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    第3部 意匠権


    第3章 意匠権者の権利の例外

    著作権侵害

    (著作権侵害)
    第236条
    意匠権が存続する意匠から成り、又はそのような意匠を含む著作物に著作権が存続する場合には、その著作物の著作権侵害であるいずれかのことを行うことは、その意匠の意匠権の侵害ではない。

    権利の許諾の利用可能性

    (意匠権の最後の5年内に利用することができる許諾)
    第237条
    (1) いずれの者も、許諾の請求権として、意匠権期間の最後の5年内に、この条によらなければ意匠権を侵害することとなるいずれのことをも行う資格を有する。
    (2) 許諾の条件は、合意のないときは、長官により決定される。
    (3) 所管大臣は、次に掲げるいずれかのことを行うために必要と認めるときは、命令により、命令に明示される種類の意匠又はそのように明示される種類の物品に応用された意匠を、第1項の規定の作用から除外することができる。
    (a) 連合王国の国際的義務を履行すること。
    (b) 他の諸国における英国人の意匠の相互保護を確保し、又は維持すること。
    (4) 命令は、制定文書により定められる。また、いずれの命令も、その草案が、議会の両院に提出され、かつ、その決議により承認されない限り、定められない。

    (公益の保護のために行使することができる権限)
    第238条
    (1) 1980年の競争法第12条第5項又は2002年の企業法第41条第2項、第55条第2項、第60条第6項、第75条第2項、第83条第2項、第138条第2項、第147条第2項若しくは第160条第2項又は同法附則第7第5項⑵若しくは第10項⑵(公共団体その他のある種の者、合併又は市場調査に関連して委員会への付託に伴って救済措置をとる権限)に基づいて所管大臣、公正取引庁又は(場合により)競争委員会により救済され、軽減され、又は阻止されるべきいずれの必要性も、次に掲げるいずれかのものから成り、又はそれを含む場合には、第1項のAの規定が、適用される。
    (a) 意匠権者により付与される許諾における条件であって、許諾を得た者による意匠の使用又は他の許諾を付与するという意匠権者の権利を制限するもの。
    (b) 合理的な条件で許諾を付与することを意匠権者が拒否すること。
    (1A) 2002年の企業法附則第8により与えられる権限は、それらの条件を取り消し、又は修正する権限及び、その代わりに又はそれに加えて、意匠権についての許諾を権利として利用することができる旨を規定する権限を含む。
    (2) 1980年の競争法第12条第5項のA並びに2002年の企業法第75条第4項(a)号、第83条第4項(a)号、第84条第2項(a)号、第89条第1項、第160条第4項(a)号、第161条第3項(a)号及び附則第7第5項、第10項及び第11項における、2002年の企業法附則第8により許されるいずれのことへの言及も、それに従って解釈される。
    (3) この条に基づいて利用することができる許諾の条件は、合意のないときは、許諾を要求する者による申請を受けて長官により決定される。

    (侵害訴訟手続において権利の許諾を得ることの約束)
    第239条
    (1) 第237条又は第238条に基づく権利として許諾を利用することができる意匠の意匠権侵害訴訟手続において、合意することができる条件で、又は合意がないときは同条に基づいて長官が決定することができる条件で、許諾を得ることを被告が約束するときは、
    (a) いずれの差止命令も被告に対して与えられない。
    (b) いずれの引渡し命令も、第230条に基づいて定められない。
    (c) 損害賠償として又は利得の計算により被告に対して取得することができる金額は、それらの条件によるそのような許諾が最も早い侵害の前に付与されていたならば許諾を得た者としての被告により支払われたであろう金額の2倍を超えない。
    (2) 約束は、責任をなんら容認することなく、訴訟手続における最終命令の前いつでも与えることができる。
    (3) この条のいずれの規定も、権利の許諾を利用することができる前に犯された侵害について利用することができる救済に影響しない。

    国王による意匠の使用

    (国王による意匠の使用)
    第240条
    (1) 政府の省庁又は政府の省庁により書面で権限を与えられる者は、意匠権者の許諾を得ずに、次のことを行うことができる。
    (a) 国王の業務のために物品を供給することを目的としていずれかのことを行うこと。
    (b) 国王の業務のために必要でなくなった物品を処分すること。
    また、この条に基づいて行われたいずれのことも、意匠権を侵害しない。
    (2) この部における「国王の業務」への言及は、次に掲げることへの言及である。
    (a) 王国の防衛
    (b) 対外防衛目的
    (c) 保健業務目的
    (3) 「対外防衛目的」のための物品の供給への言及は、次に掲げる目的のためにそれらを供給することをいう。
    (a) 王国外の国の政府及び連合王国における女王陛下の政府が当事者である協定又は取決めに従ってその国を防衛するため。
    (b) 国際連合又はその内部機関の1の決議に従って軍事行動をとる軍隊による使用のため。
    (4) 「保健業務目的」のための物品の供給への言及は、次に掲げるいずれかの業務を提供することを目的としてそれらの物品を供給することをいう。
    (za) 2006年の国民保健業務法若しくは2006年の国民保健業務(ウェールズ)法に基づく一次医科業務若しくは一次歯科業務又は1978年の国民保健業務(スコットランド)法第1部に基づく一次歯科業務
    (a) 次に掲げるいずれかの規定に基づく薬科業務、一般医科業務又は一般歯科業務
    (i) 2006年の国民保健業務法第7部第1章又は2006年の国民保健業務(ウェールズ)法第7部第1章(薬科業務の場合)
    (ii) 1978年の国民保健業務(スコットランド)法第2部(一般歯科業務の場合)
    (iii) 北部アイルランドにおいて施行されている法律の対応する規定
    (b) 次に掲げるいずれかの規定に基づいて結ばれた取決めに従う個人医科業務又は個人歯科業務
    (i) 削除
    (ii) 1978年法第17条のC(個人歯科業務の場合)の規定
    (iii) 北部アイルランドにおいて施行されている法律の対応する規定
    (c) 2006年の国民保健業務法又は2006年の国民保健業務(ウェールズ)法に基づいて提供される地方薬科業務
    (d) 1978年の国民保健業務(スコットランド)法第1部に基づく薬科介護業務
    (5) この部において、
    意匠に関して「国王による使用」とは、この条に基づいていずれかのことを行うことであって、この条によらなければ意匠の意匠権侵害となるものをいう。
    そのような使用に関して、「政府の関係省庁」とは、行為を行い、又はそれを許可する政府の省庁をいう。
    (6) 国王による意匠の使用についての政府の省庁の許可は、使用の前又は後に、かつ、ある者がその意匠に関していずれかのことを行うことを意匠権者により直接的又は間接的に許諾されると否とにかかわらず、その者に与えることができる。
    (7) この条により付与される権限を行使して販売されるいずれかのものを取得する者及びその者の下で主張するいずれの者も、意匠権が国王のために保持されたものとして、同一の方法によりそれを利用することができる。

    (国王による使用のための条件の決定)
    第241条
    (1) 国王による意匠の使用が行われる場合には、政府の関係省庁は、次に掲げることを行う。
    (a) できる限り速かに意匠権者に通知すること。
    (b) 意匠権者が随時要求することができる使用の範囲についての情報を意匠権者に与えること。
    ただし、そうすることが公益に反するとその省庁が認める場合、又は意匠権者の身元を合理的な調査により確認することができないとその省庁が認める場合を除く。
    (2) 国王による意匠の使用は、使用の前又は後に、大蔵省の承認を得て政府の関係省庁と意匠権者との間で合意される条件で、又は合意がないときは裁判所により決定される条件で行われる。
    この項の規定の北部アイルランドへの適用において、大蔵省への言及は、同項において言及される政府の省庁が北部アイルランドの省庁である場合には、財政及び職員省への言及として解釈される。
    この項の規定のスコットランドへの適用において、同項において言及される政府の省庁がスコットランド政府のいずれかの一部である場合には、「大蔵省の承認を得て」という用語は、省略される。
    (3) 意匠権者の身元を合理的な調査により確認することができない場合には、政府の関係省庁は、裁判所に申請することができ、裁判所は、意匠権者がその省庁と条件について合意し、又は問題を決定のために裁判所に付託するまでは、国王による意匠の使用についていずれの使用料その他の金額も支払われない旨を命令することができる。

    (国王による使用の場合における第三者の権利)
    第242条
    (1) 意匠権者(又は意匠権者から権限を得るいずれかの者、若しくは意匠権者がその者から権限を得るいずれかの者)と政府の省庁以外のいずれかの者との間で定められるいずれの許諾、譲渡又は合意の規定も、次に掲げるいずれかの場合に限り、国王による意匠の使用又は国王による使用に付随するいずれの行為に関しても、効力を有しない。
    (a) 意匠に関して行われるいずれかのこと又はその意匠に関するいずれかのひな型、文書その他の情報の使用を制限し、若しくは規制する場合
    (b) そのような使用についての支払い、又はそのような使用に関連して計算される支払いを行うことを規定する場合
    また、行われたことに関連してそのようないずれかのひな型若しくは文書を複製すること、若しくはその複製物を公衆に配布すること、又はそのようないずれの使用も、そのひな型又は文書のいずれの著作権の侵害でもないとみなされる。
    (2) 第1項の規定は、そのようないずれかのひな型、文書又は情報を、許諾、譲渡又は合意に違反して開示することを許すものとは解釈されない。
    (3) 意匠について排他的許諾が効力を有する場合において、
    (a) 使用料に対して許諾が付与されたときは、
    (i) 第241条(国王による使用のための条件の決定)に基づく意匠権者と政府の省庁との間のいずれの合意も、許諾を得た者の同意を必要とする。
    (ii) 許諾を得た者は、国王による使用のための支払いの一部であってそれらの者の間で合意することができるもの、又は合意がないときは、裁判所が決定することができるものを、意匠権者から取り戻す資格を有する。
    (b) 使用料に対して以外に許諾が付与されたときは、
    (i) 第241条の規定は、意匠権者への言及を許諾を得た者への言及に置き換えて、第240条(国王による意匠の使用)及び前記第1項がなかったならば許諾を得た者の権利の侵害となるいずれのことに関しても適用される。
    (ii) 第241条の規定は、第240条に基づいて与えられる権限に基づいて許諾を得た者が行ういずれのことに関しても適用されない。
    (4) 使用料を対価として意匠権が意匠権者に譲渡されている場合には、
    (a) 第241条の規定は、意匠権者への言及は譲渡人を含んだものとして国王による意匠の使用に関して適用される。また、国王による使用のためのいずれの支払いも、合意することができる割合で、又は合意がないときは裁判所が決定することができる割合でそれらの者の間で配分される。
    (b) 第241条の規定は、国王による意匠の使用に関して適用されると同様に、国王による使用に付随するいずれの行為に関しても適用される。
    (5) 意匠に関するいずれかのひな型、文書その他の情報が、国王による意匠の使用に関連して、又は国王による使用に付随するいずれかの行為に関連して使用される場合には、第241条の規定は、意匠権者への言及を前記第1項により無効とされる合意のいずれかの規定の利益について資格を有する者への言及に置き換えて、そのひな型、文書その他の情報の使用について適用される。
    (6) この条において、
    「国王による使用に付随する行為」とは、政府の省庁の命令に従って国王の業務のために意匠について意匠権者により行われるいずれのことをもいう。
    「国王による使用のための支払い」とは、第241条に基づいて政府の関係省庁により支払われる金額をいう。
    「使用料」は、意匠の使用に関連して決定されるいずれの利益をも含む。

    (国王による使用――利得の損失についての補償金)
    第243条
    (1) 国王による意匠の使用が行われる場合には、政府の関係省庁は、次に掲げるいずれかの者に対して、意匠に従って作成された物品を供給する契約をその者が裁定されないことから生じるいずれの損失についても補償金を支払う。
    (a) 意匠権者
    (b) 意匠について効力を有する排他的許諾があるときは、排他的許諾を得た者
    (2) 補償金は、その者の現在の製造能力からそのような契約を履行することができたであろう限度までに限り、支払われる。ただし、補償金は、そのような契約の裁定についてその者を不適格とする状況の存在にかかわらず、支払われる。
    (3) 損失の決定に際しては、そのような契約に基づいて得られた利得に対して、及びいずれかの製造能力が十分に使用されなかった限度について、考慮が払われる。
    (4) いずれの補償金も、意匠に従って作成された物品を国王の業務のため以外に供給するための契約を確保することを怠ったいずれの場合には、支払われない。
    (5) 支払われる金額は、大蔵省の承認を得て意匠権者又は許諾を得た者と政府の関係省庁との間で合意されないときは、第252条に基づく付託を受けて裁判所により決定される。また、支払われる金額は、第241条又は第242条に基づいて支払われるいずれの金額にも追加される。
    (6) この条の規定の北部アイルランドへの適用において、第5項における大蔵省への言及は、政府の関係省庁が北部アイルランドの省庁である場合には、財務及び職員省への言及として解釈される。
    (7) この条の規定のスコットランドへの適用において、第5項において言及される政府の省庁がスコットランド政府のいずれかの一部である場合には、同項における「大蔵省の承認を得て」という用語は、省略される。

    (緊急事態の間における国王による使用のための特別規定)
    第244条
    (1) 緊急事態の期間の間に、第240条(国王による意匠の使用)に基づいて意匠に関して行使される権限は、次に掲げる事項について必要又は得策であると政府の関係省庁が認めるいずれの目的のためにも、この条によらなければ意匠権の侵害となるいずれの行為をも行う権限を含む。
    (a) 女王陛下が参戦することができるいずれかの戦争の能率的な遂行
    (b) 社会生活に不可欠の供給品及び業務の維持
    (c) 社会福祉に不可欠の供給品及び業務の充足の確保
    (d) 工業、商業及び農業の生産性の促進
    (e) 輸出の促進及び指導、すべての国若しくはいずれかの国からの輸入又はいずれかの種類の輸入の削減、並びに貿易収支の是正
    (f) 一般的に、社会の資源全体が、社会の利益に資するために最も適した方法で使用されるために提供され、かつ、使用されることの確保
    (g) 戦争の結果として深刻な困窮状態にある連合王国外のいずれかの国における被害の救済並びに不可欠な供給品及び業務の回復及び配分の援助
    (2) この部における国王の業務への言及は、緊急事態の期間については、それらの業務の目的を含む。また、「国王による使用」への言及は、この条を離れては意匠権侵害となるいずれの行為をも含む。
    (3) この条において、「緊急事態の期間」とは、この部の目的上、枢密院令により緊急事態の期間の始まりであると宣言することができる日に始まり、緊急事態の期間の終わりであると宣言することができる日に終わる期間をいう。
    (4) この条に基づくいずれの枢密院令も、その草案が議会の両院に提出され、かつ、その決議により承認されない限り、女王陛下に提出されない。

    雑則

    (私的な行為、実験及び教授に関する例外)
    第244条のA
    意匠権は、以下によって侵害されない
    (a) 私的に行われるものであり、かつ、商業的ではない目的でなされる行為
    (b) 実験の目的で行われる行為、又は
    (c) 教授する目的又は引用する目的でなされる複製の行為。ただし、以下を条件とする。
    (i) 複製の行為が、公正な商業上の慣行に合致するものであり、かつ、当該意匠の通常の利用を不当に害しないこと、及び
    (ii) その情報源に対する言及がなされていること

    (外国の船舶及び航空機に関する例外)
    第244条のB
    意匠権は、以下によって侵害されない
    (a) その他の国で登録されているが、連合王国に一時的に滞在する船舶又は航空機の設備における使用
    (a) かかる船舶又は航空機を修理することを目的とする交換部品の連合王国への輸入
    (a) かかる船舶又は航空機の修理の実施

    一般規定

    (更なる例外について規定する権限)
    第245条
    (1) 所管大臣は、次に掲げるいずれかの目的のために必要と認めるときは、命令により、命令に明示する種類の行為が意匠権を侵害しない旨を規定することができる。
    (a) 連合王国の国際的義務を履行するため。
    (b) 他の諸国における英国人の意匠の相互保護を確保し、又は維持するため。
    (2) 命令は、意匠又は物品の異なる種類について異なる規定を定めることができる。
    (3) 命令は、制定文書により定められる。また、いずれの命令も、その草案が議会の両院に提出され、かつ、その決議により承認されない限り、定められない。



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