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    第8章 著作権審判所

    審判所

    (著作権審判所)
    第145条
    (1) 1956年の著作権法第23条の規定に基づいて設置された審判所は、著作権審判所と改称される。
    (2) 審判所は、法務長官との協議の後に大法官により任命される所長及び2名の副所長並びに所管大臣により任命される2名以上8名以下の通常所員により構成される。
    (3) いずれの者も、次に掲げるいずれかに該当しない限り、所長又は副所長として任命される資格を有しない。
    (a) その者が、5年を基礎とする裁判官任用資格条件を満たしていること。
    (b) その者が、少なくとも5年継続して法廷弁護士又はスコットランドの事務弁護士であること。
    (c) その者が、少なくとも5年継続して北部アイルランド弁護士会の会員又は北部アイルランド最高裁判所の事務弁護士であること。
    (d) その者が、裁判官の職に就いたことがあること。

    (審判所所員)
    第146条
    (1) 著作権審判所所員は、以下に定める規定に従うことを条件として、その任命の条件に従って職に就き、及び退職する。
    (2) 審判所所員は、所管大臣への、又は所長若しくは副所長の場合には大法官への書面による通告により、辞職することができる。
    (3) 所管大臣又は、所長若しくは副所長の場合には大法官は、次に掲げる場合には、関係の所員にあてた書面による通告により、その者を解任することができる。
    (a) その者が破産し、若しくは債権者と取り決めを結び、又はスコットランドにおいてはその財産が仮差押えられ、債権者のために信託証書を作成し、若しくは一部返済金契約を結んだ場合
    (b) その者が肉体的若しくは精神的な病気により不適格となる場合
    又は、所管大臣若しくは場合により大法官の意見では、その者が所員としての任務を遂行することができず、若しくはそれに適しない場合も、同様とする。
    (3A) 審判所所長又は副所長である者は、その者が70歳の年令に達する日に退職する。ただし、この項の規定は、1993年の裁判官年金及び退職法第26条第4項から第6項まで(75歳の年令までの在職の継続を許可する権限)の規定に従う。
    (4) 審判所所員が病気、不在その他の合理的原因を理由として、一般的に又は特定の訴訟手続に関してその職の任務を遂行することが当分の間できないときは、1回に6か月を超えない期間につき、又は場合によりそれらの訴訟手続に関して、その者の任務を果たすための者を任命することができる。
    (5) 任命は、次に掲げる者により行われる。
    (a) 所長又は副所長の場合には、大法官により行われる。大法官は、その職への任命について資格を有する者を任命する。
    (b) 通常所員の場合にも、所管大臣により行われる。
    また、そのように任命される者は、その者の任命の期間中又は当該訴訟手続に関して、その者がその代わりに任命される者と同一の権限を有する。
    (6) 大法官は、この条の規定に基づくその権限を行使する前に、法務長官と協議する。
    (7) 大法官は、適当な上級判事の同意を得た上でのみ、第3項に基づいてある者を解任し、又は第4項に基づいてある者を任命するその権限を行使することができる。
    (8) 適当な上級判事は、次に掲げるいずれかの場合に該当しない限り、イングランド及びウェールズの首席裁判官である。
    (a) 解任されるべき者が、全体的に若しくは主としてスコットランドにおいて職務を行使しており、又は任命されるべき者が、全体的に若しくは主としてスコットランドにおいて職務を行使することになっている場合。この場合には、適当な上級判事は、民事控訴院長官である。
    (b) 解任されるべき者が、全体的に若しくは主として北部アイルランドにおいて職務を行使しており、又は任命されるべき者が、全体的に若しくは主として北部アイルランドにおいて職務を行使することになっている場合。この場合には、適当な上級判事は、北部アイルランド首席裁判官である。
    (9) イングランド及びウェールズの首席裁判官は、第4項に基づくある者の任命に関して第7項に基づいてその者の職務を行使するために、裁判官職務保有者(2005年の憲法改革法第109条第4項に定義する者)を任命することができる。
    (10) 民事控訴院長官は、第4項に基づくある者の任命に関して第7項に基づいてその者の職務を行使するために、民事控訴院内局第1部又は第2部の部員である控訴院判事を任命することができる。
    (11) 北部アイルランド首席裁判官は、第4項に基づくある者の任命に関して第7項に基づいてその者の職務を行使するために、次に掲げるいずれの者を任命することもできる。
    (a) 2002年の裁判官(北部アイルランド)法附則第1に列挙する職務の1の保有者
    (b) 控訴院裁判官(同法第88条に定義する者)

    (財政規定)
    第147条
    (1) 所管大臣が大蔵省の承認を得て決定することができる報酬(俸給又は謝金として)及び手当が、著作権審判所所員に支払われる。
    (2) 所管大臣は、人員及び報酬については大蔵省の承認を得て同大臣が決定することができる審判所職員を任命することができる。
    (3) 審判所所員の報酬及び手当、いずれもの職員の報酬その他所管大臣が大蔵省の承認を得て決定することができる審判所の経費は、議会が準備する資金から支払われる。

    (訴訟手続を目的とする構成)
    第148条
    (1) いずれの訴訟手続の目的上も、著作権審判所は、次に掲げる者で構成される。
    (a) 審判所の所長又は副所長である委員長
    (b) 2名以上の通常所員
    (2) いずれかの事項を取り扱う審判所所員が全会一致でないときは、決定は、多数決により行われる。また、そのような場合に、可否同数のときは、委員長が、更に一票の決定投票権を有する。
    (3) 審判所におけるいずれかの訴訟手続の一部分が審問され、かつ、審判所の1名又は2名以上の所員が(職務を)継続することが不可能である場合には、審判所は、所員の人数が3名以下に減少しない限り、それらの訴訟手続の目的上適切に構成されているものとする。
    (4) 委員長が(職務を)継続することが不可能であるときは、審判所所長は、次の者を任命する。
    (a) 委員長としての職務を執る残りの所員のうちの1名
    (b) 訴訟手続に参加して、生じるいずれかの法律問題について所員に助言するための適切な資格を有する者
    (5) いずれの者も、審判所副所長であるか、又は副所長としての任命について資格を有するときは、第4項(b)号の目的上「適切な資格を有する」。

    管轄権及び手続

    (審判所の管轄権)
    第149条
    著作権審判所は、次に掲げる諸条項に基づく訴訟手続を審問し、及び決定するというこの部に基づく管轄権を有する。
    (za) 第73条(著作物が挿入されている放送の再送信について支払われるべき使用料その他の報酬の決定)
    (zb) 第93条のC(第93条のBに基づく公正な報酬の金額を決定するための申請)
    (a) 第118条、第119条又は第120条(許諾要綱の付託)
    (b) 第121条又は第122条(許諾要綱に基づく許諾を受ける資格についての申請)
    (c) 第125条、第126条又は第127条(許諾機関による許諾についての付託又は申請)
    (ca) 第128条のB(第128条のAに基づく所管大臣による付託)
    (cc) 第135条のD又は第135条のE(放送における録音物の権利としての使用についての申請又は付託)
    (d) 第139条(許諾要綱又は許諾の範囲についての命令に対する上訴)
    (e) 第142条(ある種の著作物の貸与について支払われる使用料その他の金額を決定する申請)
    (f) 第144条第4項(権利として利用可能な著作権許諾の条件を決定する申請)
    (fa) 附則ZA1第7項(権利者不明著作物の使用に関する補償金を決定するための申請)

    (規則を定める一般的権限)
    第150条
    (1) 大法官は、法務長官との協議の後、著作権審判所における訴訟手続を規制するために、及び大蔵省の承認を条件として、そのような訴訟手続について課される料金について、規則を定めることができる。
    (2) 規則は、審判所に関して、イングランド及びウェールズ又は北部アイルランドにおける訴訟手続については、1996年の仲裁法第1部の規定のいずれかを適用することができる。
    (3) 次に掲げる規定が、規則により定められる。
    (a) 代表する団体が代表していると主張する人々の集団を合理的に代表していることを審判所が納得しない限り、その団体による第118条、第119条又は第120条に基づく付託を審判所が受理することを禁止する規定
    (b) いずれの訴訟手続の両当事者をも明示し、かつ、その事項に適切な利害関係を有する旨を審判所に納得させるいずれかの者又は団体を審判所が訴訟手続の当事者とすることを可能とする規定
    (c) 規則が定めることができるところに従って、書面により又は口頭でその立場を陳述する機会を訴訟手続の両当事者に与えることを審判所に要求する規定
    (4) 規則は、第152条(法律問題についての裁判所への上訴)に基づく審判所からのいずれかの上訴に付随する、又はその結果生じるいずれの事項をも規制し、又は定めるための規定を定めることができる。
    (5) この条に基づく規則は、議会の上院又は下院の決議に従って廃止することができる制定文書により定められる。

    (経費、命令の証拠等)
    第151条
    (1) 著作権審判所は、審判所における訴訟手続の当事者の経費が、審判所が指示することができる他の当事者により支払われることを命ずることができる。また、審判所は、経費の金額を査定し、若しくは決定し、又はいかなる方法により査定されるかを指示することができる。
    (2) 審判所の命令の写しであって、委員長により真の写しであることが証明されることを意図する文書は、いずれの訴訟手続においても、反対のことが立証されない限り、命令の十分な証拠となる。
    (3) スコットランドにおける訴訟手続について、審判所は、証人の出席及び資料の作成を確保することについて、並びに宣誓による証人の尋問に関して、仲裁付託に基づく仲裁人と同様の権限を有する。

    (利息の裁定)
    第151条のA
    (1) 次に掲げるいずれの指示又は命令も、著作権審判所が状況上合理的と認める率で、かつ、審判所が状況上合理的と認める期間であって、関係する日以後に始まり、命令の日以前に終わる期間について、単利を裁定することができる。
    (a) 第123条第3項に基づく指示であって、著作物を公衆に伝達するための許諾に関するもの
    (b) 第128条第3項に基づく指示であって、前号の許諾と同じ許諾に関するもの
    (c) 第135条のDに基づく命令
    (d) 第135条のDに基づく命令を確認し、又は変更する第135条のFに基づく命令
    (2) この条において、「関係する日」とは、次に掲げるいずれかの日をいう。
    (a) 第123条第3項に基づく指示に関しては、付託が行われた日
    (b) 第128条第3項に基づく指示に関しては、付託又は申請が行われた日
    (c) 第135条のD第1項に基づく命令に関しては、第135条のC第2項に基づく最初の支払いが支払い期限となった日
    (d) 第135条のFに基づく命令に関しては、申請が行われた日

    上 訴

    (法律問題についての裁判所への上訴)
    第152条
    (1) 著作権審判所の決定から生じるいずれの法律問題についての上訴も、高等裁判所に、又はスコットランドにおける審判所の訴訟手続の場合には民事控訴院に係属する。
    (2) 上訴を提起することができる期間を制限する規定が、第150条に基づく規則により定められる。
    (3) 次のことについての規定を、同条に基づく規則により定めることができる。
    (a) 決定が上訴される場合に審判所の命令の作用を停止し、又は停止することを審判所に許可し、若しくは要請すること。
    (b) 作用が停止される審判所の命令に関して、命令の効力についてのこの法律のいずれの規定の作用をも修正すること。
    (c) 又は審判所の命令の停止により影響される者がその停止を知らされることを確保するために、通知を公表し、又は他の措置をとること。



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