第4回 入賞事例

    これらの教育実践事例資料は、教育関係者が著作権教育を目的として、非営利で利用する場合に限り、自由にご利用いただけます。

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    児童に身近な題材で行う「著作権教育」の実践

    担当教諭 上野 真

    受賞のことば

    滝尾小学校・写真

    このたびは、大変素晴らしい賞をいただき、ありがとうございます。当たり前のようにキャラクターの模倣やCDの複製をおこなう児童の姿を見て、取り組むことにした著作権教育。まずは、7割以上の児童が著作権という言葉の意味さえ知らないという現実を受け止めた上で、指導計画を組み立てていきました。私自身、勉強を重ねながらの取り組みになりましたが、児童にとって身近な題材を使うことを心がけた結果、少しずつではありますが、著作権という言葉が浸透していったように感じています。また、実践の際に、市販教材やインターネット上のコンテンツを積極的に使ったことで、他の先生方に実践を広めやすかったことも大きな成果だと思っております。

    今回の受賞を励みにして、今後さらに著作権に関する教育の実践を積み重ねるとともに、その取り組みを広げていくための努力を続けたいと思っています。本当に、ありがとうございました。 (教諭 上野 真)

    教育活動の概要 題名 児童に身近な題材で行う「著作権教育」の実践
    対象学年 小学6年生
    授業科目 総合的な学習の時間
    授業時間数 2時間
    実施期間 平成20年11月18日~19日
    レポート・教材
    ねらい

    当たり前のようにキャラクターの模倣やCDの複製を行っている児童たち。実態調査では、7割以上の児童が著作権ということばの意味を知らず、他人の著作権を尊重する態度も育っていないことが分かった。児童に身近な題材である「キャラクター」や「CD複製」についての学習を進める中で、情報モラル指導 モデルカリキュラムで示されている「人の著作物には、著作権があることを知り、尊重する」態度を育むことをねらいとした。

    また、実践を行う際には、大分県内でも広く導入されている市販教材や、インターネット上で公開されている教材を使うようにすることで、著作権教育が「誰でも、どこでも実践できるもの」にすることも、ねらいの1つとした。

    内容

    学年内の人権キャラクター募集において、既存のキャラクターを模倣したものが数多く寄せられた実態から、第1時ではキャラクターを題材にした授業を行った。「わかりやすい映像クリップの視聴」・「著作物を無断使用した人、された人それぞれの気持ちを考える活動」を取り入れることで、心情的な理解が深められるような工夫をした。又、その日の帰りの会で著作物の利用に関する10分間指導を行い、著作権に関する理解を深めた。

    第2時では、インターネット上で公開されている教材を活用し、CD(楽曲)のホームページへの掲載・複製についての学習を行った。「アニメーション教材」や「CDが手元に届くまでの過程が分かる資料」を使ったり、班で話し合う時間をとったりすることで、児童がお互いの意見を聞き合いながら、理解を深められるような授業にした。

    成果と課題

    【成果】

    • 著作権教育の導入(第1時)の題材に、身近な「キャラクター」を用いたことで、児童が自分自身の経験と重ね合わせて考えることができた。
    • 「著作物」を無断使用した人」の心情だけではなく、「無断使用された人」の心情も考える活動を取り入れたことで、より幅広い意見を引き出すことができた。
    • 10分教材を使った指導を、第1時を行った日の帰りの会で実施したことにより、学習のポイントをしっかりと押さえることができた。
    • テキストだけではなく、「アニメーション」がある教材を使用したことは、児童が共感しながら考えるのに有効であった。
    • 著作権教育に関する有効な資料がインターネット上にはたくさんあることが分かった。
    • 県内で導入している学校が多い市販教材と、Web上に公開されている教材を使った実践を心がけたため、他の先生方にも実践を広めやすい。

    【課題】

    • 著作権教育は、1つの教室だけで取り組んでも成果は薄い。学年全体、学校全体に広めていく努力が必要である。
      →先生方への授業公開・各種研修会での実践報告など
    • 実践を通して見つけた有効なWebページを誰もが使えるような工夫が必要である。
      →学校ホームページのリンク集に登録・校内研修でのWebページの紹介など
    • 著作権教育は、学校だけで行えるものではない。保護者との連携を深めていくことが必要である。
      →授業参観、学級懇談会の活用・学級通信でのお知らせなど
    児童・生徒の感想
    • 今までは、音楽やキャラクターを作った人の気持ちを考えたことがなかった。これからは、作った人の気持ちを大切にしたいと思いました。
    • 「友だちが喜ぶから」と思って、CDをコピーしてあげていたのに、そのことが、私の好きなアーティストを悲しませていたのかもしれない。次の音楽が生まれないなんて、いやだ。このことを知ることができて、本当によかった。もう、しません。
    • 「著作権」なんて言葉、知りませんでした。だれかが描いた絵をマネすることなんて、当たり前のようにしてきたけど、そのことがだれかを傷つけたのかもしれない。よく考えてみたら、ぼくだってマネされたらイヤだもんな。これからは、気をつけたい。
    児童・生徒の変容

    キャラクターの模倣やCDの複製を当たり前のようにおこなっていた児童たちが、実践後には、お互いに注意しあえるようになりました。特にCDに関しては、「私たちがコピーしちゃうと、次の音楽が生まれなくなるかもしれないから、コピーはしないようにしようね。」と、お互いに誓い合う姿を見ることができました。

    また、社会科での新聞づくりの際には、インターネット上で得た情報には出典を明記するなど、本実践を入り口にして、様々な面において、著作権を意識した行動をすることができるようになったと感じています。

    何よりも、一番大きな変容は、7割以上の児童が知らなかった「著作権」という言葉が、日常的にクラスの中で聞かれるようになったことです。著作権の理解を受け身だけでなく、今後は、積極的に活用できるように指導を続けていきたいです。

    選考委員コメント

    「資料5画像」の出典
    広島県教科用図書販売株式会社「事例で学ぶNetモラル」

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