Q&A カリヨン、CD-R、録画テープなど録音物

    この「著作権Q&A  著作権って何?(はじめての著作権講座)」のコーナーでは、右の項目について、それぞれまず要旨を説明し、次に「Q&A」の形で、実際の事例にそった解説をします。

    市の児童公園の時報代わりにするため、有名な童謡をカリヨンに収録し、定時に演奏する装置を作りたいのですが、問題がありますか。
    人の集まる広場や児童公園等に、時間になると音楽を自動演奏するカリヨン(鐘)が設置されていることがあります。カラクリ人形等に組み合わせているものもあり、ほほえましいものも多いと思います。

    ところで、このカリヨンに童謡を組み入れて定時に演奏する装置を作るとなると、音を固定することになりますから、著作権法にいう録音に該当します。したがって、童謡を収録する場合、著作権の保護期間内(原則として死後70年の経過内)のものであれば、著作者の複製権が働き、著作者から許諾を得なければなりません。なお、著作権法にいう複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいいますから、録音は複製に該当します。日本の音楽家の場合は、日本音楽著作権協会(JASRAC)等音楽著作権管理団体が管理している場合がほとんどですので、これらの管理団体へ問い合わせてください。これらの管理団体に著作権の管理を任せていない著作者が作った童謡の場合には、直接、作詞・作曲者あるいはその著作権者から複製の許諾を受ける必要があります。

    なお、カリヨンへの収録にあたって、曲の一部を短くする等改変や編曲をした場合には、著作者人格権である同一性保持権を有する著作者の同意と翻案権を有する著作権者の許諾を得る必要があるでしょう。なお、JASRACは著作者人格権及び翻案権を預かっておりませんので、同一性保持権を有する著作者本人及び翻案権を有する著作権者から同意を得る必要があります。その上で、JASRACからの複製の許諾を得ることになります。

    なお、平成11年に著作権法附則14条が廃止され、適法に録音された音楽の著作物を公に再生する場合にも、演奏権が働くことになりました。著作物使用料等詳しくは、JASRAC等音楽著作権管理団体に問い合わせてください。

    照会先 根拠法令
    教育委員会が主催した外部講師の講演をCD-Rに録音し、市立図書館に収録して貸し出したいのですが、問題がありますか。
    著作物というと小説や音楽、絵画等、物に化体したものを思い浮かべますが、講演も著作物の一つです。講演は他の著作物同様に「思想又は感情を創作的に表現したもの」であり、小説、脚本、論文と共に言語の著作物に該当すると考えられています。

    したがって、外部講師は自分の講演について著作権を有するので、この講演の録音をしたり、録音物から更に録音物を作成したり、この講演の録音テープを起こして講演録を作成することはすべて講師が権利を有することになります。なお、これらの行為は、すべて講演の複製となります。

    そこで、この講演を録音し、録音物から更にCD-Rを作成する場合には、いずれも著作権者としての講師に許諾を得る必要があります。

    なお、許諾を受けて複製したCD-Rを市立図書館で無料で貸し出すことは可能です。映画の著作物の複製物以外は、非営利かつ利用者から料金を得なければ、貸与権の制限が働き、著作者の許諾を得ずに貸与することができます。

    また、場合によっては教育委員会が、内部(部署内)の情報共有のための資料として講演内容を録音し、保存することがあるかもしれませんが、これも著作物の複製に該当することから、著作権者に無断で行うことはできませんので注意が必要です。なお、イントラネットとの関係は、「5 インターネット・ホームページ」のQ6で詳しく解説していますので参照してください。

    根拠法令
    市が主催した音楽コンクールのライブ盤CDを希望者に実費価格で販売しましたが、問題がありますか。
    音楽コンクールで歌唱・演奏される歌曲には、音楽の著作物としての著作権があります。

    コンクールで歌唱・演奏する場合、公衆に直接聞かせることを目的として演奏するのですから演奏権が働きます。但し、営利を目的とせず、かつ、聴衆から料金を受けず、そして、出演者に報酬が支払われない場合に限り、著作者から許諾を受けなくても演奏ができることになっています。

    したがって、市が主催し、かつ、入場無料で行った音楽コンクールであれば、著作者からの許諾は不要となります。なお、音楽コンクールですからあまり例はないとは思いますが、演奏者に演奏料を支払った場合には、著作者の許諾が必要となります。

    次に本題に入りますが、音楽コンクールのライブ盤CDは、コンクールで歌唱・演奏された音楽を録音したものです。この場合、著作権法の複製権が働きます。

    また、歌唱者や演奏者の歌や演奏(これらを実演といいます)がそのライブ盤CDに録音されているのですから、それら歌唱者や演奏者(著作権法では実演家といいます)の録音権が働き、許諾が必要となります。この実演家の録音権は、アマチュアであろうとプロの演奏家であろうと同じです。

    なお、ライブ盤CDを希望者に実費で販売する行為は多数を対象として行っているものであり、著作権法で認められている「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」には該当せず、私的使用のための複製とはいえないでしょう。

    したがって、このような場合には、著作者の複製権と実演家の録音権が働きますので、あらかじめ歌曲の著作権者(著作者が日本音楽著作権協会(JASRAC)に著作権を信託譲渡している場合にはJASRACその他の音楽著作権管理団体が管理している場合、当該団体)から許諾を得る必要があります。同時に、コンクール出演者にはコンクール出演の際に録音及び希望者への実費価格の販売の許諾を得ておく必要があります。

    照会先 根拠法令
    県立高校の校歌の作詞、作曲を著名な音楽家に委嘱して制作しました。楽しい曲で評判ですが、この曲の替え歌が市中に出回っています。なんとか差止めたいのですが。
    校歌の作詞、作曲の著作者はそれを制作した音楽家です。著名な音楽家ですと、たいていは日本音楽著作権協会(JASRAC)と著作権の信託契約をしている人が多く、そのた場合は、「その有するすべての著作権並びに将来取得する全ての著作権」をJASRACに信託譲渡しています。しかし、校歌や社歌のように特別の依頼により作成する著作物については、あらかじめJASRACの承諾を得ることによって、依頼者に著作権を譲渡したり、当該依頼者にその依頼目的として掲げられた一定の範囲内での使用を認めることができることになっています。

    本件の場合も、このような手続きにより委嘱制作された校歌の作詞・作曲の著作権について依頼者である県に譲渡されたのであれば、県が著作権者となります。なお、著作権を譲渡しても著作者人格権は第三者に譲渡できませんから作詞・作曲した音楽家に残ります。

    ところで、替え歌は、元歌を改変したものですから、著作者の同意なく替え歌を作成することは著作者人格権のうちの1つである同一性保持権の侵害になります。また、替え歌にした曲の利用方法によっては、著作者の名誉又は声望を害するとして、著作者人格権を侵害する行為とみなされる可能性があります。

    また、替え歌は元歌の翻案になる場合が多いことから、元歌の著作権者から翻案の許諾を得る必要もあります。

    そこで、音楽家から校歌の著作権の譲渡を受けている県は、替え歌を出版したり録音して頒布する者に対しては、著作権者として複製権あるいは翻案権侵害を理由として差止めを請求することができます。もちろん、元歌を制作した音楽家も著作者人格権の侵害を理由として差止めを請求することができます。

    ただ、替え歌が自然発生的に口から口へ伝わっただけであれば、差止め請求する相手方を特定することは非常に難しいことから、実際上差止めをすることは困難でしょう。

    照会先 根拠法令
    町の民謡研究会のメンバーが歌った民謡をCDに入れ、文化祭の入場者に配りたいのですが、問題はありませんか。
    民謡の場合、古くから地域に伝承された歌ですので、著作者は明らかでないものがほとんどでしょうし、既に著作権の保護期間が経過しているものがほとんどでしょう。この場合には、何ら著作権を問題にする必要はありません。もっとも、「新民謡」と言われているようなものには著作権がありますので、このような場合には、その歌曲の著作権者(JASRAC等音楽著作権管理団体が著作権を管理している場合は当該管理団体)から録音の許諾を得る必要があります。また、古くから伝承されている民謡であっても、近年になって歌詞を改変したり、メロディをアレンジして発表したものであれば、その改変、アレンジした歌詞やメロディには著作権が成立する可能性はあります。

    次に、町の民謡研究会のメンバーが歌った民謡については、実際に歌った民謡研究会のメンバーが歌手(実演家)としての録音権を有しています。プロの歌手であろうと素人であろうと関係ありません。したがって、録音する際に、実際に歌った民謡研究会のメンバーに録音の許諾を得る必要があります。

    次に、最初の録音の際に、その録音したものをCDにダビングすることについても許諾を得ていれば問題ありませんが、当初は、最初の録音のことのみ許諾を得ており、ダビングして配るという話が後で出たのであれば、ダビングについて再度録音の許諾を得る必要があります。なぜなら、著作権法でいう録音とは、音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいうと定義されており、最初の録音物からダビングしてCDを増製する際にも許諾が必要とされているからです。

    したがって、民謡を録音すること及び録音したものからダビングすることの両方とも、歌唱者である民謡研究会のメンバーから許諾を得る必要があります。

    照会先 根拠法令

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