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    データベースの法的保護に関する 1996年3月11日の 欧州議会及び理事会の指令96/9 / EC



    欧州議会および欧州連合理事会は
    、 欧州共同体を設立する条約、特にその第57条第2項、第66条および第100a条を考慮し、
    欧州委員会からの提案 *1を考慮し、
    経済社会評議会の意見*2 を考慮して、
    同条約第189b条に定められた手続*3 に従って立法する。

    (1) 現在、データベースはすべての加盟国で既存の法律上十分に保護されておらず、また、そのような保護はあっても異なる特徴を持っている。

    (2) 加盟国の立法が与えるデータベースに対する法的保護のこのような差異は、データベースに関する域内市場の機能に、とりわけ共同体全体にわたる調和的な法的枠組みを基礎としてオンラインデータベースの商品およびサービスを提供する自然人および法人の自由に直接的な悪影響を及ぼしている。また、ますます国際的に広がりつつあるこの分野に加盟国が新しい立法措置を導入するにつれて、このような差異は、より顕著になる可能性がある。

    (3) 域内市場の機能と共同体内の情報市場の発展に悪影響を与えない差異は除去または防止される必要はないが、域内市場の機能を歪める既存の差異を除去し新たな差異を防止することが必要である。

    (4) データベースの著作権保護は、立法や判例によって加盟国でさまざまな形式で存在する。保護の範囲と条件における立法上の差異が加盟国間で残存する場合には、このような調和ない知的財産権は、共同体内における商品またはサービスの自由な移動を妨げる効果を持つおそれがある。

    (5) 著作権は、依然として、データベースを作成した著作者に対する排他的権利の適切な形式である。


    *1 OJ No C 156, 23. 6. 1992, p. 4 およびOJ No C 308, 15. 11. 1993, p. 1.
    *2 OJ No C 19, 25. 1. 1993, p. 3.
    *3 1993年6月23日の欧州議会の意見(OJ No C 194, 19. 7. 1993, p. 144)、1995年7月10日の理事会の共通の立場(OJ No C 288, 30. 10. 1995, p. 14)、1995年12月14日の欧州議会の決定(OJ No C 17, 22 1. 1996)および1996年2月26日の理事会決定。

    (6) それにもかかわらず、不正競争に関する立法または判例に調和の取れた制度がない状況において、データベースコンテンツの無許諾抽出および/または再利用を防止するために、さらなる法的措置が必要である。

    (7) データベースの作成には、多大な人的、技術的および財政的資源の投資が必要であるが、このようなデータベースは、独自に同じものを設計する費用のごく一部でコピーまたはアクセスすることができる。

    (8) データベースコンテンツの無許諾抽出および/または再利用は、深刻な経済的および技術的結果をもたらすおそれのある行為となる。

    (9) データベースは、共同体内における情報市場の発展に不可欠なツールである。このツールは、他の多くの分野でも使用される。

    (10) 共同体および世界で、商取引および産業のすべての分野において毎年生成処理される情報量の指数関数的な増加は、すべての加盟国において先端情報処理システムへの投資を必要とする。

    (11) 現在、加盟国間、また共同体とデータベース作成において世界最大の第三国との間において、データベース分野への投資レベルには非常に大きな不均衡がある。

    (12) 最新の情報蓄積および処理システムへのこのような投資は、安定的かつ統一的な法的保護の枠組みがデータベースの作成者の権利を保護するために導入されない限り、共同体内で行われることはない。

    (13) この指令は、電子的、電磁的もしくは電気光学的なプロセスまたは類似のプロセスを含む手段によって配列、蓄積およびアクセスされる著作物、データその他の素材の集合物(「編集物」ともいわれる)を保護する。

    (14) この指令に基づく保護は、非電子的データベースに及ぶよう拡張されるべきである。

    (15) データベースが著作権で保護されるべきかどうかを判断するために使用される基準は、データベースコンテンツの選択または配列が著作者自身の知的創作であるという事実に基礎づけられなければならない。かかる保護は、データベースの構造に及ぶべきである。

    (16) 著作者の知的創作という意味での創作性(originality)以外の基準は、著作権による保護へのデータベースの適格性を判断するために適用されるべきではない。特に、美的または質的な基準は適用されるべきではない。

    (17) 「データベース」という用語は、文学的、芸術的、音楽的もしくはその他の著作物の集合物、または文書、音声、影像、数値、事実およびデータなどのその他の素材の集合物を含むと理解されなければならない。それは、体系的または系統的に配列され個別的にアクセスが可能である、独立した著作物、データまたはその他の素材の集合物に及ぶものでなければならない。このことは、一つの録音物または一つの視聴覚的、映画的、文学的もしくは音楽的な著作物自体は、この指令の範囲に含まれないことを意味する。

    (18) この指令は、著作者がその著作物をデータベースに含めることを許諾するか、どのような条件で許諾するか、とりわけ許諾を独占的にするかどうか、を決定する著作者の自由を害するものではない。特別な権利(sui generis right)によるデータベースの保護は、そのコンテンツに対する既存の権利を害するものではない。また、とりわけ著作者または関連権の保有者が非独占的契約に従ってその著作物または保護対象物の一部をデータベースに含めることを許諾した場合、第三者は、当該著作物または保護対象物をデータベースから抽出しまたは再利用しない限り、データベース作成者の特別な権利(sui generis right)に妨げられることなく、当該著作者または権利者から必要な同意を得ることを条件として当該著作物または保護対象物を、使用することができる。

    (19) 音楽実演の複数の録音物をCD上に収録した編集物は、原則として、この指令の範囲に入らない。というのは、編集物としては、著作権保護の条件を満たさず、また、特別な権利(sui generis right)に該当するために十分な実質的投資を伴わないからである。

    (20) この指令に基づく保護は、シソーラスや索引システムなど、一定のデータベースの操作または応答に必要な素材にも適用される場合がある。

    (21) この指令が規定する保護は、著作物、データまたはその他の素材が体系的または系統的に配列されているデータベースに関する。これらの素材が組織的方法で有形的に蓄積されていることは必要ではない。

    (22) この指令の意味においては、電子的データベースは、CD-ROMやCD-iなどのデバイスも含まれうる。

    (23) 「データベース」という用語は、コンピュータプログラムの法的保護に関する1991年5月14日の理事会指令91/250 / EEC *4によって保護されるデータベースの作成または操作に使用されるコンピュータプログラムに及ぶと解釈されてはならない。

    (24) 著作権および関連権の分野におけるデータベースの有償無償の貸与は、知的財産分野における有償無償の貸与権及び著作権に関連する一定の権利に関する1992年11月19日の理事会指令92/100 / EEC *5によって排他的に規律されている。


    *4 OJ No L 122, 17. 5. 1991, p. 42. Directive 93/98/EEC によって最後に修正された指令(OJ No L 290, 24. 11. 1993, p. 9.)
    *5 OJ No L 346, 27. 11. 1992, p. 61.


    (25) 著作権の期間は、著作権の保護期間及び関連する一定の権利の保護期間の調和に関する1993年10月29日の理事会指令93/98 / EEC *6によってすでに規律されている。

    (26) 著作権によって保護されている著作物および関連権によって保護されている保護対象物は、データベースに組み込まれている限り、上記にかかわらず、それぞれの排他的権利で従前どおり保護され、権利者または権利の承継人の許諾なくデータベースに組み込みもしくはデータベースから抽出することが許されない。

    (27) データベースに組み込まれた著作物に対する著作権および保護対象物に対する関連権は、データベースにおける著作物および保護対象物の選択または配列に対する別個の権利の存在によって、影響を受けることはない。

    (28) データベースを作成した自然人の人格権は著作者に帰属し、加盟国の法律ならびに文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約の規定に従って行使されなければならない。かかる人格権は、この指令の対象外にとどまる。

    (29) 従業員が作成したデータベースに適用する法的枠組みは、加盟国の裁量に任される。そのため、この指令は、加盟国が、従業員がその職務の遂行としてまたは使用者から与えられた指示に従ってデータベースを作成した場合に、使用者が契約に特段の定めのない限り当該データベースに対するすべての経済的権利を行使する地位を排他的に有すると、法律で規定することを妨げない。

    (30) 著作者の排他的権利は、その著作物がどのような方法で利用され、また、誰によって利用されるかを決定する権利、とりわけ許諾を受けていない者へその著作物を頒布することを管理する権利を含む。

    (31) 著作権によるデータベースの保護は、複製物の頒布以外の方法でデータベースを利用可能にすることが含まれる。

    (32) 加盟国は、この指令が規定する規制対象行為について、国内法の規定が少なくとも実質的に同等であるよう確保しなければならない。

    (33) 頒布権の消尽の問題は、サービス提供の分野に属するオンラインデータベースの場合には生じない。このことは、サービスを利用する者が権利者の同意を得て当該データベースの有形的複製物を作成した場合にも当てはまる。CD-ROMやCD-iの場合には、知的財産が有形的媒体に組み込まれ、いわば商品となるが、この場合とは異なり、すべてのオンラインサービスは、実際上、著作権に基づく許諾を必要とする行為である。


    *6 OJ No L 290, 24. 11. 1993, p. 9.


    (34) それにもかかわらず、一旦、権利者がデータベースの複製物を利用者に利用可能とすることを選択した場合には、その適法な利用者は、権利者との契約に定めた目的と方法において当該データベースにアクセスし使用することが、たとえかかるアクセスおよび使用が別途規制されている行為の実施を必要とするものであっても、可能とされなければならない。

    (35) 規制される行為に対する例外のリストは、この指令の対象とする著作権がデータベースコンテンツの選択または配列にのみ適用されるという事実を考慮して、規定されなければならない。加盟国は、一定の場合にはそのような例外を定めるか否かを選択することができる。しかし、この選択権は、ベルヌ条約に従って、かつ、例外がデータベース構造に関する範囲において、行使されなければならない。私的使用のための例外と私的目的の複製のための例外とは、区別されなければならない。後者は、一部の加盟国の国内法では記録用のメディアまたは記録装置に課金する規定を置いていることに関係する。

    (36) この指令の意味における「科学的研究」という用語は、自然科学と人文科学の両方を含む。

    (37) ベルヌ条約第10条第1項は、この指令によって影響を受けない。

    (38) デジタル記録技術がますます使用されるようになり、データベースの作成者は、他人がデータベースの配列に対する著作権を侵害しない同一コンテンツのデータベースを作成するために、データベースを無断で電子的に複製し再編する危険に曝されている。

    (39) データベースコンテンツの創作的な選択または配列を著作権で保護することを目的とするとともに、この指令は、利用者または競争者による一定の行動からデータベースの全部または実質的一部を保護することにより、コンテンツの取得および収集に費やされた金銭および専門知識の投入の結果を不正使用することから、データベース作成者の立場を保護することを、目的とする。

    (40) この特別な権利(sui generis right)の目的は、データベースのコンテンツを取得、検証または提供するための投資を一定期間、保護するよう確保することにある。当該投資には、財政的資源の手当ならびに/または時間、労力およびエネルギーの消費が含まれうる。

    (41) 特別な権利(sui generis right)の目的は、データベースの作成者に、そのデータベースコンテンツの全部または実質的な一部を無許諾で抽出および/または再利用することを防止することを選択できる権利を与えることにある。データベースの作成者は、投資に対する発議と責任を負う者である。これにより、作成者の定義から下請け業者は除外される。

    (42) 無許諾の抽出および/または再利用を防止する特別な権利は、利用者がその正当な権利を超え、かつそれによって投資に害を及ぼす行為に関するものである。コンテンツの全部または実質的な一部の抽出および/または再利用を禁止する権利は、ただ乗り的な競合製品の製造だけでなく、その行為によって投資に質的または量的な評価において重大な被害を引き起こす利用者に関するものである。

    (43) オンライン送信の場合、再利用を禁止する権利は、データベースに関しても、また、送信の受信者が権利者の同意を得て作成したデータベースの有形的複製物またはその一部に関しても、消尽しない。

    (44) データベースコンテンツを画面に表示するのに、そのコンテンツの全部または実質的な一部を別の媒体に恒久的または一時的に転送する必要がある場合、その行為には権利者の許諾を受ける必要がある。

    (45) 無許諾の抽出や再利用を防止する権利は、いかなる意味においても、単なる事実やデータに著作権の保護を拡張するものではない。

    (46) データベースから著作物、データまたは素材の全部または実質的な一部の無許諾による抽出および/または再利用を防止する権利の存在は、著作物、データまたは素材それ自体に対して新たな権利を創設するものではない。

    (47) 情報製品および情報サービスの供給者間の競争を図るよう、特別な権利(sui generis right)による保護は、優越的地位の濫用を助長する方法に、特に知的、記録的、技術的、経済的または商業的な付加価値を持つ新製品および新サービスの作成および頒布に関して、付与されてはならない。そのため、この指令の規定は、共同体または国内の競争ルールの適用を害するものではない。

    (48) データベースの作成者への報酬を確保する手段としてデータベースに適切かつ統一的な保護を与えるというこの指令の目的は、個人データ処理にかかる個人の保護及び当該データの自由な移動に関する1995年10月24日の欧州議会及び理事会の指令95/46 / EC*7 の目的とは異なる。後者は、基本権、特に人権及び基本的自由の保護のための欧州条約第8条において認められているプライバシー権を保護するよう設計された調和のあるルールを基礎として、個人データの自由な流通を保護するものである。この指令の規定は、データ保護立法を害するものではない。

    (49) データベースの全部または実質的な一部の抽出および/または再利用を防止する権利にもかかわらず、データベースの作成者または権利者がデータベースの合法的な利用者による実質的でない一部の抽出および再利用を妨げてはならないことが、規定されなければならない。しかし、当該利用者は、特別な権利(sui generis right)の保有者またはデータベースに含まれる著作物もしくは保護対象物に関する著作権もしくは関連権の保有者の正当な利益を不当に害してはならない。


    *7 OJ No L 281, 23. 11. 1995, p. 31.


    (50) 加盟国は、私的目的での抽出の場合、教育または科学的研究のための説明目的での抽出の場合、または、公共の安全ためにもしくは行政的もしくは司法的な手続の目的のために抽出もしくは再利用がなされる場合、無許諾によるデータベースコンテンツの実質的一部の抽出および/または再利用を防止する権利に対する例外を設けるか否かを選択する権利が与えらる。このような活動は、データベースの利用に対する作成者の排他的権利を害してはならず、また、その目的は商業的であってはならない。

    (51) 加盟国は、その選択により、データベースの正当な利用者が教育または科学的研究のための説明目的でデータベースの実質的一部を抽出することを許す場合には、その許諾を特定のカテゴリーの教育機関または科学的研究機関に限定することができる。

    (52) 加盟国は、この指令が規定する特別な権利(sui generis right)に相当する権利を規定する特別ルールを有する場合、新しい特別な権利に関する限り、当該ルールが従来から規定する例外を新たな権利に関して維持することが許される。

    (53) データベースの作成を完了した日付に関する立証責任は、データベースの作成者にある。

    (54) データベースコンテンツの実質的な改変が実質的で新たな投資であると見なされるべきであると主張する場合、基準を満たすことについての立証責任は、当該投資によるデータベースの作成者にある。

    (55) 新しい保護期間を生み出す実質的な新しい投資は、データベースコンテンツの実質的な検証を含みうる。

    (56) データベースに関する無許諾の抽出および/または再利用を防止する権利は、第三国が加盟国の国民または共同体の域内に常居所を有する者によって作成されたデータベースに対して同等の保護を与えている場合に限り、当該第三国の国民もしくは常居所者が作成者であるデータベースまたは条約上の意味において加盟国で設立されていない法人が作成したデータベースに適用される。

    (57) 加盟国の法律に基づく著作権その他の権利の侵害に対する救済に加えて、加盟国は、データベースコンテンツを無許諾で抽出および/または再利用する行為に対して適切な救済を与えなければならない。

    (58) この指令がデータベースの構造に対して与える著作権の保護ならびにそのコンテンツの無許諾の抽出および/または再利用に対して与える特別の権利に基づく保護に加えて、データベースの商品およびサービスの提供に関するその他の加盟国の法規定は、依然として適用される。

    (59) この指令は、視聴覚著作物からなるデータベースに対して、加盟国の法律が視聴覚番組の放送に関して認めるルールを適用することを妨げない。

    (60) 一部の加盟国は現在、著作権の枠組みで、この指令の定める著作権保護の基準に満たないデータベースを保護している。当該データベースがこの指令の定めるコンテンツの無許諾の抽出および/または再利用を防止するための保護の基準を満たすとしても、当該権利に基づく保護期間は、 現に有効な国内法の枠組みよりもかなり短い。データベースが著作権で保護されるかどうかを決定する基準を調和させることは、当該権利者が現に享受している保護期間を短縮する効果を持つものであってはならない。逸脱は、その趣旨で規定されなければならない。このような逸脱の効果は関係する加盟国の領域に限定されなければならない。

    以下のとおりこの指令を採択する。

    第I章 適用範囲

    第1条 適用範囲

    1. この指令は、あらゆる形式のデータベースの法的保護を対象とする。

    2. この指令においては、「データベース」とは、体系的または系統的な方法で配列された独立した著作物、データおよびその他の素材の集合物であって、電子的またはその他の手段によって個別にアクセスすることできるものをいう。

    3. この指令に基づく保護は、電子的手段でアクセス可能なデータベースの作成または操作に使用されるコンピュータプログラムには適用されない。

    第2条 適用範囲の制限

    この指令は、以下に関する共同体の規定を害することなく、適用される。

      (a) コンピュータプログラムの法的保護、
      (b) 知的財産の分野における有償無償の貸与権および著作権に関連する一定の権利、
      (c) 著作権および関連する一定の権利の保護期間。


    第Ⅱ章 著作権

    第3条 保護対象

    1. この指令に従って、コンテンツの選択または配置に基づいて著作者自身の知的創作を構成するデータベースは、著作権により保護される。その保護の適格性を判断するために他のいかなる基準も適用されてはならない。

    2. この指令が規定するデータベースに対する著作権の保護は、そのコンテンツに及ぶものではなく、またそのコンテンツ自体に与えられる権利を害するものではない。

    第4条 データベースの著作者

    1. データベースの著作者は、その基礎を創作した自然人もしくは自然人のグループ、または加盟国の法律が認める場合には、その法律で権利者として指定された法人とする。

    2. 加盟国の法律が集合著作物を認める場合、経済的権利は著作権を有する者が保有する。

    3. 自然人のグループが共同で創作したデータベースに関しては、排他的権利は共有される。

    第5条 制限される行為

    著作権で保護されるデータベースの表現に関して、データベースの著作者は、以下の行為を実行しまたは許諾する排他的権利を有する。

      (a) 手段および形式を問わず、全部または一部を一時的または永続的に複製すること。
      (b) 翻訳、翻案、編集およびその他の変更を行うこと。
      (c) データベースまたはその複製物を、形式を問わず、公衆に頒布すること。権利者によってまたはその同意を得てデータベースの複製物を共同体内で第一次販売することは、共同体内で当該複製物の再販売を管理する権利を消尽させる。
      (d) 公衆に向けて伝達、展示または実演すること。
      (e) (b)号に記載する行為の結果物を公衆に向けて複製、頒布、伝達、展示または実演すること。

    第6条 制限された行為の例外

    1. データベースまたはその複製物の適法な利用者が第5条に記載する行為を行うことは、それが当該適法な利用者による当該データベースのコンテンツへのアクセスおよび当該コンテンツの通常の使用の目的に必要である場合には、当該データベースの著作者の許諾を必要としない。適法な利用者がデータベースの一部のみを使用することが許諾されている場合には、この規定はその部分にのみ適用される。

    2. 加盟国は、以下の場合には、第5条に記載する権利に制限を定めるか否かを選択する権利を有する。

      (a) 非電子的データベースを私的目的のために複製する場合、
      (b) 出所が明示されかつ達成しようとする非商業的目的によって正当化される範囲に限られることを条件として、教育または科学的研究のための説明を唯一の目的として使用する場合、
      (c) 公共の安全の目的のためにまたは行政手続もしくは司法手続の目的のために使用する場合、
      (d) 国内法が従前から認める著作権に対するその他の制限に基づく使用であって、上記(a)号、(b)号および(c)号を害することのない場合。

    3. 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に従って、本条は、権利者の正当な利益を不当に害しまたはデータベースの通常の利用に反するような方法で適用されるような解釈がなされてはならない。

    第III章 特別な権利(SUI GENERIS RIGHT)

    第7条 保護の目的

    1. 加盟国は、コンテンツの取得、検証または提供のいずれかに質的および/または量的に実質的な投資がなされたことを示すデータベースについて、当該データベースの作成者に対して、当該データベースのコンテンツの全部または質的および/もしくは量的な評価において実質的な一部を抽出および/または再利用することを防止する権利を定めなければならない。

    2. この章においては、

      (a) 「抽出」とは、データベースのコンテンツの全部または実質的な一部を、その手段または形式を問わず、他の媒体に永続的または一時的に移転することをいう。
      (b) 「再利用」とは、複製物の頒布、有償貸与、オンラインまたはその他の送信方法によって、データベースコンテンツの全部または実質的な一部を公衆に利用可能にするすべての形式をいう。権利者によってまたはその同意を得てデータベースの複製物を共同体内で第一次販売することは、共同体内で当該複製物の再販売を管理する権利を消尽させる。
    公衆への無償貸与は、抽出または再利用に当たる行為ではない。

    3. 第1項に定める権利は、移転し、譲渡しまたは契約に基いて使用許諾することができる。

    4. 第1項に規定する権利は、当該データベースに著作権またはその他の権利を受ける保護適格性があるか否かを問わず、適用される。また、その権利は、当該データベースのコンテンツに著作権またはその他の権利を受ける保護適格性があるか否かを問わず、適用される。第1項に規定する権利に基づくデータベースの保護は、そのコンテンツに存在する権利を害してはならない。

    5. データベースコンテンツの非実質的一部の反復的かつ体系的な抽出および/または再利用は、それが当該データベースの通常の利用と相容れず、または、データベースの作成者の正当な利益を不当に害する行為である場合には、許されない。

    第8条 適法な利用者の権利および義務

    1. 方法のいかんを問わず公衆に利用可能にされたデータベースの作成者は、当該データベースの適法な利用者が目的のいかんを問わずコンテンツの質的および/または量的な評価において非実質的な一部を抽出および/または再利用することを防止してはならない。適法な利用者が当該データベースの一部のみを抽出および/または再利用することを許されている場合には、本項は、その部分にのみ適用される。

    2. 方法のいかんを問わず公衆に利用可能にされたデータベースの適法な利用者は、データベースの通常の利用と相容れない行為またはデータベースの作成者の正当な利益を不当に害する行為を行ってはならない。 3.何らかの方法で公衆に利用可能にされたデータベースの適法な利用者は、データベースに含まれる著作物または保護対象物に関して著作権または関連権の保有者を害してはならない。

    第9条 特別な権利(sui generis right)の例外

    加盟国は、方法のいかんを問わず公衆に利用可能にされたデータベースについて、その適法な利用者が以下の場合にその作成者の許諾なくそのコンテンツの実質的な一部を抽出または再利用できると規定することができる。

      (a) 非電子的データベースのコンテンツを私的目的のために抽出する場合、
      (b) 出所が明示されかつ達成しようとする非商業的目的によって正当化される範囲に限られることを条件として、教育または科学的研究のための説明目的で抽出する場合、
      (c) 公共の安全の目的のためにまたは行政手続もしくは司法手続の目的のために使用する場合。

    第10条 保護期間

    1. 第7条に規定する権利は、データベースの作成が完了した日に開始する。その権利は、完了日の翌年の1月1日から15年間で満了する。
    2. 第1項に定める期間の満了前に、方法のいかんを問わず公衆に利用可能にされたデータベースについては、その権利による保護期間は、当該データベースが最初に公衆に利用可能とされた日の翌年の1月1日から15年間で満了する。

    3. 継続的な付加、削除または改変によって生じる実質的な変更を含む、質的または量的な評価においてデータベースのコンテンツの実質的変更が、質的または量的な評価において実質的に新たな投資と考えられるデータベースを生じる場合には、当該投資によって生じるデータベースは、それ独自の保護期間の対象となる。

    第11条 特別な権利(sui generis right)に基づく保護の受益者

    1. 第7条に規定する権利は、データベースの作成者または権利者が加盟国の国民または共同体の域内に常居所を有する者の当該データベースに適用される。

    2. 第1項は、加盟国の法に従って設立された会社および法人であって共同体の域内に登録された事務所、本社または本店を有するものにも適用される。ただし、当該会社または会社が共同体の域内に登録された事務所のみを持っている場合には、その事業活動が見せかけではなく加盟国の経済と恒久的に結びついていなければならない。

    3. 第三国で作成されたデータベースに第7条に定める権利を拡張する協定であって、第1項および第2項の規定の範囲を超えるものは、欧州委員会の提案に基づき理事会が締結しなければならない。当該手続によってデータベースに与えられる保護期間は、第10条に従って利用可能な保護期間を超えることができない。

    第Ⅳ章 共通規定

    第12条 救済

    加盟国は、この指令が規定する権利の侵害に関して適切な保護を与えなければならない。

    第13条  その他の法規定の継続的な適用

    この指令は、とりわけデータベースに組み込まれているデータ、著作物またはその他の素材に存する著作権、著作権に関連権またはその他の権利、特許権、商標、意匠権、国宝の保護、制限的慣行および不正競争に関する法、営業秘密、警備保障、秘密保持義務、データ保護およびプライバシー、公文書へのアクセスならびに契約法に関する規定を害するものではない。

    第14条 所定期間外適用

    1. この指令に基づく著作権に関する保護は、第16条第1項に定める日より前に作成されたデータベースに関しても、その日にこの指令がデータベースの著作権保護に関して規定する要件を満たす場合には、適用されるものとする。

    2. 第1項にかかわらず、この指令の公表日に加盟国において著作権の枠組みで保護されるデータベースが第3条第1項に規定する著作権保護の適格基準を満たさない場合には、この指令は、当該加盟国において当該枠組みに基づいて与えられる保護期間を減縮することとなってはならない。

    3. この指令に基づく第7条に規定する権利の保護は、データベースの作成が第16条第1項に定める日の前15年以内に完了した当該データベースに関しても、その日に第7条に定め要件を満たす場合には、適用されるものとする。

    4. 第1項および第3項に規定する保護は、同項に定めるに日より前に完結した行為または取得された権利を害するものではない。

    5. データベースの作成が第16条第1項に定める日の前15年以内に完了した場合、第7条に規定する権利による保護期間は、当該日の翌年1月1日から15年間で満了する。

    第15条 特定の条項の拘束力

    第6条第1項および第8条に反する契約上の定めは無効とする。

    第16条 最終規定

    1. 加盟国は、1998年1月1日までに、この指令を遵守するために必要な法令、規制および管理規定を施行しなければならない。 加盟国がこれらの規定を採択する場合には、加盟国はこの指令への言及を含めるか、または公布の際にその言及を伴わなければならない。当該言及の方法は加盟国が定める。
    2. 加盟国は、欧州委員会に対して、この指令が規律する分野について採択する国内法規定の文言を伝達しなければならない。

    3. 第1項に定める日の後3年目の年末までに、またその後3年ごとに、欧州委員会は、欧州議会、理事会および経済社会評議会に、この指令の適用に関する報告書を提出しなければならず、その報告書には、とりわけ加盟国から提供された具体的情報に基づいて、特に第8条および第9条を含む特別な権利(sui generis right)の適用を調査し、また特に当該権利の適用が優越的地位の濫用またはその他自由競争の阻害を招き、非任意的ライセンス制度を含む適切な措置の採用を正当化するものであるかどうかを検証しなければならない。必要な場合には、欧州委員会は、データベース分野における発展に対応してこの指令を補正する提案を提出しなければならない。

    第17条

    この指令は加盟国に向けたものである。

    1996年3月11日、ストラスブールにて。
    欧州議会を代表して
    議長 K.ヘンシュ
    理事会を代表して
    議長 L. DINI



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