図書館と著作権

    (黒澤節男 著)

    Q1どのような図書館でも権利者に無断で複写サービスができるのでしょうか?

    A1どのような図書館でも複写サービスができるわけではありません。

    著作権法第31条に定める「図書館等における複製」という規定は、図書館等の公共的奉仕機能に鑑み、国立国会図書館は当然のこととして、公共図書館、大学図書館等政令(著作権法施行令)で定める図書館等において、一定の要件を遵守することを条件に、権利者の許諾を得ることなく、利用者の求めに応じて複写サービスができることとしているものです。

    したがって、国立国会図書館や政令で定める図書館等以外では、原則どおり権利者の許諾を得て複写サービスを行わなければなりません。

    政令で定めている図書館等は次のとおりですが、これらの図書館等には、そのような施設であると同時に司書又はこれに相当する職員として文化庁長官が定める著作権講習会で修了証書を交付された職員がいることなどが義務付けられています。

    1. 図書館法第2条第1項の図書館で、都道府県、市区町村が設置する公共図書館等
    2. 大学・高等専門学校の図書館等
    3. 大学等における教育に類する教育を行う教育機関(水産大学校等)の図書館等
    4. 図書、記録その他著作物の原作品又は複製物を収集し、整理し、保存して一般公衆の利用に供する業務を主として行う施設で法令の規定によって設置されたもの。……具体的には博物館・美術館等で都道府県立や市区町村立も含みます。
    5. 学術の研究を目的とする研究所、試験所その他の施設で法令の規定によって設置されたもののうち、その保存する図書、記録その他の資料を一般公衆の利用に供する業務を行うもの……具体的には、日本原子力研究開発機構、国立国語研究所等
    6. 国、地方公共団体又は一般社団法人が設置する施設で4、5に掲げる施設と同種のもののうち文化庁長官が指定するもの……具体的には、日本医師会医学図書館、東京商工会議所経済資料センター等29施設が指定されています。

    したがって、小中学校や高校の図書室はこの政令には含まれておらず、企業の図書館、公民館に付置されているような図書室・資料室もこれには該当しません。ただし、2006年10月の文部科学省の通達で公民館図書室を公立図書館の分館として条例上位置づけることが容易になりましたが、分館であれば、複写サービスのできる図書館に該当します。

    Q2コイン式複写機を用いて複写サービスを行うことに問題がありますか?

    A2コイン式複写機を館内において、利用者に自由にコピーを取らせているとしたら問題があります。

    著作権法第31条の規定というのは、物的にも人的にも図書館が主体となって複写することが前提になっております。


    著作権法第31条(図書館等における複製等) (抜粋)

    国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第3項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。

    一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第3項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合

    二 図書館資料の保存のため必要がある場合

    三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合
    (第2項及び第2項 略)



    かつて、複写複製問題を検討した文化庁の著作権審議会第四小委員会の見解では「複製を行うことができる主体は図書館等であり、複製を行うに当たっては、当該図書館等の責任において、その管理下にある人的・物的手段を用いて行うことを要するものと解される。その運営が適正に行われるようにするため、著作権法施行規則第1条の3(注)に定める有資格者(司書又はこれに相当する職員)が置かれていることが複製を行うことのできる条件とされており、したがって、コイン式複写機器により複写請求者自身により複製させ……たりすることはこの規定の趣旨を逸脱するものと解される。」と述べられています。ただ、この見解には付記があり、「複写複製物の請求からその交付に至る間の手続を厳正なものとするのであれば、作業としての複製行為のみを複写請求者……に行わせることは許容されてよいと解する見解もある。」とされています。

    最近では、コイン式複写機の著しい普及発展ともあいまって、図書館への導入もめずらしくなくなっている状況ですが、長い間の話し合いの末、次の5つの要件に合致すればその複写は適法とみなすことで、権利者である社団法人日本複写権センター(現:公益社団法人日本複製権センター)と使用者である大学図書館側との間で合意を見ており、コイン式複写機による複写サービスもこのような形態であれば許されるのではないでしょうか。

    1. 図書館が文献複写のために利用者の用に供する各コピー機について、管理責任者(及び運用補助者)を定める。
    2. コピー機の管理責任者は、司書またはそれに準じた者とする。
    3. 図書館は、各コピー機の稼動時間を定めて掲示する。
    4. コピー機の管理責任者は、管理するコピー機による文献複写の状況を随時監督できる場所で執務する。
    5. 図書館は、コピー機の稼動記録を残す。

    (注) 著作権法施行規則(司書に相当する職員)

    第1条の3 令第1条の3第1項の文部科学省令で定める職員は、次の各号のいずれかに該当する者で本務として図書館の専門的事務又はこれに相当する事務(以下「図書館事務」という。)に従事するものとする。
    一 図書館法(昭和25年法律第118号)第4条第2項の司書となる資格を有する者
    二 図書館法第4条第3項の司書補となる資格を有する者で当該資格を得た後4年以上図書館事務に従事した経験を有するもの
    三 人事院規則で定める採用試験のうち、主として図書館学に関する知識、技術又はその他の能力を必要とする業務に従事することを職務とする官職を対象とするものに合格した者
    四 大学又は高等専門学校を卒業した者で、1年以上図書館事務に従事した経験を有し、かつ、文化庁長官が定める著作権に関する講習を修了したもの
    五 高等学校若しくは中等教育学校を卒業した者又は高等専門学校第三学年を修了した者で、4年以上図書館事務に従事した経験を有し、かつ、文化庁長官が定める著作権に関する講習を修了したもの


    Q3著作権法第30条の「私的使用のための複製」の規定により、図書館内においてもコイン式複写機で全文の複写ができると聞きましたが、そうなのでしょうか?

    A3そのような解釈は著作権法の趣旨からいって問題があります。

    著作権法第30条の規定というのは、「私的使用のための複製」といわれ、著作権の制限規定の最初に定められている規定ですが、そもそも、この著作権の制限規定というのは、著作者の持っている独占的・排他的といわれる、他人が著作物を使うことに対して許諾するかしないかを決定する権利を制限するもので、著作権法の目的である「文化的所産の公正な利用に留意」するためのものです。


    著作権法第30条(私的使用のための複製) (抜粋)

    著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内おいて使用することを目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

    一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

    (以下 略)



    この法第30条は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」ということでごく限られた、狭い範囲での使用が目的であり、一般の家庭でテレビから録音・録画するとか、FM放送から音楽をエア・チェックするとかのことを想定しております。閉鎖的で零細な使い方と表現する人もいます。

    したがって、同条一号に定めるように外部に置いてある誰でも簡単に複製できる機器を使って複製する場合は、私的使用のための複製には該当しないと定めています。これが原則です。例えば、ビデオレンタル店の高速ダビング機を使ってビデオ映画などを録音・録画するような場合は、これには該当せず権利者の許諾が必要になります。

    しかし、同じような自動複製機器でも、文献の複写となりますと、一方では、それができる機器はコンビニをはじめとしてあらゆるところに置いてあり、他方では、許諾を求めようとしても文献の数、権利者の数はあまりにも膨大過ぎます。権利を集中的に管理している公益社団法人日本複製権センターでもその体制が必ずしも十分でなく、文献の複写を違法と決め付けることも現段階ではできないということで、集中的権利処理体制が整備されるまでの経過措置として「当分の間」は、暫定的に「文書又は図画」についてはこの自動複製機器からは除外することを定めています(著作権法附則第5条の2)。したがって、コンビニ等で私的使用のために文献の全文のコピーをするのは現行法では適法となります。

    しかしながら、図書館という著作物の宝庫において厳しい要件を付けて著作物の一部分の複製のみしか認めていない法第31条の規定の趣旨や法第30条の改正規定と附則第5条の2の規定が制定された経緯からみれば、図書館にコイン式複写機を置いて図書館職員がノーチェックで全文コピーができるという考え方は、「文化的所産の公正な利用に留意」しつつ権利者の保護を図ることを目的とした著作権法を曲解しているものと言わざるを得ず、許されるものではありません。

    著作権法は、暫定的に「当分の間」は、除外することにしているだけあって、著作権法の本来の趣旨としては、本則どおり、誰でもが使用できる自動複製機器で複製する場合は、私的使用のための複製には該当しないと考えられるからです。

    Q4複写サービスができる「著作物の一部分」とは、どの範囲でしょうか?

    A4 「著作物の一部分」とはどんなに多くとも著作物全体の半分以下と解釈されています。

    100ページの単行本の小説であれば、最大50ページまでは複写しても良いことになります。 短篇小説や詩集などの編集著作物であれば、そこに掲載された短篇なり詩なりの個々の著作物の半分以下になります。

    図書館における複写サービスが争われた事件がありますが、ある事典の一項目全部について利用者が複写を請求したのに対して図書館側が断った事件で、裁判所は「原告の請求した本件複写請求部分は、著作物の全部に当たるものであって、「著作物の一部分」の複製物の提供を認める著作権法31条一号の規定に当たらないものというほかなく」と判示しており(東京地裁平成7年4月28日判決 著作権確認等請求事件、判例時報1531号129頁)、事典の一項目が著作物だと認定しております。

    言語の著作物以外の具体的なものとしては、地図の著作物の一部分はどの範囲になるかがありますが、見開き2ページで一著作物になっていれば、その半分の1ページは複写できることになります。ただ、複写の請求ができるのが「調査研究のため」となっていますのでその要件をクリアする利用者がどれほどいるでしょうか。

    絵画や写真の著作物は一部分では意味をなさない場合が多く、同一性保持権侵害の問題もあり得ますので、実際問題としては複写の対象にはなりにくいでしょう。

    なお、事典の一項目や短歌の一句のように全体の分量が少ない著作物については、複製を行うと一部分を超えて複写物ができてしまう場合があります。この件に関して、権利者と利用者との協議の末、2006年1月から、「同一紙面(原則として1頁を単位とする。)上に複製された複製対象物以外の部分(写り込み)については、権利者の理解を得て、遮蔽等の手段により複製の範囲から除外することを要しない。」旨のガイドラインが作成され、運用されています(国立大学図書館協会HP「関係資料集」の中の「複製物の写り込みに関するガイドライン」参照)。

    Q5定期刊行物に関する「発行後相当期間」とは、どの程度と考えたらいいのでしょうか?

    A5 「発行後相当期間」とは、通常の販売経路において当該定期刊行物の入手できる期間を意味しますので、その定期刊行物が月刊誌であれば、次号の月刊誌が発行されれば、前号は、相当期間を経過した定期刊行物と考えて良いでしょう。

    逆に言えば、少なくとも定期刊行物が発行されてから、次号が発行されるまでの間、要するに最新号については、個々の著作物の全文複写はできないことになります。もちろん、一部分の複写はできます。

    定期刊行物には、日刊、週刊、月刊、季刊、年刊などいろいろあります。年刊などについては、次号が発行されるまでが「相当期間」とするのはちょっと長すぎるような気がしますが、権利者(公益社団法人日本複製権センター)・使用者(大学図書館)との合意では、3ヵ月経ったら相当期間を経過したとみなしています。

    次号が発行された場合に相当期間を経過したものと判断しているのは、通常次号が発行されれば前の号は一応経済的役割が終わったということで権利者の利益も損ねないだろうとの考えに基づくものと思われます。

    図書館によっては、最新号にはカバーをしたり、付箋を付けるなりして、この定期刊行物は相当期間を過ぎておらず、全文コピーはできませんよとお知らせしている図書館もあるようです。

    なお、一部の専門雑誌では、巻末などにバックナンバーの紹介をしているものがありますが、出版物の取り寄せが必ずしも特殊な入手方法ではないことから考えると、バックナンバーの入手が可能なものについては、次号が発行されたからといっても相当期間を経過したと判断するのは難しいのではないでしょうか。

    Q6自館にない資料について利用者から複写請求があったので資料を所蔵している他の図書館に文献の複写依頼をして対応したいのですが、よろしいでしょうか?

    A6 いわゆるILL(Inter Library Loan) 「図書館間相互貸借」ということで、かつては図書の現物の貸借が主流だったと思いますが、現在では図書館間で文献複写の相互の依頼・受付が特に大学図書館では日常化しており、それ専門の係さえ置いている図書館もあります。

    この問題についての1984年に公表された文化庁の報告書では「利用者が求める著作物を所蔵している図書館等に直接複写申し込みを行う場合だけでなく、他の図書館等を介して申し込む事例が増えつつある。……しかしながら、法第31条が著作権者の利益を不当に害しない範囲において著作権者の権利行使に一定の制限を課しているという規定の趣旨から、このような実態を適法と解釈することは問題がある。」と記しており、関係者間でガイドラインを設定してその取り扱いを決める必要があると提言しています。

    この件に関しては、使用者側の国公私立大学図書館協力委員会と権利者側の一般社団法人出版者著作権管理機構と契約を結び、同じく一般社団法人学術著作権協会とは合意書を交わしてルール作りがなされています(国立大学図書館協会HP「関係資料集」の中の「大学図書館間協力における資料複製に関するガイドライン」参照)。

    そのガイドラインの内容は、複製の依頼を受けた図書館が、著作権法第31条の範囲内で複製物を一部郵送、ファックス送信又はインターネット送信をして、利用者に提供することを認めるというものです。ただし、提供者側には、利用者には紙面に再生された複製物のみを提供することや中間複製物を破棄することが義務付けられています。また、同一雑誌や同一書籍の複製依頼が多い資料については、購入努力義務も課せられています。

    なお、これとは別に、権利者と利用者との協議の末、2006年1月から、相互貸借で借りた資料を借り受けた側でコピーをして提供してもかまわないという「図書館間協力における現物貸借で借り受けた図書の複製に関するガイドライン」が作成され、これまで、借り受けた図書を一旦所蔵館に返却してから再びコピー依頼をして複製物の提供を受けるという煩わしさをなくすという合意がなされ、運用されています(国立大学図書館協会HP「関係資料集」参照)。

    Q7ビデオソフトを図書館の外に貸出してもかまいませんか。音楽CDの貸出とは違うのでしょうか?

    A7 ビデオソフトは通常映画の著作物と考えられており、図書館等の図書、雑誌、音楽CD等の資料の貸出とは違う扱いをされておりますのでご注意ください。

    映画の著作物には、他の著作物と違って「頒布権」という独特の権利があります。「頒布」というのは、有償であるか無償であるかを問わず複製物を譲渡又は貸与すること、とされております。

    この頒布権は、元々は劇場用映画の配給権に基づくものといわれ、映画製作者がどの映画館に何日間上映するために貸与するか等について決定する権利を持っているものです。現行法ではビデオソフトは映画の著作物と考えられておりますから、当然のことながら、ビデオソフトの権利者に頒布権があり、原則的には許諾を得ないと一般の利用者に貸出ができないことになります。

    映画以外の著作物に貸与権が認められた時の法改正で、営利を目的とせず、貸与を受ける者から料金を受けない場合には、権利者に無断で貸与をしてもよいことになりました。貸与権が認められた後も、図書の貸出や音楽CDの貸出を図書館が権利者に無断でできるのはこのためです。

    この法改正の際、映画の著作物の非営利、無料貸与についても規定されましたが、図書や音楽CDとは違って、こちらの方は、貸与のできる施設を政令で定める「映画フィルムその他の視聴覚資料を公衆の利用に供することを目的とする視聴覚教育施設その他の施設(注)」に限定し、権利者へ相当の額の補償金の支払いを義務付けました。

    その政令で定めた施設の中には、都道府県立や市区町村立の公共図書館が入っていますので、そこでは補償金の上乗せされた映画やビデオソフトの貸出ができることになります。

    この法改正がなされた当時から権利者側の映画製作者(ビデオソフトメーカー)等と使用者側の公共図書館等との間でこのことについての話し合いが持たれ、結果として、現在では各ビデオメーカーが「公共機関用」等とジャケットに印刷したり、シールを貼付したりして、直接又は流通事業者を通じて公共図書館等に「補償金」処理済みのビデオソフトを供給しています。また、一般社団法人日本映像ソフト協会でも、「補償金処理済み」と明示したシールを作成し、会員会社に供給しているようです。

    なお、大学図書館は、この政令には規定されていませんので、原則的には権利者の許諾を得て貸出をするということになると思われますが、多くの場合、公共図書館に準じた取り扱いがなされているようです。

    権利者と使用者で話し合いがついていない作品の貸出については、個別の問題として著作権処理をしなければなりません。権利者が貸出について許諾しなければ、貸し出せないことになります。


    (注) 著作権法施行令(映画の著作物の複製物の貸与が認められる施設)

    第2条の3 法第38条第5項の政令で定める施設は、次に掲げるものとする。

    一 国又は地方公共団体が設置する視聴覚教育施設

    二 図書館法第2条第1項の図書館

    三 前二号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は一般社団法人等が設置する施設で、映画フィルムその他の視聴覚資料を収集し、整理し、保存して公衆の利用に供する業務を行うもののうち、文化庁長官が指定するもの

    2 文化庁長官は、前項第三号の指定をしたときは、その旨を官報で告示する。


    Q8最近、図書館の雑誌の付録にCD-ROMやDVDが付いている場合がありますが、館外貸出をしてもかまいませんか?

    A8 CD-ROMやDVDの貸出ができるかどうかは、その媒体の中に、どういうコンテンツ、著作物が含まれているかにもよりますし、権利者がどのような条件を付けているかにもよります。

    Q7で説明しましたように、映画の効果に類似するような方法で表現された著作物が含まれていれば、映画の著作物として頒布権が働きますし、中身に著作物性がなければ全く問題にならないことになります。

    ある雑誌の場合の付録にCD-ROMが付いていた例では、「このディスクに収録したソフトウエアおよびデータはすべて著作権法上の保護を受けます。」と記されているほか、CD-ROMに収録されているプログラムを使用する際の注意事項として、このプログラムの中にはシェアウエアもフリーウエアも含まれていること、つまり使っても良いが使用料を払ってくださいというソフトも、無料で使っても良いというソフトも入っていることが記されています。この場合は、権利があることを主張しているわけですから、CD-ROMの中に、映画の著作物に該当するものが入っており、かつ、それがフリーウエアでない限りは頒布権が働きます。それ以外は頒布権が働かずに貸出は自由です。

    なお、Q7及び本問において映画の著作物の場合、当然のように「頒布権が働く。」と書いてきましたが、映画の著作物であっても、頒布権が働かない場合があるという判決が、2002年4月25日に最高裁判所から出されました。この場合は、中古のゲームソフトの販売に対して下された判決ですが、ゲームソフトのような一度に多数の者が楽しむものでない映画の著作物はいったん適法に譲渡されたことによって、その目的を達成したものとして権利は消尽し、もはや再譲渡には著作権の効力は及ばない、と判示しております。この最高裁判決後の2002年11月28日に下された東京高等裁判所の「中古のビデオソフトの販売に対する」判決では、この最高裁判決を援用し、著作権の行使が認められない(=権利が働かない)、という判断が示されています。

    このような判例の延長線上では、今後、付録に付いているような映像(映画の著作物)は、図書館が適正に購入したり譲り受ければ、その後、譲渡しようが、貸与しようが構わないということになりますが、早い機会に、立法的に明確にすることが望まれます。

    Q9市立の図書館で子どもたちに対してお話し会(朗読サービス)を、視覚障害者など障害を持っている市民に録音物の提供などのサービスをしようと考えています。著作権で注意すべきことはありますか?

    A9 「朗読サービス」と言えば小さな子どもたちを対象にしたお話し会や視覚障害者など障害を持っている方々に対して朗読する対面朗読などがあります。

    お話し会や対面朗読などのように一定の人数の利用者の前で、他人が発行している図書等を朗読することは、本来的には著作権の一つである「口述権」が働きます。口述とは「朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達することをいう。」と定義づけられておりますのでこの権利が働きます。

    しかし、著作権法第38条の制限規定に該当すれば、権利者の許諾を得ず、自由にサービスができます。すなわち、(1)営利を目的としない、(2)聴衆から料金を徴収しない、(3)朗読する人に報酬が支払われない、という3つの条件が揃った場合がそれです。

    図書館で、図書館員やボランティアの方たちが読み聞かせたりすることが、このような3条件に従って行われている限り、自由にできます。

    2006年5月に一般社団法人日本書籍出版協会児童書部会など児童書四者懇談会が公表している「お話会・読み聞かせ団体等による著作物の利用について」という手引きによりますと、次のように記載されております。

     「営利を目的とせず、かつ観客から料金を受けず、かつ実演・口述する人(児童書を朗読する人)に報酬が支払われない場合に限り無許諾で利用できる。なお、本手引きにおいては、実演・口述する人への交通費等の支払い、ボランティアの交通費・昼食代および資料費、会場費等のお話し会の開催にかかわる経費に充当するために観客から料金を受ける場合は、無許諾で利用できることとします。」(一般社団法人日本書籍出版協会HP「ガイドライン」参照)

    次に、「録音物の提供などのサービス」に移ります。

    従来、点字図書館等が行う録音については、同じように著作権の制限規定により権利者に無断で行ってよいとされていました(著作権法第37条)が、種々問題点もありました。それが、2009年の著作権法の改正により立法的解決が図られております。

    一つは、録音サービスなどを受けられる対象が、従来は、「視覚障害者」に限定されていましたが、この改正で、「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」に拡大されたことにより、発達障害や色覚障害など障害の種類によらず対象を広くしています。具体的には、「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」(公益社団法人日本図書館協会HP)をご覧ください。

    二つ目には、従来、点字図書館等に限られていた「録音などのできる施設等」が、この改正で、大学図書館や公共図書館、更には、NPO法人などもできるようになり、図書館員やボランティアの方々が従来行っていた権利者を探して許諾を求めるという煩わしさから解放されました。

    さらに、利用方法についても、従来の録音に限定されていたものを、複製一般やパソコンによる送信なども認めましたので、録音のほか、布の絵本にしたり、立体絵本にしたり、色を変更した書籍にするなど提供を受ける個々の障害者の障害の種類や程度に応じて、必要な方式での提供が可能となりました。

    ただし、権利者側等が許諾をして同じような方式で録音物等が提供されている場合には、それとの競合を避ける意味でも、権利者等の利益を阻害しないためにもそのような無断複製は認められないので注意する必要があります。

    なお、聴覚障害者等のために、音声を字幕等により複製、送信したり、貸出目的で映像に字幕等を付して複製することなども、新たに図書館等ができるように改正されました(著作権法第37条の2)。

    Q10デジタルカメラや携帯電話を使って資料を撮影する利用者がいますが、図書館としてはどう対応したらいいのでしょうか?

    A10Q3で書きましたように、著作権法には「私的使用のための複製」という規定があり、この規定に該当すれば、利用者は、著作権者に無断で複製することができます。

    そこでも書きましたように、図書館がコイン式複写機を設置して、何ら職員がチェックすることなく、極端に言えば、本の一冊丸々複製も可能という状況は、著作権法第31条の「図書館等における複製」という厳しい条件下で複製サービスを認めている趣旨からして違法といっていいでしょう。

    デジタルカメラや携帯電話の場合は、大量に撮影することは余り考えられず、例えば、料理本の1ページを写真にとるとか、新聞に載ったニュース記事などを撮影するような利用の仕方で、それほど、権利者の利益を侵すとまでは言えないようにも思えます。

    しかし、著作物の宝庫である図書館で、わずかずつであっても、自由にあれもこれも撮影しまくるというのは、あまり感心したことではありません。

    また、それをすることによって、周りで静かな環境で読書をしている他の利用者に迷惑を及ぼすことも当然考えられます。

    図書館として、そのようなデジタルカメラや携帯電話による撮影は認めないという方針をとるのであれば、それは、一つの見識といえましょう。著作権法で止めるのは難しいので、根拠としては、静かな読書環境を保ちたいという図書館という施設の管理権に基づいて、利用者に止めてもらうよう注意すべきでしょう。

    Q11当館では、「図書館だより」に絵本や本の表紙を写真に撮り、毎月新着図書の紹介として載せ、また、その「図書館だより」をそのままホームページにも載せておりますがよろしいでしょうか?

    A11 絵本や本の表紙には、画家や写真家、イラストレーター、装丁者の著作物が掲載されていることが多いと思います。本来的には、それらの著作者が著作権を持っているわけですが、出版社に権利が譲渡されているかも知れませんので、「図書館だより」に載せる場合には、取りあえず、出版社に問い合わせしたらいかがでしょうか?

    図書館としては、その本の宣伝をしてやるのだからとか、著作者のためにもなるのだからと、善意で載せている気持ちかも知れませんが、権利者の中には、無断で複製していてけしからんといってくる人がいるかも知れません。

    しかし、最近は「図書館だより」などで新刊紹介の際に、表紙を使うことについて、無断でもよいのでは、という見解が示されており、筆者もほぼこの見解に賛成です。

    例えば、出版ニュース社代表の清田義昭氏は「日本中で出版される新刊書の数は1年間で約8万点である。そのうち書評やブックガイドなどで紹介されるのはそれほど多くはない。表紙の写真が使われるのは、さらにその一部だ。著者、出版者、読者の三者にとってプラスになるのだから、本の紹介のために表紙の写真を利用することは自由であっていいと思うのだが、どうだろうか。」(「コピライト」559号)と述べています。

    また、Q9で紹介しましたように、一般社団法人日本書籍出版協会児童書部会など児童書四者懇談会が、「読み聞かせ団体等による著作物の利用について」という手引きを作成して、公表しておりますが、その中で、表紙の使用について次のように記しています。

    「ブックリスト、図書館内のお知らせ、書評等に、表紙をそのまま使用する場合は、商品を明示しているものとみなされ慣行上無許諾で使用できる。ただし、ホームページにのせる場合は、引用にあたる場合を除き出版社への確認が必要。」

    この見解によれば、この四者に関係する書籍については、「図書館だより」で使用することは問題なさそうですが、HPに載せる場合は、確認が必要のようですが……。

    また、新聞の書評欄のように、図書館においても、その書籍の書評を書いて、そこに、本の写真を載せるのは、著作権法第32条の「引用」の規定により、無断で行ってもかまわないものと思われます。

    Q12大学図書館では、「機関リポジトリ」を開設して当該大学の研究者の研究成果物を図書館のホームページに登録し、世界に情報発信することが数年前より行われていますが、著作権的に留意すべきことは何ですか?

    A12「機関リポジトリ」とは、大学等の機関が設置するインターネット上の電子書庫のことで、当該機関の研究者、学生、職員などその機関を構成している人たちの教育研究に関する著作物(成果物)を収集・蓄積・保存し、かつ、インターネットを通じて無償で学内外へ発信するシステムのことです。

    研究者等が大学図書館の開設する機関リポジトリに登録するということは、著作権の問題としては、複製権と公衆送信権が働きますので、その二つの権利について、研究者等の権利者から登録機関である大学図書館が許諾を得ることが必要になります。

    通常、著作権は、著作者が持っているので、図書館は、当該著作物の研究者等に許諾を得れば良いわけですから、これは問題ありませんが、権利が学会や出版社等に帰属(譲渡)されていると、ややこしくなります。また、現役の研究者等に許諾を求める場合は、比較的容易に許諾を得られますが、過去の紀要等に掲載された論文等について何十年も前の研究者等の論文をすべて登録したいという場合はなお大変です。

    著作権が学会に帰属していれば、その学会の了解を得ればよいわけで、出版社の場合も著作権を出版社に譲渡していてもリポジトリに登録することだけはあらかじめ認めている出版社もありますので、その学会や出版社の意向によることになります。

    紀要等の場合も、学内の学会や教授会など構成員の賛同を得たうえで、規定上、編集委員会などに著作権全部を帰属されることを明記することは可能です。また、著作権は、そのまま研究者が所有し、機関リポジトリに登録する権利だけを譲渡という形で編集委員会に帰属させることも可能です。

    しかし、このような場合は、現在又は将来の紀要について、構成員が、自ら考えて決めていくことでルール化されていくわけですが、そのルールを決めるのに参加していない、過去の研究者の問題があります。

    著作権は、原則的には、著者すなわち過去の研究者又はその権利承継者が持っていますので、遡って登録する際には、それらの人の了解を得なければ登録できません。紀要のそれぞれの論文について許諾を得るという大変な作業が待っていますが、地道に一つ一つ積み重ねていかねばなりません。

    Q13国立国会図書館の所蔵資料のデジタル化と公共図書館等への送信を可能とする著作権法の改正があったと聞きましたが、どのような内容ですか?

    A13国立国会図書館には、わが国唯一の国立の図書館として、国内で出版された図書等を収集、保存して、広く国民に提供するために、国立国会図書館法にも規定している「納本」という制度があります。

    毎年、国内では8万冊近い図書が刊行されますが、それを国立国会図書館が一括して集めることにより、後世に伝えていこうということで、一般の出版社は、1冊~2冊の、官公庁、大学などは、数冊から2、30冊の納本が義務づけられています。

    そして、この納本制度で集められた図書等をデジタル化して、原本を良好な状態のまま永久に保存することができるようにするために2009年、著作権法の改正が行われました(第31条第2項追加)。

    また、2012年の改正で、デジタル化資料のうち「絶版等資料」については公共図書館等への送信が認められました(第31条第3項追加)。第2項及び第3項は、次のように規定しています。


    著作権法第31条(図書館等における複製等) (抜粋)

    (第1項 略)(Q2参照)

    2 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるために、当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第33条の2第4項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。


    3 国立国会図書館は、絶版等資料に係る著作物について、図書館等において公衆に提示することを目的とする場合には、前項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができる。この場合において、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供することができる。


    同条第1項第2号には、保存のために必要があれば、図書館等に複製を認めておりますが、マイクロ化、デジタル化をした場合には、原本は廃棄しなければならないという解釈もあり、また、汚損や劣化が激しいと良好な状態での資料保存という国立国会図書館の本来の目的に達しえなくなる恐れがあるところから、第2項の追加改正は、原本を永久に保存することが前提で、納本直後の良好な状態の出版物のデジタル化が直ちにできるようにしたものです。

    国立国会図書館にのみ、このデジタル化を認めたのは、納本された原本を良好なまま後世に残すことが主目的ですから、館内閲覧や複写サービスなどはこのデータを使うことが基本になります。相互貸借などでデータではなくどうしても原本が必要な場合に限って、原本を使用することもありえましょう。

    第3項の送信できる機関は、第31条第1項の適用がある図書館等です。具体的には公共図書館や大学図書館です。高校以下の図書館は含まれません。

    そこで注意しなければならないのは、国会図書館でデジタル化された全ての資料が、送信できる対象になっているわけではなく、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料=「絶版等資料」という限定があるということです。

    国立国会図書館ホームページ(「図書館員の方へ」→「図書館向けデジタル化資料送信サービス」)によりますと、2014年1月21日からこのサービスが開始されており、現在約137万点(2015年7月現在)の資料が対象になっています。

    具体的には、1968年までに受け入れた図書のうち50万点、貴重書、江戸期・清代以前の和漢書等2万点、2000年までに発行された雑誌のうち73万点、1991年~2000年度に送付を受けた博士論文12万点が対象になっています。

    国会図書館から送信を受けた図書館等における利用方法としては、閲覧と複写の両方です。閲覧については、同一資料を複数の図書館等で同時にできます。また、複写については、当該図書館等が第31条第1項の複写サービスと同じように「著作物の一部分の複製物を一人につき一部提供する」ことになります。

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