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    目次


    1965年9月9日の著作権及び著作隣接権に関する法律(著作権法)
    (連邦法律広報第 I 部第1273頁)
    第1章 著作権
    第1節 総則
    第2節 著作物
    第3節 著作者
    第4節 著作権の内容
    第1款 総則
    第2款 著作者人格権
    第3款 利用権
    第4款 著作者のその他の権利
    第5節 著作権における法律関係
    第1款 著作権の承継
    第2款 使用権
    第6節 法律により許容される使用による著作権の制限
    第1款 法律により許容される使用
    第2款 第53条、第60a条乃至第60f条に基づき許容される複製に関する報酬
    第3款 その他の法律により許容される使用
    第4款 授業、学術及び諸機関に関して法律により許容される使用
    第5款 孤児著作物に関し法律により特別に許容される使用
    第6款 法律により許容される使用に関する共通規定
    第7節 著作権の存続期間
    第8節 コンピュータ・プログラムに関する特則
    第2章 著作隣接権
    第1節 特定の刊行物の保護
    第2節 写真の保護
    第3節 実演芸術家の保護
    第4節 レコード盤の製作者の保護
    第5節 放送事業者の保護
    第6節 データベース製作者の保護
    第3章 映画に関する権利
    第1節 映画の著作物
    第2節 動画
    第4章 著作権及び著作隣接権に関する共通規定
    第1節 補充の保護規定
    第2節 権利の侵害
    第1款 民事法の規定・訴えの提起
    第2款 刑事規定及び過料規定
    第3款 税関の措置に関する規定
    第3節 強制執行
    第1款 総則
    第2款 金銭債権を理由とする著作者に対する強制執行
    第3款 金銭債権を理由とする著作者の権利承継人に対する強制執行
    第4款 金銭債権を理由とする学術的刊行物の作成者及び写真家に対する強制執行
    第5款 金銭債権を理由とする特定の装置を目的とする強制執行
    第5章 適用領域、経過規定及び最終規定
    第1節 法律の適用領域
    第1款 著作権
    第2款 著作隣接権
    第2節 経過規定
    第3節 最終規定



    1907年1月9日の造形美術の著作物及び写真の著作物の著作権に関する法律
    (ライヒ法律広報第7頁〔連邦法律広報第III部分類番号第440-3号に公表された修正版〕)
    第22条 【自己の肖像に関する権利】
    第23条 【第22条に対する例外】
    第24条 【公共の利益による例外】
    第33条 【罰則】
    第37条 【廃棄】
    第38条 【引取りの権利】
    第42条 【民事又は刑事手続】
    第43条 【申請に基づく廃棄】
    第44条 【引取りに対する権利】
    第48条 【消滅時効】
    第50条 【廃棄を求める申請】
    第55条 【施行】




    翻訳にあたって


     本書は、ドイツ著作権法、すなわち、1965年9月9日の著作権および著作隣接権に関する法律(Gesetz über Urheberrecht und verwandte Schutzrechte (Urheberrechtsgesetz) vom 9. September 1965)の翻訳である。
    法律の翻訳作業には、言語体系の相違に加え法文脈の相違も背景となって、訳語の発見の困難がしばしばともなう。このたびの翻訳の試みにおいても訳語の選定に思い悩むことは少なくなかった。
    たとえば、著作物の「使用」の概念と「利用」の概念の使い分けである。この点について、ドイツ法は、文書の黙読、音楽の聴取あるいは絵画の鑑賞といった知覚行為をも包摂する使用の行為にも、著作権の保護が基本的におよぶこととしたうえで(11条)、著作権の財産権的効力のおよぶ使用の行為には、単なる知覚の行為にすぎない無形的な使用行為なり、無形的な再生の行為に該当しても公衆の再生にはあたらない文書朗読や音楽演奏などの使用行為は含まれないことを、別に定めた利用権の内容で明らかにしている(15条)。
    著作物の使用の行為には、利用と称されて著作権の財産権的側面つまり利用権のおよぶ使用の行為と、そこから抜け落ちる使用の行為とがあるものと理解されるわけである。そして、この利用権のおよぶ使用行為、たとえば複製という行為にも、さまざまな使用態様(複製態様)が想定され得るのであって、この個々の使用態様に対応する権利が、別に使用権と称されて、それぞれの利用権の内容を構成するという組み立てになっている(31条)。
    また、この利用行為のひとつに数えられ、近年とみにその重要性を高めたインターネット送信の行為についても、その名称の訳出に迷ったところである。ドイツ法は、有形的形態と無形的形態とを問わず、著作物が「公衆に提供(der Öffentlichkeit zugänglich machen)」されている場合をもって、著作物の「公表」を定義する(6条)。インターネット送信も、もちろんこの提供行為のひとつにほかならないのであるが、すでにそれ自身の名称(=Öffentliche Zugänglichmachung)に、「公表」にいうところの「公衆に提供」と、かなり近似する語が用いられている(19a条)。
    他にたとえば、著作権に関する世界知的所有権機関条約8条は、これに相当する行為を「公衆への伝達」と称するところであるが、公衆伝達の語はすでにわが国の法文脈で別個の意味を備えているだけに、あえて原語の用語を離れてここでそれを採用することに魅力は感じなかった。
    結局、本書では、インターネット送信に該当する行為を、名詞の場合にせよ動詞の語幹となる場合にせよ、「公衆提供」という一体的な語で表現することにより、原語の表現をできるだけ生かしつつ、「公衆に提供」という「公表」との関係でより一般的な意味を持つ概念との差別を試みた。
    このたびの翻訳に用いたテキストは、2003年9月の改正(情報社会における著作権の規整に関する法律)を経た条文である。
    この改正は、欧州理事会のいわゆる情報社会指令(2001/29/EG)の実施を受けたものであるが、その後、ドイツの国内事情を背景とする改正作業がさらに進められ、すでにその政府草案も、私的複製やそれに対する報酬制度の改正にもわたる内容をもって、公にされたところである。しかし、このたびの翻訳を前に、その改正法の成立を見ることはなかった。また、ドイツの著作権法制度を知るうえで、権利の集中管理に関するいわゆる著作権管理法(Gesetz über die Wahrnehmung von Urheberrechten und verwandte Schutzrechten (Urheberrechtswahrnehmungsgesetz))は欠かせない存在であり、またその直近の改正も、著作権法と時を同じく2003年9月に行われたところである。しかしこれについても、ここに併せて訳出することは叶わなかった。他日を期することとしたい。
    2007年3月 本山雅弘




    第二版の序


     初版からすでに3年が過ぎようとしている。この間、ドイツの著作権制度は、比較的大きな改正にも直面してきた。今回、これまでの改正内容を反映させ、さらに、先の翻訳の機会に力及ばず断念した著作権管理法、それに、1907年の立法以来、現行著作権法と併存するかたちでその一部をなお存続させているいわゆる美術著作権法(Gesetz betreffend das Urheberrecht an Werken der bildenden Künste und der Photograpie)を、いずれも訳出する機会を得た。
    ドイツ著作権法が直面した近年の改正経緯とその主たる改正内容は、つぎのとおりである。すなわち―、
    2006年11月10日の著作権法を改正する第五の法律(連邦法律広報第 I 部第2587頁)によって、いわゆる純粋美術に関する追及権の規定(26条)が全面改正された。2007年10月26日の情報社会における著作権の規整に関する第二の法律(連邦法律広報第 I 部第2513頁)によって、未知の使用方法に関する契約ルールの変更(31a条の新設)、公共図書館等における電子端末での閲覧使用に関する制限規定の新設(52b条)、公共図書館による複写物の送付サービスに関する制限規定の新設(53a条)、私的複製に対する補償金制度(報酬請求権制度)の抜本的変更(54条から54h条までの全面改正)、またこの抜本改正に伴う法定報酬額に関する「別表(旧54d条1項)」の全面廃止が行われた。2007年12月13日の財政行政法及びその他法律の改正のための第二の法律(連邦法律広報第 I 部第2897頁)によって、一部改正が行われた。2008年7月7日の知的所有権に関する権利の執行を改善するための法律(連邦法律広報第 I 部第1191頁)によって、不作為請求訴訟提起前の加害者に対する警告(Abmahnung)制度(97a条)、無過失加害者の不作為請求回避を目的とする使用料相当額の賠償制度(100条)、侵害組成物の販売経路等に関する報告請求権(101条)、被疑侵害者に対する文書等の提出請求権(101a条)、損害賠償請求権の実効性担保のための文書提出請求権(101b条)などが、いずれも新設された。2008年12月7日の著作権の修正に関する第六の法律(連邦法律広報第 I 部第2349頁)によって、一部改正が行われた。そして、2008年12月17日の家事事件及び非訟事件における手続の改正に関する法律(連邦法律広報第 I 部第2586頁)によって、一部改正が行われた。
    今回の翻訳は、これらの改正をいずれも反映させたものである。
    ドイツ著作権管理法は、いうまでもなく、著作権法内の保護と制限の内容を明らかにするルールおよび契約法に関するルールとともに、ドイツ著作権法制度の屋台骨となる法律である。この法律も、2007年10月26日の情報社会における著作権の規整に関する第二の法律を受けて、修正がなされている。
    1907年の美術著作権法は、その大部分の規定を現行著作権法の施行(1966年)と同時に廃止したが、肖像の保護に関する制度については、現在もなお有効に存続させている。そして、この肖像保護制度は、肖像が備える人格価値のみならず財産価値をも保護し得るとする解釈が、ドイツの最高裁判所の判例の立場である。近年、わが国においても、著名人の氏名なり肖像に関するいわゆるパブリシティの権利が判例により確立されつつあるが、ドイツの肖像保護制度は、このパブリシティの権利とも対応し得るところである。そこで、近年の社会的関心に応えるとともに、従来あまり顧みられなかったドイツ著作権法の一面を紹介する意味でも、ここに、この肖像保護制度を訳出することとした。
    2010年2月 本山雅弘






    第三版に際して


      今回の翻訳にあたって、現時点において直近の改正である、2018年11月の改正(BGBl. I S. 2014:連邦法律広報Ⅰ部2014頁)を反映させた。
     先の改版以降、ドイツ法は2011年より毎年の改正を重ねている。なかでも、2013年5月の改正で行われた、プレス出版者に関する新たな著作隣接権(87fないし87h条)の新設、そして、2013年10月の改正で行われた、授業・教育(60aおよび60b条)、学術・研究(60c条)、および、いわゆるビッグ・データの利活用の促進を目的とするデータマイニング(60d条)等に関する一連の制限規定の新設が、目を引くところである。
     後者の、一連の新設制限規定については、その施行後4年をもって、連邦政府が法改正の評価を連邦議会に報告することとされており(142条1項)、また、その改正法は、2023年2月28日までの時限的なものとされている(同条2項)。 これらの規定は、著作権・知識社会法(2017年9月立法)を通じて、著作権法に導入されたものである(2018年3月1日施行)。この辺りには、制限規定のあり方をめぐる権利者側と利用者側の利害調整の難しさを、垣間見ることもできよう。
     先の改版で訳出した、著作権等の集中管理に関する法律は、新たに、「集中管理団体による著作権及び著作隣接権の管理に関する法律」として、2016年5月24日に立法された(BGBl. I S. 1190:連邦法律広報Ⅰ部1190頁)。この立法は、集中管理に関する欧州指令(2014/26/EU)の国内法編入を受けたものである。その規定内容には、少なからず、旧著作権管理法に対応するものを認め得るが、旧法を改めた現行法の翻訳については、他日を期したいと思う。
     なお、今回の改版を機に、いわゆるレコードに関する著作隣接権の保護対象である“Tonträger“の訳語を、従来の「レコード」から、「レコード盤」へと改めた。
     ドイツの著作隣接権の保護対象は、有体物としての「レコード盤」であり、わが国の著作隣接権の保護対象である「レコード」が、「物に固定された音」(著作権法2条1項5号)という、無体の音それ自体であることと異なるからである。「レコード」と「レコード盤」とは、訳語としてはささやかな相違に過ぎないが、わが国の保護対象である「レコード」の概念と比較すると、保護対象としての評価の対象には、その保護の正当化根拠にもおよび得る、おおきな相違がある。
    2020年1月 本山雅弘



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