解説
実演家などに認められた権利
著作隣接権とは、著作物の創作者ではないものの、著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者に認められた権利です。
それぞれ、下の表のような権利を持っています。
著作隣接権
実演家の権利
実演家人格権 | 氏名表示権 (第90条の2) |
自分の実演について氏名若しくは芸名等を表示するか、又は表示しないかを決定する権利 |
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同一性保持権 (第90条の3) |
自分の実演について実演家の名誉や声望を害する改変をされない権利 | |
著作隣接権 | 録音権・録画権 (第91条) |
自分の実演を録音・録画する権利 |
放送権・有線放送権 (第92条) |
自分の実演を放送・有線放送する権利 | |
送信可能化権 (第92条の2) |
自分の実演を送信可能化する(端末からのアクセスに応じ自動的に公衆に送信し得る状態に置く)権利 | |
譲渡権 (第95条の2) |
自分の実演の録音物又は録画物を公衆に譲渡する権利。ただし、一旦許諾を得て譲渡された実演の録音物又は録画物の、その後の譲渡には、譲渡権が及ばない。 | |
貸与権 (第95条の3) |
自分の実演が録音されている商業用レコード(市販用のCDなどのこと)を貸与する権利。ただし、その権利は、最初に商業用レコートが販売された日から1年に限られる。 | |
二次使用料を受ける権利 (第95条) |
自分の実演が録音されている商業用レコードが放送や有線放送で使用された場合に、使用料(二次使用料)を、放送事業者や有線放送事業者から受けることができる権利 | |
貸レコードについて報酬を受ける権利 (第95条の3第3項) |
自分の実演が録音されている商業用レコードが、販売された日から1 年を経過した後に貸与された場合に、貸レコード業者から報酬を受けることができる権利 |
レコード製作者の権利
著作隣接権 | 複製権 (第96条) |
製作したレコードを複製する権利 |
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送信可能化権 (第96条の2) |
製作したレコードを送信可能化する(端末からのアクセスに応じ自動的に公衆に送信し得る状態に置く)権利 | |
譲渡権 (第97条の2) |
製作したレコードの複製物を公衆に譲渡する権利。ただし、一旦許諾を得て譲渡されたレコードの、その後の譲渡には、譲渡権が及ばない。 | |
貸与権 (第97条の3) |
製作したレコードが複製されている商業用レコードを貸与する権利。ただし、その権利は、最初に商業用レコードが販売された日から1 年に限られる。 | |
二次使用料を受ける権利 (第97条) |
製作したレコードが複製されている商業用レコードが放送や有線放送で使用された場合に、使用料(二次使用料)を、放送事業者や有線放送事業者から受けることができる権利 | |
貸レコードについて報酬を受ける権利 (第97条の3第3項) |
製作したレコートが複製されている商業用レコードが、販売された日から1年を経過した後に貸与された場合に、貸レコード業者から報酬を受けることができる権利 |
放送事業者及び有線放送事業者の権利
著作隣接権 | 複製権 (第98条、第100条の2) |
放送又は有線放送を、録音し、録画し、写真的方法により複製する権利 |
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再放送権・有線放送権、放送権・再有線放送権 (第99条、第100条の3) |
放送を受信して、これを再放送・有線放送する権利、又は有線放送を受信して、これを放送・再有線放送する権利 | |
送信可能化権 (第99条の2、第100条の4) |
放送及び放送を受信して行う有線放送又は有線放送を受信して送信可能化する(端末からのアクセスに応じ自動的に公衆に送信し得る状態に置く)権利 | |
テレビジョン放送の伝達権、有線テレビジョン放送の伝達権 (第100条、第100条の5) |
テレビジョン放送及びこれを受信して行う有線放送を、影像を拡大する特別の装置(超大型テレビやビル壁面のディスプレイ装置など)を用いて、公に伝達する権利。有線テレビジョン放送を、影像を拡大する特別の装置を用いて、公に伝達する権利 |
著作隣接権の保護期間
実演 | 実演が行われたときから70年 |
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レコード | レコードの発行(CD販売等)が行われたときから70年 |
放送、有線放送 | 放送、有線放送が行われたときから50年 |
※レコードに関しては、音の固定が行われてから70年以内に発行されなかったときは、音の固定が行われてから70年。
Q&A
- 実演家とは、具体的にはどういう人ですか?
- 実演とは、①著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずることをいい、②これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含むとされています。また、実演家には、③実演を指揮し、又は演出する者も含まれています(第2条第1項第4号)。
具体的には、①に当たる者として、俳優、舞踊家、演奏家、歌手などが、②に当たる者として、手品師や奇術師、アクロバットを演じる人などが、③に当たる者として、オーケストラの指揮者や、演劇等の演出家などが実演家に該当します。
- 実演家やレコード製作者の二次使用料を受ける権利の管理はどのように行われていますか? 商業用レコードの公衆への貸与の使用料や報酬を受ける権利はどうですか?
- 著作権法では、商業用レコードが放送又は有線放送で利用された場合、二次使用料を受ける権利を実演家及びレコード製作者に認めていますが、その権利行使は、一定の要件を備えた文化庁長官の指定団体がある場合は、その団体によってのみ行使されることになっています(第95条第5項、第97条第3項)。
現在、実演家の権利については公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が、レコード製作者の権利については一般社団法人日本レコード協会が、それぞれ指定団体となっています。
また、商業用レコードの公衆への貸与の使用料や報酬を受ける権利についても、放送又は有線放送で利用された場合の二次使用料を受ける権利と同様に、実演家については芸団協が、レコード製作者については日本レコード協会が、それぞれ指定団体となっています。
放送又は有線放送で利用された場合の二次使用料の額や、貸与の使用料や報酬の額は、指定団体と放送事業者などとの間の協議によって定められ、徴収された使用料は一定のルールに従い、権利者に分配されています。
- ワンチャンス主義とは何ですか?
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実演家は、いったん自分の実演を映画の著作物に録音・録画することを許諾すると、その映画がDVDやブルーレイなどに複製される際や、テレビや有線放送、インターネット等で公衆送信される際には、権利主張することができないこととなっています(第91条第2項、第92条第2項)。
このように、実演家が権利主張する機会が、映画の著作物に録音・録画する機会の 1 回だけに限られており、その後のその実演の複製や公衆送信の際には権利主張できないことを「ワンチャンス主義」と呼んでいます。 - 美容院を開業します。お店のBGMに市販のCDを編集せずそのまま流したいと考えています。作詞家・作曲家の著作権は一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)で許諾を得ることができると聞きましたが、実演家やレコード製作者の著作隣接権の許諾を得る必要はありますが?
- 現在の日本の著作権法では、実演家やレコード製作者の著作隣接権の中に、演奏権はありませんので、実演家やレコード製作者の許諾は不要です。 なお、外国では、著作隣接権者に演奏権を認めている国もあります。