Q&A 有線テレビ放送(CATV)

    この「著作権Q&A  著作権って何?(はじめての著作権講座)」のコーナーでは、右の項目について、それぞれまず要旨を説明し、次に「Q&A」の形で、実際の事例にそった解説をします。

    町でCATV施設を作り、受信料を町民から支払ってもらっていますが、町議会の中継放送などのほか、テレビ放送の教養番組なども放映しています。問題がありますか。
    テレビ放送にはいろいろな権利者が関係していることは、「3.テレビ放送から録画したビデオ録画物」のところでも説明しました。教養番組ですと講演会や座談会の出演者(口述の著作者、あるいは実演家)、テーマ、エンディング音楽の作曲者、演奏者(実演家)、それに放送局(放送事業者)自体が関係権利者として挙げられます。

    これらの著作者や実演家、放送事業者は、その著作物、実演、放送について、で取り上げた複製権、録音権・録画権だけでなく、公衆送信権及び有線放送権という権利を持っています。なお、実演家については、放送される実演を有線放送することに対しては報酬請求が設けられましたが、許諾権はありません。この実演家を除くすべての権利者から、公衆送信権または有線放送権の許諾をとらなければ、放送をCATVで流すことは、原則としてできないのです。

    原則としてというのは、放送される著作物や放送自体は、営利を目的とせず、聴衆または観衆から料金を受けない場合には、特に許諾をとらなくても有線放送することができるという例外があるからです。ここでいう料金とは、どういう名目で取っているかを問わず、著作物や放送を提供、提示することについて受ける対価をいいます。この質問の場合は、受信料を取っているのですから、それが著作物等の提供、提示の対価を一切含まず、たとえばもっぱら施設の維持の経費であるとはっきり説明がつけられない限り、この許諾のいらない例外にあてはまりません。

    さらに、放送法という法律で、放送事業者は、他の放送事業者の同意を得なければ、その放送を受信し、これを再放送してはならない旨を規定しています。これは、上述の著作権法上の放送事業者の有線放送権とは別のものです。CATVは、放送局から再放送の同意書というのをもらって再放送をしなければなりませんが、どの放送局も、放送の全部をそっくりそのまま再放送することを同意の条件としており、この質問のようないわば放送の「つまみ食い」は、おそらく認めないでしょう。

    放送を録画しておいて、適当な時間に流すのは、複製の問題が絡んでくるので、なおのこと困難であると思われます。

    根拠法令 参考条項
    観光PR用ビデオを委託製作し、著作権の譲渡も受けたビデオ録画物をCATVで観光施設数箇所に流していますが、問題がありますか。
    委託製作したビデオ録画物の著作権の譲渡というのが何を意味しているかを考えなければなりません。

    このような観光PR用のビデオ録画物は、ビデオではあっても著作権法の上では「映画の著作物」になります。著作権法は、映画の著作物の著作権は、監督・演出家等著作者が映画製作者に対し映画の著作物製作に参加することを約束しているときは、映画製作者に帰属すると規定していますから、委託を受けて製作した者が最初に著作権を持ち、これから著作権の譲渡を受ければ、その「映画の著作物」の著作権は委託した者にあります。著作権の全部の譲渡であれば、委託者がビデオを上映したり、DVDで頒布したり、CATVで流すことは、この「映画の著作物」に関する限り自由にできます。

    ところで、著作権法は、映画の著作物に使われている小説シナリオ音楽などの著作者は、映画の著作物の著作者の中には入れておらず、したがって、それらの小説、シナリオ、音楽などについては、それぞれの著作者が著作権を持っていることになります。ですから、ビデオ録画物つまり映画の著作物の著作権の譲渡を受けただけでは、使われている小説、シナリオ、音楽などの著作権まで譲り受けたことにはなりません。

    もちろん、観光PR用ビデオですから、製作者はこれらの著作者から観光PR目的での一定の利用について許諾を受けてビデオ収録していると思います。場合によっては、製作者のスタッフがシナリオを書いていて、その著作権は製作者が持っていることもあるでしょう。しかし、CATVでの使用というような別個の独立した利用まで、製作者がすべて手配してあるかどうかは疑問です。少なくとも、シナリオや音楽の著作権管理団体の管理著作物になるものは、CATVで使うことについて別契約する必要があります。

    映画の著作物を委託製作するときは、単にその映画の著作物の著作権を譲り受けることを考えるよりも、どのようなことに使うことができるかを、委託製作契約ではっきりさせておくことのほうが大切です。ちなみに、プロの製作会社は、著作権の全部の譲渡などはしない方針をとっていることが多いようです。

    照会先 根拠法令
    図書館にある戦前の記録映画フィルムをビデオ録画物に写し替えて、外部へ有線テレビで放映していますが、問題がありますか。
    フィルムからビデオに写し替えることは複製になります。また、有線テレビで放映するのは、公衆送信ということになります。著作権のある著作物を複製し、公衆送信する場合は、著作者の複製権および公衆送信権の許諾をとらなければなりません。

    ところで、この記録映画は著作権があるのでしょうか。現行の著作権法では、映画の著作物の保護期間は、映画の公表後70年であり、その映画を創作してから70年以内に公表されなかったときは、創作後70年とされています。映画の場合、公表とは、著作権者またはその許諾を得た者が映画の著作物を複製、頒布するか、上映、放送、公衆送信または送信可能化することをいいます。

    上記の保護期間の定めによると、映画が創作されたが、公表されないままになっていて、それが70年を経過する直前に公表されたとすると、計算上は創作後139年保護されることになりますから、戦前の記録映画だからといって、一概に著作権はなくなっているとは言い切れないかもしれません。ただ、1970年まで効力のあった旧著作権法では、記録映画のようなものの著作権は発行後10年、発行されないときは製作後10年(中途改正によりいずれも13年)で消滅することとされていました。新旧著作権法の経過措置の問題もあり、保護期間の計算は難しいところがあります。いずれにしても、この記録映画がいつ撮影されたものか、発行または公表されたものか、公表されたとすればいつかなどの事実関係がわからないと、断定的なことはいえません。しかしながら、戦前の記録映画の著作権がまだある可能性はきわめて低いと思われます。

    もう1つの留意点としては、入手経路の問題があります。このフィルムが一般市販品として売られていて、図書館がこれを購入したのであれば、著作権がない限り、これを複製したり有線送信することは特に問題ありません。しかし、特定の者から譲り受けたのであるならば、譲り受けの際に約束事があればこれを無視することはできません。著作権がなくても、所有権に基づいて利用に縛りをかけるようなフィルムの譲渡契約をすることはできるからです。「図書館にあるフィルム」といいますが、図書館としては、フィルム入手の際の事情を調べておくことも必要なことです。

    照会先 根拠法令

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