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    第9章-半導体チップ製品に対する保護


    第901条 定義

    (a) 本章において-

      (1) 「半導体チップ製品」とは、以下の要件を満たす製品の最終または中間形態をいう。

        (A) 金属材料、絶縁材料または半導体材料の2以上の層が、既定型に従って、半導体材料の表面に挿入その他配置され、または半導体材料から食刻されその他除去されているもので、かつ

        (B) 電子回路の機能を有することを意図したもの。

      (2) 「マスク・ワーク」とは、一連の関連する映像を固定しまたは暗号化したものであって、以下の要件を満たすものをいう。

        (A) 半導体チップ製品の層に配置されまたは層から除去された金属材料、絶縁材料または半導体材料の既定の三次元のパターンを有しまたは表象するもので、かつ

        (B) 各映像が半導体チップ製品の一の形態の表面のパターンを有するような関係が映像相互にあるもの。

      (3) マスク・ワークの半導体チップ製品への具現化が、通過的期間以上の間に製品からマスク・ワークを感知しまたは複製するに十分に永久的または安定的である場合、マスク・ワークは半導体チップ製品に「固定」されたものとする。

      (4) 「頒布」とは、販売し、もしくは貸与し、寄託しその他移転し、または販売、貸与、寄託その他の移転の申出をすることをいう。

      (5) マスク・ワークを「商業的に利用する」とは、マスク・ワークを含む半導体チップ製品を商業目的で公に頒布することをいう。ただし、半導体チップ製品を販売しまたは移転する申出は、申出が書面でなされ、かつ、マスク・ワークが半導体チップ製品に固定された後に行われた場合にのみ、「商業的利用」に含まれる。

      (6) マスク・ワークの「保有者」とは、マスク・ワークを創作した者またはその者が死去しもしくは法律上無能力である場合にはその者の法定代理人、または第903条(b)に従いマスク・ワークの創作者もしくはその代理人が本章に基づき有するすべての権利を譲り受けた当事者をいう。ただし、当該者の雇用の範囲で作成されたマスク・ワークの場合、「保有者」とは、マスク・ワークを創作させた使用者または第903条(b)に従い使用者が本章に基づき有するすべての権利を譲り受けた当事者をいう。

      (7) 「善意の買主」とは、善意でかつ半導体チップ製品に関する保護の認識なく半導体チップ製品を購入した者をいう。

      (8) マスク・ワークが本章に基づき保護されることにつき現実の知識があり、またはそう信じる相当な根拠がある場合、「保護の認識」があるものとする。

      (9) 「侵害にあたる半導体チップ製品」とは、本章に基づくマスク・ワークの保有者の排他的権利に違反して作成され、輸入され、または頒布された半導体チップ製品をいう。

    (b) 本章において、半導体チップ製品をその一部として組み込んだ製品の頒布または輸入は、当該半導体チップ製品の頒布または輸入とする。


    第902条 保護の対象

    (a) (1) 第(b)項の規定を条件として、マスク・ワークの保有者によりまたはその権限に基づいて半導体チップ製品に固定されたマスク・ワークは、以下の場合に本章に基づく保護を受けることができる。

        (A) マスク・ワークが第908条に基づき登録された日または世界のいずれかの場所で最初に商業的に利用された日のうちいずれか早い日に、マスク・ワークの保有者が(i)合衆国の国民もしくは住民、(ii)マスク・ワークに対する保護を認める条約であって合衆国も加盟しているものに加盟する外国の国民、住民もしくは主権者、または(iii)無国籍者(居住地を問わない)である場合。

        (B) マスク・ワークが合衆国内で最初に商業的に利用された場合。または、

        (C) マスク・ワークが第(2)節に基づき公布される大統領布告の範囲にある場合。

      (2) 大統領は、一の外国が、合衆国の国民または住民である保有者が所有するマスク・ワークに対して、(A)当該外国の国民もしくは住民が所有するマスク・ワークまたは当該外国で最初に商業的に利用されたマスク・ワークに付与する保護とほぼ同一の根拠に基づき、または(B)本章に定めるのとほぼ同一の根拠に基づいて、保護を付与すると認定する場合、布告により、(i)第908条に基づきマスク・ワークが登録された日もしくはマスク・ワークが世界のいずれかの場所で最初に商業的に利用された日のうちいずれか早い日に、当該外国の国民、住民もしくは主権者である保有者のマスク・ワーク、または(ii)当該外国で最初に商業的に利用されたマスク・ワークに対して保護を付与することができる。大統領はかかる布告を修正し、停止しもしくは撤回し、または布告に基づき認められる保護に条件もしくは制限を付すことができる。

    (b) 本章に基づく保護は、以下のマスク・ワークには適用されない。

      (1) 創作的でないもの。または、

      (2) 半導体産業において汎用、平凡もしくは周知となっているデザインまたはかかるデザインの変形であって、全体としてみた場合に創作的とならない形で組み合わせられたもの。

    (c) いかなる場合にも、本章に基づくマスク・ワークに対する保護は、着想、手順、プロセス、方式、操作方法、概念、原理または発見(これらがマスク・ワークにおいて記述され、説明され、描写され、または収録される形式の如何を問わない)には及ばない。


    第903条 保有、移転、使用許諾および譲渡証書登録

    (a) 本章に基づき保護の対象となるマスク・ワークに対する排他的権利は、マスク・ワークの保有者に帰属する。

    (b) マスク・ワークに対する排他的権利の保有者は、当該保有者または適法に授権されたその代理人が署名した書面により、権利の全部を移転し、または権利の全部もしくは一部につき使用許諾を付与することができる。上記権利は、法の作用により移転しもしくは使用許諾の対象とし、遺言により遺贈し、または無遺言相続法によって人的財産として移転することができる。

    (c) (1) マスク・ワークにかかる文書は、当該文書を作成した者の実際の署名があり、または、当該文書が署名された原本の真正な写しであることの宣誓によるまたは公式の証明書を添付した場合には、著作権局に登録することができる。著作権局長は、文書および第908条(d)に従い定める手数料を受領した場合、当該文書を登録し登録証明書と共に返還しなければならない。移転または使用許諾の本節に基づく登録は、当該移転または使用許諾に関して登記された文書に記載された事実につき、すべての者に対する擬制告知となる。

      (2) マスク・ワークに対する排他的権利の矛盾する移転が行われた場合、最初の移転が第(1)節に従って移転が行われた日から3ヶ月以内(ただし、爾後の移転の日の前日以後であってはならない)に登録されなければ、最初に行われた移転は、価値ある対価をもってかつ最初の移転に対する認識なく行われた爾後の移転に対して無効とする。

    (d) 合衆国政府の公務員または職員がその公務の一部として作成したマスク・ワークは、本章に基づく保護を受けないが、合衆国政府は、第(b)項に基づきその譲り受けた排他的権利を受領しまた保有することを妨げられない。


    第904条 保護の存続期間

    (a) 本章に基づきマスク・ワークに対して認められる保護は、第908条に基づきマスク・ワークが登録された日またはマスク・ワークが世界のいずれかの場所で最初に商業的に利用された日のうちいずれか早い日に開始する。

    (b) 第(c)項および本章の規定に従い、本章に基づきマスク・ワークに対して認められる保護は、第(a)項に基づき保護が開始する日から10年後に終了する。

    (c) 本条に定める保護期間は、その満了することとなる暦年の最終日まで継続する。


    第905条 マスク・ワークに対する排他的権利

    本章に基づく保護を受けるマスク・ワークの保有者は、以下の行為を行いまたこれを許諾する排他的権利を有する。

      (1) 光学的、電子的その他の方法でマスク・ワークを複製すること。

      (2) マスク・ワークを包含する半導体チップ製品を輸入しまたは頒布すること。

      (3) 第(1)節および第(2)節に定める行為を他人に行わせ、または他人が行うようにすること。


    第906条 排他的権利の制限:リバース・エンジニアリング;ファースト・セール

    (a) 第905条の規定にかかわらず、以下の行為はマスク・ワークの保有者の排他的権利に対する侵害とならない。

      (1) マスク・ワークに含まれた概念もしくは技法またはマスク・ワークに使用された回路配置、論理の流れもしくは部品の構造を教授し、分析しまたは評価することのみを目的としてマスク・ワークを複製すること。または、

      (2) 第(1)節に定める分析または評価を行う者が、頒布のために作成する創作的なマスク・ワークに分析または評価の結果を組み込むこと。

    (b) 第905条(2)の規定にかかわらず、マスク・ワークの保有者またはその許諾を受けた者が作成した特定の半導体チップ製品の保有者は、当該半導体チップ製品をマスク・ワークの保有者の許諾なく輸入し、頒布しその他処分しまたは使用することができるが、これを複製することはできない。


    第907条 排他的権利の制限:善意の侵害

    (a) 本章の他の規定にかかわらず、侵害にあたる半導体チップ製品の善意の買主は-

      (1) 当該半導体チップ製品に含まれたマスク・ワークに対する保護の認識を得る前に行った、侵害にあたる半導体チップ製品の輸入または頒布につき、本章に基づく一切の責任を負わない。また、

      (2) 当該半導体チップ製品に含まれたマスク・ワークに対する保護の認識を得た後に輸入しまたは頒布した半導体チップ製品1単位につき、相当の使用料を支払う責任のみを負う。

    (b) 第(a)項(2)にいう使用料の額は、当事者が任意の交渉、調停または拘束力ある仲裁により解決する場合を除き、侵害に関する民事訴訟において裁判所が定めるものとする。

    (c) 第(a)項(1)にいう善意の買主の免責および第(a)項(2)にいう善意の買主に対する救済の制限は、侵害にあたる半導体チップ製品を善意の買主から直接または間接に購入する者に及ぶ。

    (d) 第(a)項、第(b)項および第(c)項の規定は、善意の買主が半導体チップ製品に含まれたマスク・ワークに対する保護の認識を得る前に購入した侵害にあたる半導体チップ製品の単位にのみ適用される。


    第908条 保護請求の登録

    (a) マスク・ワークの保有者は、マスク・ワークに対する保護請求の登録を著作権局長に対して申請することができる。マスク・ワークが世界のいずれかの場所で最初に商業的に利用された日から2年以内に本章に基づくマスク・ワークに対する保護請求の登録申請がなされなかった場合、本章に基づくマスク・ワークに対する保護は終了する。

    (b) 著作権局長は、本章に基づくすべての管理機能および義務につき責任を負う。一般の任務、組織、規制の権限、行為、記録および著作権局の出版物に関する第7章の規定(第708条を除く)は、本章に適用されるが、著作権局長は上記規定を本章に適用するにつき必要な変更を行うことができる。

    (c) マスク・ワークの登録申請は、著作権局長が定める書式にて行うものとする。かかる書式は、マスク・ワークの作成もしくは特定、本章に基づくマスク・ワークの保護の存続、またはマスク・ワークの所有に関連すると著作権局長が判断する情報の記載を要求しうる。登録申請は、第(d)項に従い設定される手数料および第(d)項に従い定める識別資料を伴うものとする。

    (d) 著作権局長は、本章に基づくマスク・ワークの保護請求を登録する申請書の提出および本章の執行または本章に基づく権利に関するその他の業務につき、上記業務を提供する費用、公の記録の利点および本章に基づく法定手数料一覧表を考慮し、相当な手数料を規則をもって定めなければならない。著作権局長はまた、登録を求める請求に関して納付すべき識別資料を定めなければならない。

    (e) 著作権局長は、登録申請書の審査の後、当該申請が本章に基づく保護を受けることができるマスク・ワークに関連すると本章に基づき判断する場合には、保護請求を登録し、保護請求の登録証明書を著作権局の印章を付して申請者に交付しなければならない。保護請求登録の発効日は、著作権局長または管轄を有する裁判所が当該請求の登録につき受理できると判断する申請書、識別資料の納付および手数料がすべて著作権局に受領された日とする。

    (f) 本章に基づく侵害に対する訴訟において、マスク・ワークの登録証明書は、(1)当該証明書に記載された事実および(2)当該証明書の交付を受けた申請者が請求の登録に関して本章および本章に基づき交付される規則の要件を満たしたことにつき、一応の証拠となる。

    (g) 本条に基づく登録申請者で、著作権局長が本条に基づく登録申請書の交付を拒絶したことにつき不服ある者は、拒絶から60日以内にしかるべき連邦地方裁判所に対して司法審査を求める訴訟を提起することにより、拒絶の司法審査を求めることができる。第5編第7章の規定はかかる司法審査に適用されるものとする。登録申請が提出されてから4ヶ月以内に著作権局長が登録申請書を交付しない場合、本項および第910条(b)(2)において、登録申請書の交付を拒絶したものとみなす。ただし、地方裁判所は、正当な事由の証明があれば、上記4ヶ月間を短縮することができる。


    第909条 マスク・ワーク表示

    (a) 本章に基づき保護を受けるマスク・ワークの保有者は、本章に基づくマスク・ワークに対する保護につき相当な告知を与える方法および位置にて、マスク・ワークならびにこれを含むマスクおよび半導体チップ製品に、表示を配置することができる。著作権局長は、例として、本条における表示の添付方法および配置方法の具体例を規則により定めなければならないが、これらの具体例は限定的なものと解釈されてはならない。上記表示の付加は、本章に基づく保護の条件ではないが、保護の認識の一応の証拠となる。

    (b) 第(a)項にいう表示は、以下を含まなければならない。

      (1) 「マスク・ワーク」の語、記号*M*、または記号 (M)(丸の中にMの文字)。および、

      (2) マスク・ワークの保有者の名称、または名称を特定できもしくは広く知られた略称。


    第910条 排他的権利の行使

    (a) 本章に別段の定めある場合を除き、何人であれ、商業上の行為または商業に影響する行為によって本章に基づくマスク・ワークの保有者の排他的権利に違反する者は、当該権利の侵害者として責任を負わなければならない。本項において、「何人」とは、州、州の機関および州または州の機関の公務員または職員でその公的権限において行動する者を含む。州、州の機関、その公務員または職員は、非政府機関と同一の方法および範囲において本章の規定に服する。

    (b) (1) 本章に基づき保護を受けるマスク・ワークの保有者またはマスク・ワークにつき本章に基づくすべての権利の独占的使用許諾を受けた者は、第908条に基づき当該マスク・ワークの保護請求の登録証明書が交付された後、第904条(a)に基づきマスク・ワークの保護が開始した後に行われた侵害行為につき、民事訴訟を提起することができる。

      (2) いかなる場合においても、マスク・ワークに対する保護請求の登録申請ならびに識別資料および手数料の必要な納付を適切な形式で著作権局に提出し、かつ、マスク・ワークの登録が拒絶されたときには、申請者は、連邦民事訴訟規則に従い、訴訟の通知を訴状の写しとともに著作権局長に送達することにより、本章におけるマスク・ワークに関する侵害について民事訴訟を提起することができる。著作権局長は、その選択により、かかる送達から60日以内に出頭することにより、保護請求の登録の可否の争点につき訴訟当事者となることができるが、著作権局長が訴訟当事者とならないことにより裁判所が当該論点につき管轄を失うことはない。

    (c) (1) 財務長官および合衆国郵政庁は、輸入にかかる第905条に定める権利の執行について、個別にまたは共同で規則を公布しなければならない。かかる規則は、合衆国からの物品の差止の条件として、差止を求める者に以下のいずれかの行為を行うことを要求することができる。

        (A) 当該物品の輸入を差し止める裁判所の命令または1930年関税法第337条に基づく国際貿易委員会の排除命令を得ること。

        (B) 関連するマスク・ワークが本章に基づき保護されていること、および、当該物品の輸入が本章に基づくマスク・ワークに対する権利を侵害することの証明を提出すること。

        (C) 当該物品の差止または排除が不当であることが証明された場合に発生しうる損害のために、支払保証書を納付すること。

      (2) 第905条に定める権利に違反して輸入された物品は、税関法に違反して輸入された物と同様の方法で、差押および没収の対象となる。没収された物品は、財務長官または裁判所の指示により廃棄される。ただし、輸入者がその行為が法律に違反すると信じる相当な根拠がなかったことを財務長官に対して十分に証明した場合には、当該物品を輸出国に送り返すことができる。


    第911条 民事訴訟

    (a) 本章に基づき発生する民事訴訟につき裁判管轄権を有する裁判所は、当該裁判所が本章に基づくマスク・ワークの排他的権利の侵害を防止または抑制するために相当と考える条件において、一時的禁止命令、予備的差止命令および終局的差止命令を発行することができる。

    (b) 本章に基づく排他的権利の侵害につき、侵害者が第910条(b)(1)に基づき民事訴訟を提起することのできる者に対して責任を負うと認定した場合、裁判所は、侵害を受けた者が侵害の結果被った現実損害額の賠償を命じなければならない。裁判所はまた、侵害に起因して侵害者が受けた利益で現実損害額の算出にあたり考慮されなかった額の賠償を命じなければならない。侵害者の利益を立証するにあたっては、侵害を受けた者は、侵害者の総収入の証明を提出すれば足り、侵害者は、控除できる費用およびマスク・ワーク以外の要因に起因して受けた利益の要素を証明しなければならない。

    (c) 侵害について民事訴訟を提起することのできる者は、終局的判決が言い渡される前はいつでも、第(b)項に定める現実損害賠償および利益に代えて、一のマスク・ワークに関して当該訴訟の対象となるすべての侵害(一人の侵害者は単独で責任を負い、二人以上の侵害者は連帯して責任を負う)につき、250,000ドル未満で裁判所が正当と判断する金額の法定損害賠償の支払を選択することができる。

    (d) 本章における侵害訴訟は、請求権の発生後3年以内に開始されなければ、これを提起することができない。

    (e) (1) 本章に基づくマスク・ワークに対する排他的権利の侵害にかかる訴訟の係属中はいつでも、裁判所は、その相当と考える条件において、上記排他的権利に反して作成され、輸入されまたは使用されていると主張されるすべての半導体チップ製品および図面、テープ、マスクまたは半導体チップ製品を複製することのできるその他の物品の差押を命ずることができる。本節に基づく命令の申立は、実際的な限りにおいて、暫定的禁止命令または一時的差止命令の申立と同様に審査されかつ判断されなければならない。

      (2) 裁判所は、終局的判決または決定の一部として、侵害にあたる半導体チップ製品およびマスク、テープまたは半導体チップ製品を複製することのできるその他の物品の廃棄その他の処分を命ずることができる。

    (f) 本章に基づき提起される民事訴訟において、裁判所は、その裁量において、勝訴当事者に対して相当な弁護士報酬を含む訴訟費用全額の回復を認めることができる。

    (g) (1) 州、州の機関および州または州の機関の公務員または職員でその公的権限において行動する者は、本章に基づきマスク・ワークの保有者が有する排他的権利の侵害その他の本章の違反について連邦裁判所に対して政府機関または非政府機関を含む者が提起した訴訟につき、合衆国憲法修正第11条その他の主権者免責の法理に基づく免責特権を受けない。

      (2) 第(1)節に定める違反に関する訴訟においては、州、州の機関および州または州の機関の公務員または職員でその公的権限において行動する者を除く公私の事業者に対する訴訟において、第(1)節に定める違反に対して認められる救済 (普通法上および衡平法上の救済を含む)と同範囲の救済が認められるものとする。かかる救済は、第(b)項に基づく現実損害賠償および利益、第(c)項に基づく法定損害賠償、第(e)項に基づく侵害品の差押および処分、ならびに第(f)項に基づく費用および弁護士報酬を含む。


    第912条 他の法律との関係

    (a) 本章のいかなる規定も、本編第1章ないし第8章もしくは第10章または第35編に基づく権利または救済に影響を及ぼさない。

    (b) 本編第908条(b)に規定する場合を除き、本編第1章ないし第8章または第10章にいう「本編」または「第17編」には、本章を含まないものとみなす。

    (c) 本章の規定は、マスク・ワークに関して本章が定める権利または救済と同等の権利または救済を定める州の法律に優先するが、1986年1月1日以後に提起された訴訟についてのみ優先するものとする。

    (d) 第(c)項にかかわらず、本章のいかなる規定も、連邦法(本章を除く)に基づくかまたはコモン・ローもしくは州の制定法に基づくかを問わず、また、本章の前後に宣言されまたは制定されたかを問わず、1983年7月1日より前に最初に商業的に使用されたマスク・ワークについては、マスク・ワークの保有者の権利を損なわない。


    第913条 経過規定


    (a)
    本章の制定日*19から60日後までは、第908条に基づく登録の申請書を提出できず、また、第910条に基づく民事訴訟または本章に基づくその他の執行手続を申し立てることはできない。

    (b) 本章の制定日前に行われた行為に関しては、第(d)項に定める場合を除き、第911条に定める金銭的救済は認められない。

    (c) 第(a)項を条件として、本章の規定は、本章の制定日以後に最初に商業的に使用されもしくは本章に基づき登録され、またはその双方が行われたマスク・ワークについて適用される。

    (d) (1) 第(a)項を条件として、1983年7月1日以後本章の制定日前に最初に商業的に使用されたマスク・ワークについては、当該マスク・ワークに対する保護の請求が第908条に基づき1985年7月1日より前に著作権局に登録された場合、本章に基づく保護が適用される。

      (2) 第(1)節に定めるマスク・ワークで本章に基づく保護が及ぶものの場合、本章の制定日前に製造の侵害にあたる半導体チップ製品については、第908条に基づくマスク・ワークの登録の日から2年後までは、第910条および第911条に基づく責任を負うことなく、これを合衆国内に輸入しもしくは合衆国内で頒布すること、またはその双方を行うことができるが、輸入者または頒布者が本章の制定日後に、輸入しまたは頒布する単位につきマスク・ワークの保有者に対して第907条(a)(2)に定める相当の使用料を支払いまたは支払うことを申し出た場合に限る。

      (3) 本項第(2)節に定める侵害にあたる半導体チップ製品を、本項第(2)節に定める相当の使用料を支払いまたは支払うことを申し出ることなく輸入しまたは頒布する場合または当該支払いを拒否しもしくは怠った場合、マスク・ワークの保有者は、第910条および第911条に定める救済を受けることができる。


    *19 1984年11月8日


    第914条 国際的経過規定

    (a) 商務長官は、以下を認定する場合、外国の国民、住民および主権者に対する本章に基づく保護に関する第902条(a)(1)(A)および(C)に規定する条件にかかわらず、申立により、または商務長官の裁量により、本章に基づく保護を外国の国民、住民および主権者に対して及ぼす命令を発行することができる。

      (1) 当該外国が、以下につき善意の努力を行いかつ相当の進歩が見られること。

        (A) 第902条(a)(1)(A)に定める条約に加盟すること。または、

        (B) 第902条(a)(2)(A)または(B)に従う立法を制定しまたは施行すること。

      (2) 当該外国の国民、住民および主権者ならびにこれらに支配される者が、マスク・ワークの不正目的使用または無断の頒布もしくは無断の商業的使用を行っていないこと。および、

      (3) 上記命令を発行することが、本章の目的およびマスク・ワークの保護に関する国際的強調を推進すること。

    (b) 第(a)項に定める命令がいずれかの外国において効力を有する間は、本章に基づくマスク・ワークの保護請求の登録申請は、マスク・ワークの保有者が当該外国の国民、住民もしくは主権者であることまたはマスク・ワークが当該外国で最初に商業的に使用されたことのみを理由として、拒絶されない。

    (c) 第(a)項に基づき商務長官が発した命令は、商務長官が当該命令において定めた期間効力を有するが、商務長官の権限が第(e)項に基づき終了する日を過ぎた後は効力を有しない。上記命令の発効日は、当該命令に定めるものとする。上記命令が申立により発行された場合、発効日は、商務長官が当該申立を受領した日より前であってはならない。

    (d) (1) 本条に基づき発行される命令は、以下の場合に失効する。

        (A) 商務長官が、第(a)項(1)、(2)および(3)に定める条件のいずれかがみたされていないと認定する場合。または

        (B) 命令の対象となる外国の国民、住民および主権者のマスク・ワークまたは当該外国で最初に商業的に使用されたマスク・ワークが、第902条(a)(1)(A)または(C)に基づく保護を受けることができるようになった場合。

      (2) 本条に基づき発行される命令の終了または失効の場合、当該命令に基づき行われたマスク・ワークの保護の請求の登録は、第904条に定める期間効力を有する。


    (e)
    本条に基づく商務長官の権限は、本章の制定日*20に開始し、1995年7月1日に終了する。

    (f) (1) 商務長官は、本条に基づく命令の発布または終了を、その理由の書面とともに、ただちに著作権局長ならびに上院および下院の司法委員会に通知しなければならない。商務長官はまた、かかる通知および理由の書面を連邦官報に公告させなければならない。

      (2) 本章の制定日から2年後、商務長官は、著作権局長との協議を経て、本条に基づき行われた行為およびマスク・ワークに対する保護の国際的認知の現状に関する報告書を上院および下院の司法委員会に提出しなければならない。上記報告書は、外国の国民、住民または主権者が保有するマスク・ワークに対して本章に基づき認められる保護に関して、商務長官が著作権局長と協議の上本章の目的およびマスク・ワークの保護に関する国際的強調を促進すると判断する修正について提案するものとする。商務長官は、著作権局長と協議の上、1994年7月1日までに、前段に基づき提出される報告書に含まれる事項につき最新の報告を、上院および下院の司法委員会に提出しなければならない。


    *20 1984年11月8日





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