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    著作権及び関連権の集中管理ならびに域内市場でのオンライン使用のための
    音楽著作物に対する権利の多領域ライセンスに関する2014年2月26日の欧州議会
    及び理事会の指令2014/26 / EU
    (EEA関連のあるテキスト)



    欧州議会および欧州連合理事会は、
    欧州連合の機能に関する条約、特にその第50条第1項および第53条第1項ならびに第62条を考慮して、
    欧州委員会からの提案を考慮して、
    立法案を各国議会に提示した後に、
    欧州経済社会評議会*1 の意見を考慮して、
    通常の立法手続に従って立法する*2

    (1) 著作権および関連権の分野で採択された欧州連合の指令は、すでに権利者に高いレベルの保護と、それに基づいてこれらの権利が保護するコンテンツを利用することができる枠組みを提供している。これらの指令は、創造性の開発と維持に貢献している。競争が歪められていない域内市場では、イノベーションと知的創造を保護することは、革新的なサービスと製品への投資をも促進する。

    (2) 書籍、視聴覚制作物、録音された音楽およびそれらに関連するサービスなど、著作権および関連権によって保護されるコンテンツの流布には、著作者、実演家、制作者および出版社など、著作権および関連権の様々な権利者からライセンスを受ける必要がある。加盟国が特段の定めをしない限り、権利者は、欧州連合の法ならびに欧州連合およびその加盟国が国際法上負う義務に従って、通常、個人で権利管理するか集中管理団体による管理管理するかを選択する。著作権および関連権の管理は、利用者に対するライセンスの付与、利用者の審査、権利使用に対する監視、著作権および関連権の行使、権利利用から得られた収入の徴収ならびに権利者に対する支払額の分配を含む。集中管理団体は、権利者が、国外市場を含めて自分自身では権利を管理または行使できないような使用からも、報酬と取得することを可能にする。

    (3) 欧州連合の機能に関する条約(TFEU)第167条は、加盟国および地域の多様性を尊重し、 同時に、共通の文化遺産を前面に押し出しつつ、欧州連合に対して、その活動において文化的多様性を考慮に入れ、また、加盟国の文化の開花に貢献することを求めている。集中管理団体は、人気しかない管理作品およびあまり人気のない管理作品でも市場にアクセスできるようにし、また権利者および公衆のために社会的、文化的および教育的なサービスを提供することによって、文化的表現の多様性の促進者としての役割を果たしており、また果たし続けなければならない。

    (4) 集中管理団体は、欧州連合内で設立された場合、他の加盟国に居住しもしくは設立された権利者を代理するときまたは他の加盟国に居住しもしくは設立された利用者にライセンスを与えるときは、上記条約の規定する自由を享受することができなければならない。

    (5) 集中管理団体の機能を規律する国内規範、とりわけその会員および権利者に対する透明性および説明責任に関する国内規範には、重大な差異がある。このことは、多くの場合に、とりわけ国外の権利者がその権利を行使しようとする場合に困難を、また、回収した収入のお粗末な財務管理を招いている。集中管理団体の機能における問題は、域内市場にわたる著作権および関連権の利用における不効率ならびに権利管理団体の会員、権利者および利用者に損害を生じさせる。

    (6) 集中管理団体の機能を改良する必要性は、欧州委員会勧告2005/737 / EC*3 においてすでに確認されている。この勧告は、権利者が集中管理団体を選択する自由、権利者群の平等な扱いおよび利用料の公平な分配など、多くの原則を定めた。この勧告は、集中管理団体が利用者に料金と管理作品について両者間での交渉の前に十分な情報を提供することを要求した。またこの勧告は、説明責任、集中管理団体の意思決定機関における権利者代表、および紛争解決に関する勧告を含んでいた。しかし、勧告の実施は一様ではない。


    *1 OJ C 44, 15.2.2013, p. 104
    *2 2014年2月4日の欧州議会の見解(官報未掲載)および2014年2月20日の理事会の決定。
    *3 合法的なオンライン音楽サービスのための著作権および関連権の集団的多国間管理に関する2005年5月18日の欧州委員会勧告2005/737 / EC (OJ L 276, 21.10.2005, p. 54)。

    (7) 集中管理団体の会員、権利者および第三者の利益を保護するためには、著作権管理および音楽著作物に対するオンライン権についての多領域ライセンスに関する加盟国の法は、欧州連合全体において均一な保護制度を持つとの観点から調整されることが必要である。 それゆえ、この指令は、TFEU第50条第1項にその法的根拠を置かなければならない。

    (8) この指令の目的は、集中管理団体による著作権および関連権の管理活動へのアクセス、その内部統制の方法、ならびに監督機構に関する各国国内ルールを調整し、また、それによって法的根拠をTFEU第53条第1項に置くことにある。さらに、欧州連合にわたるサービスを提供する部門に関係するので、この指令は、TFEU第62条第1項にその法的根拠を置かなければならない。

    (9) この指令の目的は、高い水準の内部統制、財務管理、透明性および報告を確保するために、集中管理団体に適用する要件を定めるものである。しかし、これは、加盟国がその領域内で設立された集中管理団体に関して、この指令第II編に規定するよりも厳格な基準を、それが欧州連合の法と整合する限り、制定し維持することを妨げるものではない。 

    (10) この指令のいかなる規定も、加盟国が、欧州連合外で設立され当該加盟国で活動する集中管理団体に対して同一または類似の規定を適用することを排除するものではない。

    (11) この指令のいかなる規定も、集中管理団体が、平等、無差別および透明性のある単一料金請求の目的など、利用者へのライセンス手続を可能にし、改良しまた簡易化するための権利管理、またこの指令の第III編に規定する以外の領域においても多領域ライセンスを提供するための権利管理の分野において、TFEU第101条および102条の定める競争規範に従って、他の集中管理団体と管理委託契約を結ぶことを排除するものではない。P">この指令のいかなる規定も、集中管理団体が、平等、無差別および透明性のある単一料金請求の目的など、利用者へのライセンス手続を可能にし、改良しまた簡易化するための権利管理、またこの指令の第III編に規定する以外の領域においても多領域ライセンスを提供するための権利管理の分野において、TFEU第101条および102条の定める競争規範に従って、他の集中管理団体と管理委託契約を結ぶことを排除するものではない。

    (12) この指令は、第III編(多領域オンライン使用について音楽著作物に対する著作者の権利を管理する集中管理団体にのみ適用がある)を除いて、すべての集団管理団体に適用されるが、個人管理、集中管理団体の代表者と利用者との間の契約の拡張された効果(すなわち拡大集中許諾、強制的集中管理、委託の法的推定および集中管理団体への権利の委託および移転)など、加盟国における権利管理に関する制度を害するものではない。

    (13) この指令は、加盟国が、その領域内において、法律、規則またはその他同様の効果を持つ制度によって、欧州議会および理事会の指令2001/29 / EC *4の規定する複製権の例外および権利制限に対する権利者への公正な補償請求権ならびに欧州議会および理事会の指令2006/115 / EC*5の規定する公衆貸与に関する排他的権利の制限に対する権利者の報酬請求権、ならびにそれらの徴収に関してその条件を決定する能力に、影響を与えるものではない。


    *4 情報社会における著作権および関連する権利の特定の側面の調和に関する欧州議会および2001年5月22日の理事会の指令2001/29 / EC (OJ L 167, 22.6.2001, p. 10)。
    *5 2006年12月12日の欧州議会および理事会の2006年12月12日の理事会の指令2006/115 / ECで、レンタル権、貸与権、および知的財産権の分野における著作権に関連する特定の権利(OJ L 376, 27.12.2006, p. 28)。

    (14) この指令は、集中管理団体が特定の法形式を取ることを要求するものではない。実際、集中管理団体は、社団、協同組合または株式会社など様々な法形式で運営されており、著作権および関連権の保有者またはこのような権利者を代表する団体によって管理または所有されている。しかし、一部の例外的な事例では、集中管理団体の法形式により、所有または管理の要素が存在しない。これは、たとえば、財団の場合であり、そこでは会員が存在しない。それであっても、この指令の規定はこのような集中管理団体にも適用されなければならない。同様に、加盟国は、法形式の選択によって、この指令に基づく義務の迂回を防止するよう適切な措置を講じなければならない。権利者を代表する団体が集中管理団体の会員である場合に、その団体が集中管理団体や権利者の社団や、協同組合やその他の団体でありうることに、注意を要する。

    (15) 権利者は、自由にその権利の管理を独立管理団体に委託できなければならない。このような独立管理団体は、特に集中管理団体が権利者によって所有または管理されていないので、集中管理団体とは区別される商業的団体である。しかし、そのような独立管理団体が集中管理団体と同じ活動を実行する範囲においては、これに委託する権利者、集中管理団体、利用者および公衆に一定の情報を提供する義務を負わなければならない。

    (16) 視聴覚物制作者、レコード制作者および放送局は、彼ら自身の権利のほか、たとえば実演家から個別交渉契約ベースで譲渡された権利をライセンスし、また自己のために利用する。書籍、音楽または新聞の出版社は、個別交渉契約ベースで譲渡された権利をライセンスし、また自己のために利用する。それゆえ、視聴覚物制作者、レコード制作者、放送局および出版社は、「独立管理団体」とみなされてはならない。さらに、著作者や実演家のマネージャーおよび集中管理団体との関係において媒介し権利者を代理するエージェントは、料金を設定し、ライセンスを付与しまたは利用者から金銭を徴収するという意味において権利を管理するのではないので、「独立管理団体」とみなされてはならない。

    (17) 集中管理団体は、自由に、利用者への請求や権利者への分配など一定の活動について、子会社や管理下の他の団体に委託することを選択できなければならない。その場合、集中管理団体が直接実行しておれば適用されるであろうこの指令の規定は、当該子会社や管理下の他の団体に適用されなければならない。

    (18) 著作権および関連権の保有者が、それらの権利が集中管理されている場合に域内市場で十分に利益を得ることができ、かつその権利を行使する自由が不当に害されることがないようにするために、集中管理団体法は適切な保護措置を含む必要がある。さらに、集中管理団体は、その管理サービスを提供するに際して、権利者を国籍、居住地または設立場所に基づいて直接的にまたは間接的に差別してはならない。

    (19) TFEUで確立された自由を考慮して、著作権および関連権の集中管理には、権利者が自由に、その権利(その権利が公衆伝達権や複製権であるか、放送、上演またはオンライン配信のための複製のような利用形態に関連する権利の種類であるかは、権利者の選択しようとする集中管理団体がすでにそのような権利または権利の種類を管理している場合には、問われることなく)について集中管理団体を選択できることが求められる。
    集中管理団体が管理する権利、権利の種類、著作物の種類および対象物は、法令ですでに決定されているのでなければ、当該団体の会員による総会によって決定されなければならない。当該権利と権利の種類は、特に集中管理団体が管理する権利の種類とそれが運営する創作部門を考慮して、権利者が著作物その他の保護対象物を処分する自由と、集中管理団体が権利を効果的に管理する能力とのバランスを取るよう決定されることが重要である。当該バランスを適切に考慮すると、集中管理団体、他の事業者または権利者の国籍、居住地または設立地がどの加盟国であろうとも、権利者は、集中管理団体からこのような権利または権利の種類を取り戻すことおよび当該権利を個別に管理しまたはその全部もしくは一部を他の集中管理団体もしくは他の事業者に委託もしくは移転することができることが容易にできなければならない。加盟国が、欧州連合の法ならびに欧州連合および加盟国の国際的義務に従って、権利の強制的集中管理を定める場合、権利者の選択権は、他の集中管理団体に限定される。
    文芸、音楽または写真の著作物など様々な種類の著作物その他の保護対象物を管理する集中管理団体は、様々な種類の著作物およびその他の保護対象物の管理に関して、権利者にもこの柔軟性を与えなければならない。非商業的使用に関する限り、加盟国は、権利者がこのような使用にライセンスを与える権利を行使できるよう集中管理団体に必要な措置を執る義務を定めなければならない。当該措置には、とりわけ当該権利の行使に付帯する条件および当該条件の構成員への情報提供に関して集中管理団体が決定することを含む。集中管理団体は、権利者に選択できる権利を告知し、権利者が可能な限り簡易にその選択にかかる権利を行使させなければならない。集中管理団体にすでに委託した権利者は、当該団体のウェブサイトを経由して告知されてもよい。権利、権利の種類または著作物およびその他の保護対象物の種類ごとの管理を委託することに権利者が同意するための要件は、国内法に定める条件に従って権利者が黙示の許諾によって後に提案された修正を受諾することを妨げてはならない。権利者による契約の終了または取消が当該終了または取消前に付与されたライセンスに対しても即時効力を生ずるとする契約条件も、当該終了または取消後も一定期間効力を有するとの契約条件も、この指令は契約条件としての有効性を排除するものではない。しかし、このような契約条件は、この指令の完全な適用を妨げるものとして創設されてはならない。この指令は、権利者が非営利目的を含めてその権利を個別的に管理する可能性を害するものではない。

    (20) 集中管理団体の会員資格は、権利の行使に関する契約によって集中管理団体が管理する権利からの収入の分配を受けまた集中管理団体から収入を徴収する権限を持つ出版社に関しても、客観的で透明性のある差別のない基準に基づかなければならない。当該基準は、集中管理団体に、権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類がその管理の活動範囲に入らない者を会員に受け入れることを義務づけるものではない。集中管理団体が保持する記録は、その会員および当該団体が権利者からの授権に基づいて代理する権利者について、その身元および所在の確認のために利用可能にされなければならない。

    (21) 権利を集中管理団体に直接委託するが会員要件を満たさない権利者を保護するために、会員に関するこの指令の一定の規定はこのような権利者にも適用することが必要であるとすることが適当である。加盟国は、このような権利者にも集中管理団体の意思決定手続に参加する権利を与えることができなければならない。

    (22) 集中管理団体は、委託する権利者の共同利益を最優先に行動しなければならない。それゆえ、集中管理団体の会員が当該団体の意思決定過程に参加することによってその会員資格を行使しうる制度を定めなければならない。集中管理団体の中には、制作者や実演家など、委託する権利者の種類の違いによって異なる種類の会員資格を定めるものがある。意思決定過程において当該異なる会員資格が持つ代表権は、公正で均衡の取れたものでなければならない。総会の運営に関する規定がない場合には、集中管理団体の総会に関する規範の実効性は、損なわれることとなる。したがって、総会が定期的かつ少なくとも年1回開催され、集中管理団体における最も重要な決定は総会によってなされるようにする必要がある。

    (23) 集中管理団体のすべての会員は、会員総会に参加し投票することが許されなければならない。その権利の行使は、公正かつ相当な制限のみを受けるのでなければならない。例外的場合においては、集中管理団体は、財団形式で設立され会員がいない。このような場合には、会員総会の権限は、監督権限を託された機関によって行使されなければならない。集中管理団体が株式会社でありその社員が権利者の協会である場合のように、集中管理団体に権利者から委託された事業者が会員として入っている場合には、加盟国は、会員総会の全部または一部の権限が当該権利者の総会によって行使されると定めることができる。会員の総会は、少なくとも集中管理団体の権利収入の使用に関して、管理活動の大枠を定める権限を持っていなければならない。しかし、このことは、加盟国が、たとえば投資活動、合併または資金貸与の禁止を含めてより厳格な規範を定める余地を害するものではない。集中管理団体は、総会への会員の積極的な参加を促進しなければならない。投票権の行使は、総会に出席する会員にも出席しない会員にも可能にしなければならない。電子的手段によるその権利の行使を可能にするほか、会員は、代理人を通じて会員総会に参加し投票することが許されなければならない。代理人による投票は、利益相反の場合には制限されなければならない。同時に、加盟国は、代理人による投票が意思決定への適切かつ効果的な参加を害さない場合に限って、代理人に関する制限を定めなければならない。特に、投票代理人の任命は、集中管理団体がどの加盟国において設立されたかにかかわらず、意思決定過程への会員による適切かつ効果的な参加に有用であり、権利者がその選択によって集中管理団体に参加する真実の機会を持つことを可能にする。

    (24) 会員は、集中管理団体の経営に対する継続的な監視に参加できることができなければならない。そのために、集中管理団体は、その組織構造に適切な監督機能を備え、会員に当該機能を行使する機関に代表者を参加させることができなければならない。集中管理団体の組織構造によっては、監督機能は、監督委員会のような独立した機関によって、または集中管理団体の事業経営に当たらない役員の一部もしくは全部によって行使されることもあり得る。会員による公正で均衡の取れた参加の要件は、集中管理団体が監督機能を果たすために第三者(専門的な知見を有する人や会員要件を満たさない権利者または当該団体に直接には委託していないが集中管理団体の会員である団体を会して委託する権利者を含む)を任命することを妨げるものではない。

    (25) 健全な管理の観点から、集中管理団体の経営は独立していなければならない。経営者は、役員として選任されようと契約に基づいて集中管理団体に委任または雇用されていようと、就任前にまたその後も毎年、自己利益と当該団体に委託する権利者の利益との間に利益相反があるか否かを宣言することが求められなければならない。これに関する毎年の報告書も、監督機能を行使する人によって作成されなければならない。加盟国は、集中管理団体が当該報告書を公表しまたは公的機関に提出することを義務づけてもよい。

    (26) 集中管理団体は、権利者から委任された権利の行使から得た収入を徴収、管理および分配する。当該収入は、最終的には権利者に帰属するが、当該権利者は、当該団体と直接に法的関係にある場合も、集中管理団体の会員である団体または管理委託契約を介して代理される場合もある。それゆえ、集中管理団体は、収入の徴収、管理および分配に最善の注意を払うことが重要である。正確な分配は、集中管理団体が会員、ライセンスならびに著作物およびその他保護対象物の使用について適切な記録を維持する場合にのみ可能である。権利の効率的な集中管理に必要な関連データも、権利者および利用者から提供され、集中管理団体によって確認されなければならない。

    (27) 徴収され権利者に帰属すべき金銭は、団体が持つ固有の財産と区分され口座において別個に保管されなければならない。加盟国が当該金銭の投資についてより厳格な規範(権利収入を投資することの禁止を含む)を定めることを害するものではないが、このことは、集中管理団体の一般的な投資およびリスク管理方針に従って実行されなければならない。権利者の権利に対する高度なレベルの保護を維持し当該権利の行使から生ずる収入が権利者の利益に帰着するようにするために、集中管理団体が行い保持する投資は、当該団体に慎重に振る舞うことを義務づけながら最も確実で効果的な投資方針に基づいて投資を決定できる基準に従って、管理されなければならない。このことは、集中管理団体が、投資された権利収入がさらされるリスクの正確な性質および期間に適合し、権利者に帰属する権利収入を不当に害するものではない資産分散を選択できなければならない。

    (28) 権利者はその権利の利用に対して報酬を受け取る権利を持つので、管理手数料は、権利管理において正当な費用を超えないこと、また管理手数料以外の控除、たとえば社会的、文化的または教育的な目的のための控除は、集中管理団体の会員によって決定されなければならないことが重要である。集中管理団体は、このような控除を規定する規範に関して権利者に対して透明でなければならない。同一の要件は、権利行使による収入を奨学金のような共同分配に使うとの決定にも適用されなければならない。権利者は、このような控除によって資金提供された社会的、文化的または教育的サービスに差別されることなく、アクセスできなければならない。この指令が規制しない分野に関してこのような控除が欧州連合の法を遵守する限り、この指令は、集中管理団体が権利者に社会的サービスを提供するための控除のように、国内法に基づく控除に影響を与えるものではない。

    (29) 個々の権利者、また場合によっては権利者群に帰属すべき金銭の分配および支払いは、権利者を代理する他の事業者を介して実行される場合であっても、適時に、また当該集中管理団体の分配に関する一般方針に従って実行されなければならない。集中管理団体の支配の及ばない客観的理由のみが、権利者に帰属すべき金銭の分配および支払の遅延を正当化することができる。それゆえ、権利収入が満期の定めある投資に支出されたというような状況は、当該遅延に対する有効な理由とはならない。当該客観的理由が生じた場合に、適時分配ならびに権利者の身元確認および効果的な調査を確保する規範を決定することは、加盟国に任せることが適切である。権利者に帰属する金銭が適切かつ効果的に分配されるようにするために、集中管理団体に問題の権利者の身元と所在を誠実に確認する合理的かつ慎重な手段を執ることを求めることが必要であるが、加盟国がより厳格な規範を定めることを妨げるものではない。集中管理団体の会員が、国内法で許される範囲内で、分配を受ける権利者の身元または所在が確認できない場合に、その金銭の使い道について決定することも適切である。

    (30) 集中管理団体は、他の団体との管理委託契約に基づいて、権利を管理しその行使からの収入を徴収する。他の集中管理団体の会員の権利を守るために、集中管理団体は、管理委託契約に基づいて管理する権利と権利者に代わって直接管理する権利とを区別してはならない。また、集中管理団体は、他の集中管理団体の明示の同意がなければ、管理手数料に関する控除を除いて、他の団体に代わって権利収入から控除することが許されてはならない。集中管理団体に対して、自己の固有の会員と受託する非会員への分配および支払の時よりも遅れることなく、他の団体に管理委託契約に基づいて分配および支払を行うよう、義務づけることも適切である。さらに、受領した団体は、つぎに、委託権利者に対して遅滞なく金銭を分配することを義務づけられなければならない。

    (31) ライセンスにおける公正かつ無差別の商業条件は、利用者が集中管理団体の管理する著作物およびその他の保護対象物に対するライセンスを受けることができるようにし、また権利者への適切な報酬を確保するために、特に重要である。それゆえ、集中管理団体は、誠実にライセンス契約交渉を行い、客観的で無差別の基準に基づいて決定される料金の適用を受けなければならない。集中管理団体が決定する使用料金および報酬額はとりわけ特定の状況下において権利使用の経済的価値に関して合理的であるよう義務づけることは、適切である。最後に、集中管理団体は、利用者からのライセンスの申込みに対して不当に遅延することなく回答しなければならない。

    (32) デジタル環境下において、集中管理団体は、通常、その管理作品をまったく新しい利用態様とビジネスモデルでライセンスすることが求められる。このような場合には、当該ライセンスの発展に役立つ環境を促進するために、競争法規範の適用を害するものではないが、集中管理団体は、当該ライセンス条件が他のライセンスの条件を決定する上での先例に使用されるリスクを伴うことなく、可能な限り速やかに革新的なオンラインサービスに適する個別的ライセンスを提供するに必要な柔軟性を持たなければならない。

    (33) 集中管理団体がこの指令に定める義務を順守することができるよう、利用者は、集中管理団体が委託を受けた権利の使用に関する情報を当該団体に提供しなければならない。この義務は、取引、事業、職業または専門職に当たらない目的で活動する自然人には適用されてはならならず、それゆえそのような者はこの指令でいう利用者の定義には該当しない。さらに、集中管理団体が必要とする情報は、中小企業の特定の状況を考慮の上、集中管理団体がその機能を果たすために合理的かつ必要で利用者が対応できるものに限定されなければならない。当該義務は、集中管理団体と利用者との間の契約に含めることも可能であるが、このことは情報に対する国内法上の権利を排除するものではない。利用者による情報提供に適用される期限は、集中管理団体が権利者に帰属する金銭の分配のために定められる期限を履行できるようなものでなければならない。この指令は、加盟国がその領域内に設立された集中管理団体に共同請求書を発行することを求めることを妨げるものではない。

    (34) 集中管理団体による権利管理に対する権利者、利用者および他の集中管理団体の信頼を高めるために、各集中管理団体は、特定の透明性要件を遵守しなければならない。それゆえ、各集中管理団体または権利者に帰属すべき金銭の配分または支払について責任を負う団体であるその会員は、分配または支払われるべき金額および控除額など、一定の情報を個々の権利者に少なくとも年に一度は提供することが必要である。集中管理団体は、管理委託契約に基づいて権利を委託している他の集中管理団体に対して、財務情報を含む十分な情報を提供することも必要である。

    (35) 集中管理団体の活動範囲および委託を受けている著作物およびその他保護対象物に関する情報について権利者、他の集中管理団体および利用者がアクセスしうるよう、集中管理団体は、正当な理由のある要請に対してこれらの問題に関する情報を提供しなければならない。合理的な手数料が当該サービスに課すことができるかまたはどの範囲でできることとするかの問題は、国内法に委ねられるべきである。各集中管理団体は、とりわけ定款ならびに管理手数料、控除額およびし料金に関する一般方針を含む、その団体の構成および活動実施方法についての情報を公開することも必要である。

    (36) 権利者が集中管理団体の各活動を監視し比較する立場にあることを確保しうるよう、当該団体は、その活動に特化した比較可能な監査を受けた財務情報を含む年次透明性報告書を公表しなければならない。集中管理団体は、社会的、文化的および教育的サービスに支出した金銭の使用について、年次透明性報告書の一部を構成する、年次特別報告書をも公表しなければならない。この指令は、集中管理団体が、年次透明性報告書に必要な情報を単一の文書(たとえば年次財務諸表)または別の報告書にて公表することを妨げるものではない。

    (37) 消費者が音楽をダウンロードしまたはストリーミングモードで聴くことのできる音楽サービスや、音楽が重要な要素である映画やゲームへのアクセスを提供するその他のサービスなど、音楽著作物品を利用するオンラインサービスの提供者は、最初に当該著作物を使用する権利を取得しなければならない。指令2001/29 / ECは、ライセンスを音楽著作物のオンライン利用について権利ごとに取得することを必要としている。著作者に関しては、当該権利は、音楽著作物の複製権および公衆伝達権(公衆利用可能化権を含む)である。当該権利は、著作者や音楽出版社のような個々の権利者自身が、または集中管理サービスを権利者に提供する集中管理団体が、管理することができる。さまざまな集中管理団体が著作者の複製権および公衆伝達権を管理できる。さらに、権利者の多くは、同一の著作物に対する権利についてさまざまな集中管理団体に委託しそれぞれに当該著作物に対する権利の一部をライセンスさせている。オンラインサービスを提供する利用者は、音楽著作物を広範囲にわたって選択することを消費者に可能にするが、様々の権利者および集中管理団体から著作物に対する権利を集める必要がある。

    (38) インターネットには国境がないが、欧州連合内の音楽サービスのオンライン市場は依然として細分化されており、デジタル単一市場はまだ完全には達成されていない。欧州における権利の集中管理に伴う複雑さと困難さが、オンライン音楽サービスにおける欧州デジタル市場の細分化を悪化させていることが多い。この状況は、デジタルコンテンツやそれに伴う革新的サービスへのアクセス(国境を越えたそれを含む)に対する消費者の急速に高まる需要とは、際だった対照をなしている。

    (39) 欧州委員会の勧告2005/737 / ECは、合法的なオンライン音楽サービスの提供のための、著作権および関連権の欧州連合レベルにおける管理により適した、新しい規制環境を促した。その認識によれば、音楽著作物のオンライン利用の時代において、商業的利用者は、オンライン環境の偏在に対応し複数領域にまたがるライセンス政策を必要としている。しかし、当該勧告は、音楽著作物に対するオンライン権の広範囲にわたる多領域ライセンスを促進し、多領域ライセンスに対する特定のニーズに対応するには、十分ではない。

    (40) オンライン音楽分野においては、著作者の権利を国内で集中管理するのが通常の形態にとどまっているが、ますます増加する国境を越えた状況において、集中管理団体による最も効果的なライセンスの実施に適した条件を作り出すことが必要不可欠である。それゆえ、歌詞を含む音楽著作物のオンライン使用に対する著作者の権利について多国間で集中管理を提供できるよう、基本的な条件を規定する一連の規範を定めることが適切である。当該規範は、視聴覚著作物に組み込まれた音楽著作物を含むすべての音楽著作物についてこのようなライセンスに適用されなければならない。しかし、楽譜形式の音楽著作物へのアクセスのみを提供するオンラインサービスは、その対象とはされない。この指令の規定は、集中管理団体の提供する国境を越えたサービスについて必要な最低限の品質、特に管理作品の開示および権利の使用に関する金銭的流れの正確性を、確保するものでなければならない。また、それらは、音楽管理作品と権利の自発的集積を可能にする枠組みを定め、その結果、利用者が多領域にわたりかつ多数の管理作品を提供するサービスの運営に必要なライセンスの数を少なくすることができなければならない。当該規定は、集中管理団体が自らそのような義務を履行できない場合には、他の団体に多領域ベースでその管理作品の委託を要請できるようにしなければならない。要請された団体がすでに多数の管理作品を集積しかつ多領域ライセンスを提供または付与している場合には、要請する団体の要請を受けるべき義務が当該要請された団体に存在しなければならない。欧州連合にわたる合法的なオンライン音楽サービスの発展も、著作権のオンライン侵害との闘いに貢献するものでなければならない。

    (41) 集中管理団体が特定の国において管理を委託された音楽著作物、権利者および権利について正確かつ包括的な情報が利用可能であることは、効果的かつ透明性のあるライセンス手続のために、利用者による報告およびサービス提供者への請求のために、また支払うべき金銭の分配のために、特に重要である。それゆえ、音楽著作物について多領域ライセンスを付与する集中管理団体は、そのような詳細なデータを迅速かつ正確に処理できる必要がある。このことは、多領域ベースでライセンスされる権利の保有関係についてデータベースの使用を必要とする。そこには、集中管理団体が管理を委託された著作物、権利および権利者ならびに許諾の対象とされた領域を特定することを可能にするデータが含まれる。当該情報の変更は不当に遅滞することなく反映され、また当該データベースは絶えず更新されなければならない。また、当該データベースは、著作物についての情報を、当該著作物を組み込んだレコードその他固定物と照合できるものでなければならない。希望する利用者および権利者ならびに集中管理団体が集中管理団体の管理作品を特定するために必要とする情報にアクセスできることも重要である。集中管理団体は、当該データの正確性および一貫性を保護し、その再使用を管理し、または商業上の機密情報を保護するための措置をとることができなければならない。

    (42) 音楽管理作品に対する多領域ライセンスを許諾する集中管理団体は、その処理する音楽作品についてのデータが可能な限り正確であるようにするために、そのデータベースを間断なくかつ必要に応じて遅滞なく更新する必要がある。そのような団体は、そのデータベースに関して、オンラインサービス提供者のほか権利者および他の集中管理団体がその保有または管理する著作物についてのデータ(全部または一部の権利および当該集中管理団体が委託されている国を含む)に不正確があればこれを報告することができるよう、簡便にアクセスできる手続を設けなければならない。ただし、集中管理団体の保持するデータの真正性と完全性を危うくしてはならない。欧州議会及び理事会の指令95/46 / EC*6 は、すべてのデータ主体に不正確または不完全なデータの修正、消去または遮断を求める権利を付与しているので、この指令は、多領域ライセンスの場合において権利者または他の集中管理団体に関する不正確な情報が不当に遅滞することなく訂正されるようにしなければならない。集中管理団体は、著作物の登録および管理する権利の許諾を、電子的に処理する能力をも持たなければならない。迅速かつ効果的なデータ処理のための情報自動化が重要であることを考えると、集中管理団体は、権利者による当該情報の制度化された交信のために、電子的手段の使用をも備えなければならない。集中管理団体は、可能な限り、当該電子的手段が国際的または欧州連合的レベルで開発された任意的な業界標準または実務を考慮するようにしなければならない。

    (43) 音楽の使用、販売報告および請求についての業界標準は、集中管理団体と利用者との間でのデータ交換における効率を改善する手段である。ライセンスの利用状況を監視するにあたっては、私生活や家族生活を尊重する権利および個人データを保護する権利を含む基本権を尊重しなければならない。当該効率性の向上がより迅速な金銭処理と権利者へのより早い支払いとなるよう、集中管理団体は、サービス提供者に請求し遅滞なく権利者に払うべき金銭を分配することが必要である。この要件が効果的であるためには、利用者が集中管理団体に対して著作物の使用について正確かつ適時の報告を行うことが必要である。集中管理団体は、広く使われている業界標準が利用できる場合には、利用者の独自の形式による報告を受け付ける必要はない。集中管理団体は、音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与することに関して、外部委託サービスを利用することを妨げられてはならない。バックオフィス容量の分割や統合は、集中管理団体が管理業務を改善し、データ管理手段に対する投資を合理化するのに役立つ。


    *6 個人データの処理に関連する個人の保護及び個人データの自由な移動に関する欧州議会及び理事会の1995年10月24日の指令95/46 / EC (OJ L 281, 23.11.1995, p. 31)。

    (44) 多領域ライセンスのために様々の音楽管理作品を集積することは、ライセンスの事務処理を容易にし、すべての作品を多領域ライセンス市場で利用可能にすることを通じて、文化の多様性を促進し、オンライン提供者がそのサービスを提供する上で必要となる取引の数を減らすことに役に立つ。このような管理作品の集積は、新たなオンラインサービスの開発を容易にし、また、消費者に転嫁される取引費用の削減をもたらす。それゆえ、集中管理団体は、自己の管理する音楽管理作品について直接、多領域ライセンスを付与する意思がなくまたはそれができない場合には、任意に、他の集中管理団体にその管理作品を無差別条件にて管理委託することが奨励されなければならない。多領域ライセンスに関する契約における排他的な条件は、利用者が多領域ライセンスを求める場合に採りうる選択肢を制限し、また、集中管理団体が自己の管理作品について多領域ライセンスを付与する管理サービスを求める場合に採りうる選択肢を制限することとなる。それゆえ、多領域ライセンスを提供する集中管理団体間の管理委託契約はすべて、非排他的条件にて締結されなければならない。

    (45) 集中管理団体がオンライン権を管理する条件の透明性は、集中管理団体の会員にとって特に重要である。それゆえ、集中管理団体は、多領域ライセンスのために他の集中管理団体にその会員のオンライン音楽権の代理を委託する場合、その会員にその主要な委託条件について十分な情報を提供しなければならない。

    (46) 多領域ライセンスを提供または付与する集中管理団体が、多領域ライセンスを直接に管理しない他の集中管理団体の管理作品について受託を承諾する義務を課すことも重要である。この要件が不相当で必要以上のものとならないように、要請を受けた集中管理団体は、当該要請が自己の管理するオンライン権またはオンライン権の種類に属する場合にのみ、当該要請を受諾しなければならない。さらに、この要件は、管理作品を集積する集中管理団体にのみ適用されるものとし、自己の作品のみについて多領域ライセンスを提供する集中管理団体に及ぼしてはならない。また、著作物に関する複製権と公衆伝達権の両方を併せてライセンスできるよう同一作品に対する権利のみを集積する集中管理団体にも、その要件を適用してはならない。委託する集中管理団体に対する権利者の利益を守るために、また加盟国において小規模の管理作品または余り知られていない管理作品が平等の条件で域内市場にアクセス可能とするために、委託する集中管理団体の管理作品は、委託を受ける集中管理団体の管理作品と同じ条件で管理され、また委託を受ける集中管理団体がサービス提供者に提供するライセンスの申し入れに含まれていることが重要である。委託を受けた集中管理団体が請求できる管理手数料は、発生する必要かつ相当な投資を当該団体が回収することを可能するものでなければならない。集中管理団体が他の団体にその音楽管理作品に対するオンライン使用のための多領域ライセンスの付与を委託する契約は、委託する集中管理団体が、設立加盟国の国内に限って、自己の管理作品およびその国内において管理することが許されたその他の管理作品について、ライセンスの付与を継続することを妨げてはならない。

    (47) 権利者から権利を与えられた集中管理団体が多領域ライセンスを付与または提供せずさらに他の権利管理団体にそうすることをも委託しない場合に、権利者が多領域ライセンスに関する権利を行使できないとすれば、集中管理団体による多領域ライセンスに関する規範の目的および実効性は、大きく損なわれることとなる。それゆえ、このような状況においては、権利者が、オンライン利用に必要な多国間ライセンスに必要な範囲でその権利を最初の集中管理団体から取り戻し、オンラインサービス提供者の必要とする多領域ライセンスを自らまたは他の団体を通して許諾する権利を行使できること、また国内向けライセンスのための権限を最初の集中管理団体に残しておくことが重要である。

    (48) 放送機関は、一般的に、音楽著作物を含むテレビ番組およびラジオ番組を、地方の集中管理団体からのライセンスに依存している。当該ライセンスは、放送活動に限定されていることが多い。音楽著作物に対するオンライン権のライセンスは、このようなテレビやラジオ放送がオンラインでも視聴できるようにするために、必要となろう。テレビやラジオ放送の同時オンライン配信および時差オンライン配信のために音楽著作物に対するオンライン権のライセンスを容易にするには、音楽著作物に対するオンライン権の多領域ライセンスに適用される規範に対する適用除外を規定する必要がある。当該適用除外は、テレビやラジオ放送番組のオンライン配信へのアクセスおよび当該テレビやラジオ放送番組の補充、予告または評価のために作成された原放送に明確かつ従属的な関係を持つ素材へのアクセスを可能にするために必要なものに限定されなければならない。当該適用除外は、個々の音楽著作物または視聴覚著作物のオンライン配信へのアクセスを消費者に提供する他のサービスとの競争を阻害するように運用されても、市場分割または顧客分割のようなTFEU101条または102条に抵触する制限的行為を引き起こしても、ならない。

    (48) データベースの作成者への報酬を確保する手段としてデータベースに適切かつ統一的な保護を与えるというこの指令の目的は、個人データ処理にかかる個人の保護及び当該データの自由な移動に関する1995年10月24日の欧州議会及び理事会の指令95/46 / EC*7 の目的とは異なる。後者は、基本権、特に人権及び基本的自由の保護のための欧州条約第8条において認められているプライバシー権を保護するよう設計された調和のあるルールを基礎として、個人データの自由な流通を保護するものである。この指令の規定は、データ保護立法を害するものではない。

    (49) この指令に基づいて採択された国内法の規定は実効的に施行されることが必要である。集中管理団体は、不服申立を処理する特別の手続をその会員に提供しなければならない。当該手続は、当該団体が直接に委託を受けているその他の権利者にも、管理委託契約に基づいて当該団体に代わって権利を管理する他の集中管理団体にも、利用させなければならない。さらに、加盟国は、集中管理団体とその会員と権利者と利用者との間におけるこの指令の適用に関する紛争を迅速で独立し公平な裁判外紛争解決手続に付託できるよう定めることができる。特に、音楽著作物に対するオンライン権の多領域ライセンスに関する規範の実効性は、集中管理団体とその他の当事者間の紛争が迅速的かつ効果的に解決されるかどうかによって決まりうる。その結果、多領域ライセンスを付与する集中管理団体を一方当事者とし、オンラインサービス提供者、権利者または他の集中管理団体を他方当事者とする紛争の解決のために、調停や仲裁などの簡単にアクセスでき、実効的で公平な裁判外の手続をとる選択肢を、裁判所の救済を受ける権利を損なうことなく、定めることは適切である。この指令は、このような裁判外紛争解決手続の独立性、公平性および実効性が保証されている場合に限り、それがどのように組織されるべきか具体的な方法を定めるものでもなければ、どのような機関がそれを実施すべきかを決定するものでもない。最後に、すでに存在しもしくは提案されたライセンス条件または契約違反に関する集中管理団体と利用者との間の商業的紛争を解決するに適した、知的財産権法に専門知識を持つ機関または裁判所による独立した公平で実効的な紛争解決手続を、加盟国が定めるよう義務づけることも適切である。

    (50) 加盟国は、集中管理団体によるこの指令の遵守を監視しうる適切な手続を創設しなければならない。この指令が所管官庁について加盟国の選択を制限することも、集中管理団体に対する事前または事後の監督に関して制限することも適切ではないが、当該所管官庁はこの指令の適用から生ずる問題を効果的かつ適時に対応する能力を持つようにしなければならない。加盟国は、新しい所管官庁を創設する義務を負わされてはならない。さらに、集中管理団体の会員、権利者、利用者、集中管理団体およびその他の関係者が、集中管理団体による、また場合によっては利用者による違法行為があると考える行為や状況について、所管官庁に通報できるようにもされなければならない。加盟国は、所管官庁が、この指令を施行する国内法の規定が遵守されていない場合に制裁または措置を課す権限を持つようにしなければならない。この指令は、制裁または措置が効果的、相当かつ抑制的である限り、それについて特定の種類を定めることはしない。当該制裁または措置は、集中管理団体の施設の検査において過失のあった役員を解任する命令や、集中管理団体の運営に許認可が必要な場合に当該許認可の取消しを、含むことができる。この指令は、集中管理団体の代表機関の要件を含め、加盟国の既存の許認可制度および監督制度に関して、それが欧州連合の法に適合しかつこの指令の完全な適用の障害とならない限り、中立の立場を保つ。

    (51) 多領域ライセンスの要件が遵守されるよう、その実行の監視に関する特定の規定が定められなければならない。加盟国の所管官庁および欧州委員会は、その目的にために相互に協力しなければならない。加盟国は、集中管理団体に対する監視を容易にするために、所管官庁間における情報の交換による相互支援を互いに与えなければならない。

    (52) 集中管理団体が、権利者、会員、利用者、処理される個人データの本人について、個人の私生活に対する権利および個人データの保護を尊重することは、重要である。指令95/46 / ECは、その指令に従って加盟国において、また加盟国の所管官庁、とくに加盟国の指定する公的な独立の機関による監視下において、実施される個人データの処理を規律する。権利者には、彼らのデータの処理、当該データの受領者、当該データをデータベースに蓄積できる時間制限についての適切な情報、および権利者が指令95/46 / ECに従って彼らの個人データに関して当該データにアクセスし、訂正しまたは削除できる権利を行使する方法について適切な情報が提供されなければならない。特に、人を間接的に特定しうるユニークな識別子は、当該指令の意味において個人データとして扱われなければならない。

    (53) 権利執行措置に関する規定は、指令95/46 / ECに従ってその指令の施行において採用された国内規定の遵守を監視するために加盟国が設立した国内の独立した公的機関の管轄権を損なってはならない。

    (54) この指令は、基本権を尊重し、欧州連合の基本権憲章(「憲章」)に記された原則を尊重する。紛争解決に関するこの指令の規定は、憲章で保障されているとおり、当事者が裁判所に救済を求める権利の行使を妨げるものではない。

    (55) この指令の目的、つまり集中管理団体の会員が当該団体の活動に対する監督能力を向上させ、集中管理団体による十分な透明性を保証し、かつ、音楽著作物に対する著作者の権利についてオンライン使用の多領域ライセンスを改善するという目的は、加盟国にでは十分に達成されることができず、かえってその規模と効果から、欧州連合のレベルでより良く達成されるので、欧州連合は、欧州連合に関する条約の第5条に規定する補完性の原理に従って措置を執ることができる。同条に定める比例原則に従って、この指令は、当該目的を達成するために必要な範囲を超えるものではない。

    (56) この指令の規定は、競争に関する規範の適用、秘密保持義務、営業秘密、プライバシー、文書へのアクセス、契約法、および法の抵触および裁判管轄に関する国際私法を含むその他の分野におけるその他の関連法、ならびに労働者および使用者の結社の自由および組織化権を害するものではない。

    (57) 説明文書に関する2011年9月28日の加盟国および欧州委員会の共同政治宣言*7 に従って、加盟国は、正当化される場合には、この指令の部分とこれに対応する国内経過措置の部分との関係を説明する文書を、当該国内経過措置の告知に付帯させなければならない。この指令に関しては、立法者は当該文書の送付が正当化される場合であると考える。

    (58) 欧州データ保護監督官は、欧州議会および理事会の規制(EC)No 45/2001 *8(8)の第28条(2)に従って諮問を受け、2012年10月9日にその意見を通知した。

    よって、以下のとおりこの指令を採択する。


    *7 OJ C 369, 17.12.2011, p. 14.
    *8 欧州共同体および2000年12月18日の理事会の欧州共同体機関および団体による個人データの処理に関する個人の保護およびそのようなデータの自由な移動に関する規則(EC)No 45/2001 (OJ L 8, 12.1.2001, p. 1)。

    第I編 一般規定

    第1条 目的

    この指令は、集中管理団体による著作権および関連権の管理が適切に機能することを確保するために必要な要件を定める。また、この指令は、音楽著作物に対する著作者の権利を集中管理団体がオンライン使用のために多領域ライセンスするための要件を定める。

    第2条 適用範囲

    1. 第I編、第II編、第IV編および第V編は、第34条第2項および第38条を除いて、欧州連合内で設立されたすべての集中管理団体に適用される。

    2. 第III編ならびに第34条第2項および第38条は、音楽著作物に対する著作者の権利を多領域でのオンライン使用のために管理する、欧州連合内で設立された集中管理団体に適用される。

    3. この指令の関連規定は、集中管理団体が実施していればこの指令の規定の適用を受けるような活動を、集中管理団体によって直接または間接的に所有または管理されている団体が行う場合には、当該団体に適用される。

    4. 第16条(1)、第18条、第20条、第21条第1項(a)、(b)、(c)、(e)、(f)および(g)、第36条ならびに第42条、第36条および42条は、欧州連合内で設立されたすべての独立管理団体に適用される。

    第3条 定義

    この指令においては、次の定義が適用される。

      (a) 「集中管理団体」とは、複数の権利者の共同利益を専らのまたは主たる目的として、著作権または関連権の管理を、法令によってまたは譲渡、ライセンスもしくはその他の契約形式によって授権された団体であって、以下の基準のいずれかまたは両方を満たすものをいう。
        (ⅰ)当該団体の会員が所有または管理すること。
        (ⅱ)非営利で組織されていること。
      (b) 「独立管理団体」とは、複数の権利者の共同利益を専らのまたは主たる目的として、著作権または関連権の管理を、法令によってまたは譲渡、ライセンスもしくはその他の契約形式によって授権された団体であって、以下の基準の両方を満たすものをいう。
        (ⅰ)権利者によって直接的にも間接的にも、全部または一部が所有または管理されていないこと。
        (ⅱ)営利目的で組織されていること。
      (c) 「権利者」とは、著作権または関連権を保有し、または権利行使に関する契約に基づいてもしくは法律により権利収入に対する分配を受ける権利を有する、個人または団体(集中管理団体を除く)をいう。
      (d) 「会員」とは、集中管理団体の会員要件を満たし入会を認められた、権利者または権利者を代理する団体(他の集中管理団体および権利者団体を含む)をいう。
      (e) 「団体規則」とは、集中管理団体の創設に関する定款、法令、規範または文書をいう。
      (f) 「会員総会」とは、集中管理団体の法形式の如何を問わず、会員が参加し投票権を行使する集中管理団体の機関をいう。
      (g) 「役員」とは以下の者をいう。
        (ⅰ) 集中管理団体に関する国内法または団体規則が単一の役員会を規定する場合には、執行役員会の構成員。
        (ⅱ) 集中管理団体に関する国内法または団体規則が二重の役員会を規定する場合には、経営役員会または監督役員会の構成員。
      (h) 「権利収入」とは、排他的権利、報酬請求権または補償請求権から生ずるか否かにかかわらず、権利者に代わって集中管理団体が徴収する収入をいう。
      (i) 「管理手数料」とは、著作権または関連権の管理の費用を賄うために、権利収入から、または権利収入を投資したことによって生じる所得から、集中管理団体によって請求、控除または相殺される金銭をいう。
      (j) 「管理委託契約」とは、第29条および第30条に基づいて締結された契約を含め、集中管理団体間の契約であって、それによりある集中管理団体が別の集中管理団体に自己が代理する権利の管理を委託するものをいう。
      (k) 「利用者」とは、権利者からの許諾、権利者への報酬または権利者への補償金の支払いが必要である行為を行うが、消費者の立場として行うものでない個人または団体をいう。
      (l) 「管理作品」とは、集中管理団体が権利を管理する権限を有する著作物をいう。
      (m) 「多領域ライセンス」とは、複数の加盟国の領域を対象とするライセンスをいう。
      (n) 「音楽著作物に対するオンライン権」とは、指令2001/29 / ECの第2条および第3条に基づいてオンラインサービスの提供に必要な音楽著作物に対する著作者の権利をいう。

    第Ⅱ編 集中管理団体

    第1章 権利者の代理ならびに集中管理団体の会員および組織

    第4条 一般原則

    加盟国は、集中管理団体が代理する権利者に対する最善の利益のために行動し、またその権利および利益の保護またはその権利の効果的な管理のために客観的に必要でない義務を権利者に課すことがないことを確保しなければならない。

    第5条 権利者の権利

    1. 加盟国は、権利者が第2項ないし第8項に規定する権利を保有し、また当該権利が集中管理団体の団体規則または会員規約に定められることを確保しなければならない。

    2. 集中管理団体または権利者の国籍、所在地または設立地がどの加盟国にあるかにかかわらず、権利者は、その選択する国において、その選択する権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類を、その選択する集中管理団体に、管理させる許諾権を持つ。当該権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類の管理がその団体の活動の範囲内にある場合には、集中管理団体が管理を拒否する理由を客観的に正当化しない限り、それを管理する義務を負う。

    3. 権利者は、その保有する権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類を非商業的使用にライセンスする権利を保有する。

    4. 権利者は、6か月を超えない合理的な事前通知によって、その選択する国について、第2項の定めに従って集中管理団体に付与した権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類を管理する許諾を終了させ、またはその選択した権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類のいずれかを集中管理団体から取り戻す権利を保有する。集中管理団体は、当該終了または取り戻しが会計年度末にのみ発効することを決定することができる。

    5. 当該許諾の終了もしくは権利の取り戻しが発効する前に生じた利用行為または当該終了もしくは取り戻しが発効する前に付与したライセンスに対して権利者に支払うべき金額がある場合には、権利者は、第12条、第13条、第18条、第20条、第28条および第33条に基づく権利を保有する。

    6. 集中管理団体は、第4項および第5項で規定される権利の行使の条件として、終了または取り戻しの対象である権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類を他の集中管理団体に委託することを要求することによって、当該権利の行使を制限してはならない。

    7. 権利者が集中管理団体に自分の権利の管理を許諾する場合、当該権利者は、集中管理団体に管理を許諾する各権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類を特定して同意を与えなければならない。当該同意は書面にて証拠化されなければならない。

    8. 集中管理団体は、権利、権利の種類または著作物もしくは保護対象物の種類の管理に対する権利者の同意を得る前に、権利者に対して、第1項ないし第7項に基づく権利とともに、第3項に規定する権利に付帯する条件をも通知しなければならない。
    集中管理団体は、すでに許諾を与えている権利者に対しては、2016年10月10日までに、第1項ないし第7項に基づく権利とともに、第3項に規定する権利に付帯する条件を通知しなければならない。

    第6条 集中管理団体の会員規範

    1. 加盟国は、集中管理団体が第2項ないし第5項に規定する規範を遵守することを確保しなければならない。
    2. 集中管理団体は、権利者ならびに他の集中管理団体および権利者団体を含む権利者を代表する団体を、客観的、透明かつ無差別の基準に基づいて会員要件を満たす場合には、その会員として受け入れなければならない。当該会員要件は、集中管理団体の団体規則または会員規約に定められ、公開されなければならない。集中管理団体は、会員としての入会申請を拒否する場合、その決定の理由について明確な説明を権利者に提供しなければならない。

    3. 集中管理団体の団体規則は、会員が団体の意思決定過程に参加するための適切かつ効果的な組織を定めなければならない。異なる会員の種類による意思決定過程への参加は、公正かつ均衡の取れたものでなければならない。

    4. 集中管理団体は、会員の権利を行使するための場合を含め、会員が電子的手段で当該団体と連絡できるようにしなければならない。

    5. 集中管理団体は、その会員の記録を保持し、定期的に更新しなければならない。

    第7条 集中管理団体の会員でない権利者の権利

    1. 加盟国は、集中管理団体が、法令によってまたは譲渡、ライセンスもしくはその他の契約関係によって直接の法律関係を有する会員でない権利者に関して、第6条第4項、第20条、第29条第2項および第33条に規定する規範を遵守することを確保しなければならない。

    2. 加盟国は、第1項に定める権利者に対して、この指令に定める他の規定を、適用することができる。

    第8条 集中管理団体の会員総会

    1. 加盟国は、会員総会が第2項ないし第10項に規定する規範に従って組織されことを確保しなければならない。

    2. 会員総会は、少なくとも年1回開催されなければならない。

    3. 会員総会は、集中管理団体の団体規則、団体規則が会員規約を定めていない場合には会員規約について、その改正を決定しなければならない。

    4. 会員総会は、役員の任命または解任を決定し、役員の一般的な業績を評価し、報酬およびその他の給付(金銭的および非金銭的給付、年金給付および資格、他の給付に対する権利ならびに退職金など)を承認しなければならない。
    二重の役員会を持つ集中管理団体においては、会員総会は、経営役員会の構成員の任命もしくは解任を決定してはならず、また、経営委員会の構成員の報酬およびその他の手当を承認する権限が監督役員会に託されている場合には、当該決定または承認をしてはならない。

    5. 第II編第2章に定める規定に従って、会員総会は少なくとも以下の事項について決定しなければならない。

      (a) 権利者に支払うべき金銭の分配に関する一般的な方針。
      (b) 分配不可能な金銭の使用に関する一般的な方針。
      (c) 権利収入および権利収入の投資から生じる所得に関する一般的な投資方針。
      (d) 権利収入および権利収入の投資から生じる所得からの控除に関する一般的な方針
      (e) 分配されない金銭の使用;
      (f) リスク管理方針;
      (g) 不動産の取得、売却または担保設定の承認。
      (h) 合併および提携の承認、子会社の設立、ならびに他の団体または他の団体の株式もしくは権利の取得。
      (i) 借入れの承認、融資の承認または融資のための担保の提供。

    6. 会員総会は、決議または団体規則の規定により、第5項(f)、(g)、(h)および(i)に列記された権限を、監督機能を行使する機関に委任することができる。 7. 第5項(a)ないし(d)については、加盟国は、会員総会が権利収入および権利収入の投資から生じる所得の使用に関するより詳細な条件を決定するよう義務づけることができる。

    7. 第5項(a)ないし(d)については、加盟国は、会員総会が権利収入および権利収入の投資から生じる所得の使用に関するより詳細な条件を決定するよう義務づけることができる。

    8. 会員総会は、少なくとも、監査役の選任および解任を決定することならびに第22条に定める年次透明性報告書を承認することにより、集中管理団体の活動を管理しなければならない。
    加盟国は、監査役の集中管理団体の事業を経営する者からの独立性を確保するように設計されることを条件として、監査役の選任および解任に関して他の制度または形式を採用することができる。

    9. 集中管理団体のすべての会員は、会員総会に参加する権利および会員総会において投票する権利を有する。 ただし、加盟国は、以下の基準のいずれかまたは両方に基づいて、集中管理団体の会員が会員総会に参加する権利および会員総会において投票する権利に対する制限を定めることができる。

      (a) 会員期間
      (b) 会員の受領しまたは受領すべき金銭

    ただし、当該基準は、公正かつ相当な方法で決定され適用されることを条件とする。
    第1文(a)および(b)に規定する基準は、集中管理団体の団体規則または会員規約に定められ、また第19条および第21条に従って公開されなければならない。

    10. 集中管理団体のすべての会員は、たとえば委任会員と代理人が集中管理団体の異なる権利者の種類に属する場合のように、代理人の任命が利益相反を生ずる場合でない限り、他の個人または団体を代理人に任命し、自己のために会員総会に参加し会員総会において投票する権利を保有する。
    ただし、加盟国は、代理人の任命および代理人による会員の投票権の行使に関する制限が集中管理団体の意思決定過程に対する会員の適切かつ効果的な参加を害すしない場合には、当該制限を定めることができる。
    各委任状は、一つの会員総会において効力を有する。代理人は、委任した会員が行使し得たであろう権利と同一の権利を会員総会において享受する。代理人は、委任者が与えた指示に従って投票権を行使しなければならない。

    11. 加盟国は、以下のすべての条件を満たす場合には、会員総会の権限を、集中管理団体の会員が少なくとも4年ごとに選任する代議員会によって行使されるものと決定することができる。

      (a) 集中管理団体の意思決定過程への会員の適切かつ効果的な参加が確保されていること。
      (b) 代議員会に異なる種類の会員の参加が、公正かつ均衡が取れていること。
    第2項ないし第10項に規定する規範は、代議員会に準用される。

    12. 加盟国は、集中管理団体がその法形式を理由に会員総会を持っていない場合には、会員総会の権限が監督機能を行使する機関によって行使されるべきことを決定することができる。第2項ないし第5項、第7項および第8項に規定する規範は、監督機能を行使する当該機関に、準用される。

    13. 加盟国は、集中管理団体に権利者を代表する団体である会員がいる場合には、会員総会のすべてまたは一部の権限を当該権利者の集会によって行使されるべきことを決定することができる。第2項ないし第10項に規定する規範は、権利者の集会に準用される。

    第9条 監督機能

    1. 加盟国は、各集中管理団体が、その事業を経営する者の活動と義務の履行を継続的に監視する監督機能を備えることを確保しなければならない。

    2. 監督機能を行使する機関において、集中管理団体の会員の異なる種類による公平かつ均衡のある参加がなければならない。

    3. 監督機能を行使する者はそれぞれ、第10条第2項に記載する情報を含む利益相反に関する年次個別声明を、会員総会に対して行わなければならない。

    4. 監督機能を行使する機関は定期的に会合し、かつ、少なくとも以下の権限を保有しなければならない。

      (a) 第8条第4項および第6項に基づく権限のほか、会員総会によって委任される権限を行使すること。
      (b) 会員総会の決定、特に第8条第5項(a)ないし(d)に列記される一般的な方針の決定の実施のほか、第10条に記載する者の活動と義務の履行を監視すること。

    5. 監督機能を行使する機関は、その権限の行使について、少なくとも年に1回、会員総会に報告しなければならない。

    第10条 集中管理団体の事業を管理する者の義務

    1. 加盟国は、集中管理団体の事業を経営する者が健全な管理および会計手続ならびに内部統制機構を使用して、健全、慎重かつ適切な方法で経営するよう必要なすべての措置を各集中管理団体が執ることを確保しなければならない。

    2. 加盟国は、集中管理団体が利益相反を回避し、また、利益相反を回避できない場合に、集中管理団体が代理する権利者の共同利益に悪影響を及ぼさない方法で、現実のまたは潜在的な利益相反を特定、管理、監視および開示する手続を制定・適用することを確保しなければならない。
    第1文に記載する手続は、第1項に記載する者それぞれによる会員総会に対する以下の情報が含む年次個別声明を、含まなければならない。

      (a) 集中管理団体に対する利害関係。
      (b) 年金制度、現物支給およびその他の種類の給付の形式のもののほか、集中管理団体から前年度に受け取った報酬。
      (c) 集中管理団体から権利者として前年度に受け取った金銭。
      (d) 個人の利益と集中管理団体の利益との間、または集中管理団体に負う義務と他の自然人もしくは法人に負う義務との間の現実のまたは潜在的な利益相反に関する宣言。

    第2章 権利収入の管理

    第11条 権利収入の徴収と使用

    1. 加盟国は、集中管理団体が第2項ないし第5項に規定する規範を遵守することを確保しなければならない。

    2. 集中管理団体は、権利収入の徴収と管理に精励でなければならない。

    3. 集中管理団体は、以下のものを個別に管理しなければならない。

      (a) 権利収入および権利収入の投資から生じる所得。
      (b) 集中管理団体が保有する独自の資産および当該資産、管理手数料またはその他の活動から生じる所得。

    4. 集中管理団体は、権利収入または権利収入の投資から生じる所得を、権利者への分配以外の目的で使用することが許されない。ただし、第8条第5項(d)に基づいて行われた決定に従って管理手数料を控除もしくは相殺することまたは第8条第5項に基づいて行われた決定に従って権利収入もしくは権利収入の投資から生じる所得を使用することが許可されている場合を除く。

    5. 集中管理団体が権利収入または権利収入の投資から生じる所得を投資する場合、それは、当該団体が代理する権利の権利者に対する最善の利益を図って、また以下の規範を考慮して、行わなければならない。

      (a) 潜在的な利益相反が存在する場合には、集中管理団体は、投資がその権利者の利益のためにのみ行われることを確保しなければならない。
      (b) 資産は、ポートフォリオ全体の安全、品質、流動性および収益性を全体として確保するように投資されなければならない。
      (c) 資産は、特定の資産に依存することおよびポートフォリオ全体のリスクが蓄積することを回避するために適切に分散しなければならない。

    第12条 控除

    1. 加盟国は、権利者が集中管理団体に自分の権利を管理することを許諾する場合において、その権利の管理に対する同意を得る前に、集中管理団体が権利者に権利収入および権利収入の投資から生じる所得から控除する管理手数料およびその他の控除に関する情報を提供することを義務づけることを確保しなければならない。

    2. 控除は、集中管理団体が権利者に提供するサービス(適切な場合には、第4項に記載するサービスを含む)に関して合理的であり、客観的基準に基づいて定められなければならない。

    3. 管理手数料は、集中管理団体が著作権および関連権の管理のために発生し、正当性があり文書化された費用を超えてはならない。 加盟国は、管理手数料に関して控除または相殺された金銭の使用に適用される要件および使用の透明性が、著作権および関連権の管理費用を賄うためになされるその他の控除に適用されることを確保しなければならない。

    4. 集中管理団体が権利収入または権利収入の投資から生じる所得からの控除によって資金提供される社会的、文化的または教育的サービスを提供する場合、当該サービスは、特に当該サービスへのアクセスおよびその範囲に関して、公正な基準に基づいて提供されなければならない。

    第13条  権利者に支払うべき金額の分配

    1. 第15条第3項および第28条を害することなく、加盟国は、各集中管理団体が、第8条第5項(a)に記載する分配に関する一般的な方針に従って、定期的に、精励かつ正確に権利者に支払うべき金銭を分配し支払うよう確保しなければならない。 また、加盟国は、集中管理団体または権利者を代理する団体である会員が、できるだけ早く、遅くとも権利収入が徴収された会計年度末から9ヶ月以内に、当該金銭を権利者に分配し支払うよう確保しなければならない。
    ただし、特に利用者の報告、権利および権利者の特定、または著作物およびその他の保護対象物に関する情報と権利者との対応に関する客観的理由によって、集中管理団体または適用のある会員が当該期限を遵守することができない場合を除く。

    2. 関係する権利者が特定できずまたは所在不明であることによって第1項に定める期限内に分配できず、かつ当該期限に対する例外が適用されない場合には、当該金銭は、集中管理団体の口座に分離して保管されなければならない。

    3. 集中管理団体は、権利者を特定しその所在を確認するために必要な第1項と整合的な措置を執らなければならない。特に、集中管理団体は、第1項に定める期限の満了後遅くとも3か月以内に、権利者が特定されずまたはその所在が不明である著作物および保護対象物に関する情報を以下の者に開示しなければならない。

      (a) 集中管理団体が代理する権利者、または権利者を代理する団体が会員である場合には当該団体、および

      (b) 集中管理団体が管理委託契約を締結しているすべての集中管理団体。

    第1文に記載する情報には、可能な限り、以下のものを含まなければならない。

      (a) 著作物またはその他の保護対象物の題名。

      (b) 権利者の名前。

      (c) 関係する出版社または制作者の名前。

      (d) 権利者の特定に役立つ可能性のあるその他の関係情報。

    また、集中管理団体は、第6条第5項に記載する記録およびその他すでに利用可能な記録を確認しなければならない。前述の措置が結果を出すことができない場合には、集中管理団体は、当該3か月の満了後遅くとも1年後には当該情報を公開しなければならない。

    4. 第3項に記載する必要なすべての措置を執ったことを条件として、権利者に支払うべき金銭を、権利収入を徴収した会計年度の終了から3年後に分配できない場合には、これらの金銭は分配不可能と見なされなければならない。

    5. 債権の消滅時効に関する加盟国の法に従って権利者が当該金額を集中管理団体に支払請求する権利を害することなく、集中管理団体の会員総会は、第8条第5項(b)に従って当該分配不可能額の使用について決定しなければならない。

    6. 加盟国は、とりわけ、分配不可能額が権利者に代わって社会的、文化的および教育的活動に資金提供するために個別的かつ独立的な方法で使用されることを確保することによって、当該分配不可能額の許される使用を制限し決定することができる。

    第3章 他の集中管理団体のための権利管理

    第14条 管理委託契約に基づく権利管理

    加盟国は、集中管理団体が、特に、適用される使用料、管理手数料ならびに権利収入の徴収および権利者に支払うべき金額の分配に対する条件に関して、管理委託契約に基づいて管理する権利の権利者を差別しないことを確保しなければならない。


    第15条 管理委託契約における控除と支払い

    1. 加盟国は、集中管理団体が、管理手数料に関する場合を除いて、管理委託契約に基づいて管理する権利から生ずる権利収入から、または当該権利収入の投資から生じる所得から、いかなる控除もしないことを確保しなければならない。ただし、当該管理委託契約の他方当事者である他の集中管理団体が、明示的に当該控除に同意する場合を除く。

    2. 集中管理団体は、他の集中管理団体に支払うべき金銭を定期的、精励かつ正確に分配し支払わなければならない。

    3. 集中管理団体は、できるだけ早く、権利収入が徴収された会計年度末から遅くとも9ヶ月以内に、他の集中管理団体に分配および支払を行わなければならない。ただし、特に利用者の報告、権利および権利者の特定、または著作物およびその他の保護対象物に関する情報と権利者との対応に関する客観的理由によって、集中管理団体が当該期限を遵守することができない場合を除く。
    他の集中管理団体、またはそれが権利者を代理する団体としてその会員である場合には当該会員は、できるだけ早く、遅くとも権利者に支払うべき金額の受領後6ヶ月以内に、当該金額を権利者に分配し支払わなければならない。ただし、特に利用者の報告、権利および権利者の特定、または著作物およびその他の保護対象物に関する情報と権利者との対応に関する客観的理由によって、集中管理団体または適用のある会員が当該期限を遵守することができない場合を除く。

    第4章 利用者との関係

    第16条 ライセンス

    1. 加盟国は、集中管理団体と利用者が信義誠実に権利のライセンスについて交渉することを確保しなければならない。集中管理団体と利用者は、すべての必要な情報を相互に提供しなければならない。

    2. ライセンスの契約条件は、客観的かつ無差別の基準に基かなければならない。 権利のライセンスに当たって、集中管理団体は、利用者が欧州連合内において過去3年以内に利用可能としていた新しい種類のオンラインサービスを提供するに当たって当該利用者との間で合意したライセンスの契約条件を、先例として使用する義務を負わない。
    権利者は、その権利の使用に対して適切な報酬を受領しなければならない。排他的権利および報酬請求権に対する使用料は、著作物およびその他の保護対象物の性質および使用の範囲を考慮して、特に取引される権利の使用の経済的価値に関して、また、集中管理団体が提供するサービスの経済的価値に関して、合理的でなければならない。集中管理団体は、当該使用料の設定のために使用した基準を関係利用者に告知しなければならない。

    3. 集中管理団体は、利用者からの求めに対して不当に遅延することなく回答し、特に集中管理団体がライセンスを提供する上で必要な情報を示さなければならない。
    関係するすべての情報を受領した場合には、集中管理団体は、不当に遅延することなく、ライセンスを提供し、または特定のサービスをライセンスしない理由を説明する合理的な文書を利用者に提供しなければならない。

    4. 集中管理団体は、利用者が、適切な場合にはライセンスの使用について報告する目的での連絡を含め、電子的手段で当該団体と連絡することを認めなければならない。

    第17条 利用者の義務

    加盟国は、利用者が、集中管理団体に対して、合意しまたは事前に定められた時間内にかつ合意しまたは事前に定められた形式にて、権利収入の徴収ならびに権利者に支払うべき金銭の分配および支払に必要であって当該集中管理団体が代理する権利の使用についてその時点で有する関係情報を、提供することを確保する規定を定めなければならない。当該情報の提供の形式を決定するに当たって、集中管理団体および利用者は、可能な限り任意的な業界標準を考慮しなければならない。

    第5章 透明性および報告

    第18条 権利者の権利の管理について提供される情報

    1. 本条第2項、第19条および第28条第2項を害することなく、加盟国は、集中管理団体が、年に1回以上、情報が関係する期間における権利収入の割当てまたは支払を受けた権利者に対して、少なくとも以下の情報を利用可能にすることを確保しなければならない。

      (a) 権利者を特定しまたはその所在を確認するために、権利者が集中管理団体に使用を許諾した連絡先の詳細。
      (b) 権利者に割当られた権利収入。
      (c) 管理する権利の種類および使用の種類ごとに、集中管理団体が権利者に支払った金額。
      (d) 使用が行われ、権利者に金銭が割当られかつ支払が行われた期間。ただし、利用者による報告に関係する客観的理由によって集中管理団体が当該情報を提供できない場合を除く。
      (e) 管理手数料に関して行われた控除。
      (f) 管理手数料に関しないで行われた控除(社会的、文化的または教育的サービスの提供のために国内法で要求されるものを含む)。
      (g) 権利者に割当られたが、期間のいかんを問わず未払いとなっている権利収入。

    2. 集中管理団体が、権利収入を割当、権利者への権利収入の分配について責任を負う団体を会員として含む場合において、集中管理団体は、当該会員団体が第1項に記載する情報を持たないときは、当該会員団体に当該情報を提供しなければならない。加盟国は、当該団体が、少なくとも第1項に記載する情報を、年1回以上、当該情報に関係する期間において権利収入が割当られまたは支払がなされた権利者に、利用可能にすることを確保しなければならない。

    第19条 管理委託契約に基づく権利管理に関して他の集中管理団体に提供される情報

    加盟国は、集中管理団体が、年に1回以上かつ電子的手段で、管理委託契約に基づいて自己に当該権利管理を委託する集中管理団体に、少なくとも以下の情報を、当該情報が関係する期間、提供することを確保しなければならない。

      (a) 割当済みの権利収入、管理委託契約に基づいて管理する権利の種類ごとおよび使用の種類ごとに集中管理団体が支払った金額、ならびにいずれかの期間において未払いとなっている割当済みの権利収入。
      (b) 管理手数料に関して行われた控除。
      (c) 第15条に規定する管理手数料以外に関してなんらかの目的で行われた控除。
      (d) 管理委託契約の対象である著作物およびその他の保護対象物に関してライセンスの付与または拒絶に関する情報。
      (e) 会員総会の採択する決議が管理委託契約に基づく権利管理に関する場合には、当該会員総会決議。

    第20条 権利者、他の集中管理団体および利用者の要請に応じて提供される情報

    第25条を害することなく、加盟国は、集中管理団体が、正当な理由のある要請に応えて、電子的手段でかつ不当に遅滞することなく、少なくとも以下の情報を、管理委託契約に基づいて自己に当該権利管理を委託する集中管理団体または権利者もしくは利用者に、提供することを確保しなければならない。

      (a) 直接または管理委託契約に基づいて、当該団体が代理する著作物およびその他の保護対象物、その管理する権利、ならびに対象とする領域。
      (b) 集中管理団体の活動の範囲のゆえに、当該著作物またはその他の保護対象物を決定できない場合には、当該団体が代理する著作物およびその他の保護対象物の種類、その管理する権利、ならびに対象とする領域。

    第21条 公衆への情報開示

    1. 加盟国は、集中管理団体が少なくとも以下の情報を公開することを確保しなければならない。

      (a) その団体規則
      (b) 団体規則に会員規約および権利管理授権の終了条件が定められていない場合には、当該規約および条件。
      (c) 標準的なライセンス契約および割引を含む標準的に適用される使用料。
      (d) 第10条に規定する者の一覧表。
      (e) 権利者に支払うべき金銭の分配に関する一般的な方針;
      (f) 管理手数料に関する一般的な方針;
      (g) 管理手数料に関する控除以外で、社会的、文化的および教育的サービスを目的とした控除のほか、権利収入および権利収入の投資から生じる所得からの控除に関する一般的な方針。
      (h) 締結した管理委託契約の一覧表および当該管理委託契約を締結した集中管理団体の名前。
      (i) 分配不可能な金銭の使用に関する一般的な方針。
      (j) 第33条、第34条および第35条に従って利用可能な不服申立処理および紛争解決手続。

    2. 集中管理団体は、第1項に記載する情報を公開ウェブサイトで公開し、最新の状態に更新しなければならない。

    第22条 年次透明性報告書

    1. 加盟国は、集中管理団体が、国内法に基づく法形式の如何に関係なく、会計年度ごとに当該会計年度の終了後8ヶ月以内に、第3項に記載する特別報告を含む年次透明性報告書を作成し公表することを確保しなければならない。 集中管理団体は、そのウェブサイトに年次透明性報告書を公表し、少なくとも5年間、当該ウェブサイトで公開しなければならない。

    2. 年次透明性報告書は、少なくとも付属書に記載する情報を含んでいなければならない。

    3. 特別報告書は、社会的、文化的および教育的サービスの目的で控除された金銭の使用に言及し、少なくとも付属書第3項に定める情報を含んでいなければならない。

    4. 年次透明性報告書に含まれる会計情報は、欧州議会および理事会の指令2006/43 / ECに従って、会計を監査する権限を法令によって与えられた者によって監査されなければならない *9
    監査報告書は、その監査資格を含め、年次透明性報告書にその全文が複製されなければならない。
    本項においては、会計情報は、付属書第1項(c)に記載する財務諸表、ならびに付属書第1項(g)および(h)ならび第2項に記載する財務情報から構成されなければならない。


    *9 理事会指令78/660 / EEC および83/349 / EEC を修正し、理事会指令の廃止84 / 253 / EEC を廃止する、年次決算および連結決算の法定監査に関する2006 年5 月17 日の欧州 議会および理事会の指令2006/43 / EC (OJ L 157, 9.6.2006, p. 87)。

    第Ⅲ編 集中管理団体による音楽著作物に対するオンライン権の多領域ライセンス

    第23条 域内市場での多領域ライセンス

    加盟国は、その国内で設立された集中管理団体が、音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与する場合に、本編に定める要件を遵守することを確保しなければならない。

    第24条 多領域ライセンスを処理する能力

    1. 加盟国は、音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与する集中管理団体が、管理作品を特定し、その使用を監視し、利用者に請求し、権利収入を徴収しまた権利者に支払うべき金額を分配する目的の場合を含めて、当該ライセンスの管理に必要なデータを、電子的に効率的かつ透明性のある方法で処理する十分な能力を持つことを確保しなければならない。

    2. 第1項においては、集中管理団体は、少なくとも次の条件を遵守しなければならない。

      (a) 集中管理団体が代理することを許諾されている音楽著作物の全部または一部について正確に特定する能力を有すること。
      (b) 集中管理団体が代理することを許諾されている音楽著作物の全部または一部について、権利者および対応する権利者を完全にまたは部分的に特定する能力を有していること。
      (c) 可能な限り国際的または欧州連合において開発された任意的な業界標準および慣行を考慮して、権利者および音楽著作物を特定するために固有の識別子を使用すること。
      (d) 音楽著作物に対するオンライン権の多領域ライセンスを付与する他の集中管理団体が保有するデータにおける不整合を、適時かつ効果的な方法で特定し解決する適切な手段を使用すること。

    第25条 多領域管理作品情報の透明性

    1. 加盟国は、音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与する集中管理団体が、オンラインサービスの提供者、当該団体が代理する権利の権利者および他の集中管理団体に対して、電子的手段により、 正当な理由のある要請に応えて、当該団体が代理するオンライン音楽作品を特定するに足る最新情報を提供することを確保しなければならない。当該情報には以下を含む。

      (a) 代理する音楽著作物、
      (b) 全部または一部について代理する権利、および
      (c) 対象地域。

    2. 集中管理団体は、必要な場合には、データの正確性と完全性を保護し、データの再利用を管理し、また商業上の機密情報を保護するために、合理的な措置をとることができる。

    第26条 多領域管理作品情報の正確性

    1. 加盟国は、権利者、他の集中管理団体およびオンラインサービス提供者が、合理的な証拠に基づいて第24条第2項に基づく諸条件に記載されたデータまたは第25条に基づいて提供される情報が音楽著作物に対するオンライン権に関して不正確であると信ずる場合に、音楽著作物に対するオンライン権の多領域ライセンスを付与する集中管理団体に対してその訂正を求めることができる制度を、当該団体が設けることを確保しなければならない。その要請に十分な根拠があるときは、集中管理団体は、データまたは情報が不当に遅延することなく訂正されることを確保しなければならない。

    2. 集中管理団体は、その音楽管理作品に含まれる音楽著作物の権利者および31条に従って音楽著作物に対するオンライン権の管理を委託している権利者に対して、電子的形式で送付する手段によって、その音楽著作物、当該著作物に対する権利および権利者が当該団体に許諾した国に関する情報を提供しなければならない。その際、権利者が全部または一部の音楽著作物、全部または一部のオンライン権および権利者が当該団体に許諾した国を特定することを可能にするよう、集中管理団体および権利者は、可能な限り、国際的にまたは欧州連合のレベルで開発されたデータ交換に関する任意的な業界標準または実務を考慮しなければならない。

    3. 集中管理団体が他の集中管理団体に第29条および第30条に基づいて音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与することを委任する場合、委任された集中管理団体は、委任する集中管理団体が別段の合意をする場合を除き、委任する集中管理団体の管理作品に含まれる音楽著作物の権利者に関しても、本条第2項を適用しなければならない。

    第27条 正確かつ適時の報告および請求

    1. 加盟国は、集中管理団体が全部または一部を代理する音楽著作物に対するオンライン権について、多国間ライセンスを付与したオンラインサービス提供者によるその使用を監視することを確保しなければならない。

    2. 集中管理団体は、オンラインサービス提供者に対して、音楽著作物に対するオンライン権の実際の使用を電子的手段で報告することができるようにし、オンラインサービス提供者は、当該著作物の実際の使用を正確に報告しなければならない。集中管理団体は、データ交換に関して国際的にまたは欧州連合のレベルで開発された任意的な業界標準または実務を考慮した報告方法のうち、少なくともその一つの使用を申し出なければならない。集中管理団体は、当該団体が電子的なデータ交換に業界標準の報告を許している場合には、オンラインサービス提供者による報告が適切な形式であってもその受理を拒絶することができる。

    3. 集中管理団体は、オンラインサービス提供者に電子的手段で請求しなければならない。集中管理団体は、国際的にまたは欧州連合のレベルで開発された任意的な業界標準または実務を考慮した形式のうち、少なくともその一つの使用を申し出なければならない。請求書は、第24条第2項に基づく条件リストに記載されたデータを基礎にして、ライセンスされた著作物および権利を、またオンラインサービス提供者が提出した情報および情報の提供に使用された形式を基礎として、可能な範囲で対応する実際の使用を、特定しなければならない。オンラインサービス提供者は、集中管理団体が業界標準の形式を使用している場合には、形式を理由として当該請求書の受領を拒絶してはならない。

    4. 集中管理団体は、オンラインサービス提供者の責めに帰すべき理由による場合を除いて、音楽著作物に対するオンライン権の実際の使用が報告された後は、オンラインサービス提供者に対して、正確かつ不当に遅延することなく請求しなければならない。

    5. 集中管理団体は、オンラインサービス提供者が同じ音楽著作物に対する同じオンライン権について1つ以上の集中管理団体から請求書を受領した場合を含め、オンラインサービス提供者が請求書の正確性を争うことを可能にする適切な制度を備えなければならない。

    第28条 権利者への正確かつ適時の支払い

    1. 第3項の規定を害すことなく、加盟国は、音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与する集中管理団体が、オンラインサービス提供者の責めに帰すべき理由によって不可能な場合を除いて、当該ライセンスから生じ権利者に支払うべき金銭を、正確かつ著作物の実際の使用の報告後遅滞なく、分配することを確保しなければならない。

    2. 第3項の規定を害すことなく、集中管理団体は、第1項に基づいて行う各支払いとともに、少なくとも以下の情報を権利者に提供しなければならない。

      (a) 権利者に支払われる金額が対象とする使用が生じた期間および当該使用が生じた領域。
      (b) 権利者が集中管理団体に全部または一部について許諾した音楽著作物に対する各オンライン権について、集中管理団体が徴収した金額、控除額および分配した金額。
      (c) 各オンラインサービス提供者に関して集中管理団体が徴収した金額、控除額および分配した金額。

    3. 集中管理団体が、第29条および第30条に基づいて音楽著作物に対するオンライン権につい多領域ライセンスの付与を他の集中管理団体に委任する場合、委託された集中管理団体は、第1項に記載する金額を正確かつ遅滞なく分配し、また、委任する集中管理団体に対して、第2項に記載する情報を提供しなければならない。委任する集中管理団体は、別段の合意がない限り、権利者に対する当該金額の再分配および当該情報の再提供について責任を負わなければならない。

    第29条 多領域ライセンスに関する集中管理団体間の契約

    1. 加盟国は、集中管理団体が自己の音楽管理作品中の音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスの付与を他の集中管理団体に委任する場合、当該集中管理団体間の管理委託契約は非独占的なものであることを確保しなければならない。委任された集中管理団体は、当該オンライン権を差別なく管理しなければならない。

    2. 委任する集中管理団体は、その会員に対して、委任される集中管理団体が提供するサービスの期間および費用を含む、当該契約の主な条件を告知しなければならない。

    3. 委任された集中管理団体は、委任する集中管理団体に対して、権利行使の性質、使用料に関連または影響する規定、ライセンスの期間、会計期間および対象とする領域を含め、後者がオンライン権をライセンスする主たる条件を、告知しなければならない。

    第30条 多領域ライセンスに関して他の集中管理団体を代理する義務

    1. 加盟国は、自己の管理作品の中の音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与または提供していない集中管理団体が他の集中管理団体に当該権利を代理する管理委託契約の締結を要請した場合には、要請された集中管理団体は、すでに他の集中管理団体の管理作品中の音楽著作物に対するオンライン権の同種について多領域ライセンスを付与しまたは付与することを提供しているときは、当該要請に応じるよう義務づけることを確保しなければならない。

    2. 要請された集中管理団体は、要請した集中管理団体に対して書面で不当に遅滞することなく回答しなければならない

    3. 第5項および第6項を害することなく、要請された集中管理団体は、要請した集中管理団体から委任された管理作品を、自己の管理作品の管理に適用するとの同じ条件にて、管理しなければならない。

    4. 要請された集中管理団体は、要請した集中管理団体から委任された管理作品を、オンラインサービス提供者向けの提供作品に含めなければならない。

    5. 要請された集中管理団体が要請する集中管理団体に提供するサービスの管理手数料は、要請された集中管理団体に合理的に発生する費用額を超えてはならない。

    6. 要請した集中管理団体は、要請された集中管理団体に対して、音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスの提供に必要な自己の音楽管理作品に関する情報を、利用可能にしなければならない。情報が不十分でありまたは要請された集中管理団体が本編の要件を満たすことができないような形式で情報が提供される場合には、要請された集中管理団体は、当該要件の充足に合理的に要した費用を請求しまたは情報が不十分もしくは使用できない当該著作物を除外することができる。

    第31条 多領域ライセンスへのアクセス

    加盟国は、集中管理団体が音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与せずもしくは付与を提供せず、または2017年4月10日までに他の集中管理団体に当該権利を代理させない場合には、当該集中管理団体に音楽著作物に対するオンライン権について代理を許諾している権利者は、単一領域における音楽著作物に対するオンライン権を取り戻すことなく、すべての領域に関して多領域ライセンスのために音楽著作物に対するオンライン権を当該集中管理団体から取り戻し、音楽著作物に対するオンライン権について自ら、または自己の委任する他の者もしくは本編の規定を遵守する集中管理団体によって、多領域ライセンスを付与することできる。


    第32条 ラジオおよびテレビ番組に必要なオンライン音楽権の除外

    本編に基づく要件は、ラジオまたはテレビ番組を一次放送と同時またはその後に公衆に伝達しまたは利用可能にするために、またラジオまたはテレビ番組の一次放送に付随して放送局によってまたは放送局のために作成される予告編などのオンライン素材を公衆に伝達しまたは利用可能にするために、放送局が必要とする音楽著作物に対するオンライン権についての多領域ライセンスを、集中管理団体がTFEU101条および102条に基づく競争規範に則って必要な権利を任意的に包括して、許諾する場合には、適用しない。


    第Ⅳ編 権利執行措置

    第33条 不服申立手続

    1. 加盟国は、集中管理団体がその会員に対して、また管理委託契約に基づいて権利管理を委任している集中管理団体に対して、不服(特に、権利管理の承認および権利の終了または取り戻し、会員の期間、権利者に支払うべき金銭の徴収、控除および分配に関して)を処理する効果的かつ迅速な手続を利用可能とさせることを確保しなければならない。

    2. 集中管理団体は、その会員による、または管理委託契約に基づいて権利管理を委任している集中管理団体による不服に対して、文書で回答しなければならない。集中管理団体が不服を退ける場合には、回答には理由を付されなければならない。

    第34条 裁判外紛争解決手続

    1. 加盟国は、この指令の要件に従って採択された国内法の規定に関する集中管理団体、集中管理団体の会員、権利者または利用者の間の紛争が、迅速で独立した公平な裁判外紛争解決手続に付することができると規定することができる。

    2. 本III編の目的ために、加盟国は、音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスを付与しまたはその付与を提供する自国内に設立された集中管理団体に関する以下の紛争が、迅速で独立した公平な裁判外紛争解決手続に付すことができると規定することができる。

      (a) 現実のまたは潜在的なオンラインサービス提供者との、第16条、第25条、第26条および第27条の適用に関する紛争。
      (b) 権利者との、第25条、第26条、第27条、第28条、第29条、第30条および第31条の適用に関する紛争。
      (c) 他の集中管理団体との、第25条、第26条、第27条、第28条、第29条および第30条の適用に関する紛争。

    第35条 紛争解決

    1. 加盟国は、特に既存および提案されたライセンス条件または契約違反に関する集中管理団体と利用者との間の紛争が裁判所または適切な場合は知的財産権法に専門知識を有する別の独立した公平な紛争解決機関に付すことができることを確保しなければならない。

    2. 第33条、第34条および本条第1項は、裁判所に訴訟を提起することによって自己の権利を主張し防御する当事者の権利を害するものではない。

    第36条 法令遵守

    1. 加盟国は、その国内において設立された集中管理団体による、この指令で定められた要件に従って採択された国内法の規定の遵守が、その目的のために指定された所管官庁によって監視されることを確保しなければならない。

    2. 加盟国は、集中管理団体の会員、権利者、利用者、集中管理団体およびその他の利害関係者が、その目的のために指定された所管官庁に、この指令で定められた要件に従って採択された国内法の規定の違反があると考える行動または状況を通知する手続の存在を確保しなければならない。

    3. 加盟国は、その目的のために指定された所管官庁が、この指令で定められた要件に従って採択された国内法の規定が遵守されていない場合に、適切な制裁を課しまたは適切な措置を執る権限を保有することを確保しなければならない。当該制裁および措置は、効果的、相当かつ抑制的でなければならない。 加盟国は、2016年4月10日までに、本条、第37条および第38条に記載する所管官庁を欧州委員会に通知しなければならない。欧州委員会は、これに関して受け取った情報を公開しなければならない。

    第37条 所管官庁間の情報交換

    1. この指令の適用に対する監視を容易にするために、各加盟国は、その目的のために指定された所管官庁が、他の加盟国のその目的のために指定された所管官庁から、この指令の適用に関連する事項に関して、特に自国内に設立された集中管理団体の活動に関して、情報の提供を求められた場合には、要請に正当な理由がある場合に限り、不当に遅滞することなく回答することを確保しなければならない。

    2. 所管官庁は、他の加盟国で設立されたが自国の領域内で行動している集中管理団体が、この指令で定められた要件に従って採択されたその設立加盟国の国内法の規定に従っていないおそれがあると考える場合には、その設立加盟国の所管官庁にすべての関連情報を、適切な場合にはその権限の範囲内で適切な行為を取るよう当該所管官庁に対する要請と共に、送信することができる。 要請された所管官庁は、3か月以内に理由を付した回答を提供しなければならない。

    3. 第2項に記載する事項は、所管官庁が、第41条に従って設立された専門家グループに対して要請する場合にも、要請することができる。

    第38条 多領域ライセンスの開発のための協力

    1. 欧州委員会は、多領域ライセンスの状況および開発に関して、加盟国においてその目的のために指定された所管官庁間、およびそれら所管官庁と欧州委員会との間における情報交換を促進しなければならない。

    2. 欧州委員会は、この指令の第III編の規定の適用についての経験に関して、権利者の代表、集中管理団体、利用者、消費者およびその他の利害関係者と定期的に協議しなければならない。 欧州委員会は、第1項に定める情報交換の枠組みの中で、所管官庁に、当該協議で明らかとなったすべての関連情報を提供しなければならない。

    3. 加盟国は、2017年10月10日までに、所管官庁がその国内における多領域ライセンスの状況および開発に関する報告書を欧州委員会に提供することを確保しなければならない。当該報告書は、特に、関係加盟国における多領域ライセンスの利用可能性、およびこの指令の第III編を実施するために採択された国内法の規定に対する集中管理団体の遵守、ならびに利用者、消費者、権利者およびその他の利害関係者による音楽著作物に対するオンライン権について多領域ライセンスの開発に対する評価に関する情報を含まなければならない。

    4. 第3項に従って受領した報告書ならびに第1項および第2項に従って集めた情報に基づいて、欧州委員会はこの指令の第III編の適用を評価しなければならない。 必要のある場合および特定の報告書に関して適切である場合には、欧州委員会は、いかなる特定の問題についても対応するためのさらなる段階を検討しなければならない。当該評価には、特に以下のものを含まなければならない。

      (a) 第III編の要件を満たす集中管理団体の数。
      (b) 第29条および第30条に従って集中管理団体が締結した管理委託契約の数のほか、同条の適用。
      (c) 多領域ライセンスが利用可能な加盟国における管理作品の割合。

    第Ⅴ編 報告および最終規定

    第39条 集中管理団体の通知

    2016年4月10日までに、加盟国は、その裁量に従って利用する情報に基づいて、その国で設立された集中管理団体の一覧表を欧州委員会に提供しなければならない。
    加盟国は、当該一覧表に変更を生じたときは、不当に遅滞することなく欧州委員会に通知しなければならない。 欧州委員会はその情報を公開し、最新に更新しなければならない。

    第40条 報告

    2021年4月10日までに、欧州委員会は、この指令の適用を評価し、この指令の適用に関する報告書を欧州議会および理事会に提出しなければならない。その報告書は、国境をまたぐサービスの開発、文化的多様性、集中管理団体と利用者との関係および欧州連合外で設立された集中管理団体の欧州連合内での活動、ならびに必要がある場合には見直しの必要性について、この指令が与えた影響の評価を含まなければならない。欧州委員会の報告書には、適切な場合には立法案を添付しなければならない。

    第41条 専門家グループ

    専門家グループは本条に基づいて設立される。専門家グループは、加盟国の所管官庁の代表者で構成されなければならない。専門家グループは、欧州委員会の代表が議長を務め、議長の発議または加盟国代表の要請により会合する。専門家グループの任務は以下のとおりとする。

      (a) 域内市場における集中管理団体および独立管理団体の機能に対するこの指令の実施による影響を検証し、困難の所在に焦点を当てること。
      (b) この指令の適用から生じるすべての質問に関して協議を組織すること。
      (c) 特に、著作物およびその他の保護対象物に対するデジタル市場に関連して、関係する立法および判例の発展ならび関係する経済的、社会的、文化的および技術的な発展に関する情報の交換を促進すること。

    第42条 個人データの保護

    この指令の枠組みの中で実行される個人データの処理には、指令95/46 / ECが適用されなければならない。

    第43条 実施

    1. 加盟国は、2016年4月10日までに、この指令を遵守するために必要な法律、規則および行政規定を施行しなければならない。加盟国は直ちにこれを欧州委員会に通知しなければならない。 加盟国は、当該措置を採択する場合、この指令への言及を含めるか、または公布の際にその言及を付さなければならない。当該言及の方法は加盟国が定めなければならない。

    2. 加盟国は、この指令の対象となる分野において採択する国内法の主要な措置について、そのテキストを欧州委員会に伝達しなければならない。

    第44条 発効

    この指令は、欧州連合の官報で公表された日から20日後に発効する。

    第45条 名宛当事者

    この指令は加盟国に向けたものである。

    2014年2月26日、ストラスブールにて署名。

    欧州議会を代表して
    議長
    M.シュルツ

    理事会を代表して
    議長
    D.クルクーラ


    付属書

    1. 第22条第2項に記載する年次透明性報告書において提供されるべき情報は以下のとおりとする。

      (a) 貸借対照表または資産負債の計算書、当該会計年度における収支勘定およびキャッシュフロー計算書からなる財務諸表。
      (b) 当該会計年度における活動に関する報告。
      (c) 第16 条第3 項に基づくライセンスの付与拒絶に関する情報。
      (d) 集中管理団体の法的および統制組織の説明。
      (e) 集中管理団体が直接または間接的に全部または一部を所有または管理す る団体に関する情報。
      (f) 前年度における第9 条第3 項および第10 条に記載する者へ支払われた報酬の総額ならびに彼らに付与されたその他の給付に関する情報。
      (g) この付属書第2 項に記載する財務情報。
      (h) この付属書第3 項に記載する情報を含め、社会的、文化的、教育的サービス目的で控除された金額の使用に関する特別報告。

    2. 年次透明性報告書において提供されるべき財務情報は、以下のとおりとする。
      (a) 管理する権利の種類ごとおよび使用の種類(放送、オンライン、公演など)ごとの権利収入に関する財務情報。権利収入の投資から生じる所得およびその所得の使用に関する情報(権利者またはその他の集中管理団体に分配されるかその他の用途に使用されるかを問わない)を含む。
      (b) 集中管理団体が権利者に提供する権利管理およびその他のサービスの費用に関する財務情報とともに、少なくとも以下の項目についての包括的な説明。
        (ⅰ) 管理する権利の種類ごとの内訳のあるすべての営業費用および財務費用、ならびに費用が間接的で権利の種類ごとに仕分けできない場合には、当該間接費用を割り付けるために使用した方法についての説明。
        (ⅱ) 権利管理(第11 条第4 項ならびに第12 条第1 項、第2 項および第3 項に従って権利収益または権利収益の投資から生じる所得から控除または相殺相殺される管理手数料を含む)のみに関して、管理する 権利の種類ごとの内訳のあるすべての営業費用および財務費用、ならびに費用が間接的で権利の種類ごとに仕分けできない場合には、当該間接費用を割り付けるために使用した方法についての説明。
        (ⅲ) 権利の管理以外のサービス(社会的、文化的および教育的サービスを含む)に関する営業費用および財務費用。
        (ⅳ) コストを賄うために使用される資源。
        (ⅴ) 管理する権利の種類ごと、使用の種類ごとおよび控除の目的(権利の管理やまたは社会的、文化的もしくは教育的サービスに関連する費用など)ごとの内訳のある、権利収入からの控除額。
        (ⅵ) 管理する権利の種類ごとに、集中管理団体が権利者に提供する権利管理およびその他のサービスの費用が関係する会計年度における権利収入に比較した割合、ならびに費用が間接的で権利の種類ごとに仕分けできない場合には、当該間接費用を割り付けるために使用した方法についての説明。

      (c) 少なくとも以下の項目の包括的な説明とともに、権利者に支払うべき金額に関する財務情報。

        (ⅰ) 管理する権利の種類ごとおよび使用の種類ごとの内訳のある、権利者に割当られた合計金額。
        (ⅱ) 管理する権利の種類ごとおよび使用の種類ごとの内訳のある、権利者に支払った合計金額。
        (ⅲ) 管理する権利の種類ごとおよび使用の種類ごとの内訳のある、支払の頻度。
        (ⅳ) 管理する権利の種類ごとおよび使用の種類ごとの内訳のある、徴収されたがまだ権利者に割当ていない合計金額、ならびに当該金額が徴収された会計年度。
        (ⅴ) 管理する権利の種類ごとおよび使用の種類ごとの内訳のある、権利者に割当られたがまだ配分されていない合計金額、ならびに当該金額が徴収された会計年度。
        (ⅵ) 集中管理団体が第13 条第1 項に規定する期限内に分配および支払いを実行しなかった場合には、その遅延の理由。
        (ⅶ) 分配不可能な金銭の合計額および当該金銭が使用された使途の説明。

      (d) 少なくとも以下の項目の説明とともに、他の集中管理団体との関係に関する情報。
        (ⅰ) 管理する権利の種類ごと、使用の種類ごとおよび集中管理団体ごとの内訳のある、他の集中管理団体から受け取った金額および他の集中管理団体に支払わった金額。
        (ⅱ) 管理する権利の種類ごと、使用の種類ごとおよび集中管理団体ごとの内訳のある、他の集中管理団体に支払うべき権利収入から控除される管理手数料およびその他の控除。
        (ⅲ) 管理する権利の種類ごとおよび集中管理団体ごとの内訳のある、他の集中管理団体が支払った管理手数料およびその他の控除。
        (ⅳ) 管理する権利の種類ごとおよび集中管理団体ごとの内訳のある、他の集中管理団体に由来し権利者に直接分配された金額。

    3. 第22 条第3 項に記載する特別報告において提供されるべき情報は、以下のとおりとする。
      (a) 目的の種類ごと、ならびに各目的の種類について、管理する権利の種類ごとおよび使用の種類ごとの内訳のある、当該会計年度における社会的、文化的および教育的サービスの目的で控除した金額。
      (b) 目的の種類ごとの内訳のある、当該控除金額の使用(社会的、文化的および教育的サービスに資金を提供するために控除された金額を管理する費用ならびに社会的、文化的および教育的サービスに使用される個別金額を含む)についての説明。



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