外国の著作物も保護されるの?

    この「著作権Q&A  著作権って何?(はじめての著作権講座)」のコーナーでは、右の項目について、それぞれまず要旨を説明し、次に「Q&A」の形で、実際の事例にそった解説をします。

    TEST 解説

    著作権に国境はありません

    著作物は、国境を越えて利用されるため、世界各国は、19世紀末以降、以下のような国際条約を結んで、著作物や実演・レコード・放送などを相互に保護し合っています。日本はいずれの条約にも加入しており、世界の大半の国と相互の保護関係があります。
    なお、著作物が利用される際の法律の適用に関しては、例えば、日本の著作物がアメリカで利用される場合にはアメリカの著作権法が、逆にアメリカの著作物が日本で利用される場合には日本の著作権法が適用されるのが原則です。

    著作権・著作隣接権関係条約

    (2023年2月28日現在)

       
      ベルヌ条約 万国著作権条約
    創設年度 1886年
    (日本の締結年:1899年)
    1952年
    (日本の締結年:1956年)
    加入国数 179 100
    正式名称 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約 万国著作権条約
    主な内容 (1)内国民待遇
    (2)無方式主義
    (3)遡及効
    (4)最低保護期間=死後50年
    (5)条約上保護すべき著作物=同盟国の国民の著作物及び同盟国で最初に発行された著作物
    (1)内国民待遇
    (2)無方式主義国の著作物であっても©表示によって方式主義国でも保護
    (3)不遡及
    (4)最低保護期間=死後25年
    (5)条約上保護すべき著作物=締約国の国民の著作物及び締約国で最初に発行された著作物
      実演家等保護条約(ローマ条約) レコード保護条約
    創設年度 1961年
    (日本の締結年:1989年)
    1971年
    (日本の締結年:1978年)
    加入国数 96 80
    正式名称 実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約
    主な内容 実演に関し、
    (1) 実演家の了解を得ない実演の放送、録音・録画の防止
    (2) 商業用レコードの放送二次使用料請求権を付与
    レコードに関し、
    (1) 複製権を付与
    (2) 商業用レコードの放送二次使用料請求権を付与
    放送に関し、放送の再放送権、録音・録画権を付与
    レコードの無断複製物の作成・輸入・頒布に対して、他の締約国のレコード製作者を保護

    1994年にWTO(世界貿易機関)設立協定が成立し1995年1月1日から発効していますが、附属書として、「TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)」が結ばれています。TRIPS協定は、著作権、特許、商標等の知的財産権の国際的保護のための規範や確保手段などを規定しており、著作権と著作隣接権のいずれも対象にしています。
    また、デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した著作権・著作隣接権保護の新たな枠組みとして、1996年に「WIPO著作権条約(WCT)」及び「WIPO実演・レコード条約(WPPT)」の2つの条約がWIPO(世界知的所有権機関)によって策定されました。
    さらに、2012年には「視聴覚的実演に関する北京条約」が、2013年には「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」が採択されています。

      TRIPS協定
    創設年度 1994年 (日本の締結年:1994年)
    加入国数 164
    正式名称 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
    特色 (1)ベルヌ条約の規定する保護内容を遵守
    (2)コンピュータ・プログラム及びデータベースの著作権による保護
    (3)コンピュータ・プログラム、映画及びレコード製作者の貸与に関する権利の付与
    (4)実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護 
       
      WIPO著作権条約(WCT)        WIPO実演・レコード条約(WPPT)
    創設年度 1996年
    (日本の締結年:2000年)
    1996年
    (日本の締結年:2002年)
    加入国数 113 111
    正式名称 著作権に関する世界知的所有権機関条約 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約
    主な内容 (1)コンピュータ・プログラムの保護
    (2)著作物以外のもので構成される編集物・データベースの保護
    (3)著作物の譲渡権、貸与権、利用可能化権を付与
    (4)写真の著作物の保護期間をすくなくとも、作者の死後50年に延長
    (5)技術的保護手段の改変禁止
    音に関する実演に関し、
    (1)実演家の氏名表示権、同一性保持権を付与
    (2)実演家の生演奏に係る複製権、譲渡権、貸与権、利用可能化権を付与
    音に関するレコードに関し
    (1)複製権、譲渡権、貸与権、治療可能化権付与
    音に関する実演及びレコードに関し、
    (1)放送、伝達に関する報酬請求権を付与
    (2)技術的保護手段の解除禁止、権利管理情報の改変禁止
      北京条約 マラケッシュ条約
    創設年度 2012年
    (日本の締結年:2020年)
    2013年
    (日本の締結年:2018年)
    加入国数 47 92
    正式名称 視聴覚的実演に関する北京条約                盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約
    主な内容 視聴覚的実演の保護に関し、                
    (1) 実演家の氏名表示権、同一性保持権を規定           
    (2) 複製権、譲渡権、貸与権、利用可能化権、放送権、伝達権を規定
    (3) 技術的保護手段の解除禁止、権利管理情報の改変禁止を規定
    視覚障害者等のために著作物を利用しやすい様式の複製物の形態で利用可能とすることを促進するため、権利の制限又は例外について定めることを規定

    KEYWORD

    内国民待遇 外国人の著作物を保護する場合に、自国の国民に与えている保護と同様の保護を与えること。
    無方式主義 著作権は著作物を作った時点で自動的に発生し保護されるとする原則。我が国をはじめほとんどの国が採用。
    方式主義 著作権は登録、作品の納入、著作権表示などをしないと保護されないとする原則。
    遡及 条約発効前に創作された著作物でも、保護期間内のものであれば、条約が適用されること。
    不遡及 条約発効後に発行又は創作された著作物のみに条約が適用されること。
    ©表示 方式主義の国で著作権の保護を受けるために万国著作権条約で定められた著作権の存続を示す表記。©の記号(CはCopyrightの頭文字)、著作権者の氏名、最初の発行の年の3つを一体として表示する。

    Q&A

    中国の著作権保護期間は50年と聞きましたが、日本の著作物の中国における保護期間はどうなりますか。また、中国の著作物の日本における保護期間はどうなりますか。
    著作権や著作隣接権の条約では、締約国が外国人の著作物を保護する場合には、自国民の著作物を保護する場合と同等以上の保護をしなければならないとする内国民待遇の原則があります。他方、内国民待遇の原則の例外として、外国人の母国の保護期間が自国の保護期間よりも短い場合には、相手国の保護期間しか保護しなくていいとする相互主義の規定があります(第58条)
    したがって、日本の著作物は中国では50年間しか保護されませんが、日本における中国の著作物の保護期間も50年となります。
    保護期間の戦時加算とは何ですか。
    第二次世界大戦の連合国と日本とのサンフランシスコ平和条約において、連合国の国民が第二次世界大戦前又は大戦中に取得した著作権については、通常の保護期間に戦争期間を加算した期間保護しなければならないと定められており、具体的には太平洋戦争が始まった1941年12月8日から各国の対日平和条約発効日の前日までの日数(約10年5か月)を加算した期間保護しなければなりません。このことを保護期間の戦時加算といいます。
    また、翻訳権の保護期間については、上記の戦時加算に、さらに6か月を追加します(ただし、アメリカについては、戦前に相互に翻訳を自由とする約束をしていたため、翻訳権の戦時加算問題はありません)。
    その後、TPP協定の交渉において保護期間の戦時加算の解消を目指しましたが、戦時加算義務を定めたサンフランシスコ平和条約上の権利義務を法的に変更することは現実的には困難であることから、現実的な打開に向け、我が国が戦時加算義務を負っている国(アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア)との間で個別に、
    (1) 戦時加算問題への対処のため、権利管理団体と権利者との対話を奨励すること
    (2) 必要に応じて、これらの対話の状況及び他の適切な措置を検討するため、政府間で協議を行うこと
    を確認しています(TPPを離脱したアメリカとの間では、2018年4月に、あらためて文書で確認しています)。また、日EU・EPA交渉においても、関係国(イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、ギリシャ)との間で同様の文書による確認を行っています。この文書によって、権利管理団体の取組及びそれを政府間で後押しすることを通じて、対象国において戦時加算分については権利行使しないという対応が期待され、問題の現実的な打開に向けた一歩となっています。

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