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    第9章 著作権保護のための資格付与及び著作権保護の範囲

    著作権保護のための資格付与

    (著作権保護のための資格付与)
    第153条
    (1) この章の資格付与の要件が次に掲げるいずれかについて満たされない限り、著作物に著作権は存続しない。
    (a) 著作者(第154条参照)
    (b) 著作物が最初に発行された国(第155条参照)
    (c) 放送の場合には、そこから放送が行われた国(第156条参照)
    (2) 第1項の規定は、国王の著作権若しくは議会の著作権(第163条から第166条のDまで参照)に関して、又は第168条(ある種の国際機関の著作権)に基づいて存続する著作権に関しては、適用されない。
    (3) この章又は第163条、第165条若しくは第168条の資格付与の要件が著作物についていったん満たされるときは、著作権は、以後のいずれの出来事を理由としても存続しなくなることはない。

    (著作者への言及による資格付与)
    第154条
    (1) 著作者が実質的な時に次に掲げるいずれかに該当する資格ある者であったときは、著作物は、著作権保護について資格を有する。
    (a) 英国市民、その他のEEA諸国の国民、英国従属領市民、英国国民(海外の)、英国海外市民、英国臣民又は1981年の英国国籍法の意味における英国被保護者
    (b) 連合王国又はその他のEEA諸国、又は英仏海峡諸島、マン島又はジブラルタル、又はこの部の関係規定が及ぶ他の国に住所又は居所を有する個人
    (c) 連合王国又はその他のEEA諸国、又は英仏海峡諸島、マン島又はジブラルタル、又はこの部の関係規定が及ぶ他の国の一部分の法律に基づいて設立された法人
    (2) 第159条(この部の規定が及ばない国へのこの部の規定の適用)に基づく命令により規定が定められる場合には、又はその限りにおいて、実質的な時期に著作者が、命令が関係する国の市民若しくは臣民、その国に住所若しくは居所を有する個人又はその国の法律に基づいて設立された法人であるときも、著作物は、著作権保護について資格を有する。
    (3) 共同著作物は、実質的な時期に著作者のいずれかが第1項又は第2項の要件を満たすときは、著作権保護について資格を有する。ただし、著作物がこの条のみに基づいて著作権保護について資格を有する場合には、それらの要件を満たす著作者のみが、次に掲げる諸条項の目的上考慮される。
    第11条第1項及び第2項 (著作権の最初の帰属――著作者又は著作者の雇用主の資格)
    第12条 (著作権の存続期間)及び第12条の目的上適用される限りにおける第9条第4項(「著作者が知られていない」の意味)
    第57条 (無名又は変名の著作物――著作権の消滅又は著作者の死亡についての推定に基づいて許される行為)
    (4) 文芸、演劇、音楽又は美術の著作物に関して実質的な時期とは、次に掲げるものをいう。
    (a) 未発行の著作物の場合には、著作物が作成された時、又は著作物の作成がある期間にわたるときは、その期間の実質的な部分
    (b) 発行された著作物の場合には、著作物が最初に発行された時、又は著作者がその時以前に死亡していたときは、その死亡の直前
    (5) 他の種類の著作物に関して実質的な時期とは、次に掲げる時である。
    (a) 録音物又は映画の場合には、それが作成された時
    (b) 放送の場合には、放送が行われた時
    (c) 削除
    (d) 発行された版の印刷配列の場合には、版が最初に発行された時

    (最初の発行の国への言及による資格付与)
    第155条
    (1) 文芸、演劇、音楽若しくは美術の著作物、録音物若しくは映画又は発行された版の印刷配列は、それが次に掲げる国において最初に発行されるときは、著作権保護について資格を有する。
    (a) 連合王国、その他のEEA諸国、英仏海峡諸島、マン島又はジブラルタル
    (b) この部の関係規定が及ぶ国
    (2) 第159条(この部の規定が及ばない国へのこの部の規定の適用)に基づく命令により規定が定められる場合には、又はその限りにおいて、そのような著作物は、命令が関係する国においてそれが最初に発行されるときも、著作権保護について資格を有する。
    (3) この条の目的上、1国における発行は、他の場所における同時発行を理由とする最初の発行以外とはみなされない。また、この目的上、他の場所におけるその前30日以内の発行は、同時発行として取り扱われる。

    (送信の場所への言及による資格付与)
    第156条
    (1) 放送は、それが次に掲げる国におけるある場所から行われるときは、著作権保護について資格を有する。
    (a) 連合王国
    (b) この部の関係規定が及ぶ他の国
    (2) 第159条(この部の規定が及ばない国へのこの部の規定の適用)に基づく命令により規定が定められる場合には、又はその限りにおいて、放送は、命令が関係する国におけるある場所からそれが行われるときも、著作権保護について資格を有する。

    この部の規定の範囲及び適用

    (この部の規定が及ぶ国)
    第157条
    (1) この部の規定は、イングランド並びにウェールズ、スコットランド及び北部アイルランドに及ぶ。
    (2) 女王陛下は、枢密院令により、この部の規定が、同令に明示することができる例外及び修正に従うことを条件として、次に掲げる領域に及ぶことを指示することができる。
    (a) 英仏海峡諸島のいずれか
    (b) マン島
    (c) いずれかの植民地
    (3) その権限は、同令に明示することができる例外及び修正に従うことを条件として、この章の以下の規定に基づいて定められるいずれの枢密院令をも拡大する権限を含む。
    (4) この部の規定が及ぼされる国の立法府は、次に掲げることに関して、この部の規定をその国の状況に適合させるために必要と認めることができるところに従って、その国の法律の一部分として実施される際にこの部の規定を修正し、又はそれに追加することができる。
    (a) 手続及び救済に関して。
    (b) その国との関係に基づいて著作権保護について資格を有する著作物に関して。
    (5) この条のいずれの規定も、この部の規定が及ばない従属領の法律に関して附則第1第36項(経過規定――1956年の著作権法又は1911年の著作権法が引き続き効力を有する従属領)の範囲を制限するものとは解釈されない。

    (植民地であることをやめる国)
    第158条
    (1) この部の規定が及ぼされている国が連合王国の植民地であることをやめる場合には、以下に定める規定が適用される。
    (2) 植民地であることをやめる日から、その国は、次に掲げる諸条の目的上この部の規定が及ぶ国とみなされることをやめる。
    (a) 第160条第2項(a)号(英国人著作物に適切な保護を与えない国の市民への著作権保護の否認)
    (b) 第163条及び第165条(国王及び議会の著作権)
    (3) ただし、その国は、次に掲げる時までは、第154条から第156条まで(著作権保護のための資格付与)の目的上この部の規定が及ぶ国として引き続き取り扱われる。
    (a) その国について、第159条(この部の規定が及ばない国へのこの部の規定の適用)に基づいて枢密院令が定められるまで。
    (b) その国の法律の一部分としてのこの部の規定が廃止され、又は修正されているという事実を理由として、その国がそのように取り扱われることをやめる旨を宣言する枢密院令が定められるまで。
    (4) 第3項(b)号に基づく枢密院令を含む制定文書は、議会の上院又は下院の決議に従って廃止することができる。

    (この部の規定が及ばない国へのこの部の規定の適用)
    第159条
    (1) ある国がベルヌ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国である場合、文芸、演劇、音楽及び美術の著作物、映画及び発行された版の印刷配列に関する限り、この部の規定は、
    (a) 英国市民又は連合王国に住所若しくは居所を有する者について適用されると同様に、その国の市民若しくは臣民又はその国に住所若しくは居所を有する者に関しても適用される。
    (b) 連合王国の一部分の法律に基づいて設立された団体に関して適用されると同様に、その国の法律に基づいて設立された団体に関しても適用される。
    (c) 連合王国において最初に発行された著作物に関して適用されると同様に、その国において最初に発行された著作物に関しても適用される。
    (2) ある国がローマ条約の同盟国である場合、この部の規定は、録音物及び放送に関する限り、
    (a) 第1項の第(a)号、第(b)号及び第(c)号に言及される国に関して適用される、及び、
    (b) 連合王国から行われる放送に関して適用されると同様に、その国から行われる放送に関しても適用されること。
    (3) ある国がWPPTの同盟国である場合、この部の規定は、録音物に関する限り、第1項の第(a)号、第(b)号及び第(c)号に言及される国に関して適用される、
    (4) 女王陛下は、枢密院令により、
    (a) 第1項、第2項又は第3項による、ある国に対してこの部を適用に関して指定された制約に服するものとする規定を設けることができる。
    (b) 指定された国に対して、この部又はそのいずれかの条項を適用する規定を設けることができる。
    (c) 指定された種類のいずれかの国に対して、この部又はそのいずれかの条項を適用する規定を設けることができる。
    (d) 第(a)号、第(b)号及び第(c)号に基づいて、ある国が指定された制約に服することになる立法の適用に関する条項を設けることができる。
    (5) 第4項に基づく条項は、一般的に、又は、指定された著作物のクラス、又は事案のクラスに関して、適用される。
    (6) 条約国又は欧州連合の他の加盟国の場合を除き、女王陛下は、枢密院令が関係する種類の著作物について、この部の規定に基づいて著作権者に適切な保護を与える、問題となるある国又は諸国の法律に基づいて規定が定められ、又は定められることとなることを納得しない限り、その国に関して、第4項第(b)号又は第(c)号に基づく条項を含む枢密院令を定めることはできない。
    (7) 第4項第(b)号又は第(c)号に基づく適用は、第1項から第3項に付加される。
    (8) 第4項第(c)号に基づいて設けられた条項は、当該条項が効力を有した後に、指定された種類となる(又は再びその種類となる)諸国を含むことができる。
    (9) この条のおいて、
    「ベルヌ条約」とは、1886年9月9日にベルヌで署名された文学的及び美術的著作物の保護に関する国際条約に関する法を意味する。 「ローマ条約」とは、1961年10月26日にローマで作成された実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約を意味する。 「WPPT」とは、1996年12月20日にジュネーブで採択された実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約を意味する。
    (10) この条に基づく枢密院令を含む制定文書は、議会の上院又は下院の決議に従って廃止することができる。

    (英国人の著作物に適切な保護を与えない国の市民への著作権保護の否認)
    第160条
    (1) ある国の法律が、この条の規定が適用される英国人の著作物又は1若しくは2以上の種類のそのような著作物に適切な保護を与えていないと女王陛下が認めるときは、女王陛下は、その国に関連する著作者の著作物に関してこの部の規定により付与される権利を制限する規定を、この条に従って枢密院令により定めることができる。
    (2) この条に基づく枢密院令は、関係する国を指定し、かつ、同令に明示する目的上、同令に明示される日の後に最初に発行される著作物は、その時に著作者が次に掲げるいずれかに該当するときは、そのような発行に基づいて著作権保護について資格を有するものとして取り扱われない旨を規定する。
    (a) その国の市民又は臣民(連合王国又はこの部の関係規定が及ぶ他の国に住所又は居所を有しない者)
    (b) その国の法律に基づいて設立された法人
    また、同令は、第1項にいう適切な保護の欠如の性質及び範囲を考慮して、この部のすべての目的又は同令に明示される目的のために、かつ、一般的に又は同令に明示される種類の場合に関して、そのような規定を定めることができる。
    (3) この条の規定は、文芸、演劇、音楽及び美術の著作物、録音物並びに映画に適用される。また、「英国人の著作物」とは、第154条の意味における実質的な時期に資格ある者であった著作者の著作物をいう。
    (4) この条に基づく枢密院令を含む制定文書は、議会の上院又は下院の決議に従って廃止することができる。

    補 則

    (領海及び大陸棚)
    第161条
    (1) この部の目的上、連合王国の領海は、連合王国の一部分として取り扱われる。
    (2) この部の規定は、連合王国において行われることについて適用されると同様に、海底若しくは底土の探査又はそれらの自然資源の利用に直接関連する目的のために大陸棚の連合王国領域に所在する構造物又は船舶において行われることについても適用される。
    (3) 大陸棚の連合王国領域とは、1964年の大陸棚法第1条第7項に基づく命令により指定される区域をいう。

    (英国の船舶、航空機及びホーバークラフト)
    第162条
    (1) この部の規定は、連合王国において行われることについて適用されると同様に、英国の船舶、航空機又はホーバークラフトにおいて行われることについても適用される。
    (2) この条において、
    「英国の船舶」とは、連合王国外の国における登録に基づかない1995年の商船法の目的上英国の船舶である船舶をいう。
    「英国の航空機」及び「英国のホーバークラフト」とは、連合王国において登録された航空機又はホーバークラフトをいう。



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