードを販売し又はその占有権を処分することができる
    (b)(1)(A)(a)項の規定にかかわらず、録音物の著作権者又はコンピュータ・プログラム(そのようなプログラムを収納するいずれのテープ、ディスクその他の媒体をも含む。)の著作権者及び録音物の場合には録音物に収録されている音楽の著作物の著作権者の許諾を得ない限り、個々のレコードの所有者又はコンピュータ・プログラムの個々の複製物を占有するいずれの者も、直接又は間接の商業的利益を目的として、貸与その他貸与の性質を有するいずれかの行為又は業務によって、そのレコード又はコンピュータ・プログラムの占有権を処分し、又はその処分を許諾することができない。直前のいずれの規定も、非営利の図書館又は非営利の教育施設が非営利目的で行うレコードの貸与には適用されない。コンピュータ・プログラムの適法に作成された複製物の占有権を非営利の教育施設が他の非営利の教育施設又は学部、教職員及び学生に移転することは、この項の規定に基づく直接又は間接の商業的利益を目的とする貸与を構成しない。
    以下略

    〔英国著作権法〕
    第18条(複製物の公衆への頒布による侵害)(参照

    第66条(録音物、映画及びコンピュータ・プログラムの貸与)
    (1)所管大臣は、命令により、命令に明記される場合に、録音物、映画及びコンピュータ・プログラムの複製物の公衆への貸与が、合意され、又は合意がないときに著作権審判所により決定される合理的な使用料その他の報酬の支払いのみを条件として、著作権者により許諾されたものとして取り扱われる。

    〔ドイツ著作権法〕


    9 著作物の国境を越える放送・送信の扱い(衛星放送・国際ネットワークによる送信)

    ○条約
    〔衛星により送信される番組電送信号の伝達に関する条約〕
    第2条(保護手段)
    (1)各締約国は、衛星に向けて発信された信号又は衛星を経由する信号の送り先でない伝達機関が番組電送信号を自国において又は自国から伝達することを阻止するための適切な手段を講ずることを約束する。この義務は、原送信機関が他の締約国の国民であって、かつ、伝達される信号が派生信号である場合に適用される。

    ○諸外国の立法例
    〔衛星放送及び有線再送信に適用される著作権及び著作隣接権に関する一定のルールのハーモナイゼーションに関するECディレクティブ〕
    第1条(定義)
    1 略
    2(a)
    (b)衛星により公衆に送信する行為は、放送事業者の管理と責任の下に、番組伝送信号が衛星を経由し、地球に達するまで連続して送信されるように発信した国においてのみ行われたものとする。
    (c)~(d) 略
    3~5 略

    第2条(放送権)
    加盟国はこの章の規定に従い、衛星による著作物の公衆への送信を許諾する排他的権利を著作者に与えるものとする。

    第8条(有線送信権)
    1加盟国は他の加盟国から番組が自国の領域内に有線再送信されるとき適用可能な著作権・著作隣接権が遵守されること、及びそのような再送信が著作権者・著作隣接権者及び有線事業者の間の個人的な又は集中的な契約に基づいて行われることを確保するものとする。
    2

    第9条(有線再送信権の行使)
    1加盟国は、著作権者及び著作隣接権者が有線事業者による有線再送信を許諾する権利は集中管理団体を通じてのみ行使することができることを確保するものとする
    2~3 略

    ○諸外国の検討例
    〔オーストラリア著作権集中検討グループ報告書「変化へのハイウェイ:新しい通信環境における著作権」〕
    勧告6 オーストラリアから発する送信
    (i)国外の公衆に受信されることを目的としてオーストラリア国内から送信が行われる場合、送信を行う者には、国内の著作権者の許諾を得ることが求められるべきである。
    (ii)国外の公衆に受信されることを目的としてオーストラリア国内から行われる放送は、オーストラリアにおいて著作権により保護されるものとすべきである。



    (参考)
    1 著作権審議会マルチメディア小委員会委員名簿
    座 長 半 田 正 夫 青山学院大学教授
    加 戸 守 行日本芸術文化振興会理事長
    川 井   健帝京大学教授
    北 川 善太郎京都大学教授
    齊 藤   博筑波大学教授
    中 山 信 弘東京大学教授
    松 田 政 行日本弁護士連合会知的所有権委員会委員・弁護士
    紋 谷 暢 男成蹊大学教授(平成6年3月4日~)


    2 著作権審議会マルチメディア小委員会
     ワーキング・グループ審議経過
    (平成5年12月8日著作権審議会マルチメディア小委員会(第15回)で設置を決定)

    第1回会議 平成6年3月4日
    検討の進め方について
    第2回会議 4月22日
    マルチメディアに係る制度上の問題について
    第3回会議 6月10日
    1)マルチメディアに係る制度上の問題について
    2)WIPO:著作権・著作隣接権の将来に関する国際シンポジウムについて
    第4回会議 7月1日
    マルチメディアに係る制度上の問題について
    第5回会議 8月4日
    1)マルチメディアに係る制度上の問題について
    2)全米情報基盤(NII)知的所有権ワーキング・グループ報告書中間草案について
    3)今後の検討の進め方について
    第6回会議 10月17日
    1)ワーキング・グループ検討経過報告(骨子案)について
    2)オーストラリア著作権集中検討グループ報告書について
    第7回会議 12月2日
    ワーキング・グループ検討経過報告(素案)について
    第8回会議 平成7年1月26日
    ワーキング・グループ検討経過報告(案)について
    第9回会議 平成7年2月14日
    ワーキング・グループ検討経過報告(案)について


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